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2013年4月 2日 植草一秀の『知られざる真実』
『金利・為替・株価大躍動−インフレ誘導の罠を読み抜く−』(ビジネス社)をご高読賜り深く感謝申し上げたい。
書店にはあまり置いていただいていないが、ネットショップではご関心をいただいており、深く感謝申し上げたい。
楽天ブックショップでは、「株・資金運用部門」でウィークリーランキング(2013年03月26日 - 2013年04月01日)第1位
hontoランキング「経済」分野でもウィークリー第1位
をいただいている。
アベノミクスの問題点を明らかにし、今後の展望を示しているので、ぜひご高読賜りたく思う。
衆議院予算委員会では金融政策に関する論議が繰り広げられている。
いまや、日本の経済政策運営論議においては、いわゆる「リフレ派」がわが世の春を謳歌している状況だ。
山梨県選出の小沢鋭仁議員は民主党議員であったが、昨年12月の総選挙直前に日本維新の会に鞍替えをして議席を維持した。
節操がなくても機を見るに敏な人間が短期的には利益を得ることを示している感が強い。
岩手県では、民主党政権で閣僚に登用された平野達男議員が民主党を離党して自民党の推薦を受けて7月参院選に出馬する意向であると報じられている。
節操のなさもここまで来ると限度を超えている。
「及ばざるは過ぎたるに勝れり」という。
生活の党の小沢一郎代表が圧倒的な影響力を持つ岩手県で、生活の党候補者を落選させるために、既得権益勢力が総力をあげるということなのだろう。
メディアがこのニュースを大きく取り扱わないのは、小沢一郎議員に関する情報を報道には乗せないとの申し合わせがあるからだと思われる。
ポジティブな情報もネガティブな情報も、小沢氏に関する情報を報道には乗せないとの方針が採られているのだろう。
主権者は改めて「信なくば立たず」の言葉をかみしめるべきだ。
主権者の信託を受けて日本の政治を司る国家議員が、主権者との契約、約束を踏みにじり、ただひたすら、自己の利益だけを追求して小賢しく立ち回る行為を許すべきでない。
岩手県では生活の党候補者を必ず参院選で圧勝させなくてはならない。
小沢鋭仁議員は、リフレ政策を持論としてきたから、安倍政権がインフレ誘導政策を推進することを感無量の心境で受け止めているのだろう。
しかし、金融政策運営に関する中立・公平な論議を踏まえずに、一方的な主張者だけが存在する状況をいいことに、政策論議を著しく偏らせる姿勢はいただけない。
安倍政権がインフレ誘導の姿勢を示し、日銀幹部がインフレ誘導勢力で固められ、質問者がインフレ誘導のスタンスで論議をすると、国会での論議そのものが著しく偏ってしまう。
ナショナリズム感情に火が点けられ、国全体が冷静さを失う排外主義に暴走する姿が彷彿される。
2%のインフレ率を目指すことに異論はない。
日本銀行が超緩和の金融政策運営のスタンスを維持することにも賛成だ。
政府と日本銀行がよく連携して協調体制を構築することも正しい。
こうした枠組みのなかで適切に金融政策を運営すればよい。
それでは何が問題なのか。
私が強調しておきたい点が三つある。
第一は、日本銀行の独立性を排除するための日本銀行法改正に安易に突き進むべきではないこと。
第二は、日本銀行が安易に非伝統的金融政策手段の活用に踏み切るべきではないこと。
第三は、日銀幹部に財務省OBを起用するべきではないこと。
この三点だ。
現在の勢力関係、空気を援用して、中立・公正な十分な論議なしに、日銀法改正に突き進むことには弊害が多い。
日本銀行法は、第二次大戦後の通貨価値の暴落という経験を踏まえて、抜本改正の必要性が強調され続けたなかで、1997年になってようやく改正されたものである。
財務省は日銀の独立性を高める法改正に強く反対し続けた経緯がある。
ようやく実現した改正日銀法を再改正しようというのは、財務省の思惑でしかない。十分な論議なしに安易な改正に進むことは百害あって一利なしである。
インフレ率の上昇を目指すに際して、論争点になっている点は、伝統的な金融政策手段の政策効果が乏しいなかで、非伝統的政策手段の活用に踏み切るべきかどうかという問題だ。
伝統的な政策手段として用いられてきたのは、金利操作と量的緩和措置である。
この面で日銀は最大限の政策行動を示してきた。
しかし、ゼロ金利を実現した段階で、金利操作の手段は消滅する。
他方、量的緩和措置は段階的に強化されてきたが、日銀が短期金融市場に資金を供給しても、その資金が信用創造に活用されない限り、量的金融緩和措置は有効性を発揮しない。
この点は1999年9月21日の日銀による文書
「当面の金融政策運営に関する考え方」
に明記されている。
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