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風知草:飢えるのは、あなたです=山田孝男
毎日新聞 2013年04月01日 東京朝刊
http://mainichi.jp/opinion/news/20130401ddm003070090000c.html
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日本の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)参加と農業保護問題の核心をついた問答がある。
シンポジウムで都会の女性が尋ねた。「日本に農業が存在しなければならない理由は何ですか?」
農民が答えた。「カネで食料を買える間はいいですが、経済破綻すれば飢餓ですよ。私はいいのです、百姓だから。日本農業が滅びようが、どうなろうが、屁(へ)とも思ってない。自分の食うものを自分がつくるだけの話。飢えるのは私ではなく、あなたですよ」
農民は山下惣一(76)である。父から受け継いだ佐賀県唐津市の田畑でコメやミカンを作るかたわら、毒気とユーモアが身上の作家として活躍している。
この問答は、TPPと農業保護をめぐる二つの考え方の本質的な違いを浮き彫りにしている。明日の世界は平和で農産物の輸入も自在と見るか、繁栄の基盤はもろいから食料は自前でと考えるかの違いだ。
TPPは「聖域なき関税撤廃」を目指す。そのまま受け入れれば国内農業が立ち行かない。自民党は「コメ」「麦」「乳製品」「牛肉・豚肉」「砂糖やでんぷんなど甘味資源作物」の5品目を例外と決め、首相が先月15日、記者会見して交渉参加を表明した。
例外扱いが国益か、農業団体のワガママをたしなめるべきか、世論は割れている。東京では「農業よ、甘えるな」「高品質商品を量産して輸出せよ」という論調が主流を占める。
山下はこれが気に入らない。「香港の富裕層に日本の高品質の農産物を送れということは、日本の低所得層は中国の安い農産物を食えということですよ」
「安全で高品質な農産物はTPPに反対している人たちの口には入らんで、TPPを推進している人たちの口に入る。イヤなんだよね、これが(笑い)」
聖域なきTPP参加となれば、次は農協解体、農地法撤廃、企業参入へ進むだろうと山下は見る。企業が農協に取って代わる。構造改革派にとっては痛快だろうが、少なくとも地域農協は、カネがすべての企業支配よりも人間的だ。一握りの企業の特異な成功例を引き、農家をむちゃなカネもうけに走らせ、地域社会を壊してくれるな−−。
憂国の山下節は、先月出た、山形県高畠町でコメとリンゴを作る農民詩人、星寛治(77)との対談集「農は輝ける」(創森社刊)からあふれ出てくる。
山下の一連の著作は、農を軽んじ、農を見下す潮流との闘いの記録だ。休耕田にしめ縄を渡してゴミ投棄を防ぐ小説「減反神社」が81年の直木賞候補。
父の急死と農家の相続を扱った自伝的小説「ひこばえの歌」はNHK「ドラマ人間模様」(82年)になった。これまでに約50回、海外農業事情を視察、取材を踏まえて多くのルポやエッセーも書いている。
TPP交渉参加という決定は、日米安保強化の要請上、やむを得なかったというのが通説だ。首相は「日本の田園風景を守る」と強調しているが、山下は危ういと見ている。
「所得が今の半分だったころはみんな村に住んで活気があったのに、所得が倍になったら誰もいなくなった。なぜですか?」
経済成長を求め、矛盾はカネで埋め合わせるやり方では農業に明日はない。このままでは第二の敗戦になりかねぬ−−。
山下の慨嘆は重い。世界が混乱し、輸入が止まっても国民を飢えさせない基盤があるか。そこまで見据えたTPP参加交渉であってほしい。(敬称略)(毎週月曜日に掲載)
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第三の壊国、関税自主権の実質放棄
アメリカが少し暑いですねと言ったら、気を遣い過ぎてパンツまで脱いでしまうというニホンの気の遣い用
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