33. 2013年4月01日 01:44:44
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「殺せ」の嫌韓デモに批判高まる 3月30日 東京新聞「こちら特報部」 「在日韓国・朝鮮人を殺せ」といった過激なスローガンが白昼の街に躍る。「在日特権を許さない市民の会」(在特会)などが主催するデモだ。見かねた人たちが沿道で「(在日コリアンと)仲良くしよう」と書かれたプラカードで対抗し、国会議員からも問題視する声が出始めた。特定の人種や民族を侮辱、攻撃する表現は「ヘイトスピーチ(憎悪表現)」と呼ばれる。海外では法的な規制もあるが、日本にはない。 (佐藤圭) 十七日午後、東京・新大久保のコリアンタウン。日章旗などを手にした数百人のデモ隊が大通りを練り歩いた。「春のザイトク祭り 不逞(ふてい)鮮人追放キャンペーン デモ行進in新大久保」。主催は在特会だ。 参加者らのプラカードには「朝鮮人ハ 皆殺シ」「韓流追放」といった文言が並び、「殺せ」「たたき出せ」「ゴキブリ」といったシュプレヒコールが繰り返される。
歩道では、デモ隊に匹敵する数の人たちが抗議の意思を示した。 会社員の木野寿紀さん(30)が二月からツイッターで参加を呼び掛けてきた「プラカ隊」のメンバーは、「仲良くしようぜ」「日本の恥」と書かれたプラカードを無言でデモ隊につきだした。 「ひどいヘイトスピーチに大変な怒りを感じている。地域の人たちに迷惑がかからないように黙って差別反対の意思表示をした」(木野さん) デモ隊の前後左右を取り囲む警察官たちは、デモ隊とそれに抗議する人たちを引き離そうとするものの、両者はたびたび角を突き合わせてののしり合った。別の抗議集団は「レイシスト(差別主義者)は帰れ」などと糾弾の声を上げた。 騒然とした雰囲気の傍ら、韓国化粧品を並べた店を営む在日韓国人の女性(56)は「どうしてこんなデモがあるのか分からない。お客さんが怖がって寄りつかなくなっている」と顔をしかめた。 在特会は二〇〇七年一月に発足した。日本に居住する在日コリアンたちが「特権を不当に得ている」と主張し、特に在日コリアンに付与された特別永住資格の剥奪と制度の廃止を訴えている。脱原発デモに対抗した「原発の火を消させないデモ行進」も主催した。 ホームページによると、会員数は一万二千人以上。「嫌韓」デモは数年前から各地で実施され、最近では「殺せ」「毒飲め」といった言葉が飛び出すほどエスカレートしている。それに伴い、抗議の声も強まっている。 同会の米田隆司広報局長はこう語った。 「『良い朝鮮人も悪い朝鮮人も殺せ』といった言葉を推奨しているわけではないが、ショッキングなメッセージは印象に残る。朝鮮人に心理的にダメージを与えようということではなく、会の活動を伝わりやすくするためだ。ヘイトスピーチと言われているが、何をもってヘイトとするのか分からない」 一連の抗議に対しては「(抗議する集団は)反原発運動で世間の関心を集められなくなったので、在特会にかみついて存在感を示そうということではないか」と話した。 民主党の有田芳生参院議員らは十四日、在特会などの「嫌韓」デモに抗議する集会を参院議員会館で開いた。約二百五十人が集まった。 決議文では「在特会などの主張は殺人教唆ともいうべき内容で、表現の自由の一線を越えた悪質な扇動にほかならない」と非難した。有田氏は「在特会のような勢力はほっておけば、消えてなくなるという意見もある。だが、言動は過激化するばかりだ。どこかで歯止めをかけなければ」と危機感を募らせる。 特定の個人や団体に対する侮辱行為であれば、名誉毀損(きそん)罪や侮辱罪などに抵触する。在特会などのメンバーが〇九年、京都朝鮮第一初級学校(京都市)の授業を街宣活動で妨害した事件では、メンバーらに侮辱罪、威力業務妨害罪などによる有罪判決が確定した。 しかし、「韓国人を殺せ」といった言葉は、刑法に抵触しない。日本には、欧州諸国などにある人種差別禁止法やヘイトクライム(憎悪犯罪)法がないからだ。 日本も加盟する人権差別撤廃条約は、こうしたヘイトクライムについての法整備を求めているが、政府は動こうとしていない。「処罰立法を検討しなければならないほどの人種差別の扇動は日本には存在しない」という認識からだ。 東京造形大学の前田朗教授(刑事人権論)は「政府は早急に『人種差別禁止法』を制定し、差別は絶対に許さないという姿勢を打ち出すべきだ。その上で、ヘイトスピーチを含むヘイトクライムの法規制を検討してほしい」と強調する。 とはいえ、いま現在は有田氏ら一部の議員らが動き始めたにすぎず、法整備は将来的な課題。表現の自由との「もろ刃の剣」の側面もあるだけに慎重な議論が必要だ。当面は現行法の枠組みの中で対処するしかない。 有田氏らは二十六日、デモの届け出受理をする東京都公安委員会に対して「ヘイトスピーチを伴うデモを過去に実施した団体からデモ・街宣活動の届け出があった場合、新大久保周辺では許可しないこと」などを要請。地元商店街やネット上で集めた署名も提出した。 風当たりの強さに、在特会の一部には微妙な空気も漂っている。 メンバーの男性会社員は「『殺せ』という部分だけを切り取ってレイシストのレッテルを貼るのは納得できないが、私自身は『殺せ』は使わない」と話した。元メンバーの男性会社員は「『殺せ』という言い方には疑問を感じる。会の活動とは距離を置いている」と複雑な心境を明かした。 前出の米田氏は、在特会の現状について「設立当初から退会する人はいる。出たり入ったりだ。それぞれの考えで動けばいい。デモは今後も継続する」と説明する。 著書「ネットと愛国」で在特会の実態に迫ったジャーナリスト安田浩一氏は「在特会はレイシスト、排外主義者だ。容認することはできない」と断じた上で、「市民の力でデモを止めなければならない」と訴える。 「一連の抗議活動によって、動揺しているメンバーは少なくない。ヘイトスピーチに関する法的規制には慎重にならざるを得ないが、そういう議論が始まってもおかしくないほどデモは醜悪だ。法的規制に走らないためにも、一人でも多くの人が反対の意思表示をしてほしい」 <デスクメモ> 在特会と特報部の接点は、四年前のフィリピン人一家強制退去事件からだ。記事内容をめぐり、抗議を受けたこともあった。取り上げること自体が「励まし」に転じかねないというジレンマは常にある。だが、社会には彼らへの沈黙の共感が垣間見える。その危険は無視できない。注目し続ける理由だ。 (牧) http://asumaken.blog41.fc2.com/blog-entry-8394.html |