01. 2013年3月28日 12:03:59
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痛い経験を糧に、新しい価値を創造したい--堀江貴文氏の会見質疑応答 岩本有平 (編集部)2013/03/27 22:59 自身の仮釈放について、3月27日に開かれた記者会見の場で「万感の思い」と語った元ライブドア代表取締役社長 CEOの堀江貴文氏。会見の冒頭に堀江氏が語ったあと、記者との質疑応答がなされた。ここではその様子を紹介する。 --集団訴訟や継続中の訴訟もあると思うが、その対応や今の気持ちについて。 集団訴訟についてはすべて和解している。旧ライブドアと私との間で包括的な和解をした中で、金銭的な問題は解決している。それ以外の個別の訴訟に関しても、獄中から和解交渉を進めている。1件を除いて、解決というか和解で終わっている。残りの1件についても真摯に話し合いさせていただく。 基本的に私の方針としては、判決前に裁判外の和解ということで対応している。刑事裁判の訴訟と別個の問題で、経営責任はとる。刑事訴訟の結果がどうであれ、株価が下落して迷惑をかけたのは私の不徳の致すところなのは間違いない。これまで必死に向かい合い、誠実に対応してきたつもりだ。 --早く出てきた(仮釈放した)印象がある。何が評価されたのか。 最初は東京拘置所に入ったが、1週間くらいで長野刑務所に移送された。その後3週間単独室棟で待たされており、そこで私のシフトが組まれたようだ。その後訓練工場で2週間ほど厳しい訓練をやらされた。 いわゆる養護工場と呼ばれるところで、ほとんどの受刑者が身体障害者や高齢で認知症の方が30〜40人くらい。そこで「衛生係」という職業についた。 一般的な工場でいうと、配食や洗濯物の管理、掃除や身の回りの世話をする役割だが、私の配属は特殊だった。1人では入浴できない身体の不自由な方の介助だったり、下の世話などいわゆる介護の現場に近いところ。 ただ刑務所というのは、時間もくっきり決められて割と忙しい現場。文字通り汗水流して怒鳴られながら働かなければいけない過酷な現場だった。周囲の受刑者の方や刑務官の方から、そこに配属されるとたくさん仮釈放がもらえると言われた。逆に言うと、ふつうの受刑者は体験しないような過酷なことをやるところ。同僚の衛生係の方も、刑期の4分の1を残して出所される方が多かった。そこに配属された時点で、懲罰、反則行為をしなければ割と早く出所できるというところだった。 本来真面目な性格なものだから、そういった環境に置かれると真面目にしっかりやってしまう。そういったところが評価されたと思っている。 --構想段階と言っていたが、今後チャレンジしてみたい事業や具体的な社会貢献について教えて欲しい。 事業に関しては、正直ライブドアの社長を辞めたとき、「ITはお腹いっぱい」と思っていた。だがPCやスマートフォンから切り離された1年9カ月をおくってみると「そろそろやりたいな」と思う。 ライブドアの社長をやっていた頃よりはモバイルの環境も良くなり、インターネットのリテラシーも上がってきて、事業環境はやりやすくなった。そんな中で――今メールマガジンをやっているのと同じだが――インターネットを使った新しいニュース批評の形というか、そういったところを事業化していきたい。 具体的には近いうちに何らかのサイトを作ることになると思うが、自分自身が不満に思っていた部分、インターネットやマスメディアがこうあればと思っていた部分を実現する。 今、ITの会社はソーシャルゲームをやられているが、あまり興味はない。でもすごく儲かっているな、とは正直思っている。だが、興味のあまりないことに力を集中し過ぎると、また前のライブドアのようになってしまう。自分が「世の中こうなれば、より便利でよくなるんじゃないか」と思うものをやりたい。 社会貢献については私が言うのもおこがましいが、刑務所を出て身寄りがない方を保護する「更生保護法人」に興味がある。実際刑務所を出た方が偏見を持たれ雇ってもらえなかったりする。そういう方の社会復帰を円滑にするようなもの。 私が思ったのは、刑務所にいる人たちが極悪な人でも変わっている人でもなく、本当に「普通の人」ということ。若干変な人もいるが、凶悪犯というよりはトラウマを抱えていたり、家庭環境が良くなかったり、社会に対してルサンチマンを持っている人。 裏返していうと、世の中にいる普通の人が何かのきっかけで犯罪者になってしまうことも十分あるということ。そういった人たちが刑務所に入ると、死刑でもない限り必ず出所する。そういった人たちが再び犯罪を起こさないことが大事ではないかと思っている。 犯罪の絶対数を減らすのは再犯を減らすことから。私が(刑務所に)入って驚いたのは、刑務所に入った人間の再犯率が5割を超えるということ。何らかの形でお手伝いできればと思う。まずはそういった人を知ってもらうこと。私は普通の人よりは発信力あると思っているので(そういった情報を)発信して知っていただく。最初からフルコミットして(更正)施設を作るのは難しい。まずは寄付する、知ってもらう、再犯防止の方策を考えてもらうということ。 ほかにもやりたいことはいっぱいあるが、まだまだ自分の中で消化しきれてない部分ところがある。有り余る時間があったので、飛行機の操縦免許についても十分勉強したし、生命科学系の本も読んで造詣が深まった。 外見に関しては、なかなか信じてもらえなかったが、(昔から)もともと痩せて今ぐらいだった。会社を立ち上げて10年で上場して拡大していく中、プレッシャーやストレスがあったが、それを酒と食べ物で発散して10年間で30kg太った。2004年頃は少し痩せたが、プロ野球の参入騒動でまた戻ってしまった。だが(刑務所で)規則正しい生活を送ることで痩せた。今後はあまりプレッシャーをかけ過ぎず、太り過ぎないようにしていきたい。 内面については、変わったかもしれないし、変わってないかもしれないと思う。注目をされ、囲まれ、質問を受けて返すことについて、2004年頃は慣れていなかったし、若かったこともあって怖いもの知らずだった。そこでイケイケでやったし、方法論が分かってなくてあまり考えず発言していた部分もあった。それによって反発を受けることもあったが、それについても「まあいいや」考えていた。しかし事件があり、世の中から反発を受けるとこういうことが起こる、と正直学習した。 皆さん(メディア)との付き合い方や社会との付き合い方、何がどう動いているか実体験で学んだ。私は体で覚えないとダメなタイプ。そしてせっかちで、自分の中で「35歳くらいまでに何かやらないとヤバい」といった強迫観念があった。 今は何もなくなって、裸一貫、自分しかいない。社会的な役割も大してない。そうなると、「そんなに自分にプレッシャーをかけなくていいんじゃないか」という気持ちになってきた。 --内面の変化について。以前は「人間を動かすのはお金」と本でも書いていたが、そうした考えに変化はあるか。また、「これまでやってきたことは虚業」と本で書いている。それについてはどう考えているか。 お金は非常に便利なツールで、プラスでもマイナスでもない。忠実でニュートラルに付き合っていけばいい。私が言いたいのはそういうこと。ただ、表現がどぎつかったと思っている。 あえてどぎつい表現をしたのは、「みんなお金のことを考え過ぎ、執着しすぎ」と思ったから。単なる道具なのだからニュートラルに付き合えばいいのに、ウェットに考え過ぎだ。ただ、ライブドア事件などもあって、(発言が)センセーショナルに取り上げられることが多かった。 マイルドな言い方をすると「便利なツールだから特質を知って使いましょう」ということ。どぎつい言い方をすると、世の中からどう思われるかというのも分かった。 虚業という言葉についてだが、そもそも世の中に虚業なんというものは存在しないと思っている。ハイレベルな考えだと、みんな一生懸命「こうしたら世の中がよくなるんじゃないか」と思って頑張っている。もっと低いレベルで考えれば、自分が食っていくためや家族を食わせていくということなど、いろいろお金を稼ぐ目的や目標がある。 そこで何らかの生業を持つが、それに対して虚業なんていうこと自体がおかしいのではないか。虚業なんてものは世の中にない。社会から必要とされているから存在するのであって、必要ないと思われれば経済的に淘汰(とうた)されるし、皆さんの感情的な部分でも淘汰(とうた)される。 --株式投資に関心はあるのか。最近の情勢についてどう考えるか。 もともと株式投資には興味ない。自分の会社が上場してからはじめて知ったような人間。自分で株買ったりとかはしないが、景気が良くなるという風土が出てくる自体はいいことだと思う。 たまたま安倍内閣が発足して、為替相場が円安にふれて、日本株が割安になって、外国投資家が入って、株価が上がったのがきっかけと思うが、それで日本の投資家もどんどん株を買って株価が上がる。それは新聞で「実態を伴わない上昇」と言われるが、まずはそういったところから景気は上昇する。全体的にはいいことだと思う。 ただ一方で、バブルは起こるし、またはじけると思う。それは繰り返すことだと思う。一般投資家には「あんまりのめり込み過ぎないで」と言いたい。ライブドアの株は暴落して迷惑をかけてことは申し訳ないと思っているし、できる限り和解もさせてもらった。 そこでよく「年金を全部突っ込んだ」といったおしかりなどを頂いた。本当に申し訳ないと思うが、それはやらないでほしい。投資や株は自分の全財産を突っ込むものではない。多くても半分位にしておいた方がいい。より安全に運用しつつ、半分、4分の1をリスク資産で運用すべき。 みなさんのイメージではめちゃくちゃ金を持っていると思われているが、私が株をまとまって売ったのは2005年の4月。現金を持っていたのはそこから2006年くらいまで。その中であまりリスクのある運用はしなかった。 ばくち的なこともやっていたが、それはコアの部分とは別。日本、世界の経済によかれと思って会社を買収したりしていた。ただこれは世の中的にはちょっと早すぎたし、刺激の強いことも言い過ぎて反発された。だが今振り返ると、私の言っていた世の中は「来ている」インターネットが普及し、金融取引も普通になった。FXも割と早くからやってきたが、ちょっと早すぎた。 正直、びっくりした。「なんでやろ?」というのが感想だ。自分的にはそんなに注目されていないという気持ちでずっといた。刑務所から出てからどうしようか、と。ただ、刑務官の方などには「出所日を出さないように」と言われていた。 私の話なんかを聞いてもらえるのかとも思っていたので、こうして聞いていただいているのはありがたい。これだけ注目されているということは、いい面でも悪い面でも期待されているのだと思っている。勝手ながら、それに応えていかないといけない。期待されている部分に対して何をやっていけるのかは、刑務所で寝付けないときに考えてきたことなどを具体化していきたい。 金銭的な問題については誤解されていた部分があるが、経済的には豊かで、あまり興味はない。それよりも「世の中にすばらしい技術があって、もっと普及すればもっと(世の中が)良くなるのに」というもどかしい気持ちを伝えていきたい。 2005年のTBSのレコード大賞に出た際、楽屋でみの(みのもんた)さんにバイオベンチャーであるユーグレナのサプリメントをお渡しした。その会社はライブドアが投資をしていた。同社は今年無事上場して、私には経済的な見返りはゼロだが、そういった会社が世の中に認められた。 投資して、いいんじゃないかと思った会社が社会に認められて巣立っている。こういったことをやってきたし、今後もやっていく。最初は突拍子もなくて引かれるかもしれないが、あまり引かないでほしい。暖かく見守っていただければと思う。刑務所から出てきて、周回遅れ的だが、それくらいが普通でちょうどいいのかなと思う。 --まさに今、何をしたいか。何を食べたいか。 とりあえず明日北海道でロケットを観にいくが、今後は事業をやりたい。なかなか忙しくてメールマガジンしかできないが、それもやっていきたい。食べたいものは生魚や生野菜。刑務所ではなかなか食べれなかったので。 --以前「検察はモンスター」という発言があった。今はどう考えているか。 僕の事件がどうのこうのということもあるが、(刑務所に)入ってからも検察の不祥事は続いており、「さもありなん」と思う。だが、私の事件は終わったことで、潔く認めて反省するという気持ちに変わっているので、その件に関して何も言うことはない。 ただし、取り調べの状況や有罪への持って行き方には問題を感じる。彼らは「正義」と言っているが、正義ほどうさんくさいものはない。正義とはその人その人で違うもので、主観的なものが大部分を占める。 実際私の事件でも、一緒に捕まった経営幹部が何億円も横領していたのに、それは完全にスルーして、私を有罪に持っていくようにした。それは本当に社会にとって正義なのか疑問だった。起訴もされていないので有罪にもならないし、今のように検察審査会を経て強制起訴するという制度もなかった。だが起訴を不起訴にする制度はないのだから、バランスを欠く部分はある。 最近だと遠隔操作ウイルス事件。これは警察だが、検察はえん罪を起訴をしているので同罪。人間がやることだから僕も含めて絶対暴走する。絶対の正義はあり得ない。そういったところに対してもう少し謙虚に(なって欲しい)。私は有罪となり、自分なりに謙虚に反省しているが、検察は本当に正義か、足元をみて考えて欲しい。自分たちの権力がいかに強いか考えて欲しい。 とは言え、検察が起訴を独占しているというのは問題を感じるし、捜査機関と起訴を判断する機関が同じ組織という検察庁の状態は良くない。また絶対同じことが起きる。 今後ともいろいろなことをやっていくと思う。この教訓というか、痛い経験を糧に、二度と皆さまにご迷惑をおかけするようなことがないよう、気を引き締めていく。また新しい価値を創造できるように頑張っていきたいと思っているので、どうかよろしくお願いします。 http://japan.cnet.com/news/business/35030019/ |