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昨年末の衆院選をめぐり、1票の価値が不平等だとして起こされた訴訟で、27日に出そろった全国の高裁・高裁支部の判決。ことごとく「著しく不平等だった」と判断し、2件は選挙のやり直しまで求める厳しさだった。審理を引き継ぐ最高裁は、この司法の流れにどう決着を付けるのか。元最高裁判事の浜田邦夫弁護士と一橋大大学院の只野雅人教授(憲法)の2人に聞いた。
[元最高裁判事 浜田邦夫氏]
◆「違憲」では期待裏切る
東日本大震災や原発事故などの問題が起き、国際状況も変化する中で、社会をどうしていくか、国民一人一人が意思を表すことが大切だ。その意味で「1人1票」という限りなく平等に近い形にするのは当然。「投票権の平等は憲法上の要請だ」との考え方がますます重みを増す時代だ。一連の高裁判決は、そうした根本的な問題に立ち返った上での司法の答えといえる。
2件続いた「無効」判決は、画期的だと思う。これまで「違憲」や「違憲状態」というイエローカードを何十枚と出してきた。だが、抜本的な格差是正を怠る国会に対し、「いいかげんにしろ」といういら立ちが極限に達し、レッドカードという最後の切り札を切った。
広島高裁判決は無効の効力が一定期間後に生じる「将来効」という理論を使った。すぐに選挙を無効にすれば選挙区の議員が関与した法律や選ばれた首相をどう扱うのかといった問題が生じる。それを乗り越えるクレバーな手法だ。
この考え方は、1985年の最高裁判決時に補足意見として出され、私も2001年の参院選を合憲とした04年の最高裁判決で「一定期間内に是正しなければ無効とする」という条件付き判決を提案した。それがようやく現実になった。
立法府の裁量権を立てる裁判所は無効判決は出さないだろうと、国会は高をくくっていた。正に司法の軽視だ。投票権の平等という憲法上の要請があれば、司法が格差是正への役割を果たさなければならない。それが責任というものだ。
最高裁がどう判断するかの予想は難しい。だが現実的には、違憲とした上で「事情判決」の法理を適用して無効まではしないという結論はありえない。前回11年の判決は違憲状態と判断したので、一歩踏み込みことにはなるが、それでは最高裁が世の中の期待を裏切ることにならないか。私が現役の判事なら、広島高裁のような厳しい対応を取るだろう。(聞き手・横井武昭)
[一橋大大学院教授 只野雅人氏]
◆「0増5減」でも不十分
2000年代以降、司法は選挙権に関して厳格な判断をするようになった。選挙権は民主主義の基盤そのもの。政治は複雑な問題を決定しなければならず、決定の正当性を保つには、民主的基盤が欠かせないからだ。
09年の衆院選が、政権交代を実現させたことも影響しているだろう。だが、4割の票で過半数の国会議員が選ばれている現状は民主的とはいえない。三権分立の下、司法は責任を果たし始めた。この姿勢が表れたのが、昨年末の衆院選をめぐり、出そろった一連の高裁判決だ。
今回の訴訟の前提には、09年衆院選を違憲状態とし、是正策として「一人別枠方式」の廃止を求めた11年3月の最高裁大法廷判決がある。
国会は判決から1年8カ月後、解散直前に「0増5減」を成立させたが、選挙区の区割り作業は間に合わず、違憲状態が変わらないまま選挙を迎えた。この程度の是正なら、もっと早くできたはずだという見方は、一連の判決からもうかがえる。本質的に各県最低2議席を確保する一人別枠方式は廃止された。しかし、0増5減を実現しても、どの県も2議席以上あることになり、実質的に一人別枠方式を温存したのと同じで、無効判決をはじめ厳しい判断が続く背景になった。
無効判決が出るかどうかに焦点が当たったが、そもそも違憲自体が重い。衆参両院での「違憲状態」はかつてない深刻な事態なのに、国会の認識はあまりにも甘かった。
人口に比例した配分では「地方の声が届かなくなる」という批判があるが、地方の課題は選挙区割りとは違う形で解決しなくてはならない。この点でも11年最高裁判決は、地方への配慮は国会議員が「全国民の代表」の立場から行うべきだ、というシンプルなメッセージを出した。
各高裁が厳しい姿勢を見せている以上、最高裁はたとえ無効判決を出さないにしても、これまでよりも踏み込んだ指摘をするのではないか。(聞き手・小嶋友美)
2013年3月28日 東京新聞 朝刊[核心]より
http://www.tokyo-np.co.jp/article/kakushin/list/CK2013032802000117.html
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