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昨年12月の衆院選をめぐる「1票の不平等」訴訟は27日、全16件の高裁判決が出そろった。いずれも違憲または違憲状態。うち2件は違憲どころか初めての無効判決が出た。最高裁でも無効判決が出る可能性は、ゼロではない。前代未聞の選挙無効が確定したら、一体どうなるのか。(小倉貞俊、出田阿生)
「どうせ、ひっくり返る」
自民党議員からは、最高裁の判決で「無効はない」と高をくくった声が漏れる。違憲判決を出したとしても、混乱を避けるために無効の判断はしないとみているのだ。
確かに、同種の訴訟でこれまで無効判決が出たことはなかった。裁判所が「議員が突然いなくなると、混乱が生じる」と配慮したためだ。
裁判所が違憲と判断しても選挙は有効─という一見矛盾する結論は「事情判決」と呼ばれ、過去2度出された最高裁の「1票の格差」違憲判決でも使われた。行政事件訴訟法に「公益を著しく害する場合、違法な行政処分を取り消さない」という規定があるからだ。
最高裁が無効判決を出すことはないのか。2009年衆院選をめぐる最高裁の判決は「違憲状態」だった。次に厳しい「違憲だが有効」という判決を飛び越え、いきなり「違憲で無効」という判決は考えにくいという見方が大勢だ。だが、可能性がないわけではない。混乱回避に配慮した「猶予付き無効」なら「3割程度の可能性がある」という専門家もいる。
では、最高裁で無効判決が出された場合、議員はどうなるのか。
今回、16件の訴訟が対象にしたのは、全国300選挙区のうち31の選挙区。最高裁が、無効とするには、区割りの統一的な規定が違法と判断する公算が大きい。その場合、31選挙区のすべてが無効となる。
広島高裁岡山支部の即時無効の判決が確定すれば、31人の議員全員がその日に失職することになる。
広島高裁の「猶予付き無効」なら、判決が定めた今年11月26日までの期間を経過すると失職となる。
31の選挙区は北海道、宮城、秋田、東京、神奈川、愛知、福井、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、広島、岡山、島根、香川、福岡、宮崎、沖縄の1都1道2府15県にわたる。29人が自民党で、中には石原伸晃環境相(東京8区)、岸田文雄外相(広島1区)、細田博之幹事長代行(島根1区)ら、内閣や党の主要ポストに就いている議員もいる。残る2人は民主党と日本維新の会という顔ぶれだ。
失職すれば公選法の規定で40日以内に再選挙を実施しなければならない。議論が分かれるのは、再選挙の対象が31選挙区だけにとどまるのかどうかだ。
広島高裁の猶予付き無効判決は、国会に時間を与え、猶予期間に区割りの見直しを急がせるのが狙いだ。だが、抜本的見直しができないと、あらためて見直しを迫られる可能性もある。
さらに、31選挙区の区割りを見直すには、周辺の選挙区の区割りとの調整も必要になってくる。結局、見直しは全国の選挙区に及ぶ可能性もある。その場合は、解散・総選挙に踏み切らざるを得ないという見方もある。
無効になった議員が関与してきた法案や予算の扱いはどうなるのか。理論上は、過去にさかのぼって取り消しとなる考え方もある。
だが、東京経済大の加藤一彦教授(憲法学)は「失職以前の行為については、法的安定性を確保する考えから、過去にさかのぼって問題にすることはないだろう」とみる。
一部議員が失職したままで、区割りの見直しや法案の審議をしなければならない場合には、その選挙区の民意が反映されないという問題も発生する。いずれにせよ、正当性には大きな疑問符が付くことになるだろう。
今国会では、「0増5減」の区割り見直し作業が進められている。これでは、11年の最高裁判決で廃止を求めた各都道府県にあらかじめ一議席を配分する「一人別枠方式」が事実上、残ることになり、不十分という批判が強い。だが、国会は痛みの伴う抜本改革には後ろ向きだ。
政治アナリストの伊藤惇夫氏は「議員たちは自分の身を守るため、できるだけ先送りしたい心理が働く。その上、党利党略がからむのでなかなか進まない」と話す。「定数削減と切り離し、定数是正を先行させる必要がある。自らの利害がからむ国会議員ではなく、公正・中立・強力な権限を持った第三者機関を設置し、その結論に国会が従う形にすればよい」と説く。
区割りはどのように見直すのが理想なのか。
加藤教授は「小選挙区制を維持するならば、ドイツの連邦選挙法が参考になる」と提案する。日本の全有権者数を300選挙区で割ると、約34万人。これを25%以内の変動に抑えて配分していくやり方だ。
慶応大の小林良彰客員教授(政治学)は、「小選挙区制は常に定数是正の必要性をもたらすため、抜本的な改革が必要」と指摘。「定数自動決定式比例代表制」と名付けた制度を提唱している。
この制度では、各都道府県をそれぞれ一つの選挙区と設定し、最初の時点では各選挙区の議席数を決めない。有権者は候補者名が政党名で投票。政党は全国の得票数の割合に応じて議席を獲得し、各都道府県での得票数の割合で議席を配分する仕組みだ。つまり、人口でなく投票者数の多い都道府県ほど議席が多く配分される。小林教授は「投票率を高めるメリットもある」と説く。
日本大学の岩井奉信教授(政治学)は「衆院は人口比に基づいて是正されなければならない」と話す。その上で、地方の声を反映させるために「参院で都道府県に一定議席を割り振ることや、地方分権を徹底することが考えられる」と提案する。
ところで、1票の格差は何倍までなら許されるのか。立命館大の小松浩教授(憲法)は「1人に2票は持たせられないので、2倍未満というのが学界の通説となっている。ただ、原則は1人1票であるべきだ」と話す。
小松教授は、少ない得票率でも議席の大半を得る小選挙区制の矛盾も指摘。全国を比例代表制にすることを提案している。「現政権も必ずしも民意を反映しているとは言い難い。憲法が求めているのは、政治がきちんと民意を反映すること。そのための選挙制度を新たにつくるのは、今が好機だ」
[デスクメモ]
全国で最も1票が軽い千葉4区選出の野田佳彦前首相が、衆院解散を決断したというのは、ブラックユーモアだった。そして、政権返り咲きを果たした自民党議員たちの多くが資格を問われる事態になっている。まるで、喜劇だ。国会に軽視されてきた憲法の番人が、ほえてみせるか注視したい。(国)
2013年3月28日 東京新聞 朝刊[こちら特報部]より
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2013032802000139.html
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