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来月の「主権回復の日」式典に沖縄県民の反発が高まる中、政府は米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設に大きく動きだした。名護市・辺野古沿岸部の埋め立て申請を受け、仲井真弘多(なかいまひろかず)知事は手続きを進めるが、国はなぜ申請を急ぐのか。今後1年間に地域振興策として投じられる巨費を、地元はどう受け止めているのか。(荒井六貴、林啓太)
「申請書の出し方が、政府の考えを表している。県民に白い目で見られ、だまし討ちでしか、手続きができないのか。これで県民の理解が得られるわけがない」
名護市のヘリ基地反対協議会共同代表の安次富浩さん(66)はそう憤る。
沖縄防衛局は22日の埋め立て申請をどのような形で提出したのか。
「今から、辺野古埋め立ての申請書を出します」。那覇市にある県庁海岸防災課に1本の電話があったのは午後3時40分ごろ。その約5分後、約50キロ離れた名護市の県北部土木事務所3階の庶務班のカウンターに男性6人が現れ、段ボール5箱を置いた。「沖縄防衛局」を名乗り、「埋め立て申請に関する書類の提出に来ました」とだけ話し、名刺を渡すこともなく1、2分で立ち去っていったという。
事務所2階に受け付けを担当する維持管理班の窓口があり、反対派の住民や報道陣が駆けつけていたが、防衛局はその裏をかいた。安次富さんは間に合わず「防衛局は、民間業者の書類を担当でない部署では受け付けない。安倍政権は選挙で大勝して何でもできると思っている」とあきれる。
沖縄防衛局の報道室は「常識的な提出方法かは相手方が判断すること。防衛局は、民間に対して24時間体制で受け付けをしている」と話す。
防衛局には「前科」がある。2011年12月に、埋め立ての前段になる環境影響評価書を提出する際、午前4時ごろ、県庁の守衛室に書類を提出すると連絡し、10分後に段ボールを搬入した。
当時の自民党の谷垣禎一総裁は「誠意のかけらも見えない」と、民主党政権を批判したが、安倍政権も引き継いだ形だ。
正面から入れない環境をつくったのは、ほかならぬ防衛局自身だった。評価書を提出する1カ月前、提出日をめぐって、当時の田中聡局長が記者たちとのオフレコ懇談で「(女性を)犯す前に『これから犯しますよ』と言うか」と発言。琉球新報が「公益性・公共性を考えて」報道し、田中局長は更迭され、県民感情を著しく害した。
そんな防衛局にとっては念願の埋め立て申請となるが、手続きはどのように進むのか。
まず書類に不備がないか形式審査をした後、住民らに知らせる告示・縦覧が行われ、利害関係者が意見を提出できる。これらに1カ月ほどかかり、内容の審査に入る。
その後、地元・名護市の稲嶺進市長が4カ月以内をメドに、市議会の議決を経た上で、意見を表明する。こうした地元の声や環境影響などを踏まえ、仲井真知事が承認の可否を判断する。判断時期について、知事は「8カ月とか、10カ月かかる」と説明。来年1月下旬にも予定される名護市長選の結果が、影響を与える可能性もある。
仮に仲井真知事が不承認にした場合でも、国に着工の選択肢はなくならない。公有水面の使用権限を知事から国に移す特別措置法制定したり、国が知事の権限を代執行することもあり得る。
新型輸送機オスプレイの配備や、日本が独立する一方で沖縄が切り離された「主権回復の日」(4月28日)の式典開催など、県民の声を無視した動きが続き、25日も那覇市の沖縄防衛局前で約100人が辺野古移設の反対を訴えた。
沖縄平和運動センターの岸本喬事務局次長は「県民の声を聴かないやり口は一貫している。沖縄の気持ちは眼中にない。あきらめずに声を上げ続けるしかない」。
安倍首相は2月の日米首脳会談でオバマ大統領と「普天間飛行場の県内移設の早期進展」で一致。辺野古移設に反対する稲嶺名護市長が市長選で再選され、ノーの意思を突き付けられる前に、許可を得ようと申請を急いだとみられている。
なりふり構わぬ姿勢はほぼ満額回答にも表れている。沖縄振興予算は13年度当初と、12年度補正とを合わせて3375億円に上る。
ただ、自治体が自由に使える沖縄振興特別推進交付金の割合は少なく、12年度の沖縄振興予算2937億円のうち、名護市分は12億7000千万円にとどまる。
00年度からの13年間で計1190億円の予算を計上し、農林水産や観光関連の施設整備などを補助してきた北部振興事業も、市の経済の活性化に十分に寄与しているとは言い難い。
市は情報技術の人材を育成するマルチメディア館や企業が入居するみらい館などを建設した。市建設業協会の比嘉信夫事務局長は「市が主体の事業で会員も受注できた」と話すが、会員は現在36社と、10社以上廃業した。失業率は悪化し市商工観光課は「補助金の恩恵は読み取れない」。
県建設業協会の小谷和幸事務局長も「沖縄振興事業の半額以上は県外のゼネコンが受注して持ち帰ってしまう。補助金は沖縄のためになっているのか疑問だ」と話す。
沖縄が国にたてつけば、予算の「アメ」は「ムチ」に変わる。普天間移設問題で反発し、北部振興事業の07年度予算の執行が約10カ月間も凍結されたこともある。
カネによる分断作戦で辺野古の埋め立てに同意した名護漁協には、多額の補償金が支払われる見込みだ。他の漁協関係者は「漁獲物のせりをやらないのに、赤土被害などで基地関連の補償金が年に150万〜200万出た。基地に反対する組合員は少なかった」と補償金のうまみを明かす。
沖縄では「基地関係収入」が県民総所得に占める割合は5.3%にすぎない。米軍基地が返還された北谷町は跡地が商業施設となり、龍谷大の松島泰勝教授(沖縄経済)は「観光に転換して、町の経済は活性化した。沖縄は基地がなくてもやっていける」と強調する。
山本一太沖縄北方担当相は23日、稲嶺名護市長と会談し、県北部の振興策について話し合った。政府は地元の歓心を買おうと躍起だ。一方で、市長選では埋め立て推進の保守派の候補を擁立する動きもあり、市長選も注目される。
ただ、松島氏は「県民の怒りは質的に変化し、首長に地元議会、県民が一体となった島ぐるみの闘争になった」と指摘。市長選の結果が仲井真知事の判断には影響を与えないのではとみる。
「国が補助金で県民の心を買おうとしたのは、沖縄への差別の裏返し。その馬脚は現れてしまった。アメとムチを使った植民地まがいの沖縄統治は完全に破綻している」
[デスクメモ]
「今、オール沖縄なんですよ」と地元紙の記者が言う。与野党を超え大半の首長や議長らがオスプレイや辺野古新基地建設に反対する。だが政府は漁業補償で辺野古の名護漁協を切り崩し、オールの分断を図る。宝の海の次は土建業が標的か。投じられる大金は私たちの税金であり、傍観視はノーだ。(呂)
2013年3月26日 東京新聞 朝刊[こちら特報部]より
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokuho/list/CK2013032602000173.html
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