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2013/3/25 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
安倍首相はきのう(24日)、郡山市の農園で「株が上がります」とカブを持ち上げてみせた。病に倒れる前の小渕首相もやった懐かしのパフォーマンス。サービス精神旺盛と言えば聞こえはいいが、要は浮かれているわけだ。
円安株高で支持率も高い。その上、日銀のトップも交代した。慎重な舵取りを心掛けた白川前総裁は退任し、「大胆な金融緩和」が本格化する。すべて思い通りに進み、笑いが止まらない。我が世の春といった感じなのだろう。
だが、ここから先は簡単ではない。順調に来た安倍のシナリオにも狂いが生じそうだ。
日銀の黒田東彦新総裁は会見で、前任者の緩和策を「分かりにくい」と批判している。「2年以内に2%の物価上昇」「量的にも質的にも緩和する」という具合に、金融政策の目標や道筋は、これまでよりも明確になるのだろう。だが、魔法の杖があるわけではない。
白川は、金融を緩和するために、「資産買い入れ基金」を設けて国債を買い入れた。日銀の輪転機をグルグル回して紙幣を刷り、基金を積み上げて銀行から国債を購入する。そうやって市場をジャブジャブにしたのだ。
黒田がやるのも、基本は同じだ。買い入れる国債は、満期まで3年以下だったのが5年以下まで広がるとみられている。ETF(株価指数連動型上場投資信託)やREIT(不動産投資信託)も加えられる可能性は高い。それでも、白川路線から大きく外れるわけではない。いくら「あらゆる手段を講じる」(黒田)と意気込んでも、アッと驚く妙手など存在しないのだ。
◆奇抜な手を打たない黒田新総裁
元大蔵官僚で慶大准教授の小幡績氏が言う。
「黒田さんはガッツがある。意地でも2%の物価目標を達成しようとするでしょう。でも、奇抜な手を打つようなタイプでもない。まじめな人です。実質的にやれるアクションも限られる。基本線は白川前総裁と変わらないと思います。新体制で金融政策会合を開いても、目新しいアイデアはまず出ない。市場の失望を招く可能性も高いのです」
安倍は白川を目の敵にし、日銀に圧力をかけたが、もともと彼を選んだのは自民党だ。理事を最後に日銀を出て京大の教授を務めていたところ、福田政権に副総裁として呼び戻され、その後、総裁として国会の同意を得た。どこの馬の骨とも分からないようなトンデモナイ奴でもない。「白川さんは、デフレ下にもかかわらず、安定した金融政策を実行してきた。その手腕は今後、高く評価されると思います」(埼玉大教授・相沢幸悦氏=経済学)
これまでも日銀は全力を挙げてきたのだ。白川も知恵を絞ってきた。それでも退治できない。バブル崩壊から20年。デフレからの脱却は容易ではないのだ。
◆経済のグローバル化が招いたデフレの悪循環
そもそも、日本のデフレは金融政策の失敗が原因ではない。経済のグローバル化が招いたものだ。
ヒト、モノ、カネが自由に行き来する時代。多くの企業が、安い労働力に魅せられて、生産拠点を海外に移転した。国内は賃金が安い新興国の廉価な輸入品であふれかえる。出遅れた企業はたまらない。国内に工場を抱えながら生き残るには、コストの削減が急務となった。
真っ先に狙われたのが、仕入れと人件費だ。下請けの業者は値下げを強要され、社員の給料も下げられる。中高年はクビを切られ、大学生は行き場を失う。派遣社員になるのがやっとで、働いても働いても楽にならない。
サラリーマンの所得も減り続け、暮らしは苦しくなる一方。生活防衛のためには、一円でも安い商品を求めるしかない。そんな消費者心理が価格競争を過熱させ、さらに物価を押し下げる。デフレの悪循環は止まらなくなった。
エコノミストの高橋乗宣氏は、こう言った。
「国内に借り手がいて、資金需要が旺盛なら、金融緩和の効果はあるでしょう。今はそんな状況ではありません。市場をジャブジャブにしても、カネは企業の設備投資に回らない。投機に向かうだけ。株価と不動産の価格を押し上げ、かつてのバブルが再燃することになります」
いくら株や不動産といった資産価格が上がっても、中国や東南アジアの安い商品は止めどなく入ってくる。一方で、光熱費は上がり、ガソリン代は高止まりし、給料は伸び悩む。
これでは消費が上向くわけがない。インフレなんてムリだ。
◆国債格付け暴落で始まるハイパーインフレ
それでも、黒田は大見えを切った。岩田副総裁も「2%がダメなら辞任する」と豪語している。ガムシャラに緩和を続けるのだろう。怖いのはその反動だ。
前出の相沢幸悦氏が言う。
「株式市場は催促相場になっています。2%の物価上昇が達成されるまで金融緩和を続けなければ、失望売りを招く恐れがある。日銀は国債を買い続けなければならないし、長期金利は過去最低水準の0・43%に迫るでしょう。ほかの投資家は、含みのあるうちに国債を売ろうとする。最後まで買うのは日銀だけです。こうなると国債の格付けは下げられるだろうし、日銀は巨額の損失を被る恐れがある。銀行はかつてのバブルで200兆円の損失を出した。今度は日銀が、100兆円、200兆円の損を出すわけです。最悪の場合、通貨の信用は失われ、物価はインフレに転じる。2%どころか、6%とか7%とかのインフレが長期間にわたり続く恐れもあります」
デフレに苦しめられてきた20年が終わったと思ったら、今後15年は高インフレに悩まされる。そんな社会だ。
日銀OBで大商大教授の佐和良作氏が言う。
「経済政策はやってみないと分からないことがほとんどです。100%保証されたものはありません。中央銀行が供給する通貨を増やせば物価が上昇するというものではないし、上がり始めたときに2%で止められるとも限らない。一部で指摘されているように、ハイパーインフレを招く可能性も高いように思います」
人間が金融をコントロールするのは簡単ではない。ムリに押さえつけようとすれば、副作用に潰される。デフレ後のインフレを抑えようとすれば、またデフレとなる公算も大だ。
国民経済を基本とした従来の資本主義は、終わりに近づいている。後は混沌だ。そんな覚悟も必要になってきた。
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