http://www.asyura2.com/13/senkyo145/msg/585.html
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「人民網日本語版」の記事だが、書かれている内容は、経団連も、経産省など日本の官僚機構も、同じように認識していることである。
簡単な話で、日本のリーディングカンパニーであるグローバル企業の事業展開を考えれば、TPPと日中韓FTAないし「東アジア共同体」のどちらに大きなメリットがあるかわかり、日中韓FTAないし「東アジア共同体」のほうに軍配が上がるからである。
日本企業の生産拠点海外進出の目的を色分けすると、米国進出は米国(北米)市場向けで、中国進出は欧米諸国向け及び中国国内向けと同時に日本向けである。東南アジア諸国への進出目的も、中国進出のケースと同じと考えることができる。
言い換えれば、許容範囲の輸出と現地生産で需要に応えようというのが米国で、低賃金条件を活かし普及品の米欧及び自国(日本)の需要に応えつつ低価格品で当該国(中国や東南アジア諸国)の市場を開拓しようというのが中国を含むアジア諸国という位置付けである。
根源的な違いは、進出先で生産された製品が日本に輸入されるかどうかである。それに続いて、進出先の生産で、日本製部品がどの程度の割合で使われているかということが問題になる。
最近では、米国で生産した自動車などを日本に輸入する動きもあるが、米国生産→日本へ輸出という動きは、現在のところ主たる目的にはなっていない。
FTAの核心は、日本を生産基盤とした輸出における相手国の関税の軽減化ではなく、日本における輸入関税の軽減化と進出先国家の輸入関税の軽減化にある。
輸出先の関税障壁が低くなるのは望ましいが、関税が最恵国待遇として共通であるかぎり、輸出先の関税率は、その国への輸出をめざす他の国との競争力に影響を及ぼさない。
企業の最終目的が、売上という量的増大にあるのではなく利益という質的増大にあるのなら、関税が利益に及ぼすマイナス要因こそが問題となる。
関税は、ある程度消費者が負担することになるから、その撤廃は購買力の増加をもたらすという意味で売上(輸出)の増大に貢献する。しかし、関税の撤廃が確実に貢献するのは利益である。消費者が負担する割合がどれほどになるかは無関係で、関税の全額は水際で支払わなければならないからである。
仮に、関税を全額小売価格に載せても十分に販売できるのなら、関税がなくなれば、その分がまるまる利益となる可能性がある。
日本のグローバル企業は、日本向けに海外で生産した製品を日本に輸入する際、課税品目については関税を負担している。
言うならば、海外で生産したものを日本に輸入して販売するとき、輸入関税分がコストアップもしくは利益減少要因となる。
輸入する水際で消費税も課されるが、消費税の“還付”を受けているようなグローバル企業であれば、輸入段階で負担した消費税は控除されるので実質的に消失することになる。
このような仕組みこそが、グローバル企業が、FTA(EPA)で日本の輸入関税が軽減化ないし無くなる一方で、消費税の税率がアップする動きを大歓迎するワケの一つなのである。
海外生産でも、中核部品や生産設備は日本からそれらを輸入している。この輸入においても、関税が課されればコストアップ(利益減少)要因となる。
記事は、「業界は中日韓自由貿易圏について米国がアジア太平洋地域で推し進めているTPPに対抗して国益を守るものと考えている。だが日本側の態度が曖昧で、「複数賭け」さえしていることが、自由貿易圏の構築にとって最大のリスクとなっている」と、いらつきを見せ、「「日本のTPP交渉参加は、中日韓自由貿易圏の構築にとって短期的に足を引っ張る要因となる」と劉氏は分析。「TPPは米国主導の貿易グループであり、経済的範疇を遥かに超えて政治的要素に関わり、アジア経済に占める中国の地位に影響を与え、人民元の地域通貨化への牽制にもなる」と説明している」としている。
日本政府や経団連にしてもそれは承知で、TPP参加は、何より政治問題であり、経済的メリットとしては、利用できなくもないという限定的なレベルであることがわかっている。
なぜなら、最大の市場である米国とは上述した関係で棲み分けができており、メキシコ・ペルー・チリ・シンガポール・マレーシア・ベトナム・ブルネイという7ヶ国とはすでにEPAを締結しているからである。(TPPに参加を表明しているタイもEPA締結済み)
日本国民にはそれほどありがたい話ではないが、日本が“危険な”TPPに参加せずとも、EPA締結国を活用して、TPP参加国の市場へのアクセスを増大させることはできる。
カナダ・オーストラリア・ニュージーランドとはFTAないしEPAを締結していないが、カナダはNAFTA加盟国であり米国市場への対応と同じように対応できる。
オーストラリアやニュージーランドは、産業的に競合するものは限定的で、オーストラリアやニュージーランドが強く望む農産品の関税引き下げで被る日本農業の痛手のほうが格段に大きい。
記事は、続いて、「日韓がTPPと中日韓自由貿易圏に同時に加盟すれば、中国に優位に働くとの楽観的分析もある。中国は日韓との協力の形を通じて、産地優勢を享受し、TPPの多国間貿易優遇条件を獲得できる」という分析も見せている。
これは、中国企業が日本や韓国に生産拠点を進出させることで達成できる話である。むろん、原産地証明のルールによっては、日本から部品を輸出して、中国で組み立て、日本がそれを輸入し、TPP参加国に日本製として輸出するという話もあり得る。
記事はまとめとして、「頭が痛いのは、日本が米側のTPPの制約から、中日韓FTA交渉のプロセスに影響を与えることだ。もしFTA交渉が棚上げになれば、3カ国の利益が損なわれるだけでなく、より長期的には北米自由貿易圏のたゆまぬ拡大とEUの財政・金融政策統合プロセスの推進に伴い、アジアは欧米と対抗する貿易枠組みを欠くことになり、世界経済におけるアジアの発言力に影響が生じる」、「21世紀の経済成長はアジアにある。だが結束と発言力を欠けば、たとえ比較的速い成長を実現しても、その利益を得るのはアジア諸国ではなくなる」と劉氏は指摘。「3カ国の切実な利益とアジア経済の地位に関わる状況の時にふらふらしている日本は、平和的発展という先見の明を持ち、視野をもっと広げ、度胸をもっとつけ、アジア最大の、最も成長性を備える経済国と一致協力すべきだ」と述べた」と書いている。
中国側が日本政府にいくら度胸を求めようとも、日本が米国に従う政治関係から脱却することはしばらくできないようだから、日本は、米国系グローバル企業にアジア成長の果実を分け与える役割も果たさざるを得ない。
中国(共産党)が記事のように分析し、「交渉過程を知るある人物によると、次の段階の交渉で最大の鍵を握るのは政治的意志だが、日本の姿勢は最もふらついている。米側の打ち出したTPPを牽制する狙いから、中国は常に積極的な姿勢であり、交渉過程を全力で推し進めるはず」とあることから、日中韓FTAはTPP騒動がないとき以上のペースでまとまるはずである。
※ 参照投稿リスト
「経産省(官僚機構)と経済界は、メリットが少ないTPPより、ずっと大きな利益が見込める「東アジア共同体」を志向」
http://www.asyura2.com/12/senkyo140/msg/450.html
「E:消費税増税の目的は、「社会保障」や「財政再建」ではなく、「国際競争力の回復」である:付加価値税と“国際関係”」
http://www.asyura2.com/12/senkyo129/msg/400.html
「TPP共同声明」を読む:米国とグローバル企業が日本のTPP参加で狙うもの:TPP参加と日本の食
http://www.asyura2.com/13/senkyo144/msg/818.html
「グローバル(輸出優良)企業があれほどTPP参加に執着するワケ[その1]:輸出ではなく輸入の関税撤廃こそ利益源」
http://www.asyura2.com/11/senkyo122/msg/123.html
「グローバル(輸出優良)企業がTPP参加に執着するワケ[その2]:恐いのは米国企業?それとも日本企業?」
http://www.asyura2.com/11/senkyo122/msg/131.html
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中日韓FTA交渉開始 日本のTPP交渉参加が足を引っ張る
中日韓自由貿易協定(FTA)交渉は10年の歳月を経てついにタイムテーブルを得た。26日に韓国・ソウルで初会合が行われ、2回目は中国、3回目は日本で行われる。だが日本が先日環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉参加を発表したことが、中日韓FTA交渉の足を引っ張る要因になると見られている。南方日報が伝えた。
中日韓はそれぞれ異なる経済水準にあり、産業構造に補完性があるため、FTA交渉の推進は3カ国の経済、貿易、投資の発展を促し、世界経済におけるアジアの発言力を高めると見られている。
■過程:10年の歳月を経てついにタイムテーブルを得る
時は10年前に遡る。2002年末、中国のイニシアティブの下、中日韓首脳は中日韓自由貿易圏構築のフィージビリティスタディを行うことで合意した。研究を重ね、三カ国ですり合わせを行った結果、中日韓FTA交渉はついにタイムテーブルを得た。商務部(商務省)の沈丹陽報道官は先日の記者会見で、中日韓FTA交渉の初会合が3月26-28日に韓国・ソウルで開かれることを明らかにした。
「近年、WTO中心の多国間貿易システムの働きが弱まる一方で、地域的貿易協定が各国で深化・発展している。これは世界経済に統合に出現した新たな現象だ」。対外経済貿易大学国際経済倫理研究センターの劉宝成主任は「世界経済が減速する中、各国共に貿易手続きを簡素化し、貿易コストを引き下げることを差し迫って必要としている。こうしたニーズが自由貿易圏の構築を客観的に推し進めている」と説明した。
「中日韓自由貿易圏を構築すれば、3カ国ともに必要とするものを得られる」と劉氏は指摘。「中国は産業構造の転換と高度化を差し迫って必要としている。こうしたニーズも貿易や投資を通じて満たすことができる。日本と韓国がこれにふさわしい市場であることは間違いない。このほか中国は日韓への投資を通じて産地優勢を形成し、欧米保護貿易主義ブロックを避けることもできる」と説明した。
劉氏はさらに「日韓にしてみれば、対中貿易の深化は経済の持続的成長の助けとなる。現在も中国は人件費、用地コスト、資源の面で強みを持ち、消費能力も高まり続けている。これらはいずれも日韓に投資と市場の空間を与える」と説明した。
■焦点:日本のTPP参加が中日韓FTA交渉の足を引っ張る
業界は中日韓自由貿易圏について米国がアジア太平洋地域で推し進めているTPPに対抗して国益を守るものと考えている。だが日本側の態度が曖昧で、「複数賭け」さえしていることが、自由貿易圏の構築にとって最大のリスクとなっている。
日本の安倍晋三首相は15日、TPP交渉への参加を正式に発表した。
「日本のTPP交渉参加は、中日韓自由貿易圏の構築にとって短期的に足を引っ張る要因となる」と劉氏は分析。「TPPは米国主導の貿易グループであり、経済的範疇を遥かに超えて政治的要素に関わり、アジア経済に占める中国の地位に影響を与え、人民元の地域通貨化への牽制にもなる」と説明した。
だが、もし日韓がTPPと中日韓自由貿易圏に同時に加盟すれば、中国に優位に働くとの楽観的分析もある。中国は日韓との協力の形を通じて、産地優勢を享受し、TPPの多国間貿易優遇条件を獲得できるというものだ。
頭が痛いのは、日本が米側のTPPの制約から、中日韓FTA交渉のプロセスに影響を与えることだ。
もしFTA交渉が棚上げになれば、3カ国の利益が損なわれるだけでなく、より長期的には北米自由貿易圏のたゆまぬ拡大とEUの財政・金融政策統合プロセスの推進に伴い、アジアは欧米と対抗する貿易枠組みを欠くことになり、世界経済におけるアジアの発言力に影響が生じる。
「21世紀の経済成長はアジアにある。だが結束と発言力を欠けば、たとえ比較的速い成長を実現しても、その利益を得るのはアジア諸国ではなくなる」と劉氏は指摘。「3カ国の切実な利益とアジア経済の地位に関わる状況の時にふらふらしている日本は、平和的発展という先見の明を持ち、視野をもっと広げ、度胸をもっとつけ、アジア最大の、最も成長性を備える経済国と一致協力すべきだ」と述べた。
■提言:FTA交渉は相互信頼と透明性が重要
日本のTPP交渉参加について沈報道官は先日の記者会見で「われわれは各国との意志疎通と交流を継続し、この交渉の影響を踏み込んで分析するとともに、自らの自由貿易圏戦略を加速する」と表明した。
それでは間もなく始まる中日韓FTA交渉において鍵となるのはどのような点だろうか。
交渉過程を知るある人物によると、次の段階の交渉で最大の鍵を握るのは政治的意志だが、日本の姿勢は最もふらついている。米側の打ち出したTPPを牽制する狙いから、中国は常に積極的な姿勢であり、交渉過程を全力で推し進めるはずだ。
「中日韓自由貿易圏がもたらす貿易の円滑化は経済成長の『正の和』要因であり、決して『ゼロサム』要因ではないことを認識すべきだ」と劉氏は指摘。「こうした状況の下、中日韓の指導者は政治的要素を捨てて、感情的にならず、摩擦の激化を避けるべきだ。また、FTA規則の透明性を高め、相互信頼とウィンウィンを基礎に規則を制定すべきだ」と述べた。
劉氏はさらに「現段階ではなおさらに中日韓は相手を探るような接触や工作的交渉を止め、持続的、共同的、建設的な準備枠組みの構築を提言し、自由貿易圏構築の実質的進展を促すべきだ。また、3カ国の互恵という観点から外部の妨害を排除し、世界経済におけるアジアの発言力を高めるべきだ」と注意を促した。
実は中韓は昨年5月には二国間貿易協定について交渉を行い、中韓貿易・投資の発展を促した。中韓交渉は中日韓FTA交渉よりも早く、年内に妥結する見通しとの分析がある。中韓FTA交渉が妥結すれば、中日韓交渉妥結の可能性も少し高まるかも知れない。
「中韓二国間貿易協定は次善の選択だが、中日韓自由貿易圏構築の突破口を開き、推進することにもなる」と劉氏は指摘した。(編集NA)
「人民網日本語版」2013年3月25日
http://j.people.com.cn/94476/8180615.html
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