05. 2013年3月25日 13:02:57
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国内外の圧力をはねのけて、 TPP参加を日本農業復活のきっかけに 2013年03月25日(Mon) 筆坂 秀世 安倍晋三首相がTPP(環太平洋経済連携協定)への交渉参加を表明した。 アメリカが強く求めているTPPへの日本の参加は、もともと時間の問題であった。報道によれば、安倍首相が麻生太郎外相と事前に相談した際、麻生氏は「交渉ごとを始めるのに聖域が最初からないなんてあり得ない」「うまくいかなければ途中でやめればいい。外交交渉とはそんなもんです」と語ったという。 前者については、麻生氏の言う通りであろう。だが途中でやめるなどということは、アメリカとの関係を考えれば無理筋であることは明瞭だ。 安倍首相は、交渉参加を表明した際、「普遍的価値を共有する国々と経済的な相互依存関係を深めていくことは、我が国の安全保障にもアジア太平洋地域の安定にも大きく寄与する」と述べている。ここまでの位置づけをしたTPP交渉からの離脱はあり得ないだろう。日本はTPP参加に向かって走り出したのである。 日本は本当に「主権」を回復したのか 安倍内閣はまた、4月28日を「主権回復の日」とすることを決めた。1952年4月28日に発効したサンフランシスコ平和条約(以下「サ条約」)によって、日本が独立を回復した日だからというのが、その理由だ。 だが61年前、日本は本当に独立を成し遂げ、主権を回復したのであろうか。もちろんその後、国連にも加盟でき、形の上では独立国になった。しかし、サ条約2条C項によって、本来、日本の領土であった国後島、択捉島を含む千島列島に対するすべての権利、権原を放棄させられた。また同3条によって、沖縄はアメリカの信託統治下に置かれることになった。 沖縄の施政権が日本に返還されたのは、1972年5月5日のことだった。国後島、択捉島など千島列島は、いまだにロシアの支配下にある。 サ条約調印と同時に日米間で締結されたのが旧日米安保条約と日米行政協定である。これは占領軍の中心だった米軍を引き続き日本に駐留させる取り決めであった。 だからこそ1955年に保守合同によって結党された自民党は、「党の政綱」で「六、独立体制の整備」という章を立て、としていた。 米軍の撤退は、真の独立体制の確立のために不可欠の要件だという認識を当時の自民党は持っていたということだ。 もちろん米ソ冷戦が続く中で駐留米軍の撤退という選択肢を取り得なかったことは理解できるし、今も在日米軍の撤退という選択肢を取り得ないことは理解できる。しかし、沖縄の現状や不平等な日米地位協定をそのままにして、「主権回復の日」でもなかろう。 ましてや安倍首相は、憲法改正論者である。その最大の理由が、占領下で作られた憲法ということではなかったのか。だとすればその改正なしに、真の独立はあり得ないというのが、論理的には安倍首相の立場になるのではないのか。 さらに言えば、当時の領土不拡大の国際原則を破った「ヤルタ秘密協定」が盛り込まれたサ条約もまた占領下の遺物と言って差し支えなかろう。 それだけではない。経済でも、金融でも、外交・安全保障でも、アメリカの顔色を窺いながら、というのが率直な日本の現状だ。 自由貿易の拡大は避けて通れない課題 話をTPPに戻す。なぜ民主党政権時代、菅直人首相や野田佳彦首相がTPPに前のめりになったのか。 それは、鳩山由紀夫政権でぎくしゃくした日米関係を改善するために、アメリカが望むようにTPP参加に前向きにならざるを得なかったというのが真相だろう。 事実、野田首相がTPPに前向きになったのは、2012年11月の日米首脳会談でオバマ大統領から参加を迫られ、「早急に結論」と答えてからだ。この会談について、成田憲彦内閣官房参与は、「オバマ大統領に米軍普天間飛行場移設もTPPも待ってくれとは言いにくい」「TPPは前向きなことを言わなければいけない」と首相は考えたと「解説」している。 誤解なきように述べておくが、だからと言って私は自由貿易の拡大に反対しているわけではない。すでに日本は13の国々とEPA(経済連携協定)、FTA(自由貿易協定)を締結している。日中韓FTAの準備も進んでいる。自由貿易のさらなる拡大は、日本にとって避けて通れない課題だからである。 安倍首相は「我が国の安全保障にも寄与」と述べたが、これは日米関係に限ったことではない。こうした協定が増え、貿易をはじめとした経済関係、交流関係がより多くの国々へと拡大していくことは、日本の国際関係をより豊かなものにしていくと考えるからである。 どこまで日本の経済主権を守れるか TPPについては、様々な問題が指摘されている。政府の試算によれば、関税がすべて撤廃されれば、農林水産業の生産額は3兆円も減るという。その他にも、輸入食品・農産物の検査、遺伝子組み換えなどの食品表示などの規制緩和、日本の公的医療保険制度、国民皆保険制度を揺るがしかねないアメリカの民間医療保険の参入、労働法制の規制緩和などが、アメリカからの要求としてすでに日本に迫られている。 いま1つは、TPP交渉では、当然と言えば当然だが、遅れて参加する国は「現行の交渉参加9カ国がすでに合意した条文はすべて受け入れる」という条件があると言われている。さらに「将来、ある交渉分野について現行9カ国が合意した場合、拒否権を有さず、その合意に従う」「交渉を打ち切る権利は9カ国にあって、遅れて交渉入りした国には認められない」という条件も付けられているという。 この不利な条件の中で安倍内閣が、どこまで交渉力を発揮できるのか。TPPは「国の形を変える」などとも言われているが、我が国の経済や国民の暮らしの活力を削ぐのではなく、豊かにする方向で交渉力が発揮されることを願うばかりである。 農業を衰退させた「農水省、自民党、農協」トライアングル TPP反対と言えば農協(JA)が出てくる。確かにすべて関税が撤廃されれば、いまのままだと農業は大打撃を受ける。私は、TPP反対集会などでJAが常に表舞台に出てくるのを見た時から、この反対運動は成功しないだろう、と思っていた。 私の印象では、JAの歴史は、反対運動をやっては与党自民党と妥協点を見つけ出し、何らかの補助金などを受け取って終わりにすることの繰り返しではないかと思っているからだ。 JAの役職員を養うためにJAはあるという批判もあるぐらいだ。本当に農家のこと、組合員のこと、日本農業のことを真剣に考えているのか疑わしい。多くの国民もこのことを大体は知っている。もちろん多くの農業者がまじめに様々な作物の収穫に取り組んでいることも知っているつもりだ。 例えば、1964年に制定された「肥料価格安定臨時措置法」という法律があった。この法律は肥料メーカーの価格カルテルを認め、保護するものであった。ところが1986年には、肥料の国内価格が輸出価格の3倍にもなった。当然値下げを農協は求めるべきであったにもかかわらず、全国農業協同組合中央会(全中)と全国農業協同組合連合会(全農)は、高い肥料価格の維持を要望した。理由は、農協の手数料収入が維持できるからだ。 ウルグアイ・ラウンドの時も、農業への打撃を緩和するために事業費6兆100億円という予算が組まれたが、多くは土地改良事業などの土木工事に約半分、あとはいろいろな建物、施設に使われたものの大多数が朽ち果てていると指摘されている。減反政策も政府と農協が一体になって推し進めてきたものだ。 自然を相手にする農業に対し、国が様々な助成をするのは当然である。世界のどの国でもそうだ。だが日本農業の衰退してきたのは、「農水省、自民党、JA」というトライアングルに最大の責任がある。TPPを無批判に受け入れるべしなどと言うつもりは毛頭ないが、日本の農業の未来を、農家の未来をJAの幹部には真剣に考えてもらいたい。 また先の総選挙で自民党議員の大半は「TPP反対」と公約していた。都市部の20人余の候補者たちだけが賛成を表明していた。そうした議員たちがTPP反対集会で鉢巻きを締めて、同志であるかのように「頑張ろう」などと叫ぶ茶番はそろそろやめてもらいたい。
【第146回】 2013年3月25日 桃田健史 [ジャーナリスト] 「軽自動車が非関税障壁」は本当か アメリカ車が日本で売れない理由 ガラパゴス市場・日本の 軽自動車最新事情
「TPPと軽自動車の関係というのは、何もないと思うんですよ。僕はこじつけだと思っております」 2013年2月26日、スズキが都内で開催したハイト系新型軽自動車「スペーシア」の記者発表会で、同社・鈴木修会長兼社長は記者団の質問にそう答えた。 そして2013年3月15日、安倍晋三内閣総理大臣はTPP(環太平洋連携協定)への参加を正式表明。 同じ日に、筆者は東京ディズニーランドに隣接するホテルオークラ東京ベイを基点として行われた、「スペーシア」報道陣向け試乗会に参加した。同車は2008年〜2013年2月に製造販売された「パレット」の後継車だ。「パレット」は、ライバルであるダイハツ「タント」に大敗。さらには一昨年末に登場して急速にシェアを拡大中のホンダ「N Box」の影響もあり、今回の車名変更を伴う全面改良に至った。 スズキ「スペーシア」報道陣向け試乗会・会場にて。中間モデルの「X」と、最上級ターボモデル「T」を公道で試乗した Photo by Kenji Momota 「スペーシア」はその名の通り、「タント」に負けた最大の原因である車内スペースを拡大した。
具体的には、車体の側面を立ててルーフ部分を60mm拡張、Aピラーを5mm前方へ、さらにリアハッチ上部点を40mm後方へ移した。これにより、車内は「パレット」比で、室内幅が40mm増、左右ドアガラス間が40mm増、乗員頭部と天井角の間が45mm増、乗員頭部とドアガラスの間が10mm増、そして乗員とドアトリム間が5mm増とした。室内長はクラストップの2215mmとなった。 軽自動車の外観規格寸法での最大値は、全長×全幅×全高=3400×1480×2000(mm)。これに対して「スペーシア」は、同=3395×1475×1735(mm)と、走行安定性を考慮した上で軽自動車規定ギリギリで作られている。これはハイト系軽自動車での常識だ。 また、90kg軽量化によりクラス最軽量。クラストップの29.0km/リッターの低燃費を実現した。 軽自動車・ミニバンは 「顧客に対して過保護なクルマ」 試乗した感想としては、以下が主だった点だ。 「スペーシア」のインテリア。ダッシュボードセンターを基点に、助手席側に大きな広がり感を強調。シフター、エアコン、パワーウインドウなどスイッチ類の質感が高い Photo by Kenji Momota ・スズキらしい、生真面目なモノ造り。 ・インテリアは、広くなってもドンガラ感がなく、明るい雰囲気の上質な空間。 ・ハンドリングは軽快で、エンジントルク特性、CVTとの相性が良く乗りやすい。 ・リアサスの動きに“深み”が増すと、さらに上質な乗り心地になるはず。
また総論として、軽自動車が成熟期に入ったことを強く感じた。軽自動車のなかでも女性顧客が多いハイト系では、顧客の希望やワガママを徹底的に盛り込んだ超高機能・生活車として、そろそろ“ネタ切れ”してきたと感じる。 スズキの四輪製品・技術開発部長の藤崎雅之氏は「軽自動車の潮目が変わった。これまではダイハツとの燃費競争が主体。そこにホンダ(の独特の商品企画性)への対策が必然となった。そのなかで、弊社ラインアップで各商品の役割をより明確しなければならない」と語る。 また筆者から「TPP絡みで様々な報道があるが、仮定の話として、米国メーカーは軽自動車を作ることができると思うか?」と聞いてみた。 すると「このサイズ感の商品は当然できる。だが、問題は“気配り”だ。軽自動車とは顧客への気配りのクルマ。ティッシュボックスの収納場所を、これだけ車内各所に設けるなど、こうした(顧客への配慮として細か過ぎるような)商品作りは、アメリカでは難しいと思う」(同)と指摘した。 平日の東京ディズニーランド駐車場。ミニバンの多さが目立つ。そのなかに黄色ナンバープレートの軽自動車が交じる Photo by Kenji Momota これを筆者なりに換言すれば、日本国内の顧客は軽自動車、さらには日本国内専用ミニバンという“顧客に対して過保護なクルマ”に、すっかり馴染んでしまっているのだ。
車両価格100万円強〜150万円(=メーカーとディーラーが薄利)で、これだけの機能性と、日常走行での満足度。米国メーカーが手間ヒマかけて日本国内市場向けに独自の軽自動車を導入するとは思えない。 もし軽自動車規定を廃止したら 日本でアメ車はもっと売れるか? 米デトロイト3で構成される、米自動車政策会議(AAPC)が3月15日、日本のTPP参加表明に対して反対する声明を発表した。現在、アメリカは日本製乗用車に対して2.5%、トラックに対して25%の関税をかけている。これらが撤廃されることで、さらには政策による円安誘導で日本車の米国内販売数が増え、米国メーカーの経営に悪影響があると指摘した。 具体的には、年間で日本からの輸入台数が10万5000台増、金額にして2.2ビリオン米ドル(約2100億円)増と試算した。他方、アメリカから日本に対しては、すでに自動車の関税はゼロだが(軽自動車規定や書類審査等の)各種非関税障壁が多く、米国メーカー製の自動車の日本国内販売を阻害していると説明している。 その日本市場、2012年売れ筋トップ10は、トヨタ「プリウス」、同「アクア」、ホンダ「N Box」、同「フィット」、スズキ「ワゴンR」、ダイハツ「タント」、同「ミライース」、ホンダ「フリード」、そしてトヨタ「ヴィッツ」。乗用車販売総数でみると、339万274台(日本自動車販売協会連合会・調べ)。また同年、軽自動車は197万9446台(全国軽自動車協会連合会・調べ)で、全需に占めるシェアは37%にも及ぶ。 そのシェア37%、日本専用のガラパゴス車に対して、米国メーカーが独自開発車を投入することは、収益性、事業性、さらに前述にように商品開発に対する“気配り”が難しい等の観点から、その可能性はゼロに近い。 では仮に、軽自動車規定が撤廃された場合、日本でアメ車がもっと売れるのか? その答えは、「NO」だ。最大の理由は、日本人のアメ車に対する認識の低さにある。 2012年、日本への正規輸入車総数は31万5993台。内訳としては、トップがVWで5万6191台(シェア17.78%)。2位が日産で4万2422台(同13.42%)。これはタイからの「マーチ」が主体だ。3位がダイムラー/メルセデス・ベンツで4万1911台(同13.26%)、4位がBMWで4万1102台(同13.01%)、5位がアウディで2万4163台(同7.65%)、以下トヨタ、BMW MINI、ボルボ、三菱、フィアット、プジョー、そして米系のクライスラー/JEEP(4979台・同1.58%)と続く(日本自動車輸入組合・調べ)。 このJEEPに、フォード、GMシボレー、GMキャデラック、クライスラー、同ダッジ等を加えた全アメ車合計では1万3753台(同4.4%)に過ぎず、輸入車のなかでもマイナーな存在だ。なお、この数は日系乗用車と軽自動車の合計と比較すると、たった0.26%である。 世界市場の主流から見れば アメリカもやはりガラパゴス市場 日本では周知の通り、「外車」「輸入車」に関してはドイツ車志向が極めて強く、アメ車には一般的に“とっつきにくい特殊なクルマ”というイメージがある。 そうしたイメージを打破するため、過去20年間ほどを振り返ると、90年代に各種の試みがあった。例えば、GMサターンがVW的なイメージで日本国内市場の開拓を試みたが失敗。また、ホンダ販売店でも扱っていたJEEP「チェロキー」や、並行輸入車でGMの商用車・シボレー「アストロ」の乗用利用が人気となったが、ブームは長続きしなかった。 現在でも日本には、一部に“アメ車好き”がいるが、彼らがアメ車を好きな理由は、「日本車にはない、大きさ」「日本車にはない、大胆なデザイン」「日本車にはない、ビッグトルクのエンジン」など、明確な日本車との違いに付加価値を感じていることにある。 アメリカ・ガラパゴスの象徴、フルサイズSUV。テキサス州内、GMアーリントン工場。シボレー「タホ」、同「サバーバン」、キャデラック「エスカレード」、GMC「ユーコン」を製造 Photo by Kenji Momota このように、アメ車は日本人にとって“変わったクルマ”なのだ。そしてこの感覚は日本人だけではなく、欧州、新興国、発展途上国の人々にとっても同じだ。その筆頭がミッドサイズ/フルサイズの、SUVやピックアップトラック。世界市場で見れば、同カテゴリーのボリュームゾーンは、トヨタのIMV(イノベーティブ・インターナショナル・マルチパーパス・ヴィークル)の「フォーチュナー」や、三菱「パジェロスポーツ」だ。
しかし、そうした商品性とアメリカでのSUVに対する要求が合致しない。また、ボリュームゾーンのセダンも、欧州や新興国ではB、Cセグメントが主体だが、アメリカではより大きなDセグメントが主流だ。 つまり、アメリカ市場も日本と同様に、ガラパゴスなのだ。 なお、アメリカ市場と若干似ている商品市場性があるのは、中国のみ。だがその中国でも、改革開放路線下での第一次成長期が終わり、競争環境が厳しくなるなか、日米欧メーカーは現地拠点開発による中国市場専用車の投入を急いでいる。 ガラパゴスの日本市場とガラパゴスのアメリカ市場で、直接的なクルマの輸出入だけでは、それぞれの国のメーカーが大規模な市場開拓をすることは無理なのだ。 自動車産業は日米の「交渉ツール」!? TPPよりRCEP、NAFTAの重要度に注目 そうしたなかで、日本は1980年代以降、アメリカ現地生産を本格化し、1990年代後半になると技術開発も現地化する動きが加速。アメリカ専用車に近いカタチでラインアップを充実してきた。だから、日本車がアメリカで売れてきた。 他方、アメリカは近年、日本に生産拠点を持っていない。古くは、関東大震災以降から昭和初期にかけて、商用車をメインにアメ車が増え、GM、フォードが日本国内生産を行っていた。だが、1935年(昭和10年)、「自動車工業確立二関スル件」が閣議決定され、自動車国内生産から海外メーカーは事実上、締め出された。 それから半世紀近くが経って、フォードとマツダ、クライスラーと三菱、GMとスズキ、GMと富士重工などが提携していた時期もあったが、日本市場向けアメ車の本格的な開発と拡販事業を進めなかった。 アメリカテキサス州ダラス郊外の大型商業施設駐車場。日本車のセダン、米国メーカー製のSUVが多い Photo by Kenji Momota このように、アメリカで日本車が売れ、日本でアメ車が売れない理由は、「どこまで相手の市場に向けて真剣な商品づくりをするかどうか」が第一であり、関税や非関税障壁と呼ばれる類、はたまた軽自動車の影響は、アメリカが騒ぐほど大きくない。
もちろん、そんなことは、アメリカ自動車産業界の上層部は百も承知だ。 結局、TPP交渉のなかで自動車分野は、農業や保険産業などの他分野の交渉のためのツールとして使われるように思える。本稿冒頭でご紹介した、鈴木修・スズキ会長兼社長が言う、「こじつけ」が最適な表現ではないだろうか。 日本の自動車産業にとって、FTA(自由貿易協定)に関してはTPPより重要度が高い案件がある。 第一に、CJK(中国・日本・韓国のFTA)を軸足としてアジア大洋州と連携する、RCEP(アールセップ/東アジア地域包括的経済連携)を積極的に活用すべきだ。 また、今後メキシコからアメリカへの完成車輸出が増えることで、NAFTA(北米貿易自由協定)に関する再認識が必要だ。さらに、二転三転するメキシコとブラジルとの関係による、NAFTAとメルコスール(南米南部共同市場)との連携について、今後の戦略を練ることが必須となるだろう。
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