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ジョセフ・スティグリッツ教授=東京都内のホテル
http://www.asahi.com/business/update/0322/TKY201303220320.html?tr=pc
2013年3月22日23時10分 朝日新聞
【江渕崇】ノーベル経済学賞の受賞者のジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授は22日、都内で朝日新聞などのインタビューに応じた。環太平洋経済連携協定(TPP)について、「日米両国の国民のためにならない可能性がある」とクギを刺した。
スティグリッツ氏は、TPP交渉で米国が遺伝子組み換え食品の表示義務の撤廃を求める可能性があることについて「他の多くの国も、米国民も、撤廃すべきだとは思っていない」と指摘した。特許などの知的財産の保護を米国が強く主張していることに対しては「(価格の安い)後発医薬品が作りにくくなったり、途上国の発展を妨げたりするおそれがある」と言及。いずれも米政府が自国企業など一部の利益を守ろうとしていると批判した。
日本の自動車市場が閉鎖的だと米国が主張していることに関しては「米国産大型車が日本で売れないのは燃費が悪く、社会が望む商品を提供できていないのだから当然だ」と述べた。
一方、TPPとは別に、「新卒一括採用などの窮屈な慣行が日本にはいくつも残っており、ダイナミックな経済にするために他のやり方を探るべきだ」と語り、硬直的な規制や慣習を見直す必要性も強調した。
◇
スティグリッツ教授との主なやりとりは以下の通り。
――TPPを進める米政府の背景に注意すべきだ、との意見ですね。
「知的財産権のルールづくりをめぐる議論を見ると、米政府はより強い保護を求めている。米政府は科学の専門家に意見を聴くのではなく、大きな製薬会社やエンターテインメント企業、食品会社などの意向を反映し、彼らの利益が大きくなるように動いている。保護が強すぎれば(価格の安い)後発医薬品をつくりにくくなる恐れがある。技術革新を妨げ、途上国の発展にも悪影響がある」
「米政府は、遺伝子組み換え食品かどうか知る権利は消費者にないと主張しているが、他のたくさんの国も、一般の米国民も、知る権利が制限されることを望んではいない。こうした政策はいずれも、日本人にとって利益でないのと同じように、米国民にとっても不利益になるだろう」
――米国との交渉は厳しいと予想されます。
「日本では大型車に税金や規制がかかっているが、それは大型車の燃費の悪さを考えれば当然だ。米国産の大型車は日本市場で売れておらず、米国はそれを反米国的だと批判するが、完全な間違いで、ドイツ車は売れているではないか。日本社会が望む商品をつくれていないだけの話だ。温暖化も大気汚染も望まず、安全な車がほしい、子どもを保護したいというのは、商業的な利益を超えて守るべき基本的な価値だ。日本はこうした点で決して交渉をあきらめないことだ」
――日本は、どんな規制改革が必要ですか。
「単なる規制緩和ならば、米国でバブルを引き起こし、金融危機につながり、世界で最もひどい格差を生み出したのでまねすべきでない。正しい規制がなければ世の中はうまく機能しない。ただ、日本には新卒一括採用などの窮屈な慣行がいくつも残っている。ダイナミックな経済にするために他のやり方を探るべきだ」
――消費増税の日本経済への影響をどう見ますか。
「多額の政府債務を抱えているのは先進国共通の課題だが、問題はタイミングだ。今は総需要が不足しており、消費増税で低所得層に負担をかけると需要が落ち込み、経済を悪化させる。日本は1997年の消費増税で一度失敗しており、もっと敏感になるべきだ。高所得層を対象に増税するなど、税収を上げる方法はほかにもあり、それならば消費税より経済に悪くない」
――これまで日本は巨額の景気対策を講じましたが、経済は弱いままです。
「もしその支出がなかったらどうなっていたかを問わなければならない。米国では2009年からの財政出動にもかかわらず失業率がまだ高いが、もしあの支出がなかったら、失業率が13%になるなど事態はもっと悪かっただろう。日本の場合は、特に90年代後半に金融システムが弱っていた影響が大きい。金融が機能しないと、財政による景気刺激がうまく効かない」
――円安傾向が続いています。
「米国は、国内経済を刺激するためだと表向きで言いつつ、金融緩和を通じて為替レートを引き下げてきた。米国では、金融緩和が貸し出しを通じて経済に働きかけていくという伝統的な経路が機能しなくなっている。個人や中小企業は依然、低い不動産価格に苦しんでいて融資を受けるのが難しく、一方で大企業は巨額の現金が余っている。そこで為替の切り下げを通じて競争力を高めているわけだ。現在はまだ金融政策で各国が協調する枠組みができておらず、日本を含めた他の国は、米国の動きに対応しなければならない」
――政府・日銀の掲げる2%の物価上昇目標は、日本経済の成長にどの程度有効でしょうか。
「(物価が下がり続ける)デフレは個人と国の実質的な債務を重くするので問題だ。デフレのペースは緩慢だが、長期にわたると影響が蓄積する。2%という目標は、わずかなインフレ率の上昇であり、実現は十分可能だ。すでに賃上げに踏み切った企業もあり、経済の回復に貢献するだろう」
「経済成長の課題に挑んでいこうとするとき、一方で格差が拡大しかねないという問題がある。安倍政権の掲げる『3本の矢』のうち、財政支出は所得の低い人たちのために多く使われるべきだ。低所得者は持っているお金の大半を消費するので、経済を刺激する効果がより大きい」
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