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2013/3/22 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
アメリカの自動車聖域デトロイトが確認された日米首脳会談のお粗末
3年程度の野党暮らしなど、何の戒めにもならなかったようだ。国際交渉の舞台でも、古い自民党のやり口が復活している。なにしろトップは6年前の挫折を恥じず、平然と返り咲いた男だ。過去の悪政を反省し、心を入れ替え、国民と誠実に向き合う。そんな当たり前の姿勢を取り入れることもなく、日本を危うくするTPP交渉参加を決めてしまった。恐るべき事態である。
17日の自民党大会で安倍首相は、「必ず日本の農業を、食を守っていく。私を信じて欲しい」と声を張り上げた。株価回復で支持率が上昇し、すっかり勘違いしているらしい。所信表明を済ませ、代表質問の直前に政権を放り出すという前代未聞の裏切り行為をやっていながら、「私を信じて」もないだろう。失った信頼は株価ぐらいでは戻らないし、そもそもTPPをめぐっては結論がハッキリしている。コメや小麦、乳製品、牛肉、豚肉、砂糖などの農産物は大打撃を受けるのだ。
先の日米首脳会談では、「聖域の存在」が確認されたという。安倍は、「無条件の関税撤廃が前提ではないから参加する」という態度だが、道筋が出来たのは米国が輸入自動車の関税を維持することだけだ。
「オバマ米大統領が再選できたのは、GMとクライスラーを救済したことも大きかった。だから、彼はデトロイトを守る。地盤はミシガン湖に接するイリノイ州。自動車産業が集まるミシガン州やオハイオ州でも強い。乗用車で2・5%、トラックで25%の関税撤廃は、簡単に越えられないハードルでした。安倍首相が日米首脳会談で“聖域”を持ち出したのは、もっけの幸いだったはず」(政府関係者)
日本は見返りを期待して、早々に自動車の聖域化を認める方針だ。だが、自民党の「TPP参加の即時撤回を求める会」会長の森山裕衆院議員は、「米国の輸入車関税を認めるのは、TPPに参加する“入場券”のようなもの。本当に、そんなチケットを買わされてまで参加するメリットはあるのか」と憤る。
TPP参加の日本の利点は工業製品の輸出増が見込めることだとされる。それなのに看板商品の自動車は恩恵を受けられない。しかも、最大の売れ筋商品を殺す法外な条件をのんだところで、農産物が守られる保証はゼロである。
◆米国のシナリオ通りに土壇場で参加する日本
自由貿易の推進に反対する国際ネットワークは、「今年10月のAPEC会議に参加国が集まり、TPPの交渉完了にサインする」との見通しを出した。それまでに開かれる交渉会合は、5、7、9月の3回。米議会の承認を待ち、参加各国との2国間協議も終わらせなければならないことを考えれば、日本が参加できるのは9月の一度きりとなる公算は大きい。果たしてワンチャンスを生かし、主張をねじ込むことは可能なのか。
自民党が守るとしているのは農産品だけではない。自動車などの安全基準、国民皆保険、食の安全もそうだ。ISD条項にも合意しないとしている。課題は山盛りだ。とてもじゃないが、たった1回の会合でまとめられるわけがないだろう。
昨年12月から参加したカナダとメキシコは、過去3年間の交渉で合意した内容については再交渉できないという条件をのまされた。それでも日本に限っては再交渉が許されるというのだろうか。もし安倍に、政権を投げ出した前科などなかったとしても、「信じてください」を信じられない現実があるのだ。
TPP問題に詳しい農林中金総合研究所の基礎研究部部長・清水徹朗氏がこう言った。
「恐らく米国は、日本が交渉のスタート時から参加するような形を望んでいなかったのでしょう。多くの注文が出ることが予想できるため、先に大方の交渉を終わらせて、日本がモノを言えないような状況になってから、引き込む狙いだったはず。この段階での交渉参加は、米国のシナリオ通りに思えます」
TPP交渉は、すでに日本の大敗北が決まっているのだ。
◆惨敗を覆い隠した「縄を糸で買う」の比喩
日米首脳会談後、安倍は「日米同盟は完全に復活した」と宣言した。TPP交渉をめぐりガッチリと握手したことで、正常な日米関係を取り戻せたと言いたいらしい。これぞ往年の自民党の手法だ。「一方を守るため、他方で譲歩した」とアピールし、苦渋の選択を装う。だが、実際は何ひとつとして守られない。国民を騙(だま)して、米国と妥協するパターンだ。
思い出されるのが、1950年代から70年代にかけて日米間でヒートアップした繊維交渉である。米国政府は、繊維業界の求めに応じて、日本に輸出の自主規制を要求。日本が拒否しても、執拗に解決を迫ってきた。とりわけ強硬だったのが、68年に就任したニクソン大統領だ。一方的な輸入制限に踏み切る構えも示し、圧力をかけたのである。
71年7月、宮沢喜一に代わって通産大臣となった田中角栄は、状況の打開に補助金を使う。輸出を規制すれば、生産が落ち込む工場で織機がだぶつく。それを国が買い上げる格好で、2000億円ものカネを繊維業界にばらまいて黙らせたのだ。
その少し前、日本政府は沖縄返還の交渉を進めていた。目指したのは、沖縄を返してもらい、繊維の輸出も維持すること。だが、繊維は形勢が不利だった。そのため、「縄を糸で買う」とか言って、沖縄のために、心ならずも繊維で折り合ったかのように宣伝。国民をペテンにかけた。
元朝日新聞記者の早野透氏は著書「田中角栄 戦後日本の悲しき自画像」で、〈角栄は「沖縄返還は決まっていたのだから、わたしがナワとイトを取り換えっこしたわけじゃないんだ。しかしね、ナワとイトを交換できるものならば、それはするべきだな」と回想する〉と書いた。実際、沖縄返還協定は角栄が通産大臣に就任する前、71年6月に調印されている。縄を糸で買うことはできなかった。角栄もそれを認めている。それでも「糸を売って縄を買った」という体裁にして、繊維交渉の惨敗を覆い隠したわけだ。
◆「担当官設置」「チームづくり」の目くらまし
TPPでも、日米同盟や日米安保で商取引を装うつもりだろう。「北朝鮮や尖閣諸島の問題があるから、聖域で歩み寄った」なんて言い出しかねない。政治評論家の山口朝雄氏が言う。
「TPPは米国が戦略的に進めているテーマです。繊維交渉もそうでしたが、米国が主導する問題に日本が注文をつけられるとは思えない。そもそも日本の首相は、米国に嫌われることを恐れています。ソッポを向かれると政権が持たないと警戒している。最初から結果は明らかです。安倍政権は、担当官を置いたり、チームをつくったりしていますが、しょせん国民向けのアピール。本気で聖域を確保しようと取り組んでいるのかは疑問です」
繊維を犠牲にして手に入れたはずの沖縄は、いまだに米国の植民地のようだ。在日米軍基地の75%が集中し、普天間基地の県外移設さえままならない。事実上、米国の統治下に置かれたままである。
TPPで聖域を諦めたとしても、代わりに尖閣諸島が守られ、北朝鮮の核問題が解決するわけではない。そろそろ国民は自民党政権のペテンに気づくべきだろう。
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