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「しんぶん赤旗」 2013年3月19日(火)
深まる矛盾 広がるノー/橋下市長 大阪市解体計画/市民サービス削減・統合・民営化ずらり
「日本維新の会」を率いる橋下徹大阪市長が、金看板にしている「大阪都」構想に基づく大阪市の「改革」、実はそれが大阪市の解体計画にほかならず、市の事業のあらゆる分野に及ぶサービスの削減や廃止・統合・民営化など、市民にもたらす実害が深刻であることが浮き彫りになってきました。その実態が知られるにつれて、市民や市議会との矛盾は深まるばかりです。(藤原 直)
「サービス 確実に低下」/自民もビラで指摘
「都構想は…市民の皆様の生活を良くするための手段です」。「維新」は11年秋の大阪市長・府知事選挙でこう宣伝していました。
ところが、橋下氏がいま市民に押しつけているのは、2015年4月としている「大阪都」実現までの3年間で従来の市民向け施策・事業のうち約393億円分を削減する「市政改革プラン」(昨年7月策定)です。13年度予算案では約136億円の削減を盛り込みました。(表)
市の世帯の4割近くが加入する国民健康保険の保険料3%の値上げ、70歳以上の敬老パスの有料化など市民負担が目白押しです。地域福祉を支えてきた市・区社会福祉協議会への交付金を25%削減するなど、コミュニティーつぶしを促進する内容も含まれています。
これは、大阪市を廃止して特別区に分割した際、いまと比べて大きく落ちるこれらのサービスの水準を先取りして進めているものです。
日本共産党や「大阪市をよくする会」の宣伝には、市民から「敬老パスは『維持』と明記した維新の会の公約はどうなったのか」「橋下市長のやることは市民いじめの値上げばかりだ」と怒りの声が寄せられています。
「大阪市をバラバラにして、本当に大阪が良くなるのでしょうか?」。自民党大阪市議団は2月、こんなビラを新聞に大量に折り込みました。「大阪都になると…住民サービスは今より確実に落ちます」と明快です。
最近では、橋下氏も「今の日本ではどの自治体でも住民サービスの向上は難しい」と発言。都構想はあくまでもサービスの「選択権の問題」と伏線を張っています。
民営化でバス路線廃止/公明も批判 新たな借金も
市民の財産をバラバラにして財界に提供する―こんな「都」構想の実害を端的に示すのが市営交通の民営化です。
市の方針案は、関西財界が求めてきた黒字の地下鉄の民営化を15年度に実現するために、地下鉄が支援してきた市バスを切り捨てる内容です。バスについては43路線も廃止した上、事業の清算で市民が新たに巨額の借金を背負わされる危険性があります。
市議会に関連条例案を提出した橋下氏は当初「3月決着」を目指すとしていました。しかし、見通しも必要性もない民営化でバス路線は大幅削減というあまりにも道理のない計画に市議会が反発。可決には3分の2以上の賛成が必要なのに推進しているのは「維新」だけで、市長の悪政に協力してきた公明党の市議からも「市民サービスのカットだ」との批判が出るなど矛盾も表面化しています。
橋下氏は「議会の論理がおかしくなっている」と八つ当たりしていますが、市議会からの継続審議を求める声は強まるばかりです。
背景には「ある連合町会の会合でも民営化については『もっと議論を』が7、8割」(民主系市議)という市民の世論があります。3月末の廃止方針が示されている「赤バス」と呼ばれる市のコミュニティーバスを守るために続けられてきた市内各地での運動や昨年11月に発足した「交通権の確立・大阪市営交通を守り発展させる会」のとりくみ、日本共産党や「よくする会」の全市的な宣伝も力となっています。
市立幼稚園つぶしに反発/市議会で陳情書採択
市民の怒りは橋下氏が「経費削減ありき」で打ち出した市立保育所・幼稚園の民営化にも向けられています。
とくに橋下氏が「仮に(すべて)無くなったとしても民間でしっかり受け入れられる」と言い放つ市立幼稚園全59園の廃止を含む民営化では、市議会に園の存続を求める保護者の陳情が集中。2月25日の市議会文教経済委員会では「市立幼稚園の全園を対象とした民営化案を見直すこと」を求める陳情書が「維新」を除く全会派の賛成で採択されました。
橋下氏は「陳情は山ほどある」(「産経」4日付)と強がりましたが、内心は穏やかではないようです。5日の市議会では、市立幼稚園や地下鉄の民営化の必要性を問いただした自民党市議に対し、「僕のことが嫌いだからといって共産党にならなくてもいいではないか」と声を荒らげ、「維新」の辻淳子議長から注意される場面もありました。
市民病院廃止 住民怒り/水道事業でも矛盾に直面
ほかにも橋下氏は各種の施設や事業を府・市の「二重行政だ」と決めつけ、解体しようとしています。
府立病院への統合をねらう市立住吉市民病院(住之江区)について、橋下氏は1日、廃止条例案を提出。この問題では、地元住民から存続を求める7万を超える署名が寄せられており、橋下氏は「小児・周産期医療の空白化に区民の不安が多数あることは十分認識している」(2月22日)と認めました。
しかし、そこで橋下氏が打ち出したのは跡地への民間病院の誘致でした。小児・周産期医療は民間では成り立ちにくい分野で、地元からは「病院の必要性を認めたなら、もともと計画されていた公立病院としての建て替えを」との声があがっています。
大阪府内42市町村が運営する大阪広域水道企業団に大阪市の水道事業を移管する水道統合をめぐっても、橋下氏が企業団との間で勝手にまとめてきた案に市議会で全会派から異論が噴出。同市が資産を無償譲渡するなど「市民にメリットがない」(自民市議)内容だからです。橋下氏が新大阪駅南東にある柴島(くにじま)浄水場の売却と跡地の再開発ありきで決めてきた案が破綻した格好です。
5月に提出しようとしていた議案には、ここでも3分の2以上の賛成が必要なのに、公明党まで「わが会派は反対だ」と明言。「維新」に方針転換を迫られ、橋下氏は水道事業の「民営化も選択肢」と語り始めましたが、あまりにも無責任です。
日本共産党の北山良三市議団長はいいます。
「『都』構想に向け、すでに大阪市の解体は始まっています。同時にそれは市民には何の利益もないもので市長も矛盾に突き当たっています。ただ市長がどう出るか。他会派の動きも流動的です。だからこそ、市民の運動を大きく盛り上げていくことが何としても必要で、私たちも頑張りぬく決意です」
「大阪都」構想
政令市である大阪市を廃止して5か7の特別区に再編し、大阪府を「大阪都」に移行させるというもの。2月、具体的な制度設計を行う法定協議会の初会合が開かれました。その狙いは、大阪市の権限と財源を「都」に吸い上げ、大型開発やカジノ誘致など財界が求める「成長戦略」を一元的・効率的に進めることにあります。
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