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アングル:「アベノミクス」が強いる高齢者の痛み
2013年 03月 15日 19:07 JST
[東京 13日 ロイター] 安倍晋三首相は、内閣の任命を経て20日に誕生する黒田東彦次期日銀総裁とともに、デフレ脱却と成長復活に向けた経済政策「アベノミクス」を今後さらに加速させていく。一方、戦後日本の高度経済成長を支えてきた高齢者が今、そのアベノミクスから痛みを強いられようとしている。
アベノミクスはまさに今の日本経済が必要としていることかもしれないが、それは日本を輸出主導型の経済大国へと押し上げ、貯金や年金での生活に向けて準備していた高齢者の負担の上で成り立つとも言えるからだ。
都内で今川焼屋を半世紀にわたって営む70代の夫婦は、ロイターの取材に「引退後に備えて貯金を殖やそうとしているが、簡単ではない。将来どうなるか分からない」とため息まじりに語った。
バブル経済が崩壊してからの20年間、日本経済は停滞が続いていたが、緩やかなデフレによって高齢者の購買力も緩やかに右肩上がりが続いてきた。インフレを起こしてそれを逆回転させようとしているアベノミクスは、成長に向けた財源を捻出するため、比喩的にも実質的にも高齢者に重い負担をかけようとしている。
ただ、インフレ上昇や増税の見通しで高齢者が持つ700兆円を超える資産の流動化が始まれば、アベノミクスが効果を発揮する前に財政危機に火が点くことになりかねないと一部のアナリストやエコノミストは警戒する。
ニッセイ基礎研究所チーフエコノミストの櫨浩一氏は「将来的にお年寄りは貯金を崩していく。その観点から追加的な国債の発行が難しくなる」と指摘する。
東京五輪が開催された1964年以降の四半世紀で、日本の1人当たり国内総生産(GDP)は3倍に増えた。それを実現させた要因の1つは、金融緩和や大規模な財政出動など、現在の安倍政権の経済政策と多くの点で似通っている一連の政策だった。第2次安倍政権では、向こう15カ月間で100兆円をインフラに投じる計画。そして黒田次期日銀総裁は、積極的な金融緩和姿勢を明確にしている。
アベノミクスによるインフレ期待を背景に、円の対ドル相場は昨年11月以降で約20%下落した。円の1%の下落は、日本企業の利益を1%押し上げる要因になるとされる。
しかし、1960年代に比べ、日本社会は大幅に高齢化し、国は巨額の借金を抱えている。日本の公的債務残高は、対GDP比2倍以上と世界最高水準に膨らんでいる。
ニッセイ基礎研究所の櫨氏は「財政出動と金融緩和は今まで何回かやってきたが、その効果はいつも一時的だった」とし、「今回の刺激策が恐らく最後になるだろう。公的債務は大き過ぎであり、社会は高齢化が進んでいるからだ」と語る。
日本国債の約9割は国内貯蓄でまかなわれているが、その多くは直接的もしくは間接的に高齢者の貯蓄によるものだ。日本の60歳以上は人口の約25%だが、日銀統計によると、家計金融純資産1156兆円の約60%は彼ら高齢者が保有する。
そして、高齢者が人口に占める比率は高まるばかりだ。日本政府によれば、2035年までに全人口の30%が65歳以上になるという。
高齢者の金融資産の大部分は銀行預金という形で保有されており、金融機関は低成長やローン需要の停滞により、こうした預金の多くを国債に投資する。同じことは、安全性を重視する年金基金や生命保険にも当てはまる。
安倍政権のギャンブルは、インフレ期待が高齢者やその家族の消費拡大を誘発し、国内需要が増大して雇用と所得が伸びるという好循環をもたらし、結果的に税収が伸びて借金を減らすというものだ。
エコノミストらは、アベノミクスによって消費や税収がどれほど伸びるか予測するのは極めて難しいと指摘する。その一方で、インフレは高齢者の購買力を落とし、引退に備えた貯金の切り崩しは増えることになるだろう。
これについて小野日子内閣副広報官は、ロイターへの文書による回答で、年金給付額は消費者物価の動きにリンクしているので、年金生活者の購買力は低下しないとの考えを示し、政府は貧困層への年金給付増額にも取り組んでいるとした。
どんなリスクがあるにせよ、多くのエコノミストが口をそろえるのは、日本にインフレ政策以外の選択肢はほとんど残されていないという点だ。少子高齢者は進む一方であり、向こう10年以内に政府が債務を減らせなければ、財政危機は確実に顕在化するだろう。
年金給付額の削減計画は安倍政権によって中断したが、インフレは、高齢者から若年層への富の自然な移行をスピードアップさせることにもなる。
安倍政権は税制改正にも踏み込んでいる。2016年からは国債売却益にも20%課税される計画であり、2015年には相続税の最高税率が50%から55%に引き上げられる予定だ。一方、祖父母が孫に教育資金を一括贈与した場合、贈与税の一定額を非課税にする特例を検討している。
企業のマーケティング担当者は早速、新たな税制に後押しされた祖父母世代の支出拡大を狙った動きを見せており、博報堂生活総合研究所の酒井崇匡氏は「消費拡大につながる可能性がある」と指摘する。
アベノミクス支持派は、消費拡大こそが日本には必要だと主張する。一方、アベノミクスに懐疑的な論客は、政府は高齢者の虎の子の資産をインフレから守ろうとしないなら、彼らの消費拡大をあてにすべきではないと反論する。
投資助言会社フジマキ・ジャパンの藤巻健史氏(62)は「古い人間」はハイパーインフレが起きて、築き上げた資産が消えることを考えると語る。藤巻氏は顧客に対し、インフレに備えて資産を外債や外国通貨に移すよう助言している。
30年債利回りは足元で2010年半ばの水準にまで低下している。その理由の1つには、「高齢者貯蓄」が国債を売り始めたとしても、日銀の買い入れがそれを吸収すると投資家が考えていることがあるかもしれない。ただ一部には、投資家がアベノミクスの失敗を見込んでいることもその背景にあると指摘する声もある。
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE92E05820130315
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