http://www.asyura2.com/13/senkyo145/msg/174.html
Tweet |
フォーリン・アフェアーズリポートに掲載されたジェラルド・カーチス氏の論考は、安倍政権の今後を見通すうえで一つの参考になると思う。
要は、安倍首相は、国士を気取った表面的な言動とは裏腹に、米国の子飼いとして政策を遂行していく(遂行させていく)という見立てである。
(安倍氏は、そのような内実を隠すための簑として、国士を気取った愛国主義的言動をふりまいているのである)
実に気に入らないカーチス氏の見立てだが、安倍氏が首相を続ける限りそうなると私も予測する。
「」はカーチス論文からの引用:()は私のコメント
「専門家の多くは、日本は右傾化への道をたどりつつあるとみているが、そのような変化はおそらく起きないだろう。」
(安倍氏の右派的パフォーマンスは、今後の政策遂行で強い反発を招きかねない保守層や民族派を自分に引き寄せるための“予防措置”である。今でも散見されるが、思考力に難がある民族派や保守層なら、その戦術に引っかかる)
「第二次世界大戦の日本の行動を謝罪したかつての日本政府の談話を、新しい何かに置き換えれば、中国や韓国との関係が悪化するだけでなく、アメリカからも強く批判されることになる。」
(過去(第一次首相時)に対米謝罪をしていながら、昨年秋の総裁選挙から年末の総選挙にかけて、懲りずに再び「歴史認識」修正を持ち出したことで、訪米時に安倍氏がオバマ政権から受けた冷遇のひどさを考えればわかる話である)
「日本の戦略が大きく変化するとみなす予測は間違っていることが、いずれ立証されるはずだ。」
(対米・対韓はすでにそうだが、今後、対中・対北朝鮮でも、尖閣諸島問題や国交正常化問題でみっともない外交に動くはずだ。それでも、民族派保守派の匂いを持続させるため同時に武張った言動も行い、みっともない外交にもあれこれもっともらしい理屈を付けるだろうから、うすらバカの民族派は、内実を理解できず、安倍さんならしかたがないと黙認するだろう。これは、ニクソン大統領が、反共保守の闘士であるふりをすることで、賃金及び物価の統制という社会主義政策やベトナムからの撤退・中国国交正常化などが実現できたことを思い起こせばわかりやすい)
「アメリカは、緊密な同盟関係の維持という文脈で、日本が防衛力を強化することを望んでいる。」
「ワシントンは、日本がより多くの防衛努力をするように働きかけつつも、アメリカの日本と東アジアへのコミットメントへの信頼を損なわない政策を必要としている。」
(“集団的自衛権”や軍備増強は、米国支配層の下請けとしてより貢献するためのものであり、自主的な判断や政策で行使されることがあってはならないという話である)
===========================================================================================================
岐路にさしかかった日本の外交・安保政策
―― 変化した国際環境で問われる日米同盟の価値
Japan’s Cautious Hawk
ジェラルド・L・カーチスコロンビア大学教授
フォーリン・アフェアーズ リポート 2013年3月号
日本は、外部の国際環境を所与のものとみなすことで、日本人が「時流」とよぶ国際的な流れに乗るために、現実的な調整を試みてきた歴史を持っている。そしていまや、中国の台頭、北朝鮮の核開発、アメリカの経済的苦境という国際環境の変化を前に、「東アジアにおけるアメリカの軍事的優位はどの程度続くのか」という疑問を抱いた日本人は、これまでの計算を見直しつつある。
米中が対立しても、それによって必ずしも日米関係が強化されるわけではなく、現実には、自立的な安全保障政策を求める声が日本国内で高まるはずだ。
鍵を握るのはアメリカがどのような行動をみせるかだ。日本の防衛に対するアメリカのコミットメントは信頼できると日本人が確信すれば、東京の外交政策が現在のトラックから大きく外れていくことはない。だが、アメリカの決意を疑いだせば、日本人は独自路線を描く大きな誘惑に駆られるかもしれない。
小見出し
アメリカのコミットメントを信頼できるか 部分公開
吉田ドクトリンと平和主義
日米同盟を試す尖閣問題
エンゲージメントの条件
現実主義の視点を
フォーリン・アフェアーズ リポート 2013年3月号
<アメリカのコミットメントを信頼できるか>
こと自国の外交政策に限っては、日本は19世紀後半から現在にいたるまで、非常に似たとらえ方をしてきた。1868年の明治維新後に権力を掌握した指導者たちは、欧米列強が突きつける国の存亡に関わる脅威から国を守ろうと大戦略の構築に着手した。明治の指導者たちは、アメリカの指導者たちのように、自国の「明白な運命」を信じていたわけでもなければ、フランス人のように、自国の文化の美徳を世界に広めようとも考えてはいなかった。日本が直面し(克服した)課題は、「よりパワフルな大国が構築し、支配している国際システムでいかに生き残るか」にあった。
国際社会で生き残ることへの渇望が、いまも日本の外交政策を規定している。アメリカやその他の大国とは違って、日本が、国際アジェンダを規定し、特定のイデオロギーを標榜することで国益を模索することはない。この国は、外部の国際環境を所与のものとみなすことで、日本人が「時流」とよぶ国際的な流れに乗るために、現実的な調整を試みる。
第二次世界大戦以降、日本はそうしたプラグマティズムに導かれてアメリカと同盟関係を結び、これによって軍事的役割を防衛に限定できるようになった。しかしいまや中国が強大化し、北朝鮮は核開発を続け、しかも、アメリカは経済的苦境に陥っている。この環境ゆえに、「東アジアにおけるアメリカの軍事的優位はどの程度続くのか」という疑問を抱いた日本人は、これまでの計算を見直しつつある。特に、右派はより自立的で積極的な外交政策をとることを求め、ごく最近まで日本の戦略を描く立場にあった中道派の立場に挑戦している。
2012年12月に実施された衆議院選挙で、自民党は圧勝を収め、2006―2007年に首相を務めた経験をもつ自民党総裁の安倍晋三が、安定多数のもと、再び首相へと返り咲いた。連立パートナーである公明党の議席と併せると、自民党は参議院で否決された法案を再可決する3分の2の議席を衆議院で確保している。
安倍の勝利は、彼の個人的な人気や自民党の支持に根ざすものではなかった。むしろ、ライバル政党である民主党に対する有権者の不信任の裏返しだった。だが、有権者の意図がどこにあったにせよ、選挙の結果、日本に右寄りの首相と政権が誕生した。安倍政権は、自衛隊に対する憲法上の制約をなくし、学校で愛国心を育む教育を行い、地域社会、国際社会で日本がより大きなリーダーシップを発揮するようになることを目標に掲げている。
専門家の多くは、日本は右傾化への道をたどりつつあるとみているが、そのような変化はおそらく起きないだろう。日本の大衆はリスクを引き受けることを嫌うし、指導者たちも慎重だ。政権を発足させて以降、安倍は停滞する日本経済の再生に焦点を合わせ、リビジョニスト(現状変革)的なタカ派ビジョンを表に出すのを控えている。これは一つには、
2013年夏に予定されている参議院選挙が終わるまでは、とかく国論を二分しがちな外交政策に手をつけるのは避けるべきだと彼が考えているためかもしれない。夏の選挙の結果、参議院でも自民党が多数派になれば、安倍は自らのリビジョニストビジョンを実現しようと試みるかもしれない。
しかし、大胆で挑発的な行動をとれば、その帰結に直面する。例えば、安倍首相が繰り返し表明しているとおり、第二次世界大戦の日本の行動を謝罪したかつての日本政府の談話を、新しい何かに置き換えれば、中国や韓国との関係が悪化するだけでなく、アメリカからも強く批判されることになる。国内でどのような政治状況に直面するかも容易に想像がつく。マスメディアは政権批判を強め、市民の支持を失うだけでなく、自民党内からも批判が噴出するだろう。
要するに、日本の戦略が大きく変化するとみなす予測は間違っていることが、いずれ立証されるはずだ。とはいえ、その多くはワシントンが何をするかに左右されるのも事実だろう。アメリカが今後も東アジアで支配的な立場を維持していくかどうかが、大きな鍵となる。これまでの立場を維持し、「日本の防衛に対するアメリカのコミットメントは信頼できる」と日本人が確信すれば、東京の外交政策が現在のトラックから大きく外れていくことはない。だが、アメリカの決意を疑いだせば、日本人は独自路線を描く大きな誘惑に駆られるかもしれない。
アメリカは、緊密な同盟関係の維持という文脈で、日本が防衛力を強化することを望んでいる。だが、軍事力に関する憲法上の制約を取り払うことを期待しているアメリカ人は、自分が何を望んでいるか、慎重になる必要があるだろう。日本が大規模な再軍備を行えば、アジアで軍拡レースが起き、日本と(同様にアメリカの同盟国である)韓国との関係を含めて、地域関係が緊張し、アメリカは自国の死活的利益とは関係のない紛争へと巻き込まれる危険が生じる。ワシントンは、日本がより多くの防衛努力をするように働きかけつつも、アメリカの日本と東アジアへのコミットメントへの信頼を損なわない政策を必要としている。
全文は2013年3月号に掲載>>
(C) Copyright 2013 by the Council on Foreign Relations, Inc.,
and Foreign Affairs, Japan
http://www.foreignaffairsj.co.jp/essay/201303/Curtis.htm
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
▲このページのTOPへ ★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK145掲示板
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。