http://www.asyura2.com/13/senkyo145/msg/121.html
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中国共産党系のメディアとしては、日本のTPP参加問題を冷静に分析しているので紹介したい。
また、意図的に日本の瓦解を願った上の説明なのか、自由主義的経済価値観に毒されたゆえの説明なのかはわからないが、中国共産党の現時点での国家社会に対する価値観の一端も垣間見えるので、コメントも少し加えたい。
記事は、「安倍首相をTPPへの明確な同意へと突き動かした直接的な力は、オバマ大統領との共同声明で取り付けたほっとする言葉だ。すでにTPP交渉参加に同意した11カ国(日本を含まない)は「全ての物品」が交渉対象になることで合意しているが、共同声明は米日双方が「敏感な問題」を抱えていることを確認したうえで、「一方的に全ての関税撤廃をあらかじめ約束することを求められるものではない」と指摘した。これは安倍首相が政権公約で示したTPP参加条件(米などを関税撤廃の例外とすることを認める)と基本的に一致しているように見える。
確かにTPP交渉参加への同意は安倍首相からオバマ大統領への手厚い手みやげとなった」と説明しているが、日米共同声明は、「米などを関税撤廃の例外とすることを認める」ものではなく、せいぜい、日米間の関税協定ではそうなる可能性もあるというものでしかない。日米間以外、例えば、日豪間や日越間などにおいても同じようにそうなる可能性があるとは言えない話なのである。
※ 関連参照投稿
「TPP共同声明」を読む:米国とグローバル企業が日本のTPP参加で狙うもの:TPP参加と日本の食
http://www.asyura2.com/13/senkyo144/msg/818.html
経済成長第一主義の中国共産党ゆえなのか、日本の国家社会がおかしくなるのを望んでいるのか、記事は、「安倍政権は大胆な財政出動による景気刺激策、および「無期限」の金融緩和政策を打ち出すと同時に、TPP交渉参加の助けを借りて輸出改善を後押ししようと考えている。TPP交渉参加国を見ると、米国は日本にとって第2の貿易相手国だし、ベトナム、マレーシア、チリは経済成長率が5%を超える。このため日本にとってTPP参加は工業製品輸出を促すだけでなく、安価な商品を輸入することで国内消費を刺激することもできる」とし、「日本は現在米、小麦、乳製品、砂糖などの農産物に対して依然100%以上の高い関税を課している。中でも米の関税は778%にも達する。だが日本の農業従事人口は労働人口全体の4%に過ぎない。第一次産業は日本のGDPの4%を占めるに過ぎず、労働人口でもGDPの割合でも第二次産業が農業を遥かに上回る。したがって、日本はTPPから得られるメリットの方が、損なわれる利益を上回るはずだ」と、日本がTPPに参加するメリットを説明している。
前段の説明で、「TPP参加は工業製品輸出を促す」としているが、経済成長率が5%を超えるベトナム、マレーシア、チリとは既にEPAを締結しており、TPPに参加したからといって条件が変わり輸出が増大するというわけではない。
米国との関係も、長年にわたって政府間で交易の在り方を調整し棲み分けができており、TPP参加でその在り方が変わるものではない。日米の関係性に照らしても、そのような変化を米国政権が許しもしないことは自明である。
記事は、「安価な商品を輸入することで国内消費を刺激することもできる」と説明しているが、名目所得が15年にわたって下落し実質所得も増加しない日本で、輸入が増加することは、国内生産力の衰退に直結する。
安価な輸入品で国内消費を刺激するという政策が効果的なのは、それで国内の労働力や投資資金に余力が生まれ、より多くの付加価値を生み出す生産活動が増大するときのみである。そうではない輸入の増大は、国内の失業者を増加させるだけである。
中国共産党に限ったわけではないが、近代的価値観の表出として特徴的なのは、「日本の農業従事人口は労働人口全体の4%に過ぎない。第一次産業は日本のGDPの4%を占めるに過ぎず、労働人口でもGDPの割合でも第二次産業が農業を遥かに上回る。したがって、日本はTPPから得られるメリットの方が、損なわれる利益を上回る」という評価である。
国家社会(共同体)にとって、プライオリティがたかいものやことは何なのか忘れ去られ、貨幣的富で何もかも評価する倒錯状況に陥っている。
カネを食べるわけにはいかず、石油を飲むわけにはいかず、天然ガスを吸うわけにはいかないという幼児でもわかる事実が遙か彼方に置き去りにされている。
経済成長を否定したり、減経済成長を志向したりするものではないが、経済成長は、あくまでも、国家社会が活力と安寧を維持するために必要な手段だと考えている。
この記事のなかでいちばん笑えるのは、「安倍首相がTPP交渉の順調な始動に希望を見出している理由には、国内政治の天地を覆すような変化もある。安倍首相の右翼政策は日本民族主義の台頭を促し、過去に決別する潮流を巻き起こしている」という部分である。
安倍首相の言動が相手限定・分野限定で“右翼”的であることは認めるが、日本民族及び日本国家社会の今後を望ましいものにする本義的な日本民族主義ではない。
「過去に決別する潮流」なるものも、言葉や願望とは裏腹に、逆に日本を過去に縛り付ける愚かな潮流でしかない。
オマケだが、「野党の民主党や日本維新の会からはTPP参加反対の声がまだ上がっているが、安倍首相は完全に見て見ぬふりをすることができる」と評しているが、維新の会の石原GにはTPP反対の人が多いが、党としてはTPP参加推進であり、石原Gも、そのような価値観をベースとする「維新」に乗ることで当選した節操のない人たちである。
民主党も、TPP問題を政局的ないし選挙対策として利用することはあっても、自民党よりも強い自由主義的価値観をベースとしており、中国共産党の分析は的外れと言える。
※ 関連投稿
「安倍首相が「従軍慰安婦」問題でブッシュ大統領に謝罪したのは訪米首脳会談ではなく“秘密電話会談”」
http://www.asyura2.com/13/senkyo144/msg/911.html
「安倍首相に対する「不快感」を世界に晒したオバマ大統領:安倍自民党政権の誕生により民主党政権より悪化した日米関係」
http://www.asyura2.com/13/senkyo144/msg/609.html
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日本のTPP追随の得失
日本の安倍晋三首相は訪米時に「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)」交渉への日本の参加についてオバマ大統領と共同声明を発表した。帰国後もTPPに向けて休まず奔走し、呼びかけ続けている。安倍首相を喜ばせたのは、TPP交渉について自民党上層部の会議で政府に一任を取り付けたことだ。しかも連立政権を組む公明党もこれに従った。これは安倍政権が速やかにTPP交渉参加の決定を発表し、今年中頃には米国と本格的な交渉に入ることを意味する。中国青年報が伝えた。
国内のあちこちから反対の声が上がっているため、菅直人氏、鳩山由紀夫氏、そして野田佳彦氏といった最近の首相はTPP交渉参加について当たり障りのないことを口にするか、積極的姿勢を示して拒まれるかだった。一方、安倍首相をTPPへの明確な同意へと突き動かした直接的な力は、オバマ大統領との共同声明で取り付けたほっとする言葉だ。すでにTPP交渉参加に同意した11カ国(日本を含まない)は「全ての物品」が交渉対象になることで合意しているが、共同声明は米日双方が「敏感な問題」を抱えていることを確認したうえで、「一方的に全ての関税撤廃をあらかじめ約束することを求められるものではない」と指摘した。これは安倍首相が政権公約で示したTPP参加条件(米などを関税撤廃の例外とすることを認める)と基本的に一致しているように見える。
確かにTPP交渉参加への同意は安倍首相からオバマ大統領への手厚い手みやげとなった。米国がアジア太平洋地域でTPP交渉推進を加速する大きな目的は、自国の「アジア回帰」をスピードアップすることにある。現在TPP交渉には米国の信頼できる同盟国であるオーストラリアだけでなく、シンガポール、ブルネイ、マレーシアといったASEAN主要国も参加しており、その経済規模は世界の30%に達しうる。もし日本が参加すれば、この数字は7ポイント上昇するうえ、米日のGDPがTPP加盟国全体の91%を占めることになる。アジア太平洋に対するオバマ大統領の影響力は著しく増大する。さらにオバマ大統領は、TPPを通じて米国の輸出の余地が11%広がることも期待している。
日本が米国への協力と引き換えに得ることを望んでいるのが、アジア地域における自らの政治的・経済的地位の盤石化であることは間違いない。日本としては米国の経済力、政治力、軍事力の助けを借りて自らの影響力を強化することで中国に対抗し、中国を抑え込み、安全保障上の不安を取り除くことが、最も手っ取り早く、かつ有効な方法なのだ。経済規模で中国に追い抜かれたうえ、釣魚島(日本名・尖閣諸島)の領土係争でぎくしゃくしているため、日本は中国に対して警戒、疑念、不安を強めている。そのうえ国力が日増しに衰えており、「集団的自衛権」を手に入れるだけでも米国との同盟関係に一段と頼らざるをえない。また、米国からの安全保障上の庇護と外交・戦略面の支持も望んでいる。
地政学上の訴えが満たされるのと同様、TPPによってもたらされる経済的価値も馬鹿にできない。アジア通貨危機以来、日本経済は15年連続でデフレに苦しんできたうえ、円高が続き、輸出不振が長年続いた。さらに日本経済は高齢化と地震・津波による打撃という二重の試練を経験。このうち地震と津波によって引き起された福島第1原発からの放射性物質漏れ事故はエネルギーコストの上昇を招き、工業地帯は「空洞化」の様相を呈している。こうした状況の下、安倍政権は大胆な財政出動による景気刺激策、および「無期限」の金融緩和政策を打ち出すと同時に、TPP交渉参加の助けを借りて輸出改善を後押ししようと考えている。TPP交渉参加国を見ると、米国は日本にとって第2の貿易相手国だし、ベトナム、マレーシア、チリは経済成長率が5%を超える。このため日本にとってTPP参加は工業製品輸出を促すだけでなく、安価な商品を輸入することで国内消費を刺激することもできる。
しかし、自動車業界に代表される製造業がTPP交渉参加を煽る一方で、全農や日本医師会などは次々に反対の狼煙を上げている。日本は現在米、小麦、乳製品、砂糖などの農産物に対して依然100%以上の高い関税を課している。中でも米の関税は778%にも達する。だが日本の農業従事人口は労働人口全体の4%に過ぎない。第一次産業は日本のGDPの4%を占めるに過ぎず、労働人口でもGDPの割合でも第二次産業が農業を遥かに上回る。したがって、日本はTPPから得られるメリットの方が、損なわれる利益を上回るはずだ。もしTPP交渉の過程で米国が本当に日本農業の高関税保護を特別に認めたら、安倍政権がすでに農業分野の徹底的な改良を決定していることもあって、TPP参加への「農業障壁」は自ずと取り払われる。
安倍首相がTPP交渉の順調な始動に希望を見出している理由には、国内政治の天地を覆すような変化もある。安倍首相の右翼政策は日本民族主義の台頭を促し、過去に決別する潮流を巻き起こしている。現在安倍内閣の支持率は72.8%にまで上昇。TPP交渉参加に賛成する人も1月調査時の53%から2月には63%に上昇した。安倍首相は自ら政策を決めるための手堅い基盤を得た。野党の民主党や日本維新の会からはTPP参加反対の声がまだ上がっているが、安倍首相は完全に見て見ぬふりをすることができる。(編集NA)
「人民網日本語版」2013年3月12日
http://j.people.com.cn/94476/8163236.html
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