http://www.asyura2.com/13/senkyo144/msg/818.html
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先日行われた日米首脳会談については、これまで、オバマ大統領の非礼極まる安倍首相への接遇ぶりを俎上に乗せた。
※ 「安倍首相に対する「不快感」を世界に晒したオバマ大統領:安倍自民党政権の誕生により民主党政権より悪化した日米関係」
( http://www.asyura2.com/13/senkyo144/msg/609.html )
安倍首相(日本)が、韓国に気を遣うとともに、米国の要求に鋭意応えると説明しただけで、成果がなかった安全保障(対中国牽制)は触れる必要がないと思っているが、共同声明として唯一取り上げられたTPP問題とメディアがまったく取り上げていない「日朝国交正常化」の約束については俎上に乗せたいと思っている。
まず、TPP問題について触れたい。
米国“保護国”の地位に居心地の良さを感じている日本支配層にとって、TPPへの参加は、菅元首相がTPPを口にしたときから既定方針である。
脱原発政策も同じだが、対米自立派の政権が誕生しない限り、TPP不参加という選択肢はなく、選択肢として残ったのは、いかなる方法で政権や与党のダメージを回避もしくは軽減しながらTPP参加にこぎ着けるのかというくだらない問題だけである。
主要なダメージ軽減策は、TPP参加を表明しつつ(匂わせつつ)、米国と結託して事前協議をずるずる引き延ばしTPP交渉に参加しないことで、TPP問題を国民的議論の俎上に乗せないという恥ずべき作戦である。
(TPPに参加しないという腹なら別だが、参加することを前提に、面倒を引き起こしかねない交渉への参加は先送りするという魂胆は不埒極まる)
安倍政権としては、参議院選挙一人区の勝敗に大きく影響するJAを考慮し、7月の参議院選挙後までTPP交渉への参加表明を先送りしたかっただろう。
しかし、それでは、米国の90日ルールにより日本が交渉に参加できるタイミングが11月以降になってしまい、TPP交渉にまったく参加しないままTPP協定に調印するという前代未聞の不様を晒すことになりかねない。
そのため、最終の事務レベル交渉とされる9月の協議には参加できるよう、日米首脳会談を材料に、3月から4月にかけて交渉参加表明(日米・日豪・日NZの事前協議妥結)するかたちにしたわけである。
日本政府は、TPPを国民的議論にすることで支配層に深刻なダメージを招きたくない一念で、1回だけの交渉参加でなんとかかっこうをつけるという許し難い国益毀損行動までとったのである。
日米首脳会談を受け、安倍首相がその気になったようにされているTPP(交渉)への参加をめぐる報道や説明は、あまりにもゴマカシに満ちている。
なかでも奇妙なものは、TPPが、まるで、「日米FTA」や「日米EPA」であるかのように説明されている状況である。
米国との間でなんらかの合意をしたからといって、それが、既に11ヶ国が参加しているTPPの交渉の場でなんらかの拘束力を持つわけではない。とりわけ、二国間交渉に委ねられる関税問題はそう言える。
そうは言いつつも、多くの国(6ヶ国)がすでに事前協議で日本のTPP参加を可としているだけでなく、すでに多くの国(7ヶ国)とEPAを取り結んでいるから、事前協議が妥結していない国やFTA・EPAを締結していない国との関係が主要な課題であることは確かである。
(EPAやFTAを締結している二国間の関税は、暫定的に(10年間ほど)、FTA・EPAで合意している内容が適用されるはず)
TPP事前協議未了&EPA未締結の条件に合致する国を列挙すると、米国を筆頭に、オーストラリア・ニュージーランド・カナダである。
一昨年からEPA交渉が始まったカナダとの貿易は、米国との関係以上に相互補完的で、日本からカナダへは工業製品の輸出、カナダから日本へは石炭・木材・銅鉱石などの原材料、菜種・豚肉・小麦・鶏肉などの農産品の輸出というもので、大きな軋轢が生じる構造ではない。
このような認識を前提にTPPで大きな問題になっている関税撤廃問題に絞れば、豪州やNZとの間の関税措置が最大の難関となる可能性が高いと言える。
● 日米首脳会談で譲歩を引き出したと豪語するTPP共同声明の実相
日米首脳会談で、「共同声明」(TPP関連だけという無惨な内容)が出されると、TPP参加推進派であるメディアや政権与党は、TPPへの参加条件は「聖域なき関税撤廃」ではないと触れ回り、安倍首相が交渉参加表明に踏み切る条件が整ったとした。
安倍首相も、TPPに関して米国側から譲歩を引き出したと自画自賛した。
しかし、共同声明を読めばわかるように、「聖域なき関税撤廃」が条件ではないという話は、あるタイミング(段階)についてのもので、米国他すべてのTPP参加国も縛られる包括的了解事項なのか、日米間の関税交渉にのみ関わるものなのか、はたまた、関税撤廃が猶予される期間は無期限なのか限定期間なのかなど、重要で具体的な内容は一切明らかになっていない。
日米首脳会談でまとまった「共同声明」は、TPP参加に関する事前協議で米国が日本の参加を可とする条件の提示でしかないものである。よくまあ、こんな恥ずかしい内容を首脳会談の「共同声明」として出せたと感心する。
WTOなどで「最恵国待遇」規定があるとは言え、各国の関税政策の本音は、同じ品目でも、相手国によって“関税存続”と“関税撤廃(軽減)”を使い分けたいというものである。
米国も、乳製品について、日本相手なら“関税撤廃”を求めても、豪州相手なら“関税存続”を主張したくなる「競争条件」に置かれている。
それゆえ、TPPでも、関税交渉は、多国間交渉ではなく、二国間交渉で決められている。(多国間でも二国間でもかまわないとなれば、二国間交渉に向かうのは常)
米国政権が「日米共同声明」で日本のTPP交渉参加を可とする条件として提示した内容は、「TPPの輪郭(アウトライン)」を基礎として、
1) 日本がTPP交渉に参加する場合は全ての物品が交渉の対象
2) お互いに、交渉参加にあたり予め全品目の関税撤廃を約束する必要はなし
3) 日米間の貿易で、日本は一定の農産品・米国は一定の工業製品にセンシティビティがあることを相互が認識
4) 個々の品目の関税が最終的にどうなるかは交渉次第
5) 日本は、自動車や保険についての米国の懸念を払拭し、米国が求めるその他の非関税措置も是正が必要
というものである。
末尾に添付する「共同声明」を素直に読めばわかるように、日米首脳会談で米国から譲歩を引き出したと自画自賛している安倍首相の“認識”とは異なり、日本は米国から一つたりとも譲歩を引き出せていない。
書かれていることのすべてが、TPP交渉に参加するために日本がしなければならないことであり、約束や保障を含めて米国がしなければならないことはまったく書かれていない。
2)が「聖域なき関税撤廃」が条件ではないという根拠になっているものらしいが、その条件は、既参加国に共有されてきたもの(注1)で、ことさら、日本が交渉で獲得した譲歩というものではない。3)で米国のセンシティブ分野が取り上げられているように、また、豪州との交渉で乳製品や砂糖の関税維持を求めているように、米国自身が、「聖域なき関税撤廃」を受け容れられないとする国である。
付録3として添付した資料を読めばわかるように、3)と5)を除けば、日本がTPP交渉参加に向け既参加国と事前協議を始めたころからわかっている“前提”なのである。
※ (注1)『「TPP交渉参加に向けた関係国との協議の結果(米国以外8カ国)」平成24年3月1日 内閣官房,外務省,財務省,農水省,経産省』より抜粋:全文は末尾に添付
「3.関税撤廃の扱い
○交渉対象については,全てを自由化交渉の対象としてテーブルにのせなければいけないことは,各国とも認識を共有していた。
○「関税撤廃の原則」について,以下の発言があった。
・長期の関税撤廃などを通じて,いつかは関税をゼロにするというのが基本的な考え方である。
・全品目の関税撤廃が原則,他方,全品目をテーブルにのせることは全品目の関税撤廃と同義ではない。
・90から95%を即時撤廃し,残る関税についても7年以内に段階的に撤廃すべしとの考えを支持している国が多数ある。即時撤廃率をより低くすべきとの提案もある。
・包括的自由化がTPPの原則であり,全品目の関税撤廃を目指して交渉を行っている。
・「包括的自由化」の解釈は国によって異なる。
○「センシティブ品目の扱いや除外」について,以下のとおり,各国で内容が異なる発言があった。
・センシティブ品目の扱いは合意しておらず,最終的には交渉次第である。
・全交渉参加国がセンシティブ品目を有しているが,最終的には交渉分野全体のパッケージのバランスの中で決まる。
・除外を認めるべきではないとの合意の下,交渉を進めているが,交渉の最終結果として除外があるか否かは予断できない。
・関税撤廃について特定品目を除外してもいいという合意はない。
・国内産業保護を目的とした除外を得ることは困難。
・現時点で除外を求めている国はない。
・例外なき関税撤廃を実現し,種々のセンシティビティへの対応として7年から10年の段階的撤廃により対応することが,基本的な原則としてすべての交渉参加国で合意されているが,本当にセンシティブな品目の扱いについては今後の交渉を見極める必要がある。
・センシティブ品目への配慮は段階的関税撤廃で対応すべき。
・関税割当は,過去に議論されたことはあったが,もはや議論されておらず,現在の議論の対象は関税撤廃をどれだけの時間をかけて行うかである。
・除外については議論していない。
・除外はTPPの目標と一致しない。 」
(「TPP参加に「極秘条件」 後発国、再交渉できず(東京新聞)」という記事の内容は、添付資料でも、「合意済みの部分をそのまま受け入れ,議論を蒸し返さないこと」の問題として取り上げられている。そこでも、「交渉参加国がこれまで積み上げてきた交渉の成果から新規参加国もスタートする必要があるという意味」として説明されている。加えて、「交渉の進展を遅らせないこと」というテーマで、「交渉の進展に貢献し,遅らせないことは参加のための基準である」とも説明されている。カナダやメキシコが文書を提出したのは、この問題をより明瞭にするためのものと推察できる)
「聖域なき関税撤廃」が条件ではないという話も、そう言えるのは交渉参加の入り口までであり、交渉の過程や結果についてそれが認められているわけではない。
裸で交渉のテーブルにつく義務はないが、裸になるかならないかは、あなたの交渉力次第で、事前には何も保障されていないという話なのである。
また、「TPPの輪郭(アウトライン)」(野田首相がTPP交渉参加を表明したホノルルAPECで出されたもの)が基礎となっており、それには、将来的な関税撤廃を掲げた「(1)包括的な市場アクセス(物品の関税や、サービス貿易及び投資の障壁の除去)」が含まれていることから、たとえ、結果として“聖域”となった品目も、“仮の聖域”であり、1年後なのか10年後なのかはわからないが、将来の関税撤廃が約束させられることになる。
● 日本のTPP参加で米国が狙うもの
米国が日本をターゲットとしている分野は、この40年間で棲み分けがほぼ出来上がっている貿易ではなく、保険を筆頭とした金融や政府調達であり、病院などの経営形態や薬価などに対する政府規制の除去である。
米国との間の農産品貿易も、工業製品ほどではないが棲み分けができており、米の減反政策が米国の主要対日輸出品目である大豆などの増産につながらないよう“配慮”されてきた。
ざっくり言ってしまえば、日米間にFTAやEPAはないとしても、損害保険営業での米国系事業者優先・牛肉月齢問題・過大な医薬品輸入超過などでわかるように、日米の経済関係は、“自由主義”ではなく、政治的な決着=“統制主義”で制御されてきた。
だからと言って、TPPに参加しようがしまいが同じというわけではない。
TPPに参加すれば、TPPの“精神”と条文を盾に、米国系事業者と米国政府が、利を見出した分野に参入したり、“統制主義”を利用して利が新たに生まれる政策を採るよう迫ったりする機会がより増え、実現可能性もより高くなる。
成熟段階に入った先進国では公共事業など政府調達が重要な利益源であり、米国系事業者は、中央政府のみならず地方自治体の調達まで参入しようとするだろう。
また、高齢化社会では医療と医療保険が重要な利益源である。営利事業体として病院経営の参入できること、政府が薬価を抑え込む“暴挙”を制御できること、医療保険の“価値”を飛躍的に高める「混合診療」の解禁は、極めて重要なテーマである。
だからと言って、それらは、米国系企業のみの利益になると決まっているわけではない。日本の企業も、米国系企業との競争に勝てるかどうかはともかく、同じように期待している“成長分野”である。
米国と同程度の成熟段階にある日本については、日本のグローバル企業(大企業)も、営利法人による農業や病院経営への参入、国民皆保険を基礎とした「混合診療」の解禁と拡大で医療保険需要が増大することなどを願っている。
TPP的“思想”は、米国の専売特許ではなく、日本のグローバル企業も共有しているのである。
えぐい言い方だが、TPP参加で日本農業が弱体化すれば、営利事業体による農業参入の道が見えてくるだろう。
損害保険の第三分野のように、政府が規制で意図的に外資の利益を保障しない限り、TPPの果実をより多く得るのは日系グローバル企業になるはずだ。日系グローバル企業の株式保有状況を考えれば、米国支配層もそれでいいのだ、になる。
共同声明に「その他の非関税措置に対処し、およびTPPの高い水準を満たすことについて作業を完了することを含め、なされるべきさらなる作業が残されている」とわざわざ記されているのは、政府統制で米国系企業にも利益が渡るようにしなさいという意味である。
● TPP参加で農産品関税問題が浮上するのは豪州やNZとの関係
TPP参加をめぐる米国との事前協議は公にも終局を迎えたが、豪州やNZとの事前協議は未だ終わっていない。
農産品の関税措置問題は、米国との関係で騒がれてきたが、よりシビアなのは豪州でありNZとのあいだである。
豪州とは、07年からEPA交渉が続いているが、未だ妥結に至っていない。豪から輸入している品目のうち、鉱物資源は相互補完的な品目であるが、農産物の半分以上が米・小麦・大麦・砂糖・乳製品・牛肉・養殖マグロなど日本にとってセンシティブな品目で占められている現実が交渉進捗を阻害している要因である。
違った言い方をすれば、米国との交渉では、日本が工業製品で譲歩することで米国が農産品で譲歩するという駆け引きも可能だが、豪州との交渉では、そのような駆け引きができる余地がない。
(政府調達は豪が守りたい聖域だが、政府調達は、包括的ルールと新興国向け一部例外措置で決まるテーマなので利用できない)
日豪の貿易構造よりさらに厳しい関係が、日本とNZである。日本とのEPA交渉は始まってもいない。自然条件を拠り所にしているNZの輸出に占める一次産品の割合は70%近くに達し、酪農品・肉類・材木パルプ・水産物が主力となっている。材木パルプは補完的なものと言えるが、その他は、日本にとってセンシティブな品目ばかりである。
このように見てくれば、「聖域なき関税撤廃」という言葉に象徴されている農産品の関税措置問題は、米国との間がもっともシビアなわけではなく、豪やNZとの間がもっともシビアであることがわかる。
それは、米国が、豪やNZとの交渉で、乳製品や砂糖などを例外扱いするよう求めていることからもわかる。
バリなどでスーパーマーケットを見た人ならおわかりと思うが、豪やNZから輸入された乳製品が日本の半分から1/5の価格で売られている。バターは、思わず持って帰りたいと手が出るほど安い。
● もっとも憂慮すべきは食糧調達の持続性
TPPをめぐる事前協議で豪州やNZと妥結するために、とりわけNZからOKを取り付けるため、農産品とりわけ乳製品の関税引き下げは必要となるだろう。
豪州やNZとのあいだで乳製品の大幅な関税引き下げが実施されれば、牛肉ほど品質面で違いがないことから、北海道や東北を中心に酪農家は壊滅的影響を被るだろう。
それ自体、日本の国家社会を揺るがす大問題なのだが、中長期的に考えれば、別の問題が浮上してくる。
それは、農業が疲弊していくなかで、食糧の確保が容易ならざる状況に陥る可能性である。
“異常気象”以外の話で、この徴候はすでに見えている。
豪州やカナダが小麦の仕向地を中国に切り替えていることから、日本のうどん向け栽培量が減少し、うどんに適した小麦(粉)の調達が思うようにいかなくなっている。
豪州では、地方政府が音頭をとって中国企業への農地売却を進めている。
また、ご存じのように、豪州は、ここ5年連続で、干ばつ・洪水・山火事が大規模に同時的に発生する“異常気象”に見舞われている。どこ向けに輸出するかという問題はともかく、穀物・肉類・乳製品が、今後も安定的に生産できるかどうかという根本的問題を直視しなければならない状況にある。
アメリカやカナダは「シェール革命」ではしゃいでいるが、農業生産という観点から言えば、大量に水を浪費し化学薬品で土壌と水源を汚染する「シェール革命」は、両国の農業生産力を著しく劣化させる可能性が高い。
人にとって、根源的にはガスや原油よりも大切な水を、頁岩からガスや原油を採取するために大量に消費するという愚かなことを行っているのが「シェール革命」である。おまけに、ガスや原油を採取したあとの薬品まみれの水が環境にそのまま置かれているケースが多い。
米国の農業は略奪型で、ただでさえ水不足や表土流出で苦しんでいる。そのような農業生産力の悪化に輪をかけようとしているのが「シェール革命」なのである。
現在のところは、日本人の平均購買力はアジアでダントツに高い。しかし、台頭著しい中国はその勢いが衰えるとしても、人口が13億人を超えていることから、乳製品の購買力でもほどなく日本を凌駕するだろう。平均購買力はまだまだのインドネシアも、人口は2億4千万人近い。
日本の今後を考えたとき最も憂慮すべき事態は、農業の弱体化と食糧確保の困難が重なってしまうことである。
TPP参加後の数年間は、アジア一の質を誇る日本の購買力をめざして農水産品が輸出されるだろうが、それが継続される保障はない。
基本は、生産(供給)量と需要量のバランスである。日本や中国に輸出してもなお余剰気味の農産品は、確保でき、価格もほどほどで済む。しかし、生産量は同じでも、日本以外のどこかで需要が増大すれば、物不足に陥り、より高く売れるところに輸出される。これは、需要が同じでも、生産量が減少すれば同じ状況になる。
そして、そうなったとき、日本の供給力はそれまでの輸出増加の打撃を受けて劣化しており、すぐに国内で自給できるわけではない。
国家と国家の関係で言えば、個々の品目の輸出優先度は、総体的な経済関係に影響を受ける。
豪州とのEPA交渉が始まった07年の日本は、オーストラリアにとって最大の貿易相手国であり、長年にわたって最大の輸出市場であった。しかし、11年は、輸出先として、中国が25%、日本は19%と逆転し、その差は開く一方である。
貿易総額で比較すると、日本567億ドル・中国893億ドルとなっている。
NZも、11年の貿易総額序列は豪州(19.3%)・中国(14.1%)・米国(9.3%)・日本(6.7%)で、輸出序列は豪州(22.8%)・中国(12.3%)・米国(8.4%)・日本(7.2%)となっている。
このような経済関係性を考えれば、輸出できる農産品が限られているとき、どこの国が優先されるか自ずと見えてくる。
目先のGDP増加やグローバル企業の利益を重視するのは、ほどほど(節度を保ったもの)でなければならない。
おカネを食べるわけにはいかず、石油を飲むわけにはいかず、天然ガスを吸うわけにはいかないのである。
※ 添付資料
付録1:
【日米の共同声明】日米首脳会談2月22日
両政府は,日本が環太平洋パートナーシップ(TPP)交渉に参加する場合には,全ての物品が交渉の対象とされること,及び,日本が他の交渉参加国とともに,2011 年11 月12 日にTPP首脳によって表明された「TPPの輪郭(アウトライン)」において示された包括的で高い水準の協定を達成していくことになることを確認する。
日本には一定の農産品,米国には一定の工業製品というように,両国ともに二国間貿易上のセンシティビティが存在することを認識しつつ,両政府は,最終的な結果は交渉の中で決まっていくものであることから,TPP交渉参加に際し,一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認する。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/s_abe2/vti_1302/pdfs/1302_us_01.pdf
付録2:
「TPP の輪郭」(概要)
平成2 3 年1 2 月
外務省経済連携課
11月12日にTPP参加9か国が発出した「TPPの輪郭」の概要は以下のとおり。
1.協定の5つの特徴
(1)包括的な市場アクセス(物品の関税や、サービス貿易及び投資の障壁の除去)
(2)地域全域にまたがる協定(地域の生産・サプライチェーンの発展を促進)
(3)分野横断的な貿易課題(規制制度間の整合性確保、競争力強化とビジネス円滑化、中小企業によるTPP の利用、開発(協力))
(4)新たな貿易課題(デジタル経済やグリーン・テクノロジー等の貿易や投資の促進)
(5)「生きている」協定(将来の貿易の課題や新規参加国の追加に伴う課題に対処するための協定の更新)
2.範囲
(1)全ての重要な貿易及び貿易関連分野、これには、新たな貿易課題や分野横断的課題も含む
(2)特定の市場アクセスの約束(物品の貿易、サービス貿易、政府調達)
(3)高い基準の採用と、途上国メンバーのセンシティビティ等への適切な対応
(4)新しい分野横断的約束(中小企業の国際貿易への参加の促進等)
3.協定条文案
事実上全ての交渉グループで統合条文案を作成。いくつかの分野でほとんど完成している一方で、更なる作業を要する分野もあり、各国意見の相違点については、括弧が付されている。以下の事項について交渉中の課題とその進捗状況につき要点を記載。
@競争、A協力及び貿易に関する能力の構築(「協力」)、B越境サービス、C税関(「貿易円滑化」)、D電子商取引、E環境、F金融サービス、G政府調達、H知的財産、I投資、J労働、K法律的事項(「制度的事項」及び「紛争解決」)、L物品市場アクセス、M原産地規則、NSPS(衛生植物検疫)、OTBT(貿易の技術的障害)、P電気通信、Q一時的入国(「商用関係者の移動」)、R繊維・衣料品(従来は「市場アクセス」に分類)、S貿易救済
(注)@〜Sは、従来、我が国が作成してきた資料における21分野と基本的に同じものであるが、「21分野」と名称が異なっているものには下線、分野が結合・分割されているものには点線を付している。括弧内の斜体字は、従来用いてきた名称等。
4.市場開放のパッケージ
(1)物品貿易:関税譲許表はすべての品目(約11,000のタリフライン)をカバーする。また、共通の原産地規則を作成中。
(2)サービス・投資:すべてのサービス分野をカバーし、高水準の成果を確保するため「ネガティブ・リスト」方式を基礎として交渉中。
(3)政府調達:相互のセンシティビティを認識しつつ、参加国相互の政府調達市場へのアクセスを最大にするよう交渉中。
5.今後の予定
TPP参加9カ国の首脳は、12月の初めに交渉担当者が会合を開き、その際に追加的
な交渉会合の日程を調整するよう指示。
(了)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/tpp/pdfs/tpp20120327_03.pdf
付録3:
TPP交渉参加に向けた関係国との協議の結果(米国以外8カ国)
平成24年3月1日
内閣官房,外務省,財務省,農水省,経産省
関係省庁担当者を派遣して,ベトナム(1月17日),ブルネイ(同19日),ペルー(同24日),チリ(同25日),シンガポール(2月9日),マレーシア(同10日),オーストラリア(同21日)及びニュージーランド(同23日)とそれぞれTPP交渉参加に向けた協議を行ったところ,その結果は以下のとおり。なお,本資料は,各国の発言振りを記載したものであり,国によって一部発言内容に違いがある。
(注)なお,TPPの各分野の交渉の現状についての情報は別途公表する予定。
1.日本の交渉参加に関する各国の立場
(1)基本的な立場
○以下の発言があった。
・日本の交渉参加を支持することを決定した。
・日本の交渉参加を強く支持する。
・新規交渉参加を認めるための手続として,関係大臣を含む委員会の決定等が必要だが,特段の問題はない。
・日本のTPP交渉参加への関心を歓迎し支持する。
・日本のTPP交渉参加への関心を歓迎する。日本が包括的で高い水準の協定,特に包括的関税撤廃という目標に応えられるのかが関心事項であり,確信を得たい。日本の交渉参加に関しては引き続き検討したい。
・日本の交渉参加への関心を歓迎する。日本がTPPについての結論に至ることを期待している。日本は交渉参加の基準に適合することをまだ示し得ていない。
(2)日本の交渉参加の条件
○日本に交渉参加の条件として求めるものについては,いずれの国も, そうしたものはないと述べた。
2.新規交渉参加について
(1)参加に向けたプロセス
○交渉参加に向けたプロセスとしては,複数の国が,@全交渉参加国との個別協議,A全交渉参加国による交渉参加の承認,というプロセスを経る必要があると述べた。
(2)新規交渉参加国に求める共通の条件
○「包括的で質の高い協定への約束(コミットメント)」について,以下の通り,参加の条件かどうか等について各国で内容が異なる発言があった。
・包括的で質の高い自由化へのコミットメントを交渉参加の条件として9カ国で同意しているわけではない。
・事前に除外を求めることなく,全てを交渉のテーブルにのせ,包括的自由化にコミットすることが参加の条件である。
・包括的で高いレベルの自由化へのコミットメントは交渉参加の前提条件ではないが,交渉参加国間で共有されている野心を共有することが求められる。
・包括的かつ高いレベルの自由化へのコミットメントについては具体的な判断基準はない。
・包括的かつ高いレベルの自由化の水準にコミットすることは,参加のための基準である。
・TPP交渉の広い範囲や,TPP交渉の高い水準を受容するとの基準を満たせるかに関心がある。
○「合意済みの部分をそのまま受け入れ,議論を蒸し返さないこと」について,以下の発言があった。
・交渉参加の条件として9カ国で合意したものではない。
・そうした事態(議論を蒸し返すこと)は避けたいが,重大な判断を要する事項はこれまで合意されていない。
・交渉参加国がこれまで積み上げてきた交渉の成果から新規参加国もスタートする必要があるという意味である。
○「交渉の進展を遅らせないこと」については,以下のとおり,各国で内容が異なる発言があった。
・交渉参加の条件として9カ国で合意したものではない。
・交渉の進展に貢献し,遅らせないことは参加のための基準である。
○上記に関し,以下の発言があった。
・日本を含む交渉参加候補国は「TPPが目指している高い野心へのコミットメント」及び「交渉の勢いに貢献し,交渉を遅らせないこと」との基準に適合することを明確な証拠をもって示す必要がある。
3.関税撤廃の扱い
○交渉対象については,全てを自由化交渉の対象としてテーブルにのせなければいけないことは,各国とも認識を共有していた。
○「関税撤廃の原則」について,以下の発言があった。
・長期の関税撤廃などを通じて,いつかは関税をゼロにするというのが基本的な考え方である。
・全品目の関税撤廃が原則,他方,全品目をテーブルにのせることは全品目の関税撤廃と同義ではない。
・90から95%を即時撤廃し,残る関税についても7年以内に段階的に撤廃すべしとの考えを支持している国が多数ある。即時撤廃率をより低くすべきとの提案もある。
・包括的自由化がTPPの原則であり,全品目の関税撤廃を目指して交渉を行っている。
・「包括的自由化」の解釈は国によって異なる。
○「センシティブ品目の扱いや除外」について,以下のとおり,各国で内容が異なる発言があった。
・センシティブ品目の扱いは合意しておらず,最終的には交渉次第である。
・全交渉参加国がセンシティブ品目を有しているが,最終的には交渉分野全体のパッケージのバランスの中で決まる。
・除外を認めるべきではないとの合意の下,交渉を進めているが,交渉の最終結果として除外があるか否かは予断できない。
・関税撤廃について特定品目を除外してもいいという合意はない。
・国内産業保護を目的とした除外を得ることは困難。
・現時点で除外を求めている国はない。
・例外なき関税撤廃を実現し,種々のセンシティビティへの対応として7年から10年の段階的撤廃により対応することが,基本的な原則としてすべての交渉参加国で合意されているが,本当にセンシティブな品目の扱いについては今後の交渉を見極める必要がある。
・センシティブ品目への配慮は段階的関税撤廃で対応すべき。
・関税割当は,過去に議論されたことはあったが,もはや議論されておらず,現在の議論の対象は関税撤廃をどれだけの時間をかけて行うかである。
・除外については議論していない。
・除外はTPPの目標と一致しない。
4.妥結の見通し,今後のスケジュール
(1)妥結の見通し
○以下の発言があった。
・現実に可能かどうかは誰にも分からないが,交渉の進んでいるいくつかの分野については,6月か7月に実質合意すべく交渉を加速化している。
・全体として30%程度しかできあがっていない状況であり,7月の合意は極めて難しい,(実質合意に近いとされる)分野であっても,約20条のうち1条しか合意していない。
・本年中に(市場アクセスを除く)ルールの大部分は合意可能であるが,センシティブな部分はもう少し時間がかかる。
・非常に難しい交渉であり,実際の妥結時期は誰にも分からない。
・本年6月初旬のAPEC貿易大臣会合までに条文案について実質合意することを目標にしている。
・2012年中に交渉を終えるべく協議を進めており,7月頃が重要なポイントとなる。
・ホノルルでのAPECの機会に貿易大臣が合意したとおり,年内の実質合意を目指している。
(2)今後のスケジュール
○3月1日〜9日の豪州メルボルンでの会合を含め,本年5回の交渉会合が予定されている,また,必要に応じて,分野を限定した中間会合を開催する予定であるとしていた。
5.オブザーバー参加,交渉条文案の提供
○交渉参加に向けた協議を行っている国のオブザーバー参加は認めないこと,交渉条文案は交渉参加国以外には共有しないことについては,各国とも認識を共有していた。
(以上)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/tpp/pdfs/tpp01_13.pdf
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