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「安倍首相は本当にしたたかになった」 長谷川幸洋氏《対談》高橋洋一氏
http://ameblo.jp/heiwabokenosanbutsu/entry-11483012804.html
週刊ポスト2013/03/15号 頁40 :大友涼介です。
6年の時を経た安倍氏の変化を、周囲はどう感じているのか。安倍氏の「経済ブレーン」といわれる高橋洋一氏と、安倍氏を長く取材し、政府の規制改革会議委員も務める長谷川幸洋氏が緊急対談した。
週刊ポスト:「ブレーン」といわれる2人から見ても、安倍政権は成功している?
長谷川:私はブレーンではないですよ。(笑)だから言いたいことを言うけど、確かに安倍政権の支持率が70%にまで上がったが、実はまだほとんど何もしていない。2%の物価目標を日銀と結んだだけ。大胆な金融緩和もこれからです。正しい金融政策を掲げ、それにマーケットが反応し、株高・円安になったことが大きいでしょう。
高橋:民主党がまともなことをやらなさ過ぎたからね。インフレ目標や金融緩和というのは世界的にみれば左派の政策で、本来なら民主党がやるべきだった。私もブレーンという言葉は嫌いで、というのも安倍さんから聞かれれば答えるだけだから。金融緩和だって、私はずっと民主党にやれと言い続けていて、連合の古賀伸朗会長も興味を持っていたのに、民主党の執行部はやらなかった。それを安倍さんは見ていたんだろうね。
長谷川:そう。安倍さんは、当たり前の政策をやると言っただけ。
高橋:だけど、マーケットでは政権発足前から結果が出ているから。株や為替で勝負している人は、昨年11月の解散段階、もっと早いと9月から張っていて、なんだか知らないが私のところにはお礼のメールたくさん来ました。「儲かりました、ありがとうございます」って。(笑)オレ、何もしていないよ。
長谷川:まあ、儲かって文句言う人間はいないよね。
週刊ポスト:安倍首相といえば、安全保障や歴史認識などの保守的なイメージが強いが、いつから経済・金融政策に興味を持ったのか。
高橋:メディアでは安倍さんは経済が苦手だと書かれているが、彼は細かい産業政策などチマチマした話に興味がないだけ。総理は一段高いもっと大きなことをやるべきだと考えていて、実は前政権時代から「マクロ経済に興味がある」と言っていた。それをこの5年ほど、勉強し続けていた。
安倍さんは震災後からデフレ・円高解消の勉強会をやろうと言い出し、議連をつくった。当時から、人集めに動き出していたんです。
長谷川:その後、与野党一緒に「デフレ脱却議連」をつくったんですよね。超党派の議連で、会長をどうするかということになって、山本幸三衆院議員に頼まれて会長まで引き受けた。
高橋:そのくらいマクロ経済や金融政策に関心があったし、その頃から多数派工作も考えていたんだと思う。
長谷川:ところで、安倍さんの経済政策のブレーンである浜田宏一氏を紹介した人物というのはずばり高橋さんでしょう?
高橋:そうなの。(笑)浜田先生とは昔からの知り合いですが、先生は安倍フェローシップから研究資金を貰っていたので、「安倍さんに会われますか?」と聞いてセッティングしたことはある。安倍さんもすでに金融を勉強していたから。
長谷川:彼は世界標準、グローバルスタンダードにこだわっている。金融でも規制緩和でも、それから国防軍という名前まで世界標準に合わせようとする。
高橋:こういう姿勢はブレていないというより、DNAだね。細かいところに目が行く人と、そうでない人がいる。安倍さんは、大きなことに目が行くDNAなんでしょうね。
◇北の核実験を待っていた
週刊ポスト:安倍氏の政治姿勢は変わらなくても、政治手法は変わったのでは?
長谷川:確かに、6年前とは変わった。前政権は正しい政策を目指したが、やり切る政治力がなかった。
高橋:同感です。今の安倍さんはかなり慎重に物事を進めています。
長谷川:自分の基盤や政治力を冷静に見極めて、自分にできることをやろうとしている。たとえば日銀総裁人事にしても、以前なら財務省OBの黒田東彦氏はNGだったはず。本当の改革路線、財務省レジームからの脱却を目指すなら竹中平蔵氏だが、麻生太郎財務相は絶対にイヤだと言うでしょうし、財務省も抵抗する。そこで次善の策をして、金融緩和ができる黒田氏がいいじゃないかと。非常に柔軟だった。ただし同じ財務省OBでも武藤敏郎氏ではない。NHKをはじめメディアは財務省の情報に乗って武藤氏と書き立てたけど、はっきり言って安倍さん自身は初めから武藤氏なんて一度も考えてなかった。これは間違いないです。
高橋:黒田人事はかなり用意周到に進められていたと思う。安倍さんは黒田氏に、訪米前にすでに打診していた。そのうえで、日米首脳会談でオバマ大統領に、日銀総裁人事の話をしていると思います。なぜかというと、黒田氏はアジア開発銀行(ADB)総裁で、彼が抜けた後の人事があるから。ADBに対する出資比率は日本とアメリカが16%で一番多いので、両国で協議することになり、事前に伝えておく必要がある。つまり、訪米前には決まっていた。
長谷川:訪米直前に、真砂靖事務次官ら財務省の官僚3人が総理のところに行っていたが、その時点でもう決めていたんだ。
高橋:この頃の政治日程も非常に練られていた。2月12日の北朝鮮の核実験の後、同22日から日米首脳会談があり、今、日銀の総裁人事をやっている。これが役人の発想だと、国会の合間にあたる1月下旬に日米首脳会談をセットするが、「オバマ側の日程が合わない」とか、なんだかよくわからない理由でズラしたでしょう。私は、安倍さんは北朝鮮の実験情報をつかんでいたとみている。
長谷川:北朝鮮ファクターは非常に大きくて、ミサイル打ち上げに続いて核実験にも成功したら、アメリカとは「日米同盟を強固に」という話になる。日米関係という大きなレジームのもとでは、TPPは当然だし、日銀人事や金融緩和なんて些細なことで、アメリカは容認、というか高く評価するに決まっている。そう考えると実にしたたかですよ。
高橋:日銀総裁の人事も3月19日までに決めればいいことなのに、今からやっているのは、TPPと同時並行することで話題を分散させ、批判が起きることを避けようとしているわけです。
長谷川:国会対策も非常に周到だった。首相就任後に野党政治家と会った順番はどうだったか。まず1月11日、大阪まで出向いて橋下徹氏と会い、続く13日に私邸に新党改革の荒井広幸幹事長を招いて会食し、最後に19日、渡辺喜美氏とキャピトル東急で会食した。
票数からいえば、維新は3票、荒井氏は参院の首班指名で新党改革含め5票をまとめた功労者。みんなの党は11票(当時9です。しかし会った順番は票数と逆の順番にしたところが見事で、最後に橋下氏に行っていたら「俺たちは刺身のツマか」と思う。気配りができるようになった。
高橋:もう一つ変化したといえば、首相の周囲から情報が漏れなくなったこと。喋ると人事は絶対漏れる。6年前は漏れていたから、誰かが喋ってたんじゃないか。
長谷川:私にも高橋さんにも電話してきますけど、私たちは「評論家」として意見を言うだけ。政治家としての判断はあくまで自分一人でするし、それを外に漏らさないようになった。
高橋:そこが小泉(純一郎)さんとの違いですね。彼は郵政民営化以外はすべて竹中平蔵氏や飯島勲秘書官に丸投げしていたから、彼らを見ていればどこに着地するかがほとんどわかった。でも、安倍さんは今回の人事にしても、私たちが見ていてもわからないんだから。
長谷川:とにかく安倍さんは慎重になった。その理由は今回の政権発足の経緯にある。12月に政権が発足した時点では、非常に基盤の弱い政権だったんですよ。総裁選では地方票で石破さんに負け、総選挙で自民党は勝ったけど、投票率は10ポイントも下がった。国民は醒めていて、票も伸びたわけじゃない。それに相変わらずねじれ国会です。党内、党外、国民に圧倒的に支持されたわけじゃないからこそ、できることをやり切るという姿勢に徹したのだと思う。ただ最近の高支持率、それと北朝鮮ファクターがあってTPPや農業問題では強気に出始めている。慎重さから少し変わりつつあるように見える。
◇今の安倍人気はバブル
週刊ポスト:安倍政権に死角があるとしたらどこか。
長谷川:今の安倍人気はバブルに近い。最初に言いましたが、金融緩和も予算執行も規制緩和も、まだほとんど何もやっていない。この点を忘れてはいけない。
農業にしろエネルギーにしろ、介護にしろ、規制緩和ができないと安定成長の道は難しい。金融緩和でマクロ経済を浮かせるのは景気の下支えをするだけで、今年限りの政策でしかない。来年以降の成長は規制改革にかかっていて、ここが安倍政権の正念場だと思う。
高橋:私は役人に足を引っ張られることを懸念している。先日、時事通信の報道で、私が経産省主導の産業競争力会議事務局に常勤で入ると出た。今の仕事を辞めて、いまさら課長補佐クラスの常勤で官僚に戻るなんて有り得ない。こんなデタラメな話がどうして出るか。役人が記者にそういう話をリークしたからでしょう。当然この人事はないわけだから、後で「甘利明経済再生相が難色を示したからだ」という話になる。つまり、官僚たちが甘利さんの顔を潰したかったんじゃないか。こういうことをやる官僚がいるからね。
長谷川:6月に競争力会議と規制改革会議の報告書が出ますけど、どういうものが出てくるかが勝負です。
高橋:私の予想だと、経産省だから、民主党のときの報告書から言葉尻だけ変えたほぼ同内容の報告書が出てくるよ。
長谷川:ターゲティングポリシー(特定産業分野の戦略的育成)ですね。これは、特定の産業を依怙贔屓して補助金や減税をばら撒く政策です。かつての「専務理事政策」みたいなもの。補助金をあげるから業界団体をつくれ、うちのOBを専務理事にしなさいという天下り先をつくるための政策。この言葉を何年も前に私に教えてくれたのが、実は安倍さん本人で「こんなのは、もう卒業しないと駄目だよね」と言っていた。だから今回、安倍さんは中身次第と思っているでしょう。
高橋:報告書は6月だよね。役所はね、くそ忙しい最中にいろいろ画策するんだよ。それで6月にこっそり出す。出てきたものに対して「なんでこんな報告書が出てくんだよ」ということになりかねない。役人の野放図をどこまで監視できるか。これが安倍政権の今後を左右すると思います。
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