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安倍政権がTPP参加に舵を切った理由は簡単だ。安倍総理の周囲にいる経産官僚がそれを望んでいたからだ。また、安倍総理が実質的に消費増税を棚上げしているのも、財務官僚が力を失っていることが原因だ。
現在の安倍政権は、安倍総理や閣僚の意見ではなく、官邸にいる官僚の意見によって動かされている。今後の政治を分析するためには、政治家ではなく官僚の言動に注目すべきだろう。
『月刊日本』3月号より
http://gekkan-nippon.com/?p=4777
官邸の権力が強大化しつつある。彼らは議会だけでなく、党をも無視して政治を行おうとしている。しかし、それは安倍総理の主導によるものではない。その主体は官邸に属する官僚たちである。現在生じつつある「安倍超然内閣」の本質は、安倍総理からも超然とした「官僚超然内閣」なのである。
本当の主権者は誰か
民主主義国家に生きる我々日本国民は、自分たち国民こそが主権者であり、政治は主権者である国民が選んだ政治家によって行われているということに疑いを持っていない。しかし、ドイツの法学者、カール・シュミットが述べるように、主権者とは例外状態に関して決断を下す者のことである。ここで言う例外状態とは戦争状態のことである。すなわち、戦争になった時に初めて、本当の主権者が誰であるかが明らかになるのである。
小野寺五典防衛相は2月5日、1月30日に中国海軍の艦船が海上自衛隊の艦船に向けて火器管制レーダーを照射していたことを発表した。また、これに併せて、1月19日にも別の中国艦船が海自ヘリコプターに向けてレーダーを照射した疑いがあることを明らかにした。
こうした事態を受けて、外務省は中国側に対して厳重抗議を行った。しかし、それは小野寺防衛相が事実関係について発表したのと同じ2月5日のことだった。発生から既に1週間も経過しており、防衛省からの連絡や発表が遅れたことについて批判の声があがっている。
なぜ発表は遅れたのか。巷間では、事務方が対中関係を考慮して慎重に分析を行ったためだと言われている。しかし、元政府高官は、発表の遅れの原因は、官僚たちが情報をあえて政治家まで上げようとしなかったことにあると指摘する。それだけでなく、官僚は情報を先にアメリカに伝え、日本政府はアメリカを通じてその情報を知った可能性さえあるという。
官僚が政治家に情報を上げなかった理由は単純である。政治家に伝えれば、情報が外部に漏れてしまう危険性があったからだ。要するに、政治家が官僚から信用されていないということだ。
もっとも、これは今日に始まったことではない。自民党の平沢勝栄議員によれば、平沢氏が警察官僚だった時も、情報を上げるかどうかは大臣によるところが大きかったという。たとえば、後藤田正晴は信用できるので情報を上げる、といったように。
今回のレーダー照射によって生じた戦争一歩手前の状況は、国民や政治家にとっては唐突なことのように見えるかもしれない。しかし、常に戦争に備えている軍隊(官僚)にとってはそうではない。彼らは国民や政治家と関わりなく、長期的な計画を立てたり、あるいは情報収集を行っている。米軍と自衛隊の一体化がまさにそれを象徴している。
その意味で、例外状態における決断者とは常に官僚なのである。今回の事件は図らずも、日本国家の主権者が国民でもなければ政治家でもなく、官僚であるということを露呈させることとなった。(以下略)
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