06. 2013年2月28日 02:12:26
: Zag6oDNMIo
ネット選挙解禁は政治制度革新の起爆剤となるか ソーシャル化する社会が世界を大きく変え始めた(27) 2013年02月28日(Thu) インターネットによる選挙運動が7月の参院選から解禁される方向で調整が進んでいる。2月22日、自民・公明両党が電子メールを除いて全面解禁する公職選挙法改正案を与野党協議会で示し、日本維新の会なども同調した。 自公両党は今国会での公職選挙法改正案成立を目指す〔AFPBB News〕
有権者への電子メールの利用に関しては、自民・公明両党が政党と候補者のみに認めることを主張し、日本維新の会、生活の党、社民党、みどりの風、新党改革が賛同している。 これに対し、民主党とみんなの党は電子メールの利用を第三者も含めて解禁するように求め、共産党は第三者の電子メールの利用は個人に限り、企業や団体は含めないよう主張。この意見の相違についてはまだ互いに妥協点を模索している状況だ。 いずれにせよ、ネット選挙解禁はカウントダウンに入っている。 ネット選挙を選挙戦術の1つだと矮小化してはいけない 2月19日、憲政記念館にて「ソーシャルメディアが政党政治に引導を渡すのか?」と題された討論会(ソーシャルメディアウィーク東京2013)が行われた。 この討論会には、各党の議員や、思想家の東浩紀氏、グーグル日本法人前社長の辻野晃一郎氏、ジャーナリストの津田大介氏とともに、僕もスピーカーの1人として参加し、ソーシャルメディアと政党政治について議論を行った。 ネット選挙解禁を目の前にしたいま、ネットを選挙活動に利用し、来るべき7月の参院選で有利に選挙戦を展開したいという点に政治側の視点がひとまず偏重している感がある。 しかし本来は、その視点にとどまることなく、ネット、ソーシャルメディアと政治や選挙が接近することで、これからの政治や選挙制度のあり方そのものも併せて見直していく必要があると考えている。 「ソーシャルメディアが政党政治に引導を渡すのか?」というこの討論会のテーマも、そこで重要となるアジェンダのひとつだ。 そもそも政党とは、政治における主張や政策に共通点のある者同士が集まり、意見の集約と政策の統一を図りながら、政策の実現に向けた活動などを行う団体だ。 歴史的に、政党は特定の階級や階層、利益団体の意見を反映する機能を担ってきた。しかし、日本ではそれらの色彩が次第に弱まる一方で、国民それぞれの意見が多種多様化、個々にバラバラの行動を取る傾向が強まり、その機能を見失いかけている側面がある。 その傾向の中で、政党が持つ本来の意味合いが発揮されず、議員になるためだけの団体ではないか、それにより単に寄せ集め的な団体が形成されているのではないか、議席を持つことで利益分配をするだけの団体ではないか、という国民の印象が増し続けてきたことは否めない。 特に党内での対立の構図は、そこにダメを押す。昨年の消費税増税に関する与党内の対立などは、政党政治への不信感をいっそう募らせる一因になってしまったのではないだろうか。 ネットやソーシャルメディアは行き詰まる政党政治をどう変える 政党政治が抱える課題の露呈は日本に限らない。2010年のイギリスの総選挙においてはいずれの党も過半数を取れず、2大政党それぞれが民意を吸収しきれないという現象を生んだ。 これは、政治、経済、社会環境や問題が複雑化し、変化も加速度的である中で、そもそも全ての争点への見解を1つの党単位で統一的に応えることが困難となり、国民も1つの党を選択することが容易ではなくなっていることの表れだと言えよう。 民意が多様化し、論点が増えれば増えるほど、政党がその機能を果たすハードルが上がり、結果的に民意と政治を分断してしまうことになりかねない。 政党政治がそのような課題を抱える中で、ソーシャルメディアが社会に浸透し始めた。 ソーシャルメディアは、個人をメディア化し、広域に情報を発信できる可能性を付与した。そして個人と個人がつながる手段を多様化した。 これは奇しくも、政党政治のジレンマから脱するための1つの活路として、政治家個人へ政治を託すような考え方を促す要素になり得る。「ソーシャルメディアが政党政治に引導を渡すのか?」というアジェンダも、まさにそんなところから生まれたものだ。 ソーシャルメディアは政治家個人と有権者個人を結びつける手段となり、これまでのメディアが持っていた一方通行の政治コミュニケーションの形態を、双方向的に変えていくことになる。 それと政党政治への不信感が重なる中で、政党政治から政治家という人物重視の政治へ、という視点も育ってくる。 台湾では1996年から直接選挙で総統を選ぶようになり、フランス大統領選挙も直接選挙、アメリカ大統領選も事実上直接選挙のようなものだ。 日本でも、首相公選制が長年にわたって議論されているが、これは政党政治への疑念や不信感を背景とした面もあるだけに、政党よりも人物重視の流れの中のトピックとして再燃する可能性がある。 ネット選挙解禁は政治にイノベーションを生むきっかけに もちろん、政党が果たすべき機能には依然として意義があり、政治家単位で政策を遂行することは現状では難しい。人物重視の政治を実現するためには、選挙制度をはじめ、政治家個人に政治を信託する仕組みそのものを総体的に見直さなければならない。 いずれにせよ、ネット選挙解禁は、政党政治を含め、従来の政治が抱えている課題をあらためて直視し、イノベーションを生むきっかけと捉えるべきではないだろうか。 選挙公報の手段としてのネット選挙という観点だけにとどまると、ネット選挙解禁によって本来果たせるはずのイノベーションを不完全燃焼なものとしてしまう。それでは、あまりにももったいない。 何しろ、ネットは選挙の時だけのものではない。日々の政治活動の中でどのように継続的な活用をすべきかを考える必要がある。 ネット選挙解禁までの道のりは紆余曲折、随分と時間がかかったが、本当に重要なのは解禁してからだ。解禁までの議論はさることながら、実地の試行錯誤の中で、その可能性を最大化させていかなければならない。 |