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2013年2月26日 植草一秀の『知られざる真実』
日本のマスメディアは安倍晋三氏の訪米を持ち上げる報道を懸命に展開しているが、壮大な三文芝居、茶番の域を出ていないことは誰の目にも明らかだ。
安倍晋三氏がオバマ大統領にゴルフのパターを贈呈し、
Get in the hole! Yes, we can!
とジョークを飛ばしたとメディアは伝える。
そのうえで、こうした当意即妙のやりとりがあったおかげで、日米首脳会談で「聖域なき関税撤廃」を前提としないことが確認され、日米共同声明が発表できたのだという。
さすがは、「やらせ」と「仕込み」を専売特許とする日本のマスメディアである。
こうした報道を繰り返し、安倍訪米が成功であったとのイメージ・キャンペーンが展開されている。
ここまでやると、よほど間の抜けた人でなければ、逆に報道に対する不信感が増幅されるばかりである。
スポンサー収入が減ったテレビ局と出演料が減少したタレントのタイアッププログラムである、テレビを活用した通販番組、別名、「売りつけ番組」の仕様とほとんど変わらない。
「青汁○○」の売りつけ番組などでは、飲食店を経営する主人が出てきて、朝から晩までの激務で成人病体質になり、ついに脳卒中で倒れてしまう。
ところが、その後に「青汁○○」に出会ったおかげで、いまでは元気はつらつ、血糖値も血圧も下がって、健康三昧の生活を送っている。
あるいは、床に鍋の汁をこぼしてしまってカーペットを汚してしまった。
しかし、この「○○クリーン」を使って、カーペットをひとつまみするだけで、あらびっくり。カーペットのシミもすっかりきれいになった。
スタジオの観客が一斉に感嘆の声をあげて拍手喝采。
こんな「やらせ」プログラムが専売特許というのが、日本のテレビメディアである。
安倍晋三氏は「聖域なき関税撤廃を前提とする限り、TPP交渉には参加しない」とのフレーズを、常に一字一句違わぬように発言してきた。
そして、年が明けて、日米首脳会談が2月末に先送りされてしまうと、今度は、
「聖域なき関税撤廃を前提とするのかどうかを日米首脳会談で直接私が確かめて判断したい」
と言い始めた。
完全なる「やらせ」、「出来レース」、「三文芝居」、「茶番」である。
「TPPに聖域を設ける」
「日本の国内事情を鑑み、コメ、小麦、乳製品、牛肉、砂糖については例外措置を認める」
ことを安倍氏が交渉を通じて勝ち取ったというなら、それは一定の成果と言えるだろう。
しかし、一連のやり取りで明らかになったことは、
「一方的に全ての関税を撤廃することをあらかじめ約束することを求められるものではないことを確認」
しただけである。
その一方で、
「全ての物品が交渉の対象とされること」
が明記された。
さらに、
「日本が「TPPの輪郭(アウトライン)」において示された包括的
で高い水準の協定を達成していくことになること」
も確認されている。
つまり、消費税増税法案に賛成する条件として、景気条項をつけるような話でしかない。
「例外なく消費税率を引き上げることを前提とする以上消費税率引き上げ法案には賛成できない」
と主張していた人が、
「例外なく消費税率を引き上げることをあらかじめ約束することを求められるものではない」
ことを確認したとして景気条項を付けた消費税増税法案に賛成するようなものだ。
景気条項とは、「2013年10月までに経済状況を踏まえて消費税増税の実施を最終判断するもの」というもの。
これが「単なるお飾り」で、消費税増税を強行実施するための、一種の「偽装工作」であることは誰もが知っている。
「聖域なき関税撤廃」を前提とはしないということだから、たったひとつでも例外品目が設定されることになるのだろう。
しかし、そんな些細な一事とTPP参加という重大事を取引できるわけがない。取引すべきでもない。
言葉の偽装、レトリック、一種のペテン=詐欺を用いて、このような重大事を押し通し、その欺瞞を糊塗するために、メディアが政府絶賛報道を展開する。
これは小泉竹中政権による「りそな銀行救済劇」のパターンとまったく同一だ。
「自己責任原則の貫徹」が崩壊して「公的資金による銀行救済」に堕落した政策対応を日本経済新聞が「画期的な金融改革」と偽装報道した。これで汚点となる政策対応が正義の政策対応に塗り替えられた。
米国がシナリオを描き、米国の僕(しもべ)たちが台本通りに三文芝居を演じているだけに過ぎない。
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