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映画「フード・インク」を見て、TPP参加の恐ろしさをまざまざと見せつけられた。題名の「フード・インク」とは「食品の株式会社」という意味である。内容はアメリカの食品に提供される肉や穀物などが、穀物メジャーや数社の大手食肉会社などに寡占されていて、これらの大会社が生産農家に安全性、エコロジー、生産の持続可能性などを無視した非道な生産手法を強要しているという現実を紹介している。
例えば牛や豚や鶏などは早く効率よく育てるために、本来の餌ではない飼料を与えたり、成長ホルモン剤や強い抗生剤などを投与したりしている。わずかな数の大手穀物会社、食肉加工会社などが莫大な利益を得る一方、彼らの下請けになる一般農家は、酪農や穀物栽培を問わず、過酷な条件を強いられている現状が描かれている。これに比べれば、日本の農家が農協に牛耳られていることの二桁くらいの過酷さがあるように思える。
例えばNAFTA(アメリカ、カナダ、メキシコの3か国が締結した北米自由貿易協定)によって、メキシコのトウモロコシ農家は、米国産の安いトウモロコシが輸入されて事実上壊滅状態になった。やむなく廃業となったトウモロコシ農民は移民となって、他の不法移民と共に米国の大規模な食肉工場で働くケースが増えているという。この食肉工場は不衛生でかなり危険であり、ファスト・フードと同じような流れ作業における単一労働を休みなく強いられる。解体される家畜の糞尿が肉に混じる確率も非常に高いようである。
この話は日本における米国産牛肉の輸入にも大いに関係がある。安倍政権になってから厚労省は、輸入牛肉の規制対象を「生後20カ月以下」に限っていたものを「生後30カ月以下」に、除去が義務づけられている特定危険部位から「頭部や脊髄(せきずい)を外す」ことを決め、今月(2月)から実施されることになった。つまり食肉工場へBSE牛が入れば、それは日本にも届けられる可能性があるということである。これに加え、遺伝子組換食品の問題など、農業や畜産業の大規模工業化が生み出した数々の弊害をあぶり出している。
大企業モンサントが開発した遺伝子組み換えコーンを、政府が助成金をつけ、安値で大量生産・大量輸出する。輸出先の農業に壊滅的打撃を与え、半永久的に自分の国のコーンを売りつける計画が実行されている。この映画は食品を扱うアメリカの多国籍企業が戦略的に他国へ寡占的に輸出できるように政治的な力を行使しているという現実を教えてくれる。
映画「フード・インク」は、アメリカの食卓が有機食品とはかけ離れた、高カロリーで健康に有害な不自然な食品を食べざるを得ない状況に置かれていて、アメリカの食品を輸入する国々にも多大なリスクを運んでいることを教えてくれるものである。神州の泉は野田佳彦前政権が、放射能の拡散リスクを帯びた東日本大地震の瓦礫拡散処理を実行したのは、TPPを睨み、日本の農業や畜産業を壊滅させる意図があると踏んでいる。実際に2011年の福島原発で発生した過酷事故後に、北米の畜産業界が「これで日本に食肉を売ることができる」と快哉を叫んだという情報があった。
この映画を見ると本当に背筋が寒くなるが、TPPに参加した場合の主権侵害が日本人の食卓にどのような危険を及ぼすかを、具体的にイメージできる作品となっている。遺伝子操作された大豆の豆腐や納豆は食べたくない。是非参考にしていただきたい。
http://shimotazawa.cocolog-wbs.com/akebi/2013/02/post-1d20.html
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