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2013年2月24日 植草一秀の『知られざる真実』
2009年の政権交代の衝撃はあまりに大きかった。これは逆説だ。
2006年に小沢一郎氏が民主党代表に就任した瞬間から、彼らはその事態を恐れていた。
日本の既得権が壊される。
米国は第2次大戦後、一貫して日本を支配し続けてきた。
終戦直後は日本占領方針がいまとは正反対だった。
マッカーサーは日本に民主主義のモデル国家を建造しようとした。
徹底した民主化を推進した。その結果として、財閥解体、農地解放、労働組合育成などの劇的変化が生まれた。
戦争放棄の画期的な憲法まで制定された。
しかし、すべては1947年に変化した。米国の外交方針がソ連封じ込めに転換した。連動して対日占領政策は「民主化」から「反共化=非民主化」に転換した。
米国は日本を半植民地に転換させた。
ここから日本の対米隷属が始まった。この対米隷属路線の創設者が吉田茂である。
吉田茂が占領軍にものおじせずに向き合ったというのはフィクションである。吉田茂こそ、対米隷属の父である。
対米隷属の機軸のなかで、日本支配の蜜を吸い続けてきたのが官僚機構である。
官僚機構の両雄は財務省と法務省。カネと強制権力が支配の源泉だ。
財務省と法務省は米国に隷属することで権力のお墨付きを得てきた。
大多数の商人に思想はない。あるのは、資本主義という人生哲学だけだ。
金儲けのために思想を従属させる。
権力者である米国と官僚につき従うのが商人の人生哲学だった。それは「強欲資本主義」のなせる業だ。
かくして「米官業の既得権益トライアングル」が生まれた。
この米官業が日本を支配し続けてきた。
この盤石の構造を破壊しかねない政治勢力が浮上した。
それが小沢−鳩山ラインだった。
既得権益は政権交代の実現を阻止するために全力を注いだが、2009年に鳩山由紀夫政権が樹立された。小沢一郎氏は既得権益の人物破壊工作をしのいで、政権交代の大業を成就させた。
しかし、ここから、既得権益は猛烈な反攻に打って出た。そのなかで、禁断の領域に足を踏み入れた。警察・検察・裁判所権力、そして、マスメディアを総動員して、鳩山由紀夫氏、小沢一郎氏の両雄をせん滅の対象にしたのだ。
鳩山由紀夫政権はわずか8ヵ月で倒され、既得権益傀儡の菅直人政権、野田佳彦政権が樹立された。
そして、昨年12月の選挙で自民党政権への回帰が実現されたのである。
安倍晋三政権が発足して円安・株高が進行したが、これは二つの事情に支えられている。
ひとつは、安倍政権の円安誘導を米国が容認したこと。米国の支援なくして円安誘導は成立し得ない。
いまひとつは、菅・野田政権の経済政策運営の失敗が株価の超低迷をもたらしていたこと。
菅・野田政権がまともな経済政策運営を実行していたなら、株価はすでに大幅に上昇していた。
しかし、菅・野田政権の経済政策運営が不適切極まりなかったために、日本の株価が大幅に割安な状況に放置されていた。
安倍政権は景気対策を優先する手法を採用したために、株価が適正水準に回帰し始めた。安倍政権の功績というよりも、菅・野田政権の「功績」によって日本株価の急反発が生じているのである。
問題は、この政治状況転覆のなかで、原発・消費税・TPPの三大問題が既得権益の望む方向に強制誘導されていることだ。
野田政権の消費税増税も「ペテン」だった。
今回の安倍政権のTPP交渉参加突進も、明らかに一種の「ペテン」である。
2月24日付の中日新聞報道によると、脱原発世論は70%弱に達しているが、安倍政権は原発再稼働の方向に突進を始めている。
私は安倍政権を「元の木阿弥政権」と呼んでいるが、この「元の木阿弥政権」の下で、いま、新たな大政翼賛政治が構築されつつある。
マスメディアの安倍政権万歳報道はかたはらいたしである。
「聖域なき関税撤廃」を前提にしないというだけでTPPに参加してよいなどと誰も考えていない。
TPPの毒は生やさしいものではない。TPP参加は「国を売る」ことと同じだと言って過言でない。
日本国民の力が試される局面だ。マスメディアの誘導に乗って主権者国民が安倍政権を礼賛するなら、日本はそれまでの国だ。永遠に米国の属国、植民地として生きてゆくしか道はない。
主権者国民が現実の不正・欺瞞に気付き、日本の尊厳と独立を守る気概を持つなら、夏の参院戦で矜持を示すしかない。
一寸の虫にも五分の魂。
主権者国民の気概を必ず示さなければならない。
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