アムネスティ･インターナショナル日本は、本日、東京拘置所の金川真大さん、大阪拘置所の小林薫さん、名古屋拘置所の加納恵喜さんの3人に死刑が執行されたことに対して抗議する。今回の死刑執行は、死刑制度に固執し、政権交代後の執行を恒常化させようとする政府と法務省の意思表示といえるものであり、強く非難する。

谷垣法相は、昨年12月27日の大臣就任会見において、死刑制度について「今の国民感情，被害者感情等々から見ましても、現行制度を設けているということはそれ相応の根拠がある」と述べ、また執行については「（死刑判決を下した）裁判所の判断も尊重しながら、法の下で対処していかなければならない」と語り、肯定的な姿勢を示していた。

しかし、国内法の内容が国際人権基準に反するものである場合には、その法制度を改正すべく努力することもまた、政府、法相および法務省に課せられた国際的な義務である。日本政府は、国連の総会決議や人権理事会の普遍的定期審査、そして複数の国連人権機関から、繰り返し、死刑の執行停止と死刑廃止に向けた取り組みを強く勧告されていることを忘れてはならない。

とくに、国連の自由権規約委員会は2008年、「世論の動向にかかわりなく、締約国は死刑の廃止を考慮すべき」とし、世論を口実に死刑廃止に向けた措置を一切とろうとしない日本の態度を強く批判している。日本政府は、「国民感情」を理由に、国際的な人権基準を遵守する義務を免れることはできない。

世界では、7割に当たる140カ国が法律上または事実上死刑を廃止しており、近年の死刑執行国は20カ国前後で推移している。昨年12月には、国連総会で全世界の死刑執行停止を求める総会決議が採択され、過去最多の111カ国が賛成した。今回の死刑執行は、日本が人権理事会の理事国として遵守すべき国際人権基準を無視したものであり、世界の死刑廃止の潮流に背を向け、日本をますます孤立させることになるといわざるをえない。

近年、足利事件や布川事件、ゴビンダ事件など、相次いで冤罪事件が明らかになり、代用監獄や捜査取調べ中の自白強要など、日本の刑事司法における人権侵害が多数報告されている。新たな科学鑑定により冤罪の可能性が高まっている袴田事件や奥西事件、飯塚事件など、死刑事件における再審請求も数多く提起されており、死刑制度を含む日本の刑事司法制度の見直しが強く要請されている。

死刑は国家権力による暴力の一つの極限的なあらわれである。人為的に生命を奪う権利は、何人にも、どのような理由によってもありえない。アムネスティは、あらゆる死刑に例外なく反対する。死刑は生きる権利の侵害であり、究極的な意味において残虐で非人道的かつ品位を傷つける刑罰である。アムネスティは日本政府に対し、死刑廃止への第一歩として、公式に死刑の執行停止措置を導入するよう要請する。

日本政府は、国際人権諸条約の締約国として、死刑にたよらない刑事司法制度を構築する国際的な義務を負っていることを改めて確認しなければならない。そして、日本政府は、生きる権利をはじめとする人権保障の大原則に立ち戻り、死刑の執行を停止し、死刑廃止に向けた全社会的な議論を速やかに開始すべきである。

2013年2月21日
公益社団法人　アムネスティ・インターナショナル日本

背景情報

日本は、国際社会の責任ある一員として、死刑廃止に向かう世界の情勢も十分に考慮しなければならない。現在、全世界の7割に当たる140カ国が、法律上または事実上死刑を廃止している。アジア太平洋地域においても41カ国のうち28カ国が、法律上または事実上、死刑を廃止している。東アジアでは、韓国が 2008年に事実上の死刑廃止国となり、現在まで14年間、執行を停止している。さらに、昨年はモンゴルとベナンが、「市民的及び政治的権利に関する国際規約」の第2選択議定書（いわゆる死刑廃止国際条約）に公式に加入した。死刑廃止へと進んだこれらの国々の多くで、世論の多数が死刑の存置を容認していたことを踏まえると、いかに死刑廃止に向けて人々に働きかける政治的リーダーシップが重要であるかがわかる。

アメリカは、Ｇ8諸国内で日本と並ぶ死刑存置国ではあるが、現在、全50州のうち17州とコロンビア特別区が死刑を廃止しており、死刑廃止州の割合はついに3分の1を超えた。2011年に実際に死刑を執行したのは、13州のみだ。一昨年11月22日にはオレゴン州知事が任期中の執行停止を表明。昨年4月 25日には、コネチカット州で死刑が廃止された。本年１月から始まったメリーランド州議会でも死刑廃止法案の可決の可能性が高まっている。

また昨年12月20日、国連総会で、2007年以降で４度目となる死刑執行停止決議が、前回より４カ国多い、過去最多の111カ国の賛成で可決された。決議は、廃止を視野に死刑の執行を停止することや、死刑を適用する罪名を減らすことなどを求めている。

死刑に特別な犯罪の抑止効果はない、ということも今日の世界的な共通認識となっている。死刑と殺人発生率の関係に関する研究が1988年に国連からの委託で実施され、最新の調査では「死刑が終身刑よりも大きな抑止力を持つことを科学的に裏付ける研究はない。抑止力仮説を積極的に支持する証拠は見つかっていない」との結論が出されている。また、いわゆる「みせしめ」としての死刑は、国家による究極的な暴力に過ぎない。人間の生きる権利を、政治的社会的な目的のための手段とする発想は、国際人権基準に照らし、決して許されるものではない。

アムネスティは、死刑判決を受けた者が犯した罪について、これを過小評価したり、許したりしようとするものではない。しかし、被害者とその遺族の人権の保障は、死刑により加害者の命を奪うことによってではなく、国家が経済的、心理的な支援を通じ、苦しみを緩和するためのシステムを構築すること等によって、成し遂げられるべきであると考える。

http://www.amnesty.or.jp/news/2013/0221_3829.html
　

コメント
01. 2013年2月21日 19:46:02 : HRxTeZ7Ql6 穏健派だが官僚そのもの そしてカルト極右の操り人形にしかなり得ない谷垣を大臣に据え 事務的に執行させるとか やり方が、いやらしい
02. 2013年2月21日 19:47:01 : YxpFguEt7k 死刑は必要ないです。最後の瞬間まで人権はあります。 国家による殺人は認められません。
03. OVNI43free 2013年2月21日 20:00:01 : IhyfVrYJsi8bA : zvTVNk7k26 ＜＜死刑判決を受けた者が犯した罪について、これを過小評価したり、許したりしようとするものではない。しかし、被害者とその遺族の人権の保障は、死刑により加害者の命を奪うことによってではなく、国家が経済的、心理的な支援を通じ、苦しみを緩和するためのシステムを構築すること等によって、成し遂げられるべきである>> 　このすばらしい言葉を、ぜひあなたの一番大切な人が理不尽に惨殺された時に高らかに述べて下さい。
04. ダイナモ 2013年2月21日 20:24:21 : mY9T/8MdR98ug : 5RwHBaG4ss >>03 OVNI43freeさん、こんにちは。 日本の死刑制度は事実上、被害者遺族の復讐感情を慰謝するものとはなっていません。 2011年の殺人件数は1067件でした。この件数は他の年でも大きな違いはありません。一方、2000年から2012年の間の年間死刑執行件数の平均は約4件という結果となっています。 つまり、1000件を超える被害者遺族のうち、加害者が死刑となった被害者遺族は0.4%というごく例外的なものに過ぎないということです。あなたは死刑が被害者遺族の復讐感情を満足させる制度だとお考えのようですが、現実を見ればその認識は誤りであることは明らかです。
05. 米犬 2013年2月21日 20:28:09 : PUHl6PtDGaXFs : 4Q80R8Zler それでは一生刑務所の中で過ごす終身刑が犯罪者にとっても被害者にとっても幸せだというのだろうか。一生あの狭い中で生きるくらいだったらさっさと死刑の方がましだ。中国のように死刑囚を海外で奴隷のような強制労働・・こんな風に役に立つのだったら考えても良いが・・・ そもそも今日死刑を受けた犯罪者は死を望んでいたくらいだから 苦痛を伴わない死等いくらでもある。麻酔剤と塩化カリウムなどでさっさと楽にあの世に行ってもらいたい。
06. 2013年2月21日 21:13:33 : EYHTwT0u8w 消費税や軍隊みたいに。海外ではどーとかヨーロッパではどーとか比較しないのか。
07. 2013年2月21日 22:36:39 : ylTlPdYTRI 死刑執行やむなし、「谷垣は嫌いだけど」
08. 2013年2月21日 23:49:02 : hfYLtcpBFE 死刑執行で解り易い争点になるのが冤罪だが グアムであったような無差別殺人の場合は死刑執行でもかまわない明確な証拠がある。 と思うな。 特に乳幼児を無差別で殺害する犯罪者が精神病者でも同じと考える。 無差別殺人で最たるモノは戦争における市街戦や空襲だ。 これは攻める側の国益に基づき黙認というか是認されている。 犯罪者の抵抗で射撃戦における射殺も即時死刑と同じじゃないのか？ （宗教観も大いなる問題というか死生観も含めた判断基準となるだろう） 死刑反対論者は冤罪とは別に、これらも矛盾無く説明しなければいけない。
09. 2013年2月22日 00:09:27 : ZaQMqN6c76 殺人とは非理性的行為だろう。人は理性的に人を殺せるものではない。 国家だけがそれが出来るということは、国家とは非理性的なものだろうか？ 抵抗できない人を殺す、それ以上に後味の悪い行為はなかろうに。 まだ決闘や仇討の方がましのような気がする。 一個人が一個人を殺したいほど憎む場合があることは理解できなくもないが、それを国家が代行するというのはいかがなものか？ 私なら国家などに代行してもらいたくない気がするのだが。
10. 2013年2月22日 00:17:24 : YmoqycXxPw 仇討ち禁止令が出たからね。 元々は、そう言う事だ。

11. 2013年2月22日 06:42:01 : EYHTwT0u8w 性犯罪者にはＧＰＳ装着すらなされない。死刑より去勢をためらう日本。
12. 2013年2月22日 08:34:36 : 5JYTFPsPzU 　死刑執行と死刑制度の存続は、野蛮国日本の明確な証明です。
13. 2013年2月22日 09:32:52 : 8cWiDNbIAo 自分勝手な殺人犯を　さん付けしている時点で この団体の狂った考え方がわかる。人権？生い立ち？国家が人を殺す？ 非人道な刑罰？等々よくもまあ自分勝手なことをズラズラ並べ立てるもんだ 殺された人の人権は？幼い子の将来は？身勝手な考えの人殺しに人権が あるとは思えない。死刑の是非の前に非人道的行為を行ったことに対して この団体の考え方が歪んでいる。死刑うんぬんの前にお前らが、さん付けした 奴の、非人道的考えを非難しろよ!
14. xyzxyz 2013年2月22日 11:04:08 : hVWJEmY6Wpyl6 : JI2Seycs4s >>13 こうやって犯罪者にあえて「さん」を付けることによって、まだ極わずかにいる中立の 立場の人の眉をひそめて引かせるような言説をわざと振りまいて、死刑執行の為の世論醸成の 後押しをしてるんだろう。 >>12さん等を見ると、この一事で日本野蛮と決め付けて、さらに死刑制度を盛り上げるレスを 入れる工作員のような人もいる。過去レスを巡れば、そんな人が小沢さんを応援している レスをしているとこを見ると、陰謀論的に言えば実に上等な工作員とも言えますね。
15. 2013年2月22日 11:31:15 : K2I6IZ7u2o 2年ほど前、ノルウェーで大量殺人があったでしょ。60人以上の青少年を惨殺した男への最高刑が禁固１９年なんだよね、あの国では。ま、釈放が社会に脅威を与えると判断された場合には、引き続き拘禁できるらしく、この男は一生獄につながれることが確実視されてはいるんだけど、いっぽうで、ノルウェー国民は自らの税金でこの男が自然死を迎えるまで延々と養っていかなければならないわけだ。ノルウェー国民の過半数は、それでも「我々の価値観を守る」と死刑廃止に賛成しておるようだが、それは彼らの勝手でしょう。俺は嫌だね。で爺
16. 2013年2月22日 13:27:02 : 8yTLAuTxHU 終身刑を最高とするべき。 受刑者自信が、終身刑でなく死刑にしてほしいという積極的な意思がある場合だけ死刑にするのならよい。 正しく捜査が行われ、公平に裁判が行われ、国家権力を厳しくチェックするジャーナリズムがあるという国家としての信頼が総崩れである以上、国家が人の命を奪う事には到底賛成できない。 密室で捜査し、証拠がなくとも自白が強要される。 捜査段階の情報はマスコミに堂々とリークされる。 検察は裁判に不利な証拠を隠し、密室で取られた自白調書が伝家の宝刀となる。 例え冤罪が証明され、証拠の捏造が見つかっても、検察官僚もマスコミも裁判所も、何の責任も問われない。 彼らは裏で癒着し、お互いに税金を横領する仲間であり、彼らの裏金は犯罪にならない。 逆にそれを内部告発しようとした者の方が犯罪者にされる。 恐ろしい前近代的な暗黒国家だ。 今まで凶悪犯だと思わされてきた犯罪者達だって、本当に犯罪者だったのかどうかは分からない。 我々はマスコミのフィルターを通した情報しか得られないのだから。
17. 戦争とはこういう物 2013年2月22日 15:06:45 : N0qgFY7SzZrIQ : yKzYIalTDc >12 >13 　よく勘違いする人がいますが、執行後の元囚人に敬称をつけるのは、刑期終了とみなす社会慣習によるもの。実際かつて氏名公表に際して法相も行っていました。
18. 2013年2月22日 21:44:36 : 5JYTFPsPzU >>17さん 　>>12コメント者です。小生、長らく死刑否定・廃止論者です。 　近代司法は仇討から卒業して、犯罪を個人の責任から解放し（人間という種は個体が遺伝的・自発的＝遺伝的プログラムの発現として自動的に完成し大人になるという考え方でなく、社会的関係で生育が保障されるという意味です）、非人間的行為を最大限に排除するため、社会の仕組みを発展的に改めていこうという、極めて理性的な意識から生まれてきた人間の英知であると思っています。 　要するに生まれつきの悪人はいないという考え方です。 　犯罪者がどのような人間形成過程で生育したかという長期的視点、と犯罪行為実行時点でどのような状況にあり犯罪を犯すに至ったか分析し、そのような愚を繰りかえさないためには教育を含めた社会環境をどのように変えていくべきかを追求することが、真の国家（というよりも社会）安泰のための正道であり、それに資するための情報を収集・提案することが根本的な司法の大切な役目であると思います。 　ただ、理想と現実は折り合いをつけるのが難しいことは十分承知しています。それでも歴史は少しづつ、進歩していると信じています。（犯罪とは無関係ながら独仏の現在の関係など参照） 　犯罪被害者の方々に対する慰藉は、国家として（国家が直接の責任を負うという意味では決してないのですが、自然災害に対する補償と同じような考え方です）最大限の方策（精神的なフォローや、経済的な支援など総合的な支援のこと。そのために税金を用いても何ら問題ではない。国民の幸せのための支出なのだから。） 　小生「ぽわろ・米犬・おじゃま一郎」氏などに目には目・歯には歯・バカにはバカをと主張していますが、これは、司法とは無関係でありまして、司法に対しては、上記のような考え方です。
19. 2013年2月22日 21:50:04 : 5JYTFPsPzU >>18の訂正 　誤：下から４行目の「最大限の方策」 　正：「最大限の対策をを執るべきであると考えます。」 　以上です。
20. 2013年2月22日 21:55:04 : 5JYTFPsPzU >>18の追加 　「ぽわろ・米犬・おじゃま一郎」の次に「xyzxyz]を追加します。

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