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2013年2月20日 植草一秀の『知られざる真実』
二つの重要問題に焦点が当たっている。
TPPと日銀幹部人事だ。
日米首脳会談が行われる。
米国は安倍政権が発足して「日本を取り戻す」ことに全力を挙げている。
昨年12月16日の総選挙に際して安倍晋三氏は「日本を取り戻す」と唱えていたが、この発言の真意は、
「米国が日本を取り戻す」
ということであったと見られる。
米国にとっての関心事項は、日本の対米隷属。
この根本が揺らぐことを米国は断じて許せないわけだ。
2009年9月に発足した鳩山由紀夫政権を米国が徹底的に嫌ったのは、この政権が米国の言いなりにならない姿勢を示したからである。
鳩山政権の屋台骨を支えたのは鳩山由紀夫元首相と小沢一郎氏であった。
この小沢−鳩山ラインは日本政治が米国の言いなりになる路線、日本の対米隷属路線を否定しようとした。
このために、小沢−鳩山ラインは米国から猛攻撃を受けたのである。
米国は鳩山政権をつぶして、米国傀儡の菅政権、野田政権を樹立させた。
そして、昨年12月の選挙を通じて安倍政権を発足させた。
安倍晋三氏は、「(米国が)日本を取り戻す」ことに全面協力する政権であるとして、いま、この安倍政権を全面的に支援している。
だからこそ、円安誘導政策が国際社会から糾弾されることから安倍政権を守るために、米国は全面的な協力姿勢を示しているのである。
「米国が日本を取り戻す」ための具体的な「アジェンダ」は次の五つだ。
1.中国との軍事緊張の演出
2.米軍への全面支援
3.TPP参加
4.原発推進
5.米国への資金供与
当面の焦点はTPPである。
安倍晋三氏は「聖域なき関税撤廃」の原則に例外が設けられなければTPPには参加しないことを表明している。これは、TPP交渉に参加するための方策であると見られる。
つまり、完全撤廃の例外をたったひとつでも設定させて、これをTPP参加の口実にしようというわけだ。
安倍氏はオバマ氏との会談で、「例外設定の可能性」についての感触を判断すると発言しており、日米首脳会談で安倍氏が、実質的なTPP交渉参加の方針を表明する可能性がある。
これは、日本国民にとって著しい不利益を与える行為になる。
TPPはひと言で表現すれば、「米国の米国による米国のための仕組み」である。
米国は日本市場を侵食するために、これまで25年にわたる取り組みを続けてきた。
最初は1989年発足のブッシュ父政権だ。SII=日米構造協議と呼ばれた構造改革の協議が行われた。
日本の諸制度を変革して米国資本が日本市場で活動できる環境を整えようとした。
1993年のクリントン政権発足後、年次規制改革要望書が作成され、内政干渉の指令書としてこの文書が米国から日本に提示されてきた。
クリントン政権は「協議」では結果が得られないとして、「数値目標」の設定を強く求めた。
2009年の鳩山政権の発足後、「年次規制改革要望書」は撤廃された。
しかし、その代わりとして「日米経済調和対話」と呼ばれる新しい文書が作成された。名称をリニューアルしたものである。
これと同時に米国が立ち上げたのがTPPである。
TPPは日本の諸制度改変のための新しい策謀なのである。
米国は米国傀儡の菅直人政権にこのTPPを投げつけて菅政権に前向きの姿勢を示させた。そしていま、これを日本に呑ませようとしているわけだ。
日本はTPPに参加するべきでない。
一度参加したら最後、元には戻れなくなる。
TPP参加で日本は根底から変質することになる。
米国の最重要ターゲットは次の三つだ。
1.医療・薬品・医療機器・医療保険
2.各種共済制度
3.農業
この三分野で日本市場を完全浸食しようとしている。
国内論議を経ずにTPPに突き進むことは、まさに「亡国の道」である。
絶対に安易なTPP交渉参加表明は許されない。
安倍氏が日米首脳会談でTPP交渉参加の意思を表明することは万死に値する行為となる。
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