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民主党の海江田万里代表が、経済評論家時代に書いた雑誌記事や著作をめぐって、訴えられた。原告は、和牛オーナー制度が行き詰まって破綻(はたん)した安愚楽牧場の出資者たち。約20年前、売れっ子評論家だった海江田氏が勧めるからと出資し、損害を被ったとして、賠償を求めている。海江田氏側は、経済状況などが大きく変化しており、賠償責任はないとの立場。現在は野党第1党の党首となった海江田氏。過去の著述について、なぜ今、どんな責任が問われるのか。
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http://news.asahi.com/c/abuFarvkaNorw1a2
(ニュースQ3)20年前「リスクゼロ」と記事…責任は?
朝日新聞 2013年2月19日
1990年7月に発行された安愚楽牧場の会報。社長就任パーティーで海江田氏が壇上に並ぶ写真が表紙を飾った
民主党の海江田万里代表が訴えられた。経済評論家時代に出資を勧める記事を書いた安愚楽牧場(栃木県)が経営破綻(はたん)。記事を見て出資した人たちが被害を被ったという。20年前の記事に、責任はあるのか。
●人気の評論家「信じて出資」
「実質年利は9%になります。(中略)しかも、この利益は申し込み時に確定していて、リスクはゼロ」
売れっ子評論家だった海江田氏は1987〜92年に雑誌の記事や著書で、こんなふうに述べていた。記事で安愚楽牧場のフリーダイヤルや、申し込み方法が紹介されたこともあった。
都内の40代の男性は、海江田氏の著書を読んで94年ごろ出資した。「テレビにも出ていて、人気のある評論家なので信頼した」。最終的には住宅購入資金の約5千万円をつぎ込んだ。
90年にあった安愚楽牧場の三ケ尻久美子社長の就任パーティー。海江田氏はオーナー代表として招かれ、「お楽しみ抽選会」で2等賞のステーキ肉を当てた。三ケ尻社長と笑顔で写った写真が会報に載った。
●「経済に変化」本人、責任否定
海江田氏はどう説明するのか。
サブプライム問題、リーマン・ショック、口蹄疫(こうていえき)……。海江田氏は取材に、代理人弁護士を通じ、記事を書いた当時から経営破綻までの経済状況や畜産業に大きな変化があったと指摘。安愚楽側からは報酬をもらっていないとも強調した。
出資者らとのこれまでの調停でも「執筆していた時期とその後の日本の経済環境は全く異なっているため評論の効果はなくなっている」として、賠償には応じられないと主張してきた。
かつての海江田氏と同じ経済評論家の勝間和代さんは「海江田氏が紹介していたようなリスクゼロ、ハイリターンの金融商品を作れたらノーベル経済学賞もの」と指摘する。「それは20年前でも同じ。知識不足だったと言わざるを得ない。記事については率直にわびるべきです」
海江田氏は「脇が甘い」とみるのは服部孝章・立教大教授(メディア法)だ。作家出身のある政治家がかつて航空会社の広告に推薦文を依頼され、「万が一にも飛行機が落ちたら倫理的に責任が生じる」として断った例を引き、「出版物は未来に残る。20年前とはいえ全く予想できなかったで済む問題ではない」。
●政治家として「自ら説明を」
過去にも著名人が「広告塔」の役割を果たし、問題になった例はあった。
80年代には、時代劇スターだった故・高田浩吉さんが原野商法のパンフレットに推薦文を書いたとして、原野の購入者から損害賠償を求められた。高田さんは裁判で争ったが、最終的に700万円を支払うことで和解した。
08年には歌手の細川たかしさんが、「円天」と称した疑似通貨で違法に金を集めていた会社のイベントにゲスト出演したことで訴えられた。この裁判は、東京地裁が訴えを棄却している。
民事裁判は被告本人が出廷する必要がなく、海江田氏が直接弁明する機会はないかもしれない。
だが、情報操作に詳しい川上和久・明治学院大教授(社会心理学)は言う。
「野党第1党の党首として、『見る目がない政治家』のレッテルを貼られかねない。公人として、過去の言動に対しても自らの説明責任が求められる」(波戸健一、角拓哉)
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