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2013年02月13日
今度の北朝鮮の核実験強行で日朝協議はさらに遠のき、拉致問題の早期解決はほとんど絶望的になった。そう拉致被害者家族は嘆き、北朝鮮への強硬路線を主張する産経新聞は今度の北朝鮮の核実験強行をどの新聞よりも強く非難する。確かに日朝協議は遠のき、従ってまた拉致問題の解決は遠のいたと思う。拉致問題の解決を願う一人として、私もまた残念でならない。しかし、私が繰り返して書いてきたように、そもそも北朝鮮の核実験問題と拉致被害者救済問題を結びつけるようになった時点で、拉致問題解決はインポッシブル・ミッションとなったのだ小泉首相の電撃的訪朝と日朝平壌宣言の署名の時点ではそうではなかった。それどころかあの時は、小泉首相は、核兵器開発を続け国際的非難を浴びていた北朝鮮との国交正常化を優先し、日朝国交正常化と同時に拉致問題の決着を図ろうとした。その結果が日朝平壌宣言であった。小泉電撃訪朝は衝撃をもって評価され、日朝平壌宣言は歓迎された。その日朝平壌宣言は今も生きている。それが公式に否定されたことにはなっていない。しかし、いつの間にか北朝鮮の核問題が全面に出るようになり、日朝協議より6カ国協議が優先されるようになった。 このなし崩し的日本外交の転換が行なわれた時点で、拉致問題の解決は遠のき、日朝国交正常化は頓挫した。そして小泉首相も、その小泉首相に同行して訪朝して一部始終を目撃してきた安倍首相も、その政策転換について口を閉ざして語らない。果たしてその外交転換の本当の理由はどこにあるのか。その理由は拉致問題の不完全な解決にあると一般的には思われている。すなわち数名の被害者の帰国は実現したが多くの被害者の死亡が伝えられた。その衝撃のあまり世論は北朝鮮に怒り、こんないい加減な解決で国交正常化を進めることは許されないと反発した。私もその一人だった。その世論の怒りに押されて小泉首相はたじろぎ、小泉首相の熱意は冷める。確かに拉致問題は日朝国交正常化の大きな障害である。しかしそれだけで小泉首相は日朝国交正常化をあきらめただろうか。違う。もし彼に本気で拉致問題を解決する覚悟があり、そのために日朝国交正常化を実現するという強い政治的決意があれば、世論の反発をものともせず突き進むことは出来たはずだ。それだけの国民的人気は彼にはあった。彼が国交正常化に向けての日朝協議をあきらめた本当の理由は米国の怒りがあったからだ。すなわち米国にとっては北朝鮮の核開発問題が解決しない限り米朝国交正常化はありえない。米朝国交正常化の前に日本が北朝鮮との国交正常化を実現して出し抜くことは許さない。そんな米国を逆撫でするかのように、小泉首相は田中均外務審議官(当時)の助言に従って米国の十分な了解を取らないまま北朝鮮との極秘協議に走った。日朝平壌宣言を知って腰を抜かした米国は怒り狂って北朝鮮の核開発問題を世界に公表し、日本の先走りにストップをかけた。以来、拉致問題よりも北朝鮮の核問題が優先され、日朝協議よりも6カ国協議の場が優先されるようになる。
その裏には田中均と谷内正太郎という同期の外務官僚の出世争いがあった。小泉首相の後ろ盾を失った田中は外務省を去り、対米重視の谷内は次官になってその後の外交を取り仕切る。その谷内は安倍政権の参与となって対米従属の安倍外交を裏で振つけるようになる。
私は当時小泉、田中の電撃訪朝と日韓平壌宣言外交を強く非難した。それは彼らが拉致被害者たちの命を軽視して日朝国交正常化実現とい
う名誉に飛びついたからだ。動機が不純で役者が悪かったからだ。正しい歴史認識に基づいた日朝国交正常化を果たすという政治的覚悟
を見る事が出来なかったからだ。そして結果として拉致問題の解決も日朝国交正常化も遠ざけてしまった。日本外交はいまこそ仕切り直して再出発すべきである。北朝鮮の核の前になすべき策を誰ももてない中で、実はカギを握っているのは日本なのである。日本の経済力であり技術力である。そして平和憲法9条である。そんな日本が日朝協議を本気で行なえば拉致問題も北朝鮮の核の脅威も解決する。日本は、正しい歴史認識を持ち、正しい平和外交を貫けば、米国や中国や韓国はもとより世界のどの国よりも北朝鮮に対して強い立場に立てるのである。
対米従属外交から決別し、平和国家として日朝国交正常化を迫り、その過程で拉致問題も核問題も解決する。これを主唱する政治家が一人も出てこないところに日本外交の限界がある。目の前の絶好球を見逃し三振している(了)。
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