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2013年02月10日 世相を斬る あいば達也
最近の中国の並はずれた日本への挑発行動は何を意味しているのか。また、からかう様なロシア空軍の領空侵犯といい、奇妙な動きも、どのような意味があるのか考えてみる必要がある。こういう防衛に関わる国際問題と云うもの、その戦略の全貌と云うものは最終的にも判らない事が多い。マスメディアにしても、その筋の専門家にしても、進捗中の事象をもって、そこで起きている国際戦略を的確に解説する事は殆ど不可能である。そういう意味で、こう云う問題は、仮説が分析の核となる事が多い。筆者も、その仮説に沿って、我が国を取り巻く国際情勢と云うものを考えてみようと思う。勿論、個人の仮説に基づく推論など、何の価値も持たないのは当然だ。ただ、個別の事象を眺めながら、何百本もある絡んだ糸を、数本に集約する考察には意味があるだろう。このコラムを読まれた方々が、その人なりの仮説で推論する動機付けになれば程度の安易さで書かせて貰う。
初めに確認しておきたいのが、米・中・露のアジア、延いては世界における立ち位置の問題だ。オバマは、オバマ個人のイデオロギーとスーパーパワー大国アメリカの大統領と云う二面性を器用に操りながら、二期目の大統領として執務にあたっている。アメリカの二大政党、共和党、民主党の力は接近しており、どちらの政党から大統領が輩出していても、双方は常に力を温存できる状態を確保している。つまり、巨大国家の様々な組織に於いては、必ずしも民主党オバマの意思が貫徹されているとは限らないのが現実だ。オバマが共生の方向で、経済ブロック化を目指そうとしても、一方には自由主義に基づく競争の原理を推し進めようとする、同等の力量を持つ勢力が常に存在する。アメリカ大統領と云う職責は、その微妙な力関係の中で、いかにバランスよく国家を動かすかどうかが求められる。当然、そういう意味では、相手側の要求を飲みながら執務を執行するので、オバマのイデオロギーに純化した政策が、すべても政策に貫かれているわけではない。その点を、我々は把握しておく必要があるだろう。
中国の経済発展のめざましさは、今さら語る必要もない。OECDの予想によれば16年くらいにはGDPで世界一の経済大国になる可能性まで指摘されている。直近における経済成長の鈍化などを見る限り16年は無理にしても、20年までに世界一の経済大国になる可能性は高い。後進国であった中国にしてみれば、先ずは量の拡大が一義的であったが、最近はその質に対する関心も深くなっている。中国人民解放軍の拡大路線も、量への関心から質への関心に移りつつあるようだ。しかし、ケ小平が確立した党独裁体制と資本主義の融合は量から質への転換時期に、その欺瞞性が顕在化する可能性があり、力による統治が先鋭化する危険を孕んでいる。ネット環境の発展により、民衆の自由への意識は高まっており、民族問題も数多く抱えるだけに、その綱捌きは容易ではない。自然なことだが、統治の先鋭化にナショナリズムは欠かせない。オバマが提唱するTPPには「中国包囲網」の意味合いが強いのも、統治の為の精鋭化するナショナリズムへの警戒感があるのだろう。しかし、中国はいずれの経緯を辿るにしても、あらゆるもので世界一になるイデオロギーは捨てないと思われる。
そのような中国の野望を後押ししているのが、嘗ての大国ロシアである。勿論、全面的後押しと云うよりは、パートナーとして世界の強国に返り咲こうと云う野心をプーチン大統領は持っている。資源外交と先進技術を持つ宇宙開発・兵器開発を武器に中国との連携にかなりの配慮が見られる。資源外交及び北方領土問題を材料にして、日本の財力を引き込む腹はあるわけで、少なくとも対米従属体制の日本を変質させたい意図は持っている。世界一の経済大国中国と、第三か第五位程度の経済大国を陣営に引き込むことが可能であれば、東西冷戦とは異なる、対立する経済ブロック圏の構築も可能とみている。オバマが言う「シェール革命」はプーチンの戦略の出鼻を挫いたわけだが、それだけにオバマの「シェール革命」賛歌には違和感があると指摘するNYT紙などが現れるのである。
以上のような大雑把な米・中・露の状況の中に我が国は位置している。おそらく、日本の民主党への政権交代時の鳩山小沢ラインは、戦後50年以上続いた対米隷属外交からの脱皮がセンセーショナルに伝えられたことから、米国の官僚組織が神経質に蠢き、日本の官僚達を動員して、政権を潰す方向に極端に進んだ為と思われる。多くは鳩山小沢ラインを彼らが誇大妄想に杞憂した結果、逆にボロを出すような稚拙さで事を運んだため、日本の司法組織の信頼度を貶めると云う効果を発揮した。続く菅民主は、僅かに米国、霞が関寄りを示したが、福島原発事故以来アメリカからの信頼を失い、政権は野田にバトンタッチされた。野田は学習効果が効きすぎたのか、米国・霞が関の走狗として働き、政権政党民主党を崩壊させた。その結果生まれたのが安倍自民党政権である。
日・米・中の経済相互依存関係は09年以降顕著だ。その輸出・輸入の関係性は一律ではないが、紆余曲折はあるものの、簡単に依存関係を解消できる状態にはない。混乱を招いているEUにせよ、世界全体としても、中国の景気の動向が世界景気にかなりのインパクトを齎す力を保持するに至っている。経済成長力の牽引役が現時点でも中国であり、その成長力の鈍化は、即刻世界経済の鈍化に結びつく。グローバル化した経済社会が、このように相互依存関係にあるにも関わらず、政治体制では反目する関係なのだから、話は混乱する。
建前上、中国も習近平が共産党総書記であり、中央軍事委員会の主席でもあることから、人民解放軍の実質的トップは習総書記とみられるが、軍隊は機構上、軍事委員会の下に置かれている。つまり、必ずしも属人性が強いとは言えず、あくまで組織上、上に軍事委員会があり、中国共産党があるとみる方が正しい。つまり、色んな解釈があるが、中国共産党の党軍であると云う立場から、習総書記の個人的意思がストレートに命令系統に統一されているとは言いがたい。自衛隊の最高指揮監督権が内閣総理大臣にある日本や、米国の合衆国軍の最高司令官が大統領と定められているのに対し、指揮命令系統が、属人的地位ではなく、組織に存在すると云う点で、今ひとつ曖昧な部分を持っている。
このような指揮命令系統の場合、中国中央軍事委員会の指揮の下、人民解放軍が動くとは限らない場面も想定されるだろう。今回のレーダー照射事件も、必ずしも中央軍事委員会の指揮内で起きた事とは言えないわけである。中央軍事委員会も中国共産党の指揮の及ばぬ範囲での出来事が起きる可能性は常に内在する。今回の事件も、中国政府が事後確認で、その正当性を主張するしかない事態のようであったことが推測出来る。確信的に、中国政府があのような危険な行為に出るのも困るが、それ以上に指揮系統の曖昧さの方が寧ろ危険と言えるのだろう。
また、中国の経済成長やロシアの資源外交を中核とする対欧米(NATO)基軸の考えが、それぞれ自信を深めつつある。中露にカザフスタン、キルギスなど中央アジア6カ国の上海協力機構(SCO)だが、潜在的超大国(BRICS)を中心にして、北アジア、西アジア、南アジア、東アジアの連合体に発展することを構想内に入れている。アフリカ、南アメリカの発展途上国及び資源国家も、欧米中心主義のNATOに対抗し得る勢力の構築に好意的態度を示している。驚くことだが、米国はこのSCOへのオブザーバー参加を要請したが、断られている。その意味で、TPPはSCO勢力の台頭を早目に摘んでおこうと云う意思が働いているようだ。
この中露の限りない接近には、欧米と云うわが物顔の勢力を牽制しようと云う意図で作られているのだろうが、将来的には、本当にそうなる可能性も秘めているだけに、アメリカとしては見過ごすことは出来ないと云うことなのだろう。おそらく、アメリカ合衆国は世界のリーダーから陥落する事が、国家基盤を揺るがす危険に繋がるとを察知しているのだろう。中露の蜜月には、対立点もあるので一概に一枚岩とは言えないのだが、EUがアメリカとは異なる大人の分別で21世紀を生き延びようとしているわけで、NATOの基盤が盤石と云う時代は終わっている。それだけに、アメリカにしてみれば安全装置を世界中に廻らしたい意図がありありとみられる。
そんな折、絶対的支配国日本では、オバマの世界外交に必ずしも一致するとは言い難い、日本のナショナリズムの跋扈はありがた迷惑に違いない。おそらく、安倍晋三が自民党総裁となり、自民党が易々と政権党に復帰するシナリオは日本の復古意識を目覚めさせた。対中外交で尖閣を間に挟んだ小競合いは、日本のナショナリズムをいやが上にも盛りたてる。マスメディアにも、その傾向があり、国民が中国憎しのみに止まらず、改憲や完全独立思考を助長した場合は、都合の好かった日米同盟の崩壊にも繋がるわけで、痛し痒しの事態が日中で起こっている。これに、北方四島帰属問題が前進し、ロシアの資源と日本の資本関係が構築される事は、米国にとって好ましい状況とは言えないのだろう。
卑近な例でいえば、今夏の参議院選で自民党が2/3を制するような事があれば、安倍自民としては憲法改正問題などナショナリズムに関わるテーマに上げざるを得なくなる。独立を確保すると云う美名が通用しそうな現在の日本世論は、憲法改正の手続きに入った途端、怒涛の如き勢いを得てしまうリスクを抱えている。そのような事態を招くくらいなら、無能な民主党の方が与し易しだったと思うに違いない。しかし、米国の“内政干渉”が効きすぎて、今や再起不能な政党になりかけいる。まだ鳩山小沢ラインの方がマシだったのだが、これも再起の難しい状況まで追い込んでしまった。維新の会を伸ばす事は自民の尻を叩くことにもなりかねず、米国にとって都合の好い政党が、我が国から無くなりかけていると云うことを意味する。策を弄して、より複雑な日本の政治シーンを生みだしてしまったようだ。此処が、アメリカのWスタンダードな力による支配の落し穴である。
仮にアメリカが、日本の政治をいまだにコントロールする機能を有しているのなら、何もせずに指を咥えて傍観する事はあり得ないと考える。自民党政権でも構わないが、安倍晋三総理の流れは拙いと考えても不思議ではない。口ほどにない石破や石原伸晃の方が与しやすく、憲法改正のナショナリズム機運の勢いを削ぐ。少なくとも、そのメッセージを日本国民に見せつけなければならない。このような仮説で物語を作って行くと、案外安倍晋三は米国からも、中露からも不都合な内閣総理大臣と見られているかもしれない。いずれにせよ、米中露にとって、日本のナショナリズムの台頭は迷惑なのである。ただの“銭ゲバ”で存在する方がむしろ安全な地位でいられると云う皮肉がある。故に、ああだこうだと筆者は主張するつもりはない。ただ、一つの側面を眺めただけでも、これだけ世界は複雑に絡んでいるので、単純な一方通行の政治は大きな副作用を伴うと云う事実を確認する思考が国民に求められていると思うのだが、どうも一方方向にばかり向かおうとする気配は憂慮に値する。こう云う時こそマスメディアの価値が問われるのだが、そのような役割を演じようと云うメディアはないようだ。
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