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2013/2/7 日刊ゲンダイ :「日々担々」資料ブログ
マーケットが沸いている。きのう(6日)、円は2年9カ月ぶりに一時1ドル=94円台に乗せ、株価は1万1463円と、リーマン・ショック後の高値を更新した。
白川日銀総裁の辞任が早まり、市場が好感したなんていわれているが、冷静に考えるべきは「株高を引っ張っている今の円安は果たして、本当にいいことなのか」ということだ。
円高で苦労してきた輸出企業は、円安になって業績が回復した。トヨタは13年3月期の連結業績予想を上方修正した。
その一方で、原油に代表される輸入品価格が高騰し、日本は貿易赤字に転落した。経常黒字も大幅に減少している。
円が弱くなれば、どんなことが起こり得るのか。金融ジャーナリスト・小林佳樹氏が言う。
「このまま円安が進んだ場合、貿易収支がますます悪化し、経常赤字の恒常化も現実味を帯びてきます。これは国が沈没したに等しい状態ですから、一段の円安に加えて、株安、債券安の“トリプル安”に陥る恐れもある。そうなる前に資産を海外に逃がす、いわゆるキャピタル・フライトの動きも出てくるかもしれない。この国のトラの子であり、銀行預金を通じて国債購入の原資になっている個人の金融資産1500兆円が目減りしてしまうわけです。エコノミストの中には、今後3年以内に、つまり安倍政権の間に“最悪の事態”が起こりかねない、という悲観的な見方もある。円安には、さまざまなデメリットが伴うのです」
今は円安で株価も好調だが、これだってカラクリがある。外国人投資家が相当買っているのだ。理由は明らかで、安倍バブルに乗りたいのと、円安だから株を買いやすいのだ。証券アナリストの清水洋介氏が言う。
「きのうの外国人売買動向(外資系6社ベース)を見ると、朝方の時点で外国人による買いは2760万株にも上っていました。通常は一千数百万株ほどですから、いつもの2倍近い商いがあったわけです。その背景には、円安だから外国人投資家には株が割安になるという事情がある。しかし、これは売り材料にもなるのです。注目すべきは、この先、円高に転じる局面でしょう。わずかに円高に振れれば、彼らは一斉に売ってくる可能性がある。円安で買い、円高で売れば、相当なリターンがあるからです。短期決戦勝負の投資家たちが円高に振れた途端に売り浴びせれば、株価は暴落してしまいます」
世間はアベノミクスに浮かれているが、その裏にはこういう事情がある。危うい円安の上に乗っかっている蜃気楼相場ということだ。
◆好決算に「生き返った」と錯覚する大企業
円安ならば、輸出企業が儲かるじゃないか。彼らが牽引すれば、日本の景気は上向くはずだ。実際、輸出企業は好決算を出しているではないか。こんな声もあるだろうが、そんなに単純な話ではない。「トヨタ・ショック」の著者で経済ジャーナリストの井上久男氏はこう指摘する。
「トヨタの第3四半期の連結決算を見れば、好決算は円安の恩恵ではなく、北米市場が良かったからなのがハッキリします。それを大マスコミはきちんと伝えていないのです。トヨタの決算は、営業利益が6600億円プラス、原価改善で3200億円のプラス。計9800億円です。巨額の営業利益増は北米、アジア市場が好調だったからで、円安とは関係ない。そもそも彼らは為替ヘッジをしているので、相場に左右されない。これをアベノミクス効果と混同してはいけません」
それよりも、円安が問題企業の構造的問題を覆い隠してしまうことの方が怖い。大手電機メーカーが典型で、売れる商品がない、コストで海外に太刀打ちできない、という問題点はそのままなのに、円安で一時的な好決算になると、生き返ったような気分になり、組織のスリム化や高コスト体質改善といった改革を忘れてしまう懸念である。
加えて、円高で海外に拠点を移した企業が、円安になったからといって、国内に戻ってくるわけではない。もちろん、雇用は増えないわけで、こうして考えていくと、円安のメリットよりもデメリットの方が目につく。まして、急激な円安は副作用が強く出る。そうした懸念が専門家の間では渦巻いているのだ。
麻生財務相は国会演説で「強い日本経済を取り戻す」とか息巻いていたが、大言壮語の類いだ。いくら化粧をしたところで、中身が変わるわけではないのである。
◆円安とインフレを煽るアベノミクスは庶民の敵
円安が庶民の暮らしに与える影響も心配だ。
日本は食料自給率40%、エネルギー自給率にいたっては、わずか4%の“輸入大国”だけに、急激な円安による輸入インフレのダメージは深刻になる。経済ジャーナリストの荻原博子氏が言う。
「この先も円安が進めば、物価は上昇し、家計を直撃します。その代表が穀物。昨年の米国の大干ばつで値上がりしているところに、円安のダブルパンチですから、小麦やトウモロコシなどの卸売価格は4月以降、さらに上昇するでしょう。国産の牛や豚の飼料もほとんどが輸入穀物なので、牛肉や豚肉の値段も上がることになる。原油や灯油、ガソリン価格も高騰していますが、漁船やビニールハウスにも燃料を使うため、魚、野菜、果物などの値段もハネ上がります。加えて、消費増税などの負担増がめじろ押しですから、国民の可処分所得は減るばかりです」
ルイ・ヴィトンが15日から10%以上の値上げを発表したが、高級品に限らず、ミネラルウオーターからトイレットペーパーまで、ありとあらゆるモノが上がる。東京・上野の「アメ横」では、輸入品を買い占める動きも出てきているくらいだ。
円安で喜ぶのは、為替に一喜一憂する、備えのないような輸出企業の一部だけなのである。
◆物価は高騰しても給料は増えない
こうなると、株高で浮かれるマーケットもドッチラケだ。株を持っている富裕層にはいいだろうが、庶民にはてんで関係ない。企業の時価総額がちょこっと上がったところで、サラリーマンの給料は増える見込みがないのだから、なおさらだ。
今年も春闘がスタートしているが、経団連は「ベースアップの余地はない」「定昇の凍結や延期もあり得る」なんて言っている。経団連加盟の大企業ですら、社員に還元する気なんて、これっぽっちもないのだ。
「円安によるエネルギーコストの高騰が企業利益を圧迫するほか、外国人の動向次第では保有株の暴落リスクもある。だから、巨額の内部留保を抱える大企業も、賃上げを渋っているわけですが、問題は給料だけではありません。大企業は海外に工場を建て、海外でつくったものを日本に輸出している。これでは国内の雇用は増えないし、円安が自らのクビを絞めていることにもなりかねない。国内で設備投資もしない。これじゃあ社員に還元どころではないのですが、そんな経営で、果たして、優秀な技術者などが育つだろうか。この国の最大の宝は人間なのに、それさえも大事にしないのでは、海外勢に勝てるわけがありません」(労働総研研究員・木地孝之氏)
円安、株高でも不景気が続くのは、こうした理由があるからだ。
一時的にせよ、円安で儲かったのならば、それを社員に還元したり、国内の設備投資に回せばいい。しかし、それすらやらずに、内部留保を貯め込むだけでは、本当に明日はない。
円安とインフレを煽(あお)るアベノミクスは、庶民の敵と断言してもいいくらいだ。
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