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下世話、醜聞、スキャンダル――。長く女性の“欲望”に応えてきた女性週刊誌を、伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ぶった斬る!
第162回(2/1〜5発売号より)
日本が体罰問題で揺れている。というか体罰なんて曖昧な言葉はこの際やめて、暴力に統一した方がいい。体罰という言葉の裏には「指導のため」「教育のため」といった加害者の勝手な言い訳が含まれていて、心理的にも免罪符になりかねない。虐待で子どもを殺してしまう親たちが盛んに「しつけ」と称して抗弁するのと同じだ。体罰もいじめも“暴力性”を弱め加害者を正当化される効果のある変なことばである。スクール・バイオレンスとすればもっとオドロオドロしくていいかも。
1位「女子選手たちを悩ませ続けたヤワラちゃんの呪縛、ついに爆発!」(「週刊女性」2月19日号)
2位「長谷川理恵“反省した”は口だけ? 相変わらずのズレっぷり」(「週刊女性」2月19日号)
3位「資産家殺害事件の夫婦秘話 犬2匹ペット中心の溺愛生活が狙われた!」(「週刊女性」2月19日号)
今週は「週女」ばかりのランキングとなった。まずは、世間を騒がせている柔道日本女子代表の園田隆二監督(その後辞任)のパワハラ事件だ。この記事の何が面白いかって、もちろんヤワラちゃんこと谷亮子議員をクローズアップしたことだ。
この一件が明るみに出た直後、ヤワラはテレビなどメディアに出まくった。そして「園田監督は素晴らしい人間性の方。自分の現役時代、歴代の監督をみても暴力は一切なかった」と言い放ったのだ。多くの女子柔道関係者が「暴力はあった」と証言する中、ヤワラ発言だけは異質で、違和感を持った人も多かったのではないか。そんな中「週女」は女子柔道界のパワハラ、暴力騒動のウラにヤワラの存在があったのではという特集をトップに持ってきた。
記事によれば女子柔道界は<指導者に気に入られるかどうかという、実力以外の物差しがまかり通ってきた理不尽>な世界であり、その最たる存在がヤワラだという。確かにヤワラは特別だった。実力もあり、努力も惜しまない。根性も、そして運も飛びぬけて強かった。日本の宝であった。しかしその存在が<えこひいき感>を呼び、実力ではいくら頑張ってもダメ、という女子柔道の風潮を作ったという。その最たる例が2007年の北京五輪の代表選考だった。一発勝負の選考大会で福見友子がヤワラに勝ったにもかかわらず、全日本柔道連盟の横槍で、ヤワラが五輪代表となった。さらに翌年、ヤワラは別の選手にも負けたが、五輪代表の座は揺るがなかった。
そんなえこひいきをされ続けたヤワラが「暴力は一切見聞きしなかった」といって連盟や園田監督の擁護を繰り返す。自分をえこひいきしてくれた全日本柔道連盟への恩義なのか、彼らの権威におもねるのか、それとも何らかの利害関係なのか、単に権力に媚びる性格なのか――。いや、もしそうなら少しは救われる。だが、ヤワラがもし本気で「暴力など存在しない」と思っていたとしたらこれは致命的だ。特別扱いのヤワラだから暴力を受けず、直接は見なかったことが事実だとしよう。しかし実際見聞きしなくても、長年の柔道生活の中で、仲間や先輩後輩女子からの会話やうわさ、周囲への考察、雰囲気から何も感じなかったのか。自分のことしか見えていなかったのか。さらに今回の一件でも、後輩の女子選手たちが人生を賭して代表監督を告発したことへの想像力、同調性はヤワラには見受けられない。その鈍感力には唖然とさせられるほどだ。
ヤワラは現在でも柔道界に影響がある人物であり、いまやスポーツ振興を標榜している政治家でもある。女性として女子スポーツの向上にも勤しんでいると公言している人間でもある。しかも、今回の告発は連盟だけでなくJOCさえも隠蔽しようとした形跡があるにもかかわらず、これには無頓着であり、目を背ける。その当事者意識のなさ、弱者に対する意識の欠如は何なのだろう。
そんなヤワラの存在と鈍感力は、女子スポーツにとって罪でさえある。多くの関係者が証言する柔道界の暴力体質を「見たことも聞いたこともない」と言っている姿は、自殺者が出たのに「いじめはない」と繰り返す学校校長たちの姿と見事に一致する。「私の引退後に、こうしたことが起きているということは、何が変わってしまったのか。管理体制など、国が先頭に立ってやっていかないといけない」。まるで他人事のように話すヤワラに、女性地位向上など語ってほしくない。ヤワラは2年ほど前、「週刊文春」(文藝春秋)の「女から嫌われる女」のトップに輝いたこともあった。今回の一件で、なぜ嫌われるのかをさらに納得させられた。
お次もすっかり“嫌われる女”が定着してしまった長谷川理恵である。いやー、これほど定着するとは思わなかったので、何だか感慨深い。
そんな理恵が、今回シデカシたことは自伝本出版だ。えっ、結婚直前の去年6月に自伝本は出したって? そうなんですけど、半年もたたずにまた新たな自伝本を出したらしいのです。以前はマガジンハウスからだったのが、今回はポプラ社からで、タイトルは『女性としての私』。きっと理恵的には、「結婚し出産もしたから、新しい私がてんこ盛り。さらに素敵になった私を見て!」というノリなんだろうと簡単に想像できる(実際には今回、私は読んでません。今後読むつもりもありません)。
「週女」記事によると、前回の自伝本が大バッシングされたためか、パート2は腰の低い印象で「反省」という言葉も散りばめられているらしい。が、案の定内実は全然反省などしていないらしい。よって自伝パート2も冒頭から自慢で始まるという。<(挙式の教会は)オレゴンのポートランドという街><世界一といわれるピノノワール・ワインを生産するワイナリー>地名とワイン銘柄のウンチクだけでイラっとさせる理恵はさすがだが、「人間、そう簡単には性根は変わらない」と手酷いコメントを寄せている辛口・麻生千晶センセイもさすがである。しかし、いまいち“さすが”でないのが当の「週女」だ。というのも「週女」記事では触れていないが、自伝パート2ではこんな一節が話題になっているから。
<スピリチュアルなことを信じていると書いたが、私は魂という存在があり、その輪廻を信じている><今の時代はほとんどの人が、特に女性たちは前世というものを信じていると思う>
ほとんどの人が<輪廻、前世、スピリチュアル>を信じていると言い切る理恵。しかし「週女」はこれを完全にスルーした。理由は簡単。「週女」も理恵同様「女はスピリチュアルを信じている」と思っているから、この部分だけは大いに共感したに違いない。理恵の「ズレっぷり」同様、「週女」も相当に「ズレ」ていた。
「週女」のズレっぷりはまだあった。それが「資産家殺害事件」を取り上げた記事だ。といっても事件に関しては既報済みの情報を一通りおさらいしただけで、重点を置いているのが犬である。この資産家夫妻がペット犬2匹(現在行方不明)を溺愛していたことは知られた話だが、そこに執拗に切り込んだ。
「わが子同然にかわいがっていた犬をダシに夫妻はおびきだされた」「六本木で盛大な犬の葬式をやった」「伊豆のペンションなどを貸し切った犬の誕生日パーティでは、エサは大間のマグロ、佐賀牛、フランス産ホロホロ鳥、鴨のスモーク、トリュフが」「犬のためにお笑い芸人を呼びネタをさせた」などなど、かなり詳細である。しかしなぜここまで執拗に、そして詳細に犬の生活を描かなくてはならないのか――その理由や意図はまったく判然としない。女性週刊誌ならではの切り口かもしれないが、かなり「ズレ」ている記事だと思う。
"噂の女"神林広恵の女性週刊誌ぶった斬り!【第162回】http://www.cyzowoman.com/2013/02/post_7899.html
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