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長谷川幸洋 『政府はこうして国民を騙す』〜政府は平気で嘘をつく〜:原発事故及び東電処理に関して
http://www.asyura2.com/13/senkyo143/msg/530.html
投稿者 あっしら 日時 2013 年 2 月 05 日 16:17:35: Mo7ApAlflbQ6s
 


2013年02月02日(土)
長谷川幸洋著 『政府はこうして国民を騙す』
〜政府は平気で嘘をつく〜
1月18日発売の最新刊より第2章導入部を抜粋
賢者の知恵


第2章 政府は平気で嘘をつく

 福島原発事故は終わっていない。

 それは、なにより故郷を追われた「さまよえる人々」の存在が証明している。原発事故の避難者は2012年8月現在、福島県だけで16万人余を数える。これは親類宅などに避難した自主避難者を含んでいない。単なる引っ越しにカウントされたりしている避難者を合わせると、事故によって故郷を失った人々はもっと多いはずだ。
 避難者たちは今後、各地で除染が進んだとしても、事故以前の生活に戻れるかといえば、かなり厳しい。専門家たちは、森林や田畑の除染は「きわめて難しく、ほとんど不可能」とみている。家屋や学校、幼稚園、目先の道路などは除染できても、汚染された地域で農業や牧畜を事業として再開するのは難しい。
 どう16万人を救っていくのか。生活や仕事をどう支えていくのか。それは、とてつもなく重い課題である。これを解決せずして日本の未来はない。国土の3%を放射能で汚し、故郷を奪い、生活と人生を破壊しながら、東京電力はいまも生きながらえている。そして関西電力の大飯原発は再稼働された。

 そんな事態がいったい、どうして許されるのか。

 毎週末、首相官邸前や国会議事堂前の反原発抗議行動に集まる数万人の人々は政府と電力会社に怒りをたぎらせながら、そして不安も抱きながら「再稼働反対」の声を上げている。この章では、東電処理や原発再稼働をめぐる政府の対応、抗議行動の意味を考える。


破綻処理をしなかったが故に

 政府の支援がなければ、東京電力の存続はとうてい不可能だった。これまでの経過は後のコラムを読んでいただくとして、まず2012年夏時点での東電を取り巻く状況を整理しておこう。
 野田佳彦政権は2012年7月31日、原子力損害賠償支援機構を通じて東電に1兆円を出資し事実上、国有化した。政府の出資に先立って、機構は政府から受けた交付国債を財源に、当面の賠償支払いに充てる費用として2013年度までに東電に対して総額2兆4,262億円の交付を決めている。つまり出資と合わせれば、東電には3.5兆円近い公的支援のカネが流れていく。
 政府は東電支援に当たって「国民負担の最小化」を繰り返し、強調してきた。国民負担には、そのものずばりの税金による負担と電気料金の値上げがある。税金であれ電気料金値上げであれ、家計の負担になるのは同じだ。このうち税金について、政府は「東電救済には1円も投入しない」と言ってきた。一方、電気料金の値上げは2012年9月からの実施が決まってしまった。

 国民負担の最小化を言うなら、東電をさっさと破綻処理すればよかった。

 この考えはI「経産省幹部が封印した幻の『東京電力解体案』」のコラムから一貫している。ちなみにコラムで紹介した「東京電力の処理策」と題した6枚紙の筆者は当時、経産官僚だった古賀茂明である。古賀は省内で干された状態だったが、この紙をまとめたことで省内で一層、警戒されていく。
 破綻させて株主には100%減資を、銀行には債権放棄を求めれば、その分、東電が処理しなければならない債務は減るので、最終的には少なくとも数兆円の国民負担が減ったはずだ。ところが、実際には破綻処理を避けてしまった。その結果、株主と銀行の責任を問わない形になったので、国民負担は最小化できなくなった。


「最小化」と「極小化」の違い

 政府は厳密に国民負担の話をしたり文書に残すときは、注意深く「最小化」ではなく「極小化」という。それは、政府の案では最小化にはならない事情がよくわかっているからだ。極小化であれば、ある一定条件(この場合は株主と銀行の責任免除)の下で部分的に小さくなる点(極小値)を目指せばいい。これに対して、最小化は文字通りの最小化である。つまり極小化は、けっして最小化と同じではない。

 ほとんどのメディアはおおざっぱに考えて、最小化も極小化も区別しない。そのことが官僚や官僚のブリーフィングを受けた大臣にはわかっているので、たとえば枝野幸男経産相は機構が1兆円を出資した2012年7月になっても、まだ平気で「これ(出資)は賠償、廃止措置、電力の安定供給という三つの課題を国民負担最小化する中でしっかりと実現するためのものであります」と自慢げに語っている(7月31日の記者会見)。

 これはメディアが馬鹿にされているという話である。経産省は「どうせ最小化も極小化も違いがわからないだろう」とたかをくくっているのだ。
 電気料金値上げは結局、決まってしまった。では、東電に投入された公的資金は本当に一時的な肩代わりで、最終的にはきちんと国民に返済されるのだろうか。それをたしかめるには東電の経営実態をみればいい。

 政府の支援を受ける前提として、東電は原子力損害賠償支援機構法(*)に基づいて2012年4月27日に「総合特別事業計画」を作成した。それによれば、東電の純資産は2012年3月期の5,774億円から2013年3月期には1兆3,760億円に増加する見通しだ。ほぼ1兆円の出資に見合っている。
 当期利益は2013年3月期に2,014億円の損失を出すのを底に、2014年3月期は1,067億円の黒字転換をはたす。それ以降、2022年3月期まで毎年1,000億円前後の利益を出すシナリオを描いた。2010年代半ばに「積極的な国際展開や小売り部門における新ビジネスの展開等による収益の拡大」を通じて社債市場への復帰をめざしている。


*) 2011年8月10日に成立した。第1条で「原子力損害の賠償の迅速かつ適切な実施」と「電機の安定供給」「原子炉の運転に係る事業の円滑な運営の確保」を図り「もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に資する」ことを目的と定めている。「国民負担の最小化」は初めから目的になっていない。
 政府が損害賠償支払いのために機構に交付国債を交付し、機構がそれを現金化、東京電力に資金を交付する。東電は後で機構に毎年、特別負担金を支払って返済する。交付国債だけでは資金不足の場合や後に東電の返済負担が過大になった場合には、交付国債とは別に国が機構に資金(現金)を交付することもできる。ただし機構は交付国債を現金化した分については国に返済するが、現金で受取った分については国への返済義務はない。
 このほか、機構は国の政府保証を得て民間の金融機関から資金を借り入れ、東電に出資や融資もできる。機構は2012年7月31日、東電に1兆円を出資し事実上、国有化したが、その際の資金は政府保証付きで民間金融機関から5,000億円ずつ2回に分けて資金を借り入れた。


黒字転換のカラクリ

 実は、このシナリオは肝心かなめの賠償費用を一切、盛り込んでいない。なぜなら当面、賠償支援機構が賠償費用をぜんぶ立て替え払いしてくれるからだ。いくらかかろうと機構が払ってくれるので、収支シミュレーションで計算する必要がない。それには、次のような事情がある。
 原子力損害賠償支援機構法によれば、機構が政府から受けた交付国債を現金化して東電にカネを渡す。東電は後で「特別負担金」として機構に長期で分割返済する仕組みである。では、いつから特別負担金を払うのか。それが先の事業計画によれば「2010年代半ば以降」なのだ。
 つまり2010年代半ば以降に国際展開や新ビジネスを手がける。社債市場にも復帰する。それから借金返済を始めるというのだ。それと同時に機構が保有する1兆円株式も東電自身が買い戻し、市場に売却する計画を立てた。それが実現できれば、1兆円出資もあるいはムダにならないかもしれない。
 だがこれは、まったくの絵空事である。
 当面は機構が肩代わりするとしても、東電は少なくとも数兆円に上る賠償負担を抱えている。加えて除染もある。除染はどうかといえば、放射能物質汚染対処特別措置法に基づいて、こちらも当面は国と地方が分担して除染事業を実施するので、東電は費用を心配をする必要がない。だが、これはあくまで一時しのぎである。除染費用は後で東電が国に支払うのだ。先の措置法にそう書いてある。
 それに廃炉がある。当座の応急措置分は先のシナリオに計上しているが、最終的な廃炉費用総額はわからず、計算から除いている。ようするに「2010年代半ば以降には社債市場に復帰して、2022年3月期まで毎年1,000億円前後の利益を出す」というシナリオは、賠償も除染も廃炉もぜんぶ除き、借金返済を棚上げしたうえでの話なのである。
 それで1,000億円程度の利益である。そんな額で「特別負担金」は支払えるのか。賠償と除染、廃炉にかかる費用はいくらか。日本経済研究センターの試算によれば、少なくとも20兆円、最大で250兆円かかるという(「原発の行方で異なる4つのシナリオ」2012年3月、「原発の発電コスト、20年度には事故前の3倍に」2011年7月)。
 借金が総額20兆円として年1,000億円の利益を全部返済に充てたとしても利子なしでも200年、250兆円なら2500年かかる計算である。こんな話を信じる人がどこにいるのだろうか。こんな状態で社債市場に復帰できるわけがない。それは結局、22「東電のギブアップ宣言」で書いたように東電自身が認める結果となる。

最小化どころではない

 実は交付国債以外にも、機構法では機構が「現金」を東電に渡したり、政府保証付きで民間金融機関から資金を借りて、東電に出融資する道が開かれている。実際、機構の1兆円出資は民間金融機関から政府保証付きで調達した資金が原資だった。この問題はM「国民には増税を押しつけ、東電は税金で支援。これを許していいのか」から3回にわたって追及した。
 このうち機構に対する政府の現金交付は実行されていないが、法律上は機構が現金で受け取って東電に渡した分は機構が政府に返済する必要はない。返済しなければならないのは、あくまで交付国債を現金化した分だけだ。つまり、東電が返済しなければそれまでである。このカラクリは先のコラムで詳しく解説したが、非常に複雑で素人が法律を斜め読みしたくらいでは、とてもわからない。新聞もまったく報じていない。
 交付国債の現金化による支援を続ける限り、東電はやがて特別負担金の納付による借金返済を迫られる。だが、それも絵に描いた餅になるだろう。いずれ東電が返済し続けるのはムリとわかるので、どこかの時点で返済不要な現金交付、あるいは政府保証による東電支援に切り替わる可能性がある。その後で東電が破綻すると、機構の出資や支援が焦げ付いて、カネを貸した民間金融機関から政府保証による返済を迫られる事態になるかもしれない。
 そうなれば国民負担は当然、一挙に増える。最小化どころではなくなってしまうのだ。
 もともと原子力損害賠償支援機構法は2011年8月に成立してから施行された後、すぐ見直す予定だった。
 附則第6条には「施行後早期に、資金援助を受ける原子力事業者と政府及び他の原子力事業者との間の負担の在り方、資金援助を受ける原子力事業者の株主その他の利害関係者の負担の在り方等を含め、国民負担を最小化する観点から、この法律の施行状況について検討を加え、その結果に基づき、必要な措置を講ずるものとする」(一部抜粋)と書き込まれている。
「株主その他の利害関係者の負担の在り方」というのは「株主と銀行にも負担を求めるべきだ」という論点を含んでいる。そうでないと「国民負担を最小化する観点」に達しないからだ。
ところが成立から1年を過ぎても、抜本改正の機運はない。本来の発送電分離による電力再編も進まず、政府が機構を通じて1兆円を出資し、国有化した地点にとどまっている。公的資金だけが東電に着々と注ぎ込まれる一方、原発再稼働も実行された。
 だからS「様変わりした抗議行動---反原発集会で感じた新しい動き」で書いたように、怒りに燃えた国民の抗議行動が収まらないのだ。

『政府はこうして国民を騙す』著者:長谷川幸洋
(講談社刊) 105〜115ページより抜粋

*****
目次
はじめに  3
第1章 情報操作は日常的に行われている

1. 資源エネルギー庁長官が「オフレコ」で漏らした本音  31
2. 「オフレコ破り」と抗議してきた経産省の卑劣な「脅しの手口」  38
3. 今度は東京新聞記者を「出入り禁止」に! 呆れ果てる経産省の「醜態」  44
4. 取材から逃げ回る経産省広報と本当のことを書かない記者  54
5. 事実を隠蔽する経産官僚の体質は「原発問題」と同根である  62
6. 辞任した鉢呂経産大臣の「放射能失言」を検証する  70
7. 「指揮権発動」の背景には何があったのか---小川敏夫前法相を直撃  78
8. 「陸山会事件でっち上げ捜査報告書」を書いたのは本当は誰なのか  89
9. 「捜査報告書問題」のデタラメ処分にみる法務・検察の深い闇  98

第2章 政府は平気で嘘をつく

10. 経産省幹部が封印した幻の「東京電力解体案」  115
11. 東電の資産査定を経産官僚に仕切らせていいのか  124
12. 賠償負担を国民につけ回す「東電リストラ策」の大いなるまやかし  129
13. お手盛り「東電救済」---政府はここまでやる  134
14. 国民には増税を押しつけ、東電は税金で支援。これを許していいのか  140
15. 資金返済に125年! 国民を馬鹿にした政府の「東電救済策」  146
16. 不誠実極まりない枝野経産相の国会答弁  154
17. 「東電国有化」のウラで何が画策されているか  159
18. 原子力ムラの「言い分」を鵜呑みにしてはいけない  164
19. 大飯原発再稼動---政治と官僚の迷走ここに極まれり!  170
20. 様変わりした抗議行動---反原発集会で感じた新しい動き  178
21. 野田政権が決めた「原発ゼロ」方針は国民を欺く情報操作である  187
22. 東電のギブアップ宣言  194

第3章 迷走する政治、思考停止したメディア、跋扈する官僚

23. いい加減、財務省べったりの「予算案報道」はやめたらどうか  206
24. 増税まっしぐら! 財務省の「メディア圧力」  212
25. 日銀のインフレ目標導入でメディアの無知が露呈した  216
26. 官僚たちがやりたい放題! 野田政権「日本再生戦略」には幻滅した  223
27. 増税に賛成したメディアは自らの不明を恥じるべきだ  228
28. もはや用済みの野田首相が財務省にポイ捨てされる日  235
29. 「年内解散」を的中させた私の思考法を公開しよう
30. 安倍自民党総裁の発言を歪めたメディアの大罪  247
おわりに  256


長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ)
ジャーナリスト(東京新聞・中日新聞論説副主幹)。1953年千葉県生まれ。慶応義塾大学経済学部卒。ジョンズホプキンス大学高 等国際問題研究大学院(SAIS)で国際公共政策修士。財政制度等審議会臨時委員、政府税制調査会委員などを歴任。12年から大阪市人事監察委員会委員長。『日本国の正体政治家・官僚・メディア---本当の権力者は誰か』(講談社)で第18回山本七平賞。『百年に一度の経済危機から日本経済を救う会議』(高橋洋一との共著、PHP研究所、2009年)、『官僚との死闘700日』(講談社、2008年)など著書多数。『週刊ポスト』でコラム連載中。テ レビ朝日「朝まで生テレビ!」、BS朝日「激論!クロスファイア」、読売テレビ「たかじんのそこまで言って委員会」などテレビ、ラジオ出演多数。 twitterアカウントは@hasegawa24


http://gendai.ismedia.jp/articles/-/34762
 

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コメント
 
01. 2013年2月05日 18:06:01 : SdFpwqyFrs
http://www.marino.ne.jp/~rendaico/senkyo/fuseisenkyoco/ronsyo1.html

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