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2013年2月 4日 植草一秀の『知られざる真実』
安倍政権の経済政策がアベノミクスと呼ばれてもてはやされているが、呼び名が間違っている。
正しい呼称は
「アベノリスク」
である。
これは私の命名ではないが、アベノリスクが正しい。
リスクは三つある。
第一のリスクは、ハイパーインフレの地雷が埋め込まれること。
金融緩和政策を推進することと、日銀の独立性を排除することの間には天と地ほどの差がある。
金融緩和政策は維持するべきだが、日銀の独立性を排除することは確実に間違っている。
この間違いを犯そうとしている。
第二のリスクは、財政政策が利権回帰することだ。
すでに回帰していると言ってよい。
財政支出の直接化は財政の透明性を高める施策だ。
しかし、財政支出はいま間接支出に完全に回帰した。
業界、企業、政府系団体への政府支出が激増する。
これが新手のマネーロンダリングである。
マネーをこれらの機関に通すと、その途上で、チャリンチャリンと利権マネー=キックバック=リベート=政治献金がこぼれ落ちてくる。
この目的のために、大型補正予算が編成された。
第三のリスクが最大のリスクだ。
それは、目先の円安・株価上昇が持続して、7月の参院選で自民党が勝利してしまうこと。これが実は最大のリスクなのだ。
7月参院選で自民党が大勝するということは、日本が変質することを意味する。
日本の国のかたちが書き換えられてしまう。
昨年4月に公表された自民党の憲法改正草案は恐ろしいものである。
これが一気に実行に移される。
日銀の独立性が排除される。
日銀法を変えなくても、日銀総裁が総理大臣の指揮命令系統の下に置かれるなら日銀法を改正するのと同じ効果が生まれてしまう。
そして、年額13.5兆円に及ぶ消費税大増税が実行に移される
憲法改悪、日銀破壊、消費税大増税の地雷が炸裂することになる。
これが「アベノリスク」だ。
日本の蹉跌になる。
私は昨年の10月29日号『金利・為替・株価特報』に、
政治の変化=金融政策への圧力=円安=株高
の反応が生じる可能性が高いと記述した。
http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html
その後に衆院解散決定があり、これを契機に円安=株高の反応が生まれている。
この流れは当面持続すると見込まれる。
株価が上昇している最大の理由は、日本の株価が下げ過ぎていたことにある。
アベノリスクの成果として株価が上がっているわけではない。
本当は野田政権の時期に株価が大幅に上昇するチャンスはあった。
経済復興政策を大胆に打ち出し、日本経済浮上を優先させていれば、野田政権の時代に株価は大幅に上昇していたはずである。
ところが、野田佳彦氏は財務省の路線にとっぷりと浸かり、日本経済を浮上させるのではなく、巨大増税だけを推進した。
このために割安の株価は割安のまま放置された。
この状況下で政権を引き継いだ安倍晋三氏は、まず先に景気浮揚の施策を打った。
そして、日銀の独立性を奪うことを宣言して円安を誘導した。
この円安に連動して株価が上昇している。
安倍政権が財政金融政策を総動員して経済浮上を優先させていることは正しい。
菅政権、野田政権の間違いを適正に正している。
この施策のおかげで、安倍政権は割安株価の水準修正という恩恵を独り占めすることに成功している。
当選者なしで積みあがった当選金のキャリーオーバー分を安倍政権が総ざらいしているようなものだ。
これが安倍政権にとって強烈なフォローの風になっていることは間違いない。
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