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http://mainichi.jp/opinion/news/20130202ddm012070017000c.html
毎日新聞 2013年02月02日 東京朝刊
◇王様の言いなりに
私は直感的に「裸の王様」というアンデルセンの童話を思い起こしました。
大阪・桜宮高校で起きた体罰と生徒の自殺、そしてその後、橋下徹・大阪市長が入試中止を声高に叫んで実行させたこと。この一連の経過を見ていて、私はやはりこれは「裸の王様」だな、と思ったのです。
改めてその童話のあらすじを書いておきます。
新しい服が大好きな王様の元に、ふたり組の詐欺師が布織り職人という触れ込みでやって来ます。彼らは、ばかには見えない布地を織ることができるという。王様には当然布地は見えません。しかし、家来の手前「見えない」とは言えない。褒めるしかない。家来も褒めるしかない。結局、王様は見えない衣装を着てパレードに臨みますが、見物人もばかと思われたくないので褒めそやす。そんな中で小さな子供の一人が「あ、王様は裸だ!」と叫びました……というのがアンデルセンの鋭い寓意(ぐうい)を含んだ童話の核心部分です。
さて、今回の桜宮高校の入試中止事件。きっかけとなったバスケットボール部顧問による自殺した主将生徒への激しい体罰は、報道で見る限り、これは体罰の域を超え暴力行為ですね。
体罰については指導のあり方の問題としてきっちりと議論をし、改善すべきところは改めなければなりません。
橋下市長は当初、体罰一般は否定しないという趣旨の発言をしていましたが、一転、「入試中止」という極端な発言に変わりました。発言がブレるというのは原発問題や先日の選挙時での太陽の党との合併問題などを見ていて、橋下市長の傾向ではあります。が、今回はブレたことが問題ではありません。体罰問題と入試の問題はどう考えてもつながりません。論理的に飛躍があります。
橋下市長は「学校の伝統や空気を一新させる」ために体育科とスポーツ健康科学科の入試を中止させるのだと主張していますが、これは常識的に見て無理がある理屈です。入試をやめれば体罰問題が解決するなんてことはあり得ません。
橋下市長の入試中止措置に真っ向から反論したのは桜宮高校の在校生たちだけでした。
「全く納得できません」
裸の王様に大人は言いなりになっただけでした。
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