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2013年1月31日 植草一秀の『知られざる真実』
この冬最大級の寒波が到来したが、その後は寒さも緩み、週末にかけては気温の上昇も予想されている。三寒四温の季節に移行しつつある。
冬来りなば春遠からじ
と言うが、立春も眼の前に迫り、春の予感がそこはかとなく広がり始めている。
日本政治の春は突然の大寒波の到来で、遠い彼方に消されてしまったが、本当の勝負はこれからである。
この極寒のなかで、いかに根や幹にエネルギーを蓄えるのかが問われる。
冬にエネルギーを蓄えてこそ、春に大きく花が開く。
メディアリテラシーと言う言葉がある。
メディアが流す情報の真贋(しんがん)を見極める目、見極める能力を身に付ける必要がある。
なぜなら、メディアが流す情報が著しく偏向しているからだ。
昨日1月30日のニュースウォッチ9。本当に悪質な番組であると感じる。
三つのニュースが伝えられた。
円安の評価と、アルジェリア事件に関する報道、そして尖閣問題に対する米国の姿勢に関する報道だ。
よく注意してみないと報道する側の意図を読み抜くことができない。
よほどの知識や情報を持たねば、この報道に流される。
こうした偏った情報流布による影響は計り知れない。
国民はNHKとは別のパイプから真実の情報を入手してゆかなくてはならない。
円安の進行が与える影響には当然のことながら「陰」と「陽」がある。
円安がプラスに作用する面がある一方、マイナスに作用する面もある。
これを客観的に、正確に伝えるのが、本来のメディアの役割である。
NHKの放送は、特集の初めの部分で円安のデメリットをわずかに伝えたが、残りの大半は、円安がプラスであるとの内容だった。
安倍政権が円安誘導を実行していることに配慮した「御用報道」である。
円安で消費者にはマイナスの面が強く表れ始めている。
輸入品の価格が上昇するからだ。
食料品、エネルギー価格に直接影響が出る。
生活必需品とも言える、食料、灯油、ガソリン価格がすでに大きく値上がりし始めた。
このことをNHKは特集冒頭でわずかに伝えた。
しかし、街の声としては、「円安は困る」の強い声を拾っていない。
「円安で価格が上がるのは困るけれども」
の声を紹介して、言外に「しかし、メリットもあるから我慢が必要かも」のニュアンスのある発言だけを拾っている。
意図的に円安のデメリット報道を抑制して、円安のプラスの側面だけを強調し、また、海外のさまざまな論評のなかで、円安政策を肯定評価する論評だけを際立たせるやり方は、報道機関の行動としては最低、最悪の部類に入る。
テレビメディアの作為というのは、とりわけ「街の声」の紹介の際に顕著に表れる。なぜなら、こうした「街の声」は編集段階で取捨選択ができるからだ。
専門家へのインタビューでも、VTR収録の映像の場合には同じことが言える。1時間の収録を行っても、放映するのはせいぜい20秒だ。編集者はあらかじめ収録する内容を決めている。
そのあらかじめ決めた内容を話し手が話す部分を収録しにスタッフを派遣するのだ。1時間の収録で20秒の発言を拾いに取材に行くわけだ。
話し手の意見を忠実に収録することはまずない。
もっとも顕著だったのは12月4日の衆院選公示日のNHKニュースウォッチ9だった。完全な「やらせ」報道と言って差し支えの無い報道内容だった。
12月5日付ブログ記事
「「街の声」用いて投票誘導報道を行う偏向NHK」
http://uekusak.cocolog-nifty.com/blog/2012/12/post-56c4.html
円安でメリットを受けるのは輸出依存度の高い製造業だけである。
輸出製造業は円安で大きなメリットを受ける。
しかし、日本経済における輸出製造業のウエイトは驚くほどに縮小している。
2011年のGDPに占める製造業の比率は18.5%に過ぎない。
製造業のウエイトは日本経済の5分の1にも満たない。
残りの81.5%は非・製造業である。
経済問題になると経団連会長の顔が出てくるが、経団連会長の多くは製造業企業のトップである。
この人々は、自分の所属する企業の利益だけを考えていることが圧倒的に多い。
いまの経団連会長の発言から、「見識」と言うものを感じたことは残念ながら一度もないが、メディアは日本経済=製造業のようなイメージを植え付ける報道を展開する。
NHKの報道でも円安でキャノンの利益が拡大することを伝えていたが、円安で輸出企業に恩恵があるということは、そのまま、輸入企業にダメージがあることの裏返しなのだ。
片側だけを報道して円安を絶賛することがそもそもおかしい。
日本経済のわずか18.5%を占める製造業にとって円安が良いだけで、一般消費者にとって円安はデメリットの方がはるかに多い。
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