17. 2013年2月01日 00:09:37
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JBpress>日本再生>世界の中の日本 [世界の中の日本] 桜宮高校を抜本改革、橋下市長の荒療治は正しい マキァヴェッリ先生ならこう考える(41) 2013年02月01日(Fri) 有坪 民雄 前回、桜宮高校の事件をネタにして、教師はマスコミ相手に戦えと申し上げました。ところが実際は、一部の親や生徒たちが立ち上がったようです。運動部のキャプテンたちの記者会見や、ツイッターでの同校関係者とおぼしき人たちの橋下徹大阪市長批判などを見ていると、まさか彼らは前回の拙稿を読んで戦う気になったのではないだろうなと考えたりもします。もしそうなら、光栄な話です。 しかしながら、今回の親や生徒の動きを見ていると、橋下市長の判断は全面的に正しいと考えざるを得ません。なぜなら、桜宮高校の親や生徒たちは、自分たちがなぜ叩かれているのか、全く理解していないからです。 事態は思っていたよりも悪い 筆者は、当初この事件を叱責のノウハウの使い方の失敗ではないかと思っていました。報道によれば、自殺した生徒の主将就任以後に体罰が激しくなったとされています。ビジネスマンならこんな叱責のノウハウをご存じでしょう。 気の弱い部下を自分が直接叱責するのは部下を萎縮させると考えて、簡単にへこたれない1階級上の先輩を代わりに叱責する。 先輩が叱られているのを見て、「これは自分が叱られているようなものだ」と気の弱い部下が気づいてくれればいい。叱責する方も、叱責される方も、やりとりを見ている部下が分かってくれることを期待して“演技”をするのです。 図1 それでも部下が分かっていないと、あとで先輩が「オレはおまえの代わりに怒られていたんだぞ。課長だっておまえが一番悪いことは分かってる」などと教えて、部下は上司の気の遣い方や、近い将来自分につくであろう部下の守り方を学んでいくのです。外国のことは知りませんが、日本ではごく普通に行われている人材育成法です(図1)。
教師は、(少しの体罰も交えた)叱責のノウハウを自殺したキャプテンが理解していると考えて行使した。しかし残念なことに、キャプテンはノウハウを理解していなかった。そしてノウハウを教えてくれる人もいなかったがゆえに起こった悲劇ではないのか。そんなことを考えていたわけです。事件の経緯がこれだけなら、筆者は考えを変えなかったでしょう。 しかし続報で、キャプテンが1日に30〜40発も殴られていたこと。しかも周囲に問題の教師とは別にOBなど大人が見ていて放置していたこと。さらにそうした指導が行われていることを生徒も親も知っていて、なおかつ今なお教師が敬愛されていることを知ったところで、事態は思っていたより悪いと確信しました。 さらに同校の運動部のキャプテンたちの記者会見や、運動部員たちの不祥事がネットに溢れた経緯を見て判断するならば、事態は最悪です。大津のいじめ事件の時よりも悪いと言い切ってもいいかもしれません。 臨界点を超えてしまった悪意なき体罰 (「ディスコルシ ローマ史論」マキァヴェッリ著 筑摩学芸文庫) この言葉は、ディスコルシ第1巻46章のタイトルです。マキァヴェッリは、この章でカエサルの言葉を引用しています。 「どんな悪い実例とされているものでも、それが始められたそもそものきっかけは立派なものだった」 マキァヴェッリは言います。今は共和国で野心家として見られている人でも駆け出しの頃は力がなく、大きな力に対抗できるよう徒党を組むことはよくある。彼は頑張り、簡単にやられることがなくなるよう力をつけようとする。この行動に悪いことは全くありません。 しかし彼が権力を掌握すると、市民は彼を畏怖するようになり、公職にある者も一目置くようになる。そうなるとこの男を攻撃することは危険きわまりないことになるのだと。 彼に逆らう者はいなくなり、彼が死ぬか、何か突発事件が起こって彼の支配から逃れられない限り市民は奴隷の境遇を甘受するしかなくなる・・・。 今回の事件で渦中の人となった教師は、高校バスケの名伯楽として知られていました。バスケが好きで、バスケに青春を懸けようとする生徒を前に全力で彼らの能力を引き出そうと頑張っていたと思われます。 私立校のようにセレクション入学で才能のある生徒を集められない公立高校の教師の立場で、自分の預かるバスケ部を日本一にしたいと考えたであろうこの教師の意気と努力、そして結果を出した実績は誰しも称賛するでしょう。 その方法として、多少の体罰を使うことがあっても致し方なかったかもしれません。筆者自身、体罰はそれしか手がない場合に限定的に使用することを否定はしません。しかし今回の事件で明らかになったのは、1日に30発から40発という常軌を逸した体罰が行われ、それを見ていたOBをはじめ、校長までもが教師を止めなかったことです。 図2 OBたちに言わせれば、この教師は自分たちを導いてくれた恩のある人でしょうし、愛情ある体罰で自分を育ててくれたという気持ちもあったでしょう。素晴らしい実績は、彼ほど実績を持たない他の先生の口を重くさせるに十分な力となったでしょう。
彼は、体罰によって成功を体験し、自信を持ったのです。そして成功を続けるために最初は控えめにやっていた体罰をエスカレートさせていき、臨界点を超えたのだと考えられます(図2) 学校を支配してやろうといった悪意があるなら、何とかして彼を叩いてやろう、攻撃してやろうと思う人も出てきたかもしれません。しかし、彼には悪意がないのです。悪意のないものをどうして攻撃できるでしょう? 桜宮高校の親や生徒に欠けているもの さらに危惧することがあります。桜宮高校では他の運動部でも体罰が理由で処分された教師が今なお体罰を続けていたり、他ならぬ生徒や親たちがこの教師や学校の校風を今なお十分に信頼し、守るべきだと思っているらしいことです。 「地獄への道は善意で敷き詰められている」 この箴言はレーニンの言葉だと言われていますが、実際はギリシャ・ローマ時代からヨーロッパに連綿と伝わっているようです。この箴言が伝える典型的な落とし穴に、桜宮高校ははまったと言えるのではないでしょうか。 この世には、よかれと思ってやることが、とんでもない悪に変わることがあるのです。例えば、一般論で言うなら善意の人の集まりで、いいこともたくさんやっているのにもかかわらず、彼らのことをよく言う人は少数で、嫌っている人の方がはるかに多いという団体が日本にもいくつかあります。 なぜ嫌われるのか? 彼らの多くは自分たちが良いことをやっていると自信を持ち過ぎて、悪いことをしていても自分たちを正当化して反省しないからです。これが世界レベルになると、サリン事件を起こしたオウム真理教やカンボジアで何百万人も虐殺したポルポト派になる。 悪人は、自分がやっていることが悪いと自覚していますから、おのずから悪行にも限度があります。しかし、自分は悪くないと思っている善人は、悪の自覚がないから際限なく悪に染まることがある。 そうした見識を持っている人たちは、自分たちが正しいと思ってやっていることが、ひょっとしたら悪いことかもしれないと考えつつ行動しています。それが「謙虚」というものです。 すなわち、謙虚さが桜宮高校の親や生徒に欠けている。それどころか、自分たちが正しいと確信を持ちすぎて、理解を拒否している印象すら受けます。だから叩かれるのです。 今、桜宮高校は、キャプテンの自殺の責任を問われる段階から、生徒や親の善意の暴走を止める段階に移ってきているのです。 問題が何かを見抜いた橋下市長 (『君主論』、マキアヴェリ著、池田廉訳、中公文庫) 君主論の中でマキァヴェッリは共和制国家を支配することがいかに難しいかについて説いています。共和制国家はこれまで満喫していた自由を他国に奪われると、ことあるごとに反抗してくるからです。 反抗を無くそうとするなら、マキァヴエッリは対策として、以下の3つを挙げます。 (1)都市を滅ぼす。 (2)君主が移り住む。 (3)以前からの生活(自由)を保証し、友好的な政権を作る。 最上のやり方はもちろん。(1)の都市を滅ぼすことです。 実際、共和制ローマが他の共和制国家を征服する場合、君主がいないので(1)か(3)しか手段がありません。すなわち、自分たち同様のローマ市民として遇するか、都市を破壊し住民を各地に移住させバラバラにして、集団になって反抗してこないようにするしかなかったわけです。 桜宮高校の生徒も父兄も、現状の桜宮高校に満足して、改革の必要など感じておらず、これまでと同様の指導が続けられることを求めている。これを受け入れることはできません。事件を受けて体罰は少しは控えられるでしょうが、根本的な体質は変わらず、将来また同様の問題が起きることが容易に予想できるからです。 滅ぼすのは残酷過ぎるから、せめて有能な校長に桜宮高校の改革を託してはどうかという意見もあるでしょうが、難しいでしょう。こうした校風の学校で、例えば体罰絶対否定の考えを持つ校長を送り込んだとしても多勢に無勢で潰されるのが関の山です。断固として滅ぼす(解体)しか選択肢はありません。 橋下大阪市長の毅然たる態度は、こうした状況をいち早く理解したからだと思われます。橋下市長という、頭が切れる上に、ある種の「乱暴」さを備えた市長をこの時期に大阪市が得ていたことは、めったにない幸運だったと言えます。 入試の中止は、教育委員会によって骨抜きにされ、事実上阻止されました。学内の混乱阻止のために、かつては東大すら入試を中止したこともあります。決して桜宮高校だけが差別的に扱われていたわけではないのに、橋下市長は敗北してしまいました。 残る手段である教師の全取っ換えは何が何でも実行してもらわねばなりません。私などよりもはるかに速い段階で問題が何かを見抜いた橋下市長の力量を、筆者は信頼したいのです。 最後に一言、追記しておきます。1月27日に、今回の橋下市長の決定に反発する保護者や卒業生等の手で「桜宮高校から体罰をなくし、文武に花咲く桜宮高校を再構築する会」(通称「桜宮応援団」)が結成されました。呼びかけ人とされている伊賀興一弁護士は、自由法曹団所属の弁護士です。この手の事件で自由法曹団が動くということは、同団体を日本共産党が背後で操っていることを意味します。これは、メディアの人間なら知らぬ者がいない“常識”です。共産党は橋下市長を叩くためなら、何をしてもいいとでも思っているのでしょうか? |