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(*上の映像は映画からのものではない)
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映画「レ・ミゼラブル」と今 庶民の悲哀と格差社会
(東京新聞「こちら特報部」1月25日)
庶民の悲哀と格差社会ミュージカル映画「レ・ミゼラブル」が、大ヒットを記録している。古典的な名作が原作。粗筋は知っているのに、「涙を抑えることができない」という声が広がる。どこが琴線に触れるのか。探求していくと、現代社会のありようが見えてきた。 (出田阿生、林啓太)
「人間ドラマに感動しました。ミュージカル映画を見たのは久しぶり。こんなに心を動かされるとは思わなかった」。東京都心の映画館。「レ・ミゼラブル」を鑑賞した女性(65)は、ハンカチで目頭を押さえながら、とぎれとぎれに話した。
平日の日中とあって、館内は七分の入り。それでも、半数以上を占めた五十代以上の観客で熱気を感じる。終盤に近づくと、館内のそこかしこから、すすり泣きが漏れ始めた。エンドロールが流れると、拍手もわき起こった。男性会社員(27)は「歌の力のようなものを感じた」。五十代の男性会社員は「夢破れてもけなげに生きる人たちの姿に胸を打たれた」と話した。
原作はフランスの作家ビクトル・ユゴーが一八六二年に発表した大河小説。当時としては爆発的なヒットとなり、日本でも黒岩涙香が「ああ無情」と題した翻案を一九〇二年、新聞紙上に連載し、人気を博した。
映画のもととなったミュージカルは、八〇年のパリ初演、八五年のロンドン初演。以来、今もロングランを続け、世界四十三カ国で六千万人を超える観客を動員している。
十九世紀のフランス。主人公のジャン・バルジャンは、パンをひとつ盗んだ罪で十九年もの間、服役する。仮釈放後も罪人として過酷な扱いを受け、助けられた教会で銀器を盗み出す。だが司教が罪を見逃し、許してくれたため「生まれ変わろう」と決意する。
やがて、市長にまで上り詰めたバルジャンは、警官ジャベールの執拗(しつよう)な追跡を受け、薄幸の女性ファンテーヌから託された娘コゼットとともにパリへ逃げる−。
英国映画で日本では昨年十二月二十一日に公開。今月二十二日現在の観客動員数は二百八十一万人。興行収入もすでに三十四億円を超えた。
児童書としても普及し、粗筋ぐらいはみな知っている。それなのに、感動するのは、なぜか。
映画評論家の渡辺祥子さんは「個々の人物がしっかり造形された群像劇であること。ある人は貧しい少女の片思いのつらさに、ある人は孤独な主人公が初めて愛に目覚める場面にと、それぞれ好きな登場人物と場面に共感できるからでは」と分析する。「観客が泣けるポイント、幸せを感じるポイントが多いほど、映画はヒットする」
製作側の狙いは分かるにしても、ここまで観衆の心をつかむのは、最近は少なくなったミュージカル映画だからか。
「この映画はミュージカルではなく、現代のオペラだ」と評するのは映画評論家の品田雄吉さん。ミュージカルは芝居と歌が交互に出てくるが、この映画にはほとんどせりふはなく、歌の連続だ。「ドラマの展開がともかく壮大。登場人物は感情全開で歌い、ある意味で現代的だが、その喜怒哀楽も作品全体を情緒的にはしない。スピードと緊張感に引き込まれる」
好きな男性の恋を手助けして命を落とす少女エポニーヌ。女優島田歌穂さんは、八七年の日本初演からこの役を演じ、ロンドンで日本代表として歌ったこともある。これまでのミュージカル映画は、歌は別に録音する方式が一般的だった。島田さんは「この映画は、名優たちが生で歌っているのが素晴らしい。息づかいや声の揺れが、感情を生々しく伝える」と称賛する。
「ユゴーが小説を書いた瞬間から、永遠に受け継がれていくことが約束された作品と感じる。映画によってより多くの方がこの作品に触れてくださったら、さらに舞台にも新たな息吹が吹き込まれ、作品が進化していくと思う」
映画の背景として重要なのは、フランス革命の時代が描かれていることだ。革命を志す学生たちが蜂起し、市街地にバリケードを築き、軍隊と向かい合う。
前出の品田さんは「若者にとっては青春物語だし、一定年齢以上には学生運動や労働組合運動の興奮を思い出させるのかも」と話す。マーケティングコンサルタントの西川りゅうじんさんも「学生運動の華やかなりし時代と重なり、中高年は懐かしいのではないか」とみる。
結果的には、挫折に終わった学生運動。映画はその郷愁をくすぐるような面があるのかもしれない。実際、六十五歳の男性は、「映画を見ていて、あの時代を思い出し、涙が止まらなくなった」と話していた。
現代の「格差社会」「社会不安」と重ね合わせて見る人も多い。十九世紀のフランスも貧困にあえぐ市民と、富裕層の間に格差が広がっていた。
大妻女子大の小泉恭子准教授(音楽社会学)は「学生らは就職難など、格差社会の矛盾をもろに受けている。中高年は、歌を通じて社会を変革し、連帯しようとした世代で共感がある」と指摘する。西川さんは、「現代も震災や原発事故、東アジア情勢などがあり、世の中が混沌(こんとん)としている。平和な時代だったら共感を得るのは難しかったかもしれない」と話した。
「レ・ミゼラブル」についての著作もある明治大の鹿島茂教授(フランス文学)は「格差社会」に加え、「愛のリレー」をキーワードに読み解く。
バルジャンは、司教の恩をあだで返す。「他人からもらった愛で成長し、さらに別の人に愛を伝えていく。これが原則だが、格差社会では愛の受け渡しが途絶えてしまう」。鹿島さんは「司教の無償の愛に心打たれたバルジャンは、自己犠牲の精神を受け継いだ。見返りがなくても他の人たちに愛を与えていく人間になった」と話す。
愛のリレーが途絶えがちなのは現代の日本も当時のフランスも変わらない。「『私は愛をもらっていない。愛をよこせ』という態度の人も多い」と鹿島さん。「バルジャンの生き方が、観客に愛をつなぐことの大切さを気づかせたのでは」と話した。
<デスクメモ> 安倍晋三首相は正月の二日、昭恵夫人と「レ・ミゼラブル」を鑑賞した。どんな感想を抱いたのかは、定かではない。映画に描かれた社会の矛盾に不満をため込む市民たちのことは、首相の目にどう映っただろうか。その映画が大ヒットしている。国民意識に潜んでいるものを侮ってはいけない。 (国)
ソースはこちら ⇒ 「日々担々」資料ブログ
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