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『生活保護を受けている状態から脱出したい』
と言うのは生真面目な典型的な日本人のセリフだと思いました。
でも悪いのは悪徳介護業者と悪徳精神科医をほったらかしにした行政ですよね。この人には足らないくらいなのでは。
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http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161202-00147338-toyo-soci
風俗に売られた「3児の母」の壮絶すぎる半生
東洋経済オンライン 12/2(金) 4:40配信
精神障害と向精神薬の副作用、脳脊髄液減少症に長年苦しむ山内里美さん(48歳、仮名) http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20161202-00147338-toyo-soci.view-000
この連載では、女性、特に単身女性と母子家庭の貧困問題を考えるため、「総論」ではなく「個人の物語」に焦点を当てて紹介している。個々の生活をつぶさに見ることによって、真実がわかると考えているからだ。今回紹介するのは、神奈川県に住むシングルマザー48歳。彼女は病と闘っている。
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「んああ、えんああぁ、んぁああ……」
神奈川県某市。足元がおぼつかなく、マスク姿で現れた山内里美さん(48歳、仮名)が何を言っているのか、わからなかった。聞き耳を立てて近づいたが、わからない。彼女はカバンからメモ帳とペンを取り出す。「20分後には薬が効くと思うのでしゃべることができます。申し訳ありません」と書いてあった。達筆だった。
精神障害と向精神薬の副作用、脳脊髄液減少症に長年苦しむ。この4年間は働くどころか、普通の日常生活も送れない。普段は自宅から出ず、一日中横になって療養する。服装はジャージ、首にはコルセット。自宅から徒歩5分程度のここにも、なんとかやって来たという状態だ。普段は動けないが、服薬すると一時的に回復し、しゃべることができるという。
バツ1のシングルマザーで、子どもは男1人、女2人。現在は近くの古い団地に21歳の長男、19歳の次女と3人で暮らす。彼女と次女は、生活保護を受給している。薬が効くまでの間、持参してもらった生活保護の受給証明書、障害基礎年金の振込通知書、昔の写真を見せてもらった。若干色あせた写真には、華やかで美しい笑顔の女性が写る。22年前、26歳のときの山内さんだ。当時はシングルマザーになり、水商売をしていた。彼女は池袋の有名店の人気キャバ嬢だったという。
華やかな22年前、そして歩くことすらままならず、筆談する現在の弱り切った姿。壮絶なギャップに絶句した。
■生活保護課の紹介で精神科を受診
「私は精神病院に精神障害者にさせられたと思っています。まさか自分がそうなると思わなかったですが、現実にそういうことがあるのです」
20分後、声が出た。マスク越し、小さな声でゆっくりとした口調。健康だった頃は品のある女性だったろう、と思った。
「精神科に最初に行ったのは12年前です。当時、横浜の訪問介護事業所の社員だったのですが、小さな子どもを3人も抱えた状態で何年間も長時間労働せざるをえず、無理して脳脊髄液減少症になってしまいました。脳脊髄液が漏れて、頭痛やめまいが止まらなくなる病気。とても働けません。それに倦怠感とか眠れないとか、いろいろ重なって生活保護を受けました」
市役所の生活保護課の紹介で、指定された精神病院で受診する。
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そして本当の地獄が始まった
「最初は“軽いうつでしょう”っていう話だったのに、通院するたびにどんどん薬が増えた。あるときに診断書を見る機会があって、そこに“統合失調症”とか“うつ病”とか“不眠症”とか、いろんな病気が書いてありました」
最終的に精神科から8種類の薬を処方された。子育てと長時間労働で体を酷使し、大病を患った。しかし生活保護を受給して精神病院に通院するようになってから、彼女の本当の地獄が始まった。服薬してから不眠はさらにひどくなり、幻聴や幻覚、頻繁に記憶を失う。さらに自傷行為や被害妄想、記憶にないところでヒステリーを起こして暴れるようなことも起こったのだという。山内さんは向精神薬によって破壊されてしまったと考えているようだ。
母親が壊れて、家庭は荒れた。中学生だった長女は非行に走り、家に帰って来ない。万引きや窃盗、家庭内暴力が収まらなくなり、頻繁に警察から電話がかかってくる。さらに小学校低学年だった次女は登校拒否、クラスメートや担任を怖がって学校にいっさい行かなくなった。長男だけは母親や長女が荒れれば黙って耳をふさぎ、なんとか普通に学校に行く。
長女は夜遊びや窃盗だけでなく、売春行為でも補導された。山内さんは警察から連絡があるたびに引き取りに行き、何度も謝る。長女の非行は自分のせいだという自覚があったので、何をしても怒ることができなかった。長女は警察ざたを起こして自宅に戻っても、すぐに家を出てしまって帰ってこない。
「長女に対して、何とか親の役割を果たそうと頑張りましたが、なかなかうまくいきませんでした」
母親は深刻な精神病で苦しみ、長女は荒れて、小学校低学年の次女は引きこもる。そんな絶望的な家庭をさらなる悲劇が襲う。
「最終的にトドメを刺されたのは、4年前にジスキネジア(反射的に体が動く障害)を発症したことです。薬の副作用です。今はマスクをしていますけど、口の周りがもう自分の意志で動かせない。普通の食べ物をかむこともできないし、薬なしではしゃべることもできない。顔の筋肉がおかしくなっているので、マスクを取った顔はとてもお見せできない状態です。鏡には自分でも恐ろしくなるような顔が映ります」
■薬を飲み続けるか、死ぬしかない
行政から指定された病院に通院することで、病気が治るどころか破壊されてしまった。山内さんはもう生涯、食べ物をかむことができない。死ぬまでミキサー食やゼリーを食べるしかない。マスクを取った素顔で外出することも、もう二度とかなわないという。
「行政や病院がおかしいと思ったのは、遅いのですが、ジスキネジアを発症してからです。患者の私たちには何の情報もない。だから疑うだけですが、それは生活保護の患者を精神病院が食い物にするということ。すべてが薬を飲んでから始まっているし、そうとしか思えない。どんな病気であっても病名をつけて薬を出せば、患者は一生通う。私はもう症状を薬で抑えることができても、病気は生涯治ることはありません。薬を飲み続けるか、死ぬしかないのです。悔しいです」
山内さんは、絞りだすような小さな声で、そう言う。
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どうしてこのような状況になったのか?
目の前にいる彼女は、まさにボロボロといった状態だ。私は絶句し、同席する女性編集者は口元を押さえて涙を浮かべる。いったい、どうして現在に至ってしまったのか。
東北出身、地元の専門学校を卒業して就職で上京。20歳から普通にOLをしながら都会で平穏に暮らした。22歳で社内結婚して、24歳で出産のために退職。長女を出産。27歳のときに長男が生まれる。長女3歳、長男1歳のときに離婚、子どもを2人抱えてシングルマザーになった。離婚の理由は「触れないでほしい」という。
「突然、シングルマザーになってしまって、慰謝料も養育費ももらえない。選択肢は夜の仕事しかありませんでした。キャバクラです。池袋、上野、六本木といろいろなところで働いて、当時はそれなりに稼げました。子どもは夜間保育園です。私なりに必死で生きて、決してネグレクトではなかったですが、今思えば、子どもには申し訳ないことをした。寂しい思いをさせてしまいました」
キャバクラは20時〜1時まで、週4〜5日は出勤した。売り上げは多く、店のナンバーワンに入ることもたびたびだった。お客さんとの会話はすべて記憶して、相手が求めるように振る舞うと面白いように指名が取れた。毎月10万円以上の保育料はかかったが、2年間で貯金は1000万円を超えた。
「子ども2人抱えての東京暮らしは厳しいと、実家に帰ろうと思っていたとき、ある男性と知り合いました。キャバクラのお客です。意気投合して同棲して、子どもも懐いた。結婚しようって約束もしました。一緒に住んですぐに次女を妊娠した。でも、出産してすぐその男性はおカネを全部持って行方不明になりました。自動車販売店を経営しているってことも、結婚しようって言葉も全部ウソだったのです」
■「借金1000万円」の連帯保証人に
次女の父親である男が消えてから1カ月後、ヤミ金から返済を迫る連絡があった。男は山内さんを勝手に連帯保証人にして1000万円弱を借金、すぐに返せとのことだった。貯金はすべて奪われて、さらに身に覚えのない1000万円弱の返済を迫られた。金融業者に事情を話すと「1年後から風俗で働け、それで返せ」と提案された。山内さんはうなずき、次女が1歳になったとき金融業者に紹介されたファッションヘルスで働くことになった。
「週6日、朝9時から18時までずっとお客をとりました。それなりに稼げる店だったので、1年間で1000万円は返しました。女の子からのイジメもすごかったし、ツラかった。やっぱり気持ちが張りつめていて、全額返済したとき、糸がプッツンと切れた。最後の日、お恥ずかしい話だけど、更衣室で4時間ずっと泣いて、仕事ができない状態に。それで辞めさせてもらいました。好きでもない人に性的な行為をするのは、私はすごくツラかった」
1990年代後半は消費者金融を筆頭に、ヤミ金融や性風俗は活況だった。ヤミ金融が債務者女性を性風俗に売り、肉体で返済させるのは日常茶飯事で、私も何十人とそういう境遇に陥る女性に会っている。最近は女性をアダルトビデオに無理やり出演させるAV強要問題が話題となったが、ターゲットとなるのはいつの時代も換金しやすい美人女性だ。市場原理が働く。美人で責任感の強い女性は、悪徳な人物が近づいてきてワナにはまりやすい。
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介護の仕事に就いたが……
3人の子どもを育てなければならない。借金を完済して風俗を辞めた山内さんは、介護の仕事に就く。介護保険導入直前で介護業界は未来産業として盛り上がっていた。ヘルパー2級を取得し、訪問介護事業所の登録ヘルパーとなった。しばらく続けるうちに社員になることを誘われて役職に就いた。
「介護は大変でした。異常っていうくらいやることがあって、時間内では絶対に終わらない。登録ヘルパーからサービス提供責任者、管理者って責任がどんどん重くなって、私が主にやらされたのは書類や事務関係の全部です。書類整備や国保請求から、給与計算、新しい事業所の認可の書類まで作らされて。勤務時間は朝8時〜夜11時みたいな状態です」
介護事業所は現在に至っても常勤社員に長時間労働をさせ、差額を利益にするという悪質事業所だらけだ。山内さんはいわれない借金を背負わされて風俗に売られ、そこから抜け出した後はブラック労働に足を踏み入れてしまったのだ。1日15時間に及ぶ労働をさせられたら、子どもを育てようがない。家庭は小学生の長女が弟と妹の面倒をみる、という状況となった。
■夕方一度帰ってまた仕事に戻る日々
「休憩を挟むっていう決まりがあるじゃないですか。夜6時ぐらいに1時間だけ休憩をもらって、一度家に帰って子どもにご飯を食べさせてまた仕事に戻るみたいな。介護は5年続けましたが、家事もしなきゃならないし、結局、睡眠時間を削るしかないですよね。1日2時間とか3時間しか眠れない日々が続いて、最終的には体を壊しました」
給与は手取り24万円ほど。シングルマザーは長時間労働をしないと家庭を維持できる賃金を稼ぐことができない。しかし、長時間労働をすれば育児ができず、子どもが犠牲になる。そして多くの介護事業所は違法労働によって従業員の家庭が壊れることに無頓着だ。
「その介護で無理に働いたことで、長女が不安定になりました。親の愛情が十分じゃなかったことが理由です。本当に申し訳ないと思っています。次女が適応障害になって不登校になったのは、それからしばらくしてだけど、私が当時家にいてあげられなかったことは大きいでしょう。自分の精神状態もどんどんおかしくなって、記憶が途切れるみたいなことが起こり始めたのもその頃からです。何もかもがおかしくなりました」
不眠が始まって、何日か眠れないという状態が頻繁に起こる。執拗な頭痛とめまい、頭が痛くて視界が二重になる。耐え難い苦痛で、仕事は手につかない。病院に行くと脳脊髄液減少症と診断された。長時間労働と子育てに追われ、限界を超えて働いたことが理由だった。
「続けるのは不可能だったので、訪問介護事業所は辞めました。一応、会社に事情は話しましたが、あまり興味ない感じで謝罪もねぎらいの言葉もなく、冷たく追い払われた感じです。ほかの仕事をしたくてもできる状態じゃない。わらにもすがる思いで役所と福祉事務所に行って生活保護を受けることにしました」
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長女は非行に走り、次女は登校拒否
生活保護を受給して自宅で療養したが、壊れた家族が元に戻ることはなかった。長女は地元の似たような境遇の仲間とつるむようになり、非行に走った。なんとかしようと長女とは何度もぶつかった。「男にだまされるあんたが悪い」と何度もなじられた。次女は小学校1年で登校拒否となった。7歳から外にでることを怖がり、学校にほとんど行かなくなった。19歳になる現在まで、その状態が続いている。
そして山内さんは向精神薬によってどんどんと状態はおかしくなり、完全に破壊されてしまった。
「自殺は何度も何度も考えました。実際に自殺未遂は何度もしていますし。でも今思うのは、私にできることは絶対に死んではいけないってこと。私が逃げてしまったら、おそらく次女は後追いします。それだけは親として許されないし、現実とか生きることから逃げてはいけないと思うのです」
長女は成人して家を出て、現在は他県で恋人と同棲する。すっかり落ち着き、たまに連絡がある。長男はコツコツと勉強して奨学金をフルで借り、中堅大学に進学して勉強を続けている。1日でも早く家を出ることを望み、深夜にアルバイトをしておカネを貯めているという。そして次女だけが負のスパイラルから抜け出せずにいる。
■生活保護から抜けて普通になりたい
「私も次女も望んでいるのは、やっぱり生活保護から抜けて普通になりたいということです。人様の税金で生かされて、自分が健康だったらそれはズルいと思うだろうし、抜けたい、人に迷惑をかけたくないという気持ちは強くあります」
今月。10年間以上、引きこもる次女は腹をくくってアルバイトを始める。近所のレストランの厨房に面接に行き、来週から仕事をすることが決まった。山内さんも生活保護から抜けることを最大の目標にする。とてもフルで働ける健康状態ではないが、「登録ヘルパーに戻って少しずつ働く」と決めている。週1〜2日、薬を飲んで3〜4時間働くのが現在できることの精いっぱいだ。
彼女が抱える現実はまさに地獄だった――ただ絶対に逃げない、それが子どもたちのためにできるたったひとつのことだから。
(転写終了)
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