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記者の目:名張毒ぶどう酒事件 死刑囚獄死/再審開始、やはり求める(毎日新聞)
http://www.asyura2.com/13/nihon31/msg/629.html
投稿者 gataro 日時 2015 年 11 月 03 日 19:48:46: KbIx4LOvH6Ccw
 

記者の目:名張毒ぶどう酒事件 死刑囚獄死/再審開始、やはり求める
=大野友嘉子(中部報道センター)
毎日新聞 2015年11月03日 東京朝刊
http://mainichi.jp/shimen/news/20151103ddm005070012000c.html




奥西元死刑囚の密葬で参列者にあいさつする妹の岡美代子さん(右)と特別面会人の稲生昌三さん=東京都八王子市で10月6日、谷口拓未撮影

 三重県名張市で1961年3月、農薬が混入されたぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡した「名張毒ぶどう酒事件」で、死刑が確定していた奥西勝元死刑囚が10月4日、89歳で獄死した。死刑確定から43年も拘置され、無罪を訴え再審を求めていた。死刑を宣告した上での長期間の拘束は、再審制度の課題を浮かび上がらせた。奥西元死刑囚の最期を取材した者として、「疑わしきは被告人の利益に」との刑事裁判の原則から見ても、今も再審開始が必要と思う。

 ◇自白頼みの捜査、証言は二転三転

 私が初めてこの事件を取材したのは、再審の第7次請求(2002年)で最高裁が高裁に審理を差し戻した10年4月。三重県警の元捜査員宅に走り、当時の奥西元死刑囚の様子や捜査状況を聞いた。その後も何度か足を運んだ。

 取材に応じた元捜査員は皆、奥西元死刑囚の犯行と確信していた。「罪を認める時に涙を流して謝った」「自白してから穏やかな表情になった」「誰よりも動機があった」−−。口々に奥西元死刑囚を「クロ」とする根拠が語られたが、物的証拠ではなく捜査員の「勘」だった。

 事件は三重、奈良県境の小集落で起きた。公民館の懇親会でぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡し、12人に中毒症状が表れた。間もなく奥西元死刑囚が逮捕され、妻と愛人(ともに事件で死亡)との三角関係清算のために農薬を混入したと自供。しかし起訴される前、自白を強制されたとして否認に転じた。1審・津地裁(64年)は無罪としたが、2審・名古屋高裁(69年)が逆転死刑判決を下した。

 山あいの18世帯が暮らす閉鎖的な集落で起きた事件は、当初から外部犯の可能性は低いとされていたという。「あいつじゃなきゃ誰がやったんだ」と怒りをあらわにする人にも出会った。しかし、私は自白偏重の危うさを感じた。

 この事件の難しさは物証の乏しさに尽きる。奥西元死刑囚が凶器と「自白」した毒物の農薬「ニッカリンT」の瓶は発見されず、「口で開けた」とした王冠の傷は本人の歯形と断定できていない。裏付けは、犯行の機会があったのは彼だけとする住人の証言と自白に限られる。しかも住人の証言は捜査段階で一斉に変遷、1審判決は「検察官の並々ならぬ努力の所産」と皮肉を込めて批判した。

 司法の判断は再審請求審でも揺れた。弁護団は第7次請求で、凶器がニッカリンTではない可能性が高いとする鑑定を新証拠として提出。これを受け、名古屋高裁は自白の信用性に疑問があるとして05年に再審開始を決定したが、別の裁判長が検察側の異議を認めて翌年、決定を取り消した。東京経済大の大出良知教授(刑事訴訟法)は「疑問だらけの事件で裁判所の判断が二転三転し、死刑判決は維持できない」と指摘し、再審の必要性を訴える。

 ◇物証の乏しさ、被告の利益に

 「開かずの扉」とも呼ばれた再審は、「疑わしきは被告人の利益に」の鉄則を再審請求にも適用すべきだとした最高裁の「白鳥決定」(75年)で転機を迎え、80年代には死刑4事件が再審無罪となった。しかし、その後は無期懲役以上の事件で再審開始が認められない時代が続いた。

 近年では10年に足利事件、12年に東電女性社員事件が再審無罪となった。両事件はDNA鑑定という客観的証拠があったため、再審にこぎ着けた。自白などに依拠した事件の方がかえってハードルが高い。私はむしろ、物証が少ない事件でこそ白鳥決定の精神を生かすべきだと考える。

 一方、大阪高裁は10月23日、95年に大阪市東住吉区の民家火災で小6女児が焼死し、殺人罪などで無期懲役が確定した母親と内縁の夫に対し、再審開始を認めた。争点の火災の原因で、弁護側が当時の状況を再現した実験結果を提出。高裁は実験を受け、自然発火の可能性が否定できないとした。自白と矛盾する実験とはいえ、DNA鑑定のような客観的証拠でないだけに、南山大の丸山雅夫教授(刑事法)は「白鳥決定に比較的忠実な決定だ」と評価する。

 名張毒ぶどう酒事件は発生から半世紀を超えた。当時の捜査員や集落の住民らの多くが亡くなり、真相究明は一層困難だ。ある弁護団員は奥西元死刑囚の死後、「裁判所はかたくなに再審に動かなかった。『タイムアップにして』という意図を感じた」とこぼした。裁判所の真意は分からないが、死刑の恐怖を背負わせ人生の大半を拘置所で過ごさせた責任は重く、結果的に司法の信頼を傷つけたと思う。弁護団は6日、85歳の妹とともに名古屋高裁に第10次再審請求を申し立てる。


 

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コメント
 
1. 2015年11月03日 20:30:29 : b5JdkWvGxs

名張ぶどう酒毒殺事件 _ 分かっていても公表できないこともある
http://www.asyura2.com/12/lunchbreak52/msg/289.html

2. 2015年11月03日 20:33:14 : b5JdkWvGxs
関係者はみんな真犯人か誰が知っているというのは有名な話

3. 2015年11月06日 13:06:37 : jbPplIwWvE
裁判所の罪というか裁判官の罪、
検察官の罪こそ、正さなければならないでしょう。

何らかの意図があって起こされた冤罪もあります。
そういうタイミングに冤罪を着せられてしまった無実の人は
どうやったら償われるのか・・・しかも獄中死されて。


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