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新幹線火災事件と高齢者の貧困問題ー再発防止策は「貧困対策」ではないか!?ー
藤田孝典 | NPOほっとプラス代表理事 聖学院大学客員准教授 2015年7月2日 1時8分
<高齢者の貧困が動機だったことを伝えるべき>
71歳の男性は白昼の新幹線内で、自身の身体と周囲にガソリンを巻いて火を放った。
周囲の人々を巻き込みながら。
死傷者を多数だし、甚大な被害を与えることとなった事件だ。
さらに新幹線など多数の人々の足に影響を与えた。
このような行為はいかなる理由であれ、許されるものではないだろう。
ただ、事件の背景や動機に正しく迫らなければ、
再発や類似の事件は止められないことも事実である。
個人を責めて終わりにするのではなく、事件の全容を多角的に検証する必要がある。
一部の報道では、生活苦が犯行の動機であったように伝えている。
男性はアパート家賃の支払いに困り、さらに働いていた仕事をやめ、
生活費も足りないと周囲に漏らしていたそうである。
さらに年金支給額についても、一部で報道がされている。
2か月に一度、24万円の支給であり、月額にすると約12万円だったそうだ。
国民年金と厚生年金のいずれにも加入しており、
35年ほど年金を掛けてきたそうである。
厚生年金は現役時代の報酬比例で決められるため、
男性は生涯にわたり、低賃金であったことが理解できる。
そのなかでも一生懸命働いて、年金をかけてきたのだろう。
その年金が足りないという。
この年金金額で男性が住み慣れた東京都杉並区で生活が可能だろうか。
この事実をマスコミ報道機関は伝えるべきだと思う。
<71歳の男性は「要保護者」だったのではないか>
実はこの年金12万円が事件を考察する上で決定的に重要な数字だといえる。
東京都杉並区の生活保護基準は、144,430円
(生活扶助費74,630円+住宅扶助費69,800円)である。
資産の状況やその他の要素も検討しなければならないが、
報道が事実だとすれば、年金支給額だけでは暮らしが成り立たないことが
明白だといえる。
月額2万円程度、生活費が足りない。
生活に不安を抱え、どうしたらいいか途方に暮れる男性の姿が思い浮かぶ。
要するに、生活保護を福祉課で申請すれば、支給決定がされて、
足りない生活保護費と各種減免が受けられた可能性がある。
このような生活保護が受けられるか否かを知らない高齢者は多く、
未だに「要保護者」は地域で生活に困難を抱えながら暮らしている。
そもそも国が決めている最低生活費以下では、
暮らしが成り立たないのは当たり前で、援助を求める必要性がある。
わたしはこのような高齢者の実態について、
あえて過激な言葉を用いて警鐘を鳴らしている。
「下流老人」である。
下流老人とは、「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」
と定義した。 (拙著『下流老人―一億総老後崩壊の衝撃―』朝日新書 2015)
これからも貧困に苦しむ高齢者は後を絶たないだろう。
今から対策を講じておかなければならない課題だといえる。
これを個人の問題にするのか、社会の問題として捉えるのかによって、
日本の未来は全く違ったものとなるだろう。
<下流老人や高齢者の貧困への対策こそ講じるべき>
現在、国では国土交通省やJRが防災対策やテロ対策として、
再発防止策の検討を始めたそうだ。
もちろん、そのような対策も大事であろう。
しかし、貧困対策もしっかり打ち出してほしいと思う。
生活保護が必要な高齢者にはしっかり広報をおこない、
支援をおこなえることを伝えてほしい。
これは厚生労働省や自治体の最低限の役割である。
さらに今年度からは生活困窮者自立支援法が施行されている。
本件のような生活困窮者に対し、
生活保護申請も含めた支援策を一緒に考えてくれる機関だ。
当然、杉並区にも「くらしのサポートステーション」が下記の通り、開設されている。
このような相談機関は全国各地にある。
ぜひお住まいの相談機関がどこにあるか調べて活用いただきたい。
生活保護や生活困窮者支援制度の存在を男性が知っていたら、
同じような結末にはならなかったのではないか。
非常に悔やまれる事件である。
「くらしのサポートステーション」は病気や失業などで経済的に困っている、お子さんの学習環境に悩みがある、収入はあるけれど支出とのバランスがとれていないなど、生活をしていく上で心配事を抱えている方のための相談窓口です。
この窓口は、「生活困窮者自立支援法」(4月1日施行)に基づき、杉並区が設置し、杉並区社会福祉協議会が運営を受託しています。専門の相談員が話を聞き、一人一人に寄り添いながら、一緒に考え、解決に向けてお手伝いします。
本人だけでなく、ご家族など周りの方からの相談もお受けします。
一人で悩みを抱え込まず、ぜひご相談ください。
出典:杉並区社会福祉協議会
そして、強調しておかなければならないことは、
貧困と犯罪の直接的な因果関係はないということ。
誤解しないでいただきたいのは、貧困にあるから犯罪を犯したり、
犯しやすいというわけではないということだ。
71歳の男性は貧困にあったかもしれない。
しかし、すべて貧困にある人が犯罪を起こすというわけではない。
そのような因果関係は立証されていないからだ。無用な偏見を助長してはいけない。
最後に、誰でも生活に困ることがないように、
貧困対策を一歩でも前に進めてほしいと思う。
71歳の男性は普通に年金を掛けながら働いてきた人である。
日本の経済成長にも貢献してきた人物である。
その人物が絶望し、人生の末路がこのような悲惨な事件でいいのだろうか。
ぜひこれからの私たちの老後や貧困について議論を展開していただきたい。
藤田孝典
NPOほっとプラス代表理事 聖学院大学客員准教授
1982年生まれ。埼玉県越谷市在住。社会福祉士。首都圏で生活困窮者支援を行うソーシャルワーカー。生活保護や生活困窮者支援の在り方に関する活動と提言を行う。NPO法人ほっとプラス代表理事。聖学院大学客員准教授(公的扶助論・相談援助技術論など)。反貧困ネットワーク埼玉代表。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。厚生労働省社会保障審議会特別部会委員。著書に『下流老人 一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新聞出版 2015)『ひとりも殺させない』(堀之内出版 2013)共著に『知りたい!ソーシャルワーカーの仕事』(岩波書店 2015)など多数。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/fujitatakanori/20150702-00047168/
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