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【名張毒ぶどう酒事件】冤罪の可能性より裁判所の権威? なぜ再審請求は棄却されたのか
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140603-00010006-bjournal-soci
Business Journal 6月3日(火)15時27分配信 江川紹子/ジャーナリスト
「何度請求しても受け付けないから諦めろ、という通告のようだ。これで奥西さんが(落胆して)亡くなるようなことになれば、もはや司法の殺人だ」――名古屋高裁(石山容示裁判長)が名張毒ぶどう酒事件の第8次再審請求を棄却したことに対し、奥西勝死刑囚(88)の特別面会人の稲生昌三さんは、憤然と司法への不信を語った。
弁護側は、事件に使われた毒物が、有罪判決が自白によって認定した農薬とは異なる、という科学鑑定を、再審を求める理由の柱に据えている。棄却決定は、この理由が、第7次再審請求と同じであり「請求権は消滅している」とし、奥西さんが高齢で健康状態が悪化していることから、「判断を早期に示すこととした」という。要するに、本人が生きているうちに棄却決定を出したかった、ということだ。
●新証拠を見ずに“門前払い”
弁護側は6月にも、毒物鑑定の再現実験の結果を新証拠として提出することを裁判所に伝えており、公表もしていた。また、この事件では、今なお検察官が保有する証拠が開示されないままになっており、弁護側はその開示も求めてきた。なのに裁判所は、新証拠を見ないまま、検察側に証拠開示を求めることもなく、大急ぎで再審の扉を固く閉め直し、請求を門前払いとした。
なぜ、こんなに慌てて棄却を決めたのか。奥西さんの体調が悪いのは事実だが、手続きの途中で亡くなれば、親族が裁判を引き継ぐか、あるいは手続きを終了すればよい。たとえば、戦後まもなくに起きた帝銀事件は、平沢貞道死刑囚が病死した後も再審を求めていた養子が死亡したことから、再審請求の手続きを終了した。名張事件でも、手続き面では、名古屋高裁が急がなければならない理由は何もない。
雪冤を求めている人に対し、人道的な観点から、「せめて生きているうちに再審開始決定を」というならまだわかる。しかし、「生きているうちに棄却決定を」というのは、早くかたちの上で“けりを付ける”ことを優先した、冷酷な仕打ちでしかない。
3月に、同じように死刑囚の再審を求めていた袴田事件で、静岡地裁が再審開始を決め、袴田巌さんを釈放するという画期的な決定があった。これは同事件の関係者だけでなく、名張事件など冤罪を訴える人たちを大いに励まし、裁判所への期待も盛り上がった。そうした期待に、今回の決定は冷や水を浴びせた。それもまた、名古屋高裁が決定を急いだ理由かもしれない。袴田事件はあくまで例外中の例外であって、他の死刑事件になんの影響も及ぼさない、名張事件に関して再審を開くつもりはない、という裁判所としての意思を示し、再審を断念させるために、棄却決定という判断結果を明示したかったのではないか。
袴田事件の再審開始にスポットライトが当たる一方で、このところ注目された再審請求事件では、相次いで棄却決定が出されている。再審に消極的な人たちは、再審が次々に行われると、裁判所や確定判決の権威や信頼が損なわれるのではないか、と恐れているようだ。だが、冤罪の可能性があるなら、その当事者の人権は、裁判所の権威などより遙かに重い。ましてや、死刑判決の場合は、なおさらである。また、裁判所によって過去の過ちが是正されれば、裁判所への信頼は高まりこそすれ、損なわれることはあるまい。
●弁護団は異議申し立てへ
名張事件は昭和36(1961)年3月に三重県名張市で発生。地域の寄り合いで合成酒のぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡した。警察の激しい追及に、いったんは自白した奥西さんだが、捜査の最終盤から再び否認に転じた。一審の津地裁は、無罪とした。判決の中で、関係者の供述が一斉に不自然な変遷をしている点は、奥西さんしか犯行機会がなかったこととするために捜査機関が行った「並々ならぬ努力の所産」と皮肉交じりに批判した。
ところが、2審の名古屋高裁が逆転有罪とし、死刑を言い渡した。最高裁でそれが確定。そのため、本件の再審請求は、奥西さんを有罪とした名古屋高裁に対して行われる。当初は本人が再審を申し立てていたが、第5次請求からは弁護団が結成されて、有罪判決に疑問を呈する新証拠を次々に出してきた。それによって、有罪の決め手の1つだった、ぶどう酒のふたについた歯形の鑑定の証拠能力はなくなった。
第7次再審では、使用した毒物が、確定判決で認定した農薬ではなかったことを、科学者の鑑定などから立証し、名古屋高裁(小出一裁判長)が再審開始を決めた。これで、再審への期待は一気に高まった。
ところが、同じ名古屋高裁の別の部(門野博裁判長)が、再審開始を取り消した。自白や変遷後の関係者の供述に引きずられた判断だった。その後、最高裁が科学的な知見に基づく吟味を求めて名古屋高裁に差し戻したが、同高裁(下山保男裁判長)が再度の棄却決定を行った。
この直後、奥西さんの体調は悪化。一時は民間病院に入院したが、その後、八王子医療刑務所へ移され、昨年は2度、危篤状態となった。この時も、最高裁は結論を急ぎ、弁護側の書面が届くや(それについての吟味をする時間もとらず)、棄却決定を出している。
奥西さんは現在も、人工呼吸器をつけ、寝たきりの状態が続く。弁護人以外で唯一面会を許された稲生さんは、「再審を開いてほしいという一念でがんばっているが、だんだん体が小さくなっていくのを感じている」と語る。残された時間は、あとわずかだ。
弁護側は、今回の決定に対して異議申立を行う。
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