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産経新聞連載:
【マラチオンの衝撃 冷凍食品農薬混入(上)】
農薬混入4回、突然の失踪決め手 待遇・上司に不満か
2014.1.26 07:51
待遇への不満が「フード・テロ」につながったのか。アクリフーズ群馬工場(群馬県大泉町)の冷凍食品に農薬「マラチオン」を入れたとして25日に逮捕された阿部利樹容疑者(49)。捜査網が狭まる中、突然の失踪が逮捕の決め手に。厳しい管理下の密室で大胆にも4回にわたり農薬を混入していた。
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「不審な男がいる」
きっかけは1本の110番通報だった。冷凍食品にマラチオンが混入されたアクリフーズ群馬工場から東南へ30キロ余りにある埼玉県幸手(さって)市内の駐車場近くからかけられていた。
24日午後8時ごろ、通報を受け、埼玉県警の捜査員が自転車に乗ってうろついていた男に声をかけた。すぐに阿部容疑者と判明する。軽装で、着替えなど約10日間の“逃亡”に必要となりそうな所持品はなく、「自転車で群馬に帰る」「頭が痛い」などと話した。今月14日から行方不明となっていた。
阿部容疑者は昨年10月3〜7日、4回にわたり「みなさまのお墨付きミックスピザ」「チーズがのびーるグラタンコロ!」「チーズがのびーるチキンナゲット」「とろーりコーンクリームコロッケ」にマラチオンを混入したとされ、県警の鑑定で1ppm未満〜430ppmの濃度で検出された。
◆2交代制で勤務
事件は昨年12月29日に表面化。当初から内部犯行説がささやかれてはいたが、県警はどうやって阿部容疑者にたどりついたのか。
県警は、まず製造から包装までのどの段階で混入されたのかを捜査。マラチオンは工場1、2階のピザやフライ、コロッケの製造ラインで検出されていた。工場では従業員約300人が2交代制で勤務。別々の部屋で仕切られた各ラインは常時複数人で担当し、1人になる機会はなかった。
複数の従業員は「作業着にはポケットがなく、私物を持ち込むのも難しい」と証言する。ただ、ある男性従業員は「袖口などにポリ袋を忍ばせることはできたかもしれない」と明かす。
食品加工後は全ての商品の包装は仕切りのない包装室で行われていた。コロッケの一つは、アクリ社調査で外側の衣部分からマラチオンが2万6千ppmの高濃度で検出されたのに対し、内側は4千ppmだったため、加工後から、包装直前に混入された疑いが強まった。
問題は一貫してピザのラインで生地を生成する「クラスト班」だった阿部容疑者が、どうやって担当外の部署で混入できたかだ。
◆点と点つながる
県警幹部は「阿部容疑者が包装室に入れないことはないが、勤務としては入らない」と話す。混入方法は不明なままだが犯行時間帯は特定できた。マラチオンが検出された商品は別々に製造されていたが、2時間単位の製造時間帯が判明した。この全てに立ち会っていた従業員は数十人で、阿部容疑者も含まれていた。
だが立件するには混入したことを示す明確な証拠が必要だ。混入と容疑者という「点」を「線」で結ぶことが不可欠になる。「包囲網」が狭まる中、阿部容疑者が県警の聴取を受けた後、突如、行方をくらましていたことが判明。所持品からもマラチオンが検出された。点と点がつながった。
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マラチオン ハダニやアブラムシなど多くの害虫を駆除する有機リン系の農薬。農作物の保護や収穫後の保存など広く使われ、家畜飼料や小麦・トウモロコシの加工品に残留していることが多い。黄色っぽい液体で、特徴的な刺激臭がある。神経に作用して興奮させるため、昆虫には強い毒性を示す。人の体内では速やかに分解、排出されるため毒性は低いが、口から摂取すると下痢や吐き気などの症状が出ることがある。人が1日に摂取してもよいとされる量は、体重1キログラム当たり0.02ミリグラム。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140126/crm14012607550002-n1.htm
【マラチオンの衝撃 冷凍食品農薬混入(中)】
ボーナス減額に「やってられない」 改造バイク・マンガコスプレ…
2014.1.27 10:31
昨年7月下旬。アクリフーズ群馬工場(群馬県大泉町)に勤務する契約社員、阿部利樹(としき)容疑者(49)は、会社から渡されたばかりの賞与明細を見て目を疑った。ボーナスが予想をかなり下回っていた。
同工場では以前、「年功型」で、給与や賞与は勤務期間で決まっていたが、平成24年4月から「能力型」の賃金体系に変更されていた。評価に応じて時給単価が上がる仕組みになり、ボーナスも商品の生産目標などが達成されないと減額されるという厳しい査定制になった。
「やってられない」。阿部容疑者は思わず同僚に漏らしたという。半年ごとに更新の契約社員で8年余り勤務してきた阿部容疑者。25年9月に契約を更新した直後の10月以降、仕事中に同僚の目を盗んでは冷凍商品に農薬「マラチオン」を混入していたとみられる。
だが、商品には賞味期限のほかに、製造時間帯が2時間単位で記号表示されており、「混入した製品の製造日と、阿部容疑者の勤務した日付や時間の記録に矛盾はなかった」(捜査幹部)ことから、捜査線上には早い段階で阿部容疑者が浮かんでいた。
同工場から数キロ離れた大泉町内の住宅地にある一戸建て住宅で、阿部容疑者は約10年前から妻や息子と一緒に暮らしていた。
趣味はバイクやマンガ、昆虫採集。クワガタの幼虫を育てて周囲に販売することもあった。中でもバイクへの執着は相当なもので、派手な改造を施した車両にまたがり、街中を走る姿が目撃されている。バイクショップを営む知人男性は「改造に100万円以上かけていたが、すべて現金一括払いで、金に困っている印象はなかった」と話す。
人気マンガ「ワンピース」や「仮面ライダー」のファンで、愛好者が集まるバイクの撮影会などでは、金髪のかつらにワンピースのキャラクターのコスプレで登場。そのまま、大音量で仮面ライダーの音楽をかけて走ることもあった。
職場では別の一面を見せた。同僚男性によると、阿部容疑者は、仕事中に上司に注意されると、「またうるさくいいやがって」と、ブツブツ文句を言った。
約2年前には、包装室の従業員との間でトラブルを起こし、会社から「同じことをしたら契約を更新しない」と通告されていた。翌日、更衣室でロッカーを蹴り、「ふざけんなよ」と怒鳴っていたという。ある従業員は「工場内では知らない人がいないトラブルメーカーだった」と語る。
一方、契約社員の間では、会社への不満が強かったとの指摘もある。
工場従業員約300人のうち時給制の契約社員は約200人で7割近くを占めるが、正社員は2割程度。元従業員は「契約社員は下に見られ、正社員への不満を持っている人は多かった」と話し、ストレスで辞める人も多かったという。
「頑張って職責を果たせば正社員になれる」(同社幹部)というが、リーダーや班長になることが大前提で、正社員になれるのは、年間わずか3人程度。契約社員からは「正社員より給料が安いのに、リーダーや班長をやらされ、同じ責任を負わされるのはたまらない」との声も漏れる。
同社幹部は25日夜の記者会見で「職場に特別大きな不満があるとは認識していない」としながらも「見過ごしている部分があると考えている」とも語った。
2008年に発覚した中国製冷凍ギョーザ中毒事件では、元臨時従業員の男が正社員との賃金格差に不満を持ち、待遇改善や工場への報復目的で殺虫剤を混入した。ボーナスだけでなく、給与についても「安くてやってられない」とこぼしていたという阿部容疑者の愚痴から、同じ構図が描けなくもない。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140127/crm14012710380006-n1.htm
【マラチオンの衝撃 冷凍食品農薬混入(下)】
フード・テロに無防備だったアクリ社 公表遅れに毒性過小評価は企業不祥事
2014.1.28 16:00
「だいじな人に食べさせたい」。アクリフーズ群馬工場(群馬県大泉町)の正門前には、今もこんな言葉が掲げられている。業務開始のめどが全く立たない中、農薬「マラチオン」の返品検査のためだけに、毎日、無辜(むこ)の社員がその門をくぐる。
「偽計業務妨害事件として考えればアクリ社はもちろん被害者だが、企業不祥事という側面もある」。関西大特任教授でコンプライアンス問題に詳しい郷原信郎弁護士はこう指摘する。
アクリ社が最初に「異変」を察知したのは、購入者から「異臭がする」と苦情が寄せられた昨年11月13日だったが、問題を公表したのは1カ月以上も経過した12月29日だった。
同社の田辺裕(ゆたか)社長は「原因物質を特定するまでの手順が確立していなかった」と釈明したが、郷原氏は「農薬とまで分からなくても、速やかに情報提供して、消費者に注意喚起するべきだった」と断じる。
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アクリ社の“初動ミス”は2つの重大な問題を招いた。1つはアクリ社が当初、マラチオンの毒性を過小評価し、厚生労働省からの指摘で見解を修正したことが、消費者の不信感に拍車をかけたことだ。
問題公表以降、回収対象商品を食べた後に下痢や嘔吐(おうと)などを訴える人が相次いだ。厚労省によると、こうした健康被害の疑い例は2800人以上に上るが、現在までに食べ残し商品の検査でマラチオンが検出されたケースはなく、体調不良との因果関係は不明だ。
「ノロウイルスや思い込みなど、別の要因の人が相当数いる」(自治体関係者)ともみられるが、前代未聞の規模で「健康被害」が相次いだ背景に、消費者のアクリ社への不信感があったことは否定できない。
捜査の遅れも招いた。群馬県警が捜査に乗り出したのは問題公表とほぼ同時期の昨年12月末。契約社員の阿部利樹(としき)容疑者(49)が逮捕されたのは今月25日で、阿部容疑者に10日間の“逃亡”を許した。
県警は同工場の全従業員約300人の事情聴取を進めているが、6割程度しか終了しておらず、捜査は後手に回っている。
捜査幹部は「もっと早く知らせてくれれば、捜査が早く進む可能性もあった」と話す。
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2008年に発覚した中国製冷凍ギョーザ中毒事件では、日本国内の食品業界は「日本では起こりえない」と「対岸の火事」と見る一方、安全管理体制を強化してきた。意図的な異物の混入を防ぐ「食品防御(フードディフェンス)」という考え方だ。
「どんなに防御しても、悪意の混入はありうる」との前提で、製造から販売までの対策を徹底することが特徴。同工場でも実践し、日本冷凍食品協会から「厳格な品質管理体制を確立していた」と評価されていた。それでも起こりえたのはなぜなのか。
アクリ社によると、製造ラインや急速凍結庫、包装室と混入が疑われる場所に施錠などのシステムはなく、従業員は自由に出入りできた。従業員のボディーチェックも行われていなかった。「フード・テロ」を防ぐ手立てはないのか。
食品防御に詳しい奈良県立医大の今村知明教授(公衆衛生学)は「施錠や監視カメラなどセキュリティー強化が大前提だが、コストがかかる上、現場の疑心暗鬼を招くリスクもあり、雇用主と従業員の信頼関係を強めることが大切だ」と指摘する。
「悪意を持つ人がいないとは限らない」(今村教授)のだが、そんな現実は食品加工に従事する従業員には重すぎる。
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この連載は河合龍一、原川真太郎、浜田慎太郎、大橋拓史、荒船清太、宇都宮想、奥田翔子が担当しました。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/140128/crm14012816000016-n1.htm
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