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内定者1600人の氏名が公開状態に、
露呈し始めた企業のSNS活用の危うさ
2013年10月18日(Fri) 横山 彰吾
「フェイスブックに、来年(2014年)4月に企業に採用される内定者として少なくとも約1600人が、氏名や顔写真を誰でも閲覧可能な状態で公開されていた」という驚くべきニュースがあった。
利用している方ならご存じだと思うが、フェイスブックでは特定メンバーのグループを簡単に作成することができ、公開・非公開の設定により、そこでのやりとりをクローズにすることができる。
しかしながら、非公開にしたとしても、「グループそのものの存在」と「そこに属するメンバーが誰か」は公開されてしまう仕組みとなっている。
フェイスブックを利用した採用担当者に罪はあるのか
記事によると、内定者間の交流のために、一部上場企業を中心とした約20社の内定者が属するグループが作られた。グループを作る際に、そういう設定になってしまっていたということである。
そして、そのグループの管理者を企業の採用担当者が行っていることが多いという。ちなみに、そのなかには、ソーシャルメディア活用ガイドラインなどの整備を行う企業も含まれているようだ。
ニュースの論点としては、採用における「倫理憲章」、つまり「内定通知を10月1日以降に行うこと」というルールに反する行為ではないか、と憲章の形骸化を指摘するものであった。
だがその観点から言うと、筆者が就職活動をしていた20年近く前から、内定者の囲い込みや拘束などはもはや常態化していた。それがオンラインで行われるようになったという程度にしか感じられない。
また異なる論点としては、フェイスブックの「公開・非公開」設定の分かりにくさ、それを使いこなせないリテラシー、さらには「内定者にフェイスブック活用を強制するのか」など、ソーシャルメディアを使うことへの“糾弾”も見られる。
これについても いままでネットの普及に伴い採用担当者がメーリングリストや内定者向けのポータルなどを立ち上げ、その延長線上でフェイスブックの活用にたどりついたということであろう。「採用活動にITを活用しろ」「ネットを活用しろ」「SNSを活用しろ」と上層部からハッパをかけられ、手探りで取り組んできた採用担当者だけを非難するのは酷である。
この事件自体は企業の“不祥事”ではないため、さほど大きくは取り上げられていない。だが企業にとっては、今後、採用業務以外でも直面し得るIT活用の課題だと言える。
「何でもソーシャル、何でもクラウド」の危うさ
企業には様々な「情報」が存在しており、それを扱うことで企業活動が営まれ、結果としての業績が形作られている。そこで扱われる「情報」と、扱う「ツール」の不整合が本質的な問題であろう。
簡単に言うと、便利だからといって何でもフェイスブックで扱うというのは、あってはいけないことだ。企業がそこで扱える情報は極めて限定的だと考える方が適切であろう。
そもそもソーシャルネットワークは、企業が活用する外部サービスに求められるサービスレベルを期待できるものではない。
過去に書きこんだことがなくなってしまうとか、肝心なときにシステムのレスポンスが悪くなって連絡ができないとか、公開・非公開の設定などの仕様が変わってしまうとか、そういう事態は初めから覚悟しなければならない。
決して「フェイスブックがけしからん」ということではない。しょせんは一般ユーザーの交流に使うフリーのサービスなのだ。
サービス提供者側は、自身の判断と努力で、ユーザーニーズを先取りする形で機能や仕様を進化させていく。そのため、当然ながら個々のユーザーはサービスレベルに関して注文はつけられない。この事件でも、仮にそのときグループの公開範囲を正しく設定できていたとしても、いつ何時公開されてしまうか保証の限りではない。
ソーシャルネットワークでは「知ってほしい、知られてもよい」という情報で、かつそれが届かなかったり遅れたりしたとしても、企業活動に甚大な影響を与えないような情報しか扱えない。これは肝に銘じておくべきであろう。
クラウド普及期の今こそITを知る人材が求められる
通常、私たちがソーシャルネットワークを使用するときは、何の契約もなく、SLA(サービスレベルアグリーメント:サービス品質保証制度)も存在しない。だが企業がその状態で貴重な情報を扱うのは、企業自体をリスクにさらしていることになる。
昨今はクラウド活用が加速・普及し、利便性とコストを優先させたツール選定が行われる傾向になってきている。しかし、企業は大きなリスクを忘れてしまっていないだろうか。
クラウド黎明期においては、たとえ有償でサービスを受ける場合であっても、セキュリティ面での問題やサービス品質について相当な警戒感を持って、十分な検討を経て決定に至っていたはずだ。企業としては当然のことである。
ところが最近は、企業が使うツールを一般ユーザーの感覚で簡単に選定してしまう。意思決定に関わる上位職者は、「そういうのは若い人がやった方がいいので」と特に学習もせず判断を委ねてしまう。クラウド普及が一段落した今、そういうことが起きてきているのではないか。
ここでいま一度、社内を見渡してみてほしい。古くからITに関わり、ベンダーとの間でSLAに関する侃々諤々のやり取りをしてきたベテランもいるはずだ。そういう人材ならば、今回のような危ういサービス活用にブレーキをかけられたのではないだろうか。
今や、学生時代からネットの恩恵を受け、クラウドも身近なものとして活用する世代が、企業で活躍する時代である。そして、そういう世代が経営のスピードを飛躍的に早め、これからを担っていく。そういう時代だからこそ、クラウドサービス活用の問題をできるだけ未然に防げるよう組織的な取り組みをしていってもらいたいものだ。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/print/38940
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