http://www.asyura2.com/13/nature5/msg/882.html
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第158回 STAP細胞報道のNHKスペシャル批判 2014年8月9日
(科学エッセイ「生命の森をさまよう」下田親)
http://www.geocities.jp/mikunigaoka13/skikou158.html
★ほぼ1年前のブログ記事だが、下に投稿された「STAP有志の調査委員会の存在」(EJ第4079号)でさわりが紹介されており、いま見ても興味深い個所が多く存在するので全文を紹介する。
★興味深い個所の第一は、「僕もよく知る立派な研究業績をもつ方々でしたが、どんなサイエンティフィックな議論があり、どのように実験結果を分析したか子細には示されませんでした。唯一、ある教授がSTAP細胞の増殖曲線が不自然であると指摘されましたが、僕はまったく逆の解釈もあるのではと思いました。いずれにせよ、小保方さんたちの実験結果のどれが、どのように不正されたのか、少しも明確に示されなかったのです。」という個所。
★何のことかわからんという人もいるかもしれないのでわかりやすく絞り込むと、「唯一、ある教授がSTAP細胞の増殖曲線が不自然であると指摘されましたが、僕はまったく逆の解釈もあるのではと思いました。」という個所、すなわち「まったく逆の解釈もある」というところだ。
★もう1つは、「未だもって、僕にははたしてSTAP細胞が存在するのかはわかりません。しかし、少なくともSTAP細胞は完全なインチキのでっち上げという確たる証拠もありません。」と断言している個所。これもわかりやすく絞り込むと「完全なインチキのでっち上げという確たる証拠もありません」というところだ。
★要するに、STAP細胞批判派の科学的反証とは、このような「まったく逆の解釈もある」ものがほとんどであり、「完全なインチキのでっち上げという確たる証拠」はいまだ存在しないということだ。
★おそらく当時のNHK科学文化部が総力を結集し、若山氏らの全面協力を得たにもかかわらず、残念なことに当の番組では、「小保方さんたちの実験結果のどれが、どのように不正されたのか、少しも明確に示されなかった」のである。
★ちなみに、この科学エッセイを書いた下田親氏は、大阪市立大学理学研究科酵母遺伝資源センター特任教授、専門は分子細胞生物学。日本分子生物学会会員でもある。
(南青山)
去る5月21日、エッセイ150回記念イベントを山崎さんのお世話でやっていただき、僕はSTAP細胞をネタに一味会有志の前で講演しました。それ以来も、STAP細胞についての報道があると注意して見るようにしています。7月27日の日曜日、NHKスペシャルで「STAP細胞=不正の深層」という番組が放映されました(写真)。この番組の取材中に行き過ぎた行為があり、小保方さんが軽い怪我したことが報道され、NHKも認めて謝罪しました。それもあり、興味もってじっくりと見たのです。NHKだからきちんとした取材に基づいて公正な番組作りをするものと期待しました。ところが、このNスペは結論が最初にありきで、牽強付会の酷い番組作りだったと感じました。その一方的で独善的なやり口に絶句しました。
この番組では「小保方、若山、笹井さんたちのチームが研究不正をしてネイチャー論文をでっち上げた」という結論が先にあったようです。それを導くために、様々な間接証拠を積み上げ、あたかも客観的な事実によって不正を証明したと言わんばかりの番組構成でした。ナレーションが「これも不正、あれも不正」と解説するのですが、具体的に視聴者が判るように映像や言葉でもって証明するものではありませんでした。例えば、ネイチャー誌に発表された2報の論文の図表の内、理研の調査委員会が不正と認定した2つの図表に加え、番組では他の多くにも不正な操作があったと断定して、映像ではその図を赤い色で塗りつぶしていきました。これだけ見ると、論文は不正なデータばかりででっち上げたのかと思ってしまいます。これは映像による、とても酷いイメージ操作です。調査委員会が不正と断定した2つの図については、僕の講演では詳しく、どこに問題があり、それが全体の結論にどのように影響したかを解説し、綿密に分析しました。しかし、このNスペではそういった説明は一切なく、赤く塗りつぶされた図表のイメージのみが示されたので、視聴者は論文がもう捏造データで溢れていると考えてしまう仕組みになっていました。そもそも、上から赤く塗りつぶすわけですからどんな図だったのかさえわかりません。
僕も所属している日本分子生物学会はこのSTAP細胞問題には関心高く、理事長の声明が何度か表明されています。この番組でも、学会所属の研究者が数名登場して、机を囲んで、論文の図表の批評をしている場面が続きました。僕もよく知る立派な研究業績をもつ方々でしたが、どんなサイエンティフィックな議論があり、どのように実験結果を分析したか子細には示されませんでした。唯一、ある教授がSTAP細胞の増殖曲線が不自然であると指摘されましたが、僕はまったく逆の解釈もあるのではと思いました。いずれにせよ、小保方さんたちの実験結果のどれが、どのように不正されたのか、少しも明確に示されなかったのです。
小保方さんも理研もけしからん。外国では研究不正を防ぐ方策をちゃんとやっているのに日本は・・・。こんなことを主張したかった番組で、状況証拠の積み重ねにより、ある結論を恣意的に導くという、これは報道においても、また研究においても避けるべき手法に終始したという印象を受けました。小保方さんのSTAP細胞が、はじめに若山さんから提供されたマウス由来ではないことが、遺伝子解析から明らかになり、強い不正の証拠であるとされていました。しかし、若山さん達のこの遺伝子解析に誤りがあり、本当にマウスが若山研究室由来ではないと言い切れないことが報道されたばかりです。このことについても、何もふれられなかったです。さらに、NHK記者の取材中に行き過ぎた行為があったことについても、何もコメントがなかったのはまったくフェアじゃないと感じました。これぞ、「NHK:偏った報道=その深層」とでも名付けたくなりました。
未だもって、僕にははたしてSTAP細胞が存在するのかはわかりません。しかし、少なくともSTAP細胞は完全なインチキのでっち上げという確たる証拠もありません。あるイメージで断罪して抹殺するマスコミの怖さを感じました。例えば、小保方さんと笹井さんの往復メールの文面を、なにか鬼の首でも取ったかのように画面に示されました。僕が見た限り、ごく普通の共同研究者間のメールと思えました。しかし、興味本位の週刊誌で騒がれた背景があるので、こんなメールの取り扱いはもっと慎重にするべきかと思います。果たせるかな当事者のひとり、笹井芳樹氏が自死を遂げたという衝撃的なニュースが本日(8月5日)流れました。彼がなぜ、自ら命を絶ったのか、推察することは避けるべきでしょうね。
人間は往々にして、他人をある先入観で見てしまいます。中学生だった頃、僕は親父と一緒に、「真昼の暗黒」という映画を観ました。殺人事件の現場の映像は子供にとっては怖くて、夜、夢に見たほどでした。この映画は、実際にあった八海事件という殺人事件で共犯者とされた若者たち4人が実は冤罪であったということを暴露した正木ひろし弁護士の原作の映画化(今井正監督)でした。この「真昼の暗黒」を観た後、僕は父に、「やってないのに犯人にされた人達は可哀想やね」と感想を言いました。すると、父は「あの人達は強盗や窃盗の前科がある。悪いことをやっていたから犯人にされたんや。人間は真面目に生きていないと、犯人にされることがある。お前も、悪いことやったらあかんよ」と諭されたことをよく覚えています。こうした父のとらえ方が冤罪を生む土壌なのだと、後になってぼくは感じたものです。
STAP細胞事件でも、小保方さんは学位論文でも他人の文章を転用したりしたのだから、今度のネイチャー論文の研究でも不正を繰り返したに違いないと考えられがちです。しかし、一つずつ事実を積み上げていかない限り真実には永遠に近づけないのです。曇りのない眼で事実をありのままに見る。このことが、いかに困難なことかは、日々の研究の現場でもつくづく経験しています。
実はこのNスペが放映されたあと、小保方さんの弁護団からNHKに抗議する声明が出ました。「集団いじめの先頭に立つNHK」というこの文章を読むと、このエッセイで僕が主張していることと寸分違わぬ論理が述べられていたのでちょっと驚きました。僕が書いたように、行き過ぎた取材で小保方さんが負傷したことに、番組でなんのコメントもないことも厳しく糾弾していました。もちろん、この三木弁護士の抗議声明を参考にしてエッセイを書いたのでは断じてありません。念のため。
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