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捏造・盗用…研究倫理どう構築:東大、常勤に企業法務専門家/阪大、既存論文と一致度測定
http://www.asyura2.com/13/nature5/msg/853.html
投稿者 あっしら 日時 2015 年 6 月 22 日 18:39:22: Mo7ApAlflbQ6s
 


捏造・盗用…研究倫理どう構築
東大、常勤に企業法務専門家/阪大、既存論文と一致度測定

 研究データの捏造(ねつぞう)や論文盗用といった研究不正が後を絶たない中、大学が研究倫理の徹底に動き出した。東京大は今年から、外部の弁護士を常勤理事に登用。大阪大は論文の盗用検知システムを整備した。文部科学省は不正への対応が不十分なら交付金を減らす方針だ。ただ研究の自治は大学運営の大原則の一つで、現場の萎縮防止も課題になる。

 東大では分子細胞生物学研究所の元教授らが発表した多数の論文に不正が認定され、今年3月、3人の博士号取り消しという重い処分に発展。ほかにも研究費を詐取したとして教授が東京地検特捜部に逮捕・起訴されるなど、ここ数年、問題が続発する“異常事態”に陥っていた。

 改善策として東大が導入したのが外部の目だ。企業法務やコーポレートガバナンスの専門家の境田正樹弁護士(51)を、コンプライアンスや研究倫理を担当する常勤理事として招いた。

 弁護士を非常勤で理事に迎えるケースは他大学でもあるが、完全な常勤は極めて異例。境田氏は国立がん研究センターといった研究機関の運営に関わった経験もあり、白羽の矢がたった。

 境田氏は「企業ならリーガルリスクやコンプライアンスは法務部門が一元的にチェックするが、大学は研究の自治が重んじられ、長年にわたって学部や部局ごとに管理体制が独立していたのが大きな特徴。だが国立大の法人化などで大学本体の責任が重くなり、学部任せにできなくなってきている」と指摘する。

具体策これから

 改善策の制度設計はこれから。「各学部などと話し合い、研究領域ごとの予防策や、調査・検証を効率的に実施する仕組みを作りたい。他の大学の参考にもなるのではないか」と話す。東大という巨大組織の変革を担うだけに「企業実務の専門家の協力を仰ぐなど、さらに外部の力も借りながら取り組む」という。

 五神真・東大学長は「大学関係者だけの議論だと独りよがりになりがち。規制や管理を強めるだけでは迅速な対応ができない。外部の専門家の立場から研究不正への対応を制度化してほしい」と、登用の狙いを話す。

 論文の盗用チェックに先端技術を導入したのは阪大だ。膨大な論文データベースを基に、既存の論文との一致度を測定できる米国製システム「アイセンティケイト」を導入した。

 学術論文は自分自身の研究だけでなく、多くの先行研究を参考にしながら執筆するため、他人の論文を引用すること自体は通常の行為だ。ただ、引用元の明示を忘れると、盗用とみなされかねない。

 阪大はアイセンティケイトを使うことで、故意の盗用だけでなく、引用元の記載漏れといった単純ミスで盗用の疑いをかけられる事態も防ぎたい考えだ。リスク管理担当の相本三郎副学長は「軽い気持ちや手抜きがとんでもない結果につながる。疑いの目を向けられない論文にする必要がある」と話す。阪大はコンプライアンスの注意点を盛り込んだパンフレットを作成・配布するなどの対策も進めている。

学生向けに講座

 研究者の卵である学生向けの倫理教育を強化する動きもある。早稲田大は今年から、全学部の3年生以上を対象にした「研究倫理概論」を、春と秋の両学期に受講できるようにした。従来は秋学期のみの開講だった。

 学内外の研究者が、不正行為の例やノートの管理方法、研究に協力してくれる被験者の保護の在り方などを詳しく解説する。

 博士課程の学生には履修を義務付けたほか、学部生の履修も多く、この春学期は1千人を超す学生が受講している。研究推進担当理事の石山敦士教授は「研究倫理は個人がモラルを守れば済む時代ではなくなっており、研究者だけでなく学生のうちからしっかり学ぶ必要がある。海外の大学での不正防止の取り組みなども積極的に取り入れていきたい」と話している。

(山本有洋)


原則「推定有罪」、萎縮防止が課題 国の不正防止ガイドライン

 文部科学省は理化学研究所のSTAP細胞問題などを受けて昨年8月、研究不正に関するガイドラインを策定した。研究機関の管理責任を明確に定め、対応が不十分なら研究経費を減らす。不正ではないことの立証責任は研究者側が負うが、研究現場を萎縮させるとの懸念も出ており、適正運用が今後の課題だ。

 ガイドラインでは、不正を疑われた研究者は、自ら不正でないと証明できなければ「不正があった」と認定される。刑事裁判で基本の「疑わしきは被告人の利益に」の原則とは逆で、いわば「推定有罪」の考え方だ。

 こうした仕組みについては「研究不正は外から判断しづらく、結局は本人に証明させるほかない」との見方がある一方、「研究者側に過度の立証責任を負わせるもので、冤罪(えんざい)が起きる恐れもある」との声も出ている。

 国がガイドラインで研究機関を拘束することを、憲法で認められた学問の自由に照らして問題視する声もある。ガイドライン策定時のパブリックコメントでも「過度に締め付けて研究活動を萎縮させるべきではない」といった意見が文科省に寄せられた。

 同省は「研究が衰退してはならない」としながらも「不正は絶対に許されず、科学者としての自己否定や自己破壊につながる」と指摘。「不正事案が起きれば対応に重い負担が伴う。未然に防ぐことが結果的に研究者の負担軽減になる」(人材政策課)として、ガイドラインに基づく監督を進める構え。不正防止と研究推進のバランスが今後も問われる。

[日経新聞6月17日朝刊P.27]

 

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