http://www.asyura2.com/13/nature5/msg/706.html
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(理研STAP細胞論文調査委員会報告、改革委提言等への根本的疑問)
http://blogs.yahoo.co.jp/teabreakt2/16134077.html
★元記事は3つのパート(リンク)に分かれている。それぞれのリンクは記事の途中で入れておいた。
★ブログ主は本文で「最も不思議なのは、識者やマスコミは、小保方氏のことをあれだけ、ミスが多い、研究者としての常識が欠けるといった批判をしていながら、捏造だということになると、まるで小保方氏が手品師のように緻密な捏造工作を行ったかのような言いぶりになることです。」まったくその通りと言うほかない。あるときは簡単に見破られる致命的ミス、捏造、不正をやりまくるまったくの科学のど素人的研究者、あるときは世界レベルの科学者を簡単に丸め込む熟達のマジシャン的研究者。小保方氏批判の文章を見ていると、そのようなキメラ的怪物を想像せざるを得ない。
★そして、この論考の主眼は「ES細胞混入では説明できないということが明らかになれば、マウスの手交ミス、交配ミスの可能性が浮上してきて、そうなると、一連の事件の構図は文字通り一変します。小保方氏及び若山氏の立場はまるで変わってきます。」にあると思える。これまであまり語られなかった新説だが、私見では現時点でもっとも妥当性のある謎解きのように思える。
★もちろん、そのように解釈したとしてもまだ多くの謎が残っている。それらが解明されるのはいつの日になることか。
(南青山)
STAP論文に関する桂不正調査委員会の報告書が提出され、次のように結論されました。
「STAP細胞はなかったというのは、科学的検証からほぼ確実」
「STAP細胞の証拠となる細胞は、すべてES細胞の混入で説明できることが科学的証拠で明らかになった」
http://www.riken.jp/pr/topics/2014/20141226_1/ 調査報告書
https://www.youtube.com/watch?v=AWkc9v6l1JQ 全録画
これまで様々な指摘がなされていましたが、再現実験・検証実験や、遠藤氏の登録遺伝子データの解析によるものではなく、残存試料の分析によるものということで、その結果は注目されていました。そして、これまで、STAP細胞があることを前提としなければ説明できないという事象その他の科学的論点についても、科学的に合理的な解説がなされるものと考えていました。
しかし、そういう期待に反し、STAP細胞の有無に関わる科学的論点は、ほぼことごとくスルーされていたように感じましたし、「小保方氏による作製実験段階でのES細胞自体の混入」という先入観に立った推論をしてしまっていないだろうか・・・と思いました。
もっと言うと、大きな「見立て違い」をしてしまっていないのだろうか?というのが、文系の門外漢ながら、説明を聞いての率直な感想です。今回の調査委の調査とそれ以前に出ている一連の材料を踏まえれば、
「小保方氏に手交されたマウスが間違っていた(汚染されていた)」
と推論するのが、自然なのではないかと思いました。
そう思ったのは、若山氏自らが小保方氏から指導を受けて作製に成功した際には、「マウスから一から作製した」と明らかにされたこと、その若山氏が作ったSTAP幹細胞の残存試料の解析でも同じ結果だったこと、残存の「11 種類の幹細胞株の特徴は、2003年に若山研が大阪大学岡部研より導入したAcr-GFP/CAG-GFP マウスの特徴と完全に一致する」(報告書P4ー5)との結果が出たこと、それらのES細胞のもととなるマウスや樹立したマウスが若山研にいたこと、等の「事実」をつなぎ合わせれば、若山氏側から渡されたマウス自体が、今回分析された特徴を持つES細胞によって汚染されていた(ES細胞によって樹立されたものだった)と考えたほうが筋道が通っていないだろうか?との理由によるものです。
若山氏自身が作製した際には、当然、小保方氏に「渡したはずのマウス」と同じタイプのマウスから作製したはずなのですから、その若山氏作製の残存試料の分析結果が若山氏の想定と違っていた、それも、使っていないはずの岡部研からの導入マウスの特徴と完全に一致する、というのであれば、若山氏による「若山研にはいたマウスからは絶対にできない」との主張は完全に覆されたことになって、やはり「手交ミス」「マウス汚染」だったことを疑うのが自然のはずではないのでしょうか・・・?
そして、おそらくその点も念頭においたと思われる「今回のような特徴を持つES細胞から作ったキメラマウスからSTAP細胞を作ったらどうなるか?」と質問した記者がいましたが、桂委員長、伊藤武彦教授ともに、質問の趣旨が理解できず戸惑っていたものの、「(今回の分析結果と同じことになることは)ありうる」と答えています。
そもそも論として、
@「ES細胞をFI幹細胞培養条件下で混ぜたら、特段の形態変化なく、4〜5回の継代後に全滅した」「2月に観察したSTAP細胞の形態と今回できた細胞の形態は同じだった」との丹羽氏の12月19日の会見時の説明
A笹井氏、若山氏らによる一連のSTAP細胞の存在(=ES細胞ではあり得ないこと)を推定させる諸材料
http://blogs.yahoo.co.jp/teabreakt2/16114758.html
・「ES細胞と比べてもさらに小さな、核も小さく細胞質もほとんどない、特殊な細胞 である。また遺伝子発現のパターンの詳細解析もSTAP細胞はES細胞や他の幹 細胞とは一致しない」(笹井氏)
・「ES細胞は非常に増殖能が高く、分散培養すなわちばらばらにして一個一個の細胞から培養することが可能だが、STAP細胞は増殖力が低く、分散してしまうと死んで増えない。もしもそういったものを混ぜていればES細胞のような増え方をするはず」(笹井氏)
・「・・・その条件下ではES細胞より簡易に作成できました。さらにmRNA発現の仕方からSTAP幹細胞がES細胞のコンタミでは無いでしょう。」(若山氏)
・「笹井芳樹副センター長らは、目の前で弱酸性溶液に浸された細胞が、時間がたってから光り始めることを確認している(「動画」に記録されている)。ES細胞だったら最初から光っているはずだ(ES細胞は最初から多能性を持っている)。光り始めるまで時間がかかったということは、弱酸性の溶液に浸したために多能性を獲得した、と考えるのが理にかなっている。」(竹内薫氏)
といった諸点を考え合わせると、「小保方氏の実験段階でのES細胞混入」では説明できず、むしろ、「小保方氏へのマウスの手交ミス」「元々のマウス汚染」で説明するほうが合理的、と考えるのは無理があるでしょうか? その説の延長には、「やはりSTAP細胞はあったが、非常に制約のあった実験環境によって、再現には失敗した」という想定がありますが・・・。
●以下順次、会見を見ての疑問点を書いていきます。私の勘違いならご放念ください。
疑問1 なぜ、笹井、丹羽氏らの「ES細胞では説明がつかない」との指摘を無視して結論が出せるのか?
質疑応答の冒頭で、日経BPの記者が、「笹井、丹羽氏は、ES細混入ではないかと疑われたので、そうではないという点は注意深く観察した、と言っているが、この点はどうか?」と質問したのに対して、
「両氏がどうしてそう考えたかは、わからない。我々は、論文がどうなのかを調べているので、その点は、調査対象外だと考えた。」
としてスルーしていました。この質問の前になされた「胎盤の残存資料の分析結果についての見解」の質問に対する回答とともに、絶句しました。STAP否定派であっても、「それはないだろう・・・」と感じた人も少なくないのではないでしょうか。
この回答は明らかに委員長の説明と矛盾しています。まず、笹井氏らが指摘した点は、上記にある通り、すべて論文に記載されている画像から読み取れる点です。細胞の大きさ、形状、光り始めるまでの時間等、論文そのものの内容です。それらの点をとの関係を整理分析しないのはどう考えておかしな話です。
また、最初に桂委員長は、調査の趣旨について、冒頭の説明で次のように説明しています。
「最初の調査委員会の後、主に理研内部でいろいろな科学的調査が行われて、データが溜まってきました。・・・報告としては、主に科学的調査が主体だが、論文についても調査した、論文の製作過程についても調査した。科学的調査としては、理研の各所の人が、自浄作用だと思うが、いろいろデータを出してきたので、それを第三者の目でどうかということをやった。」
この説明と、先ほどの笹井氏、丹羽氏らの指摘に関する回答は、明白に矛盾していることは誰にでも理解できることでしょう。この調査委の調査は、科学的調査が主であり、論文について「も」調査したということで、それが主ではないということです。そして、さまざまなデータを理研内部の研究者がデータを出してきてものを評価したと言っているわけですから、当然、科学的真実の追求のためには、笹井氏、丹羽氏の指摘、若山氏のかつての実験観察について発言の内容との整合性についても分析し、合理的に説明をつけなければならないはずです。ところが、日経BP記者の質問に対しては、「論文がどうなるのかを調べているので、調査対象外だ」と、急に冒頭の説明と矛盾することを述べて、逃げてしまいました。これでは、自らが標榜した「科学的調査が主である」とのスタンスが崩れてしまうではありませんか。
若山氏へのヒアリング結果に関しては、後ほど触れますが、上記のように2月の雑誌インタビューで「ES細胞より簡単にできたし、mRNA発現の仕方からESとは異なる」と述べていた点を裏付けるデータはあるはずで、それは実験ノート等の資料があるはずですが、その点を調査しなかったのでしょうか?
そして、丹羽氏がつい数日前の12月19日の再現・検証実験結果についての会見時に述べた「ES細胞をFI幹細胞培養条件下で混ぜたら、特段の形態変化なく、4〜5回の継代後に全滅した」との指摘との関係でどう整合性のある説明ができるのか? という点は大きな注目点だったはずです。あの19日の会見からいくらも経っていないのに、調査委員会が最終報告を発表するというので、ちょっとタイミング的に早過ぎないか?と思いましたが、丹羽氏の指摘は無視するということだったとは唖然とするばかりです。
丹羽氏は、4月の会見でも、
「ESとTSとは混ざって一塊の細胞塊にならない」
として、混合疑惑に対して早期の時点で材料を提供し、今回の19日の会見でも、
「ES細胞を混ぜたら、形態変化することなく、4〜5回の継代後に全壊した」
というように、いずれも、「自分でもちょっと気になって」として、付随的実験をした結果を紹介しています。それについては、丹羽氏自らが積極的にデータを調査委に検証材料の一つとして提出するという雰囲気ではありませんが、公の記者会見で述べているわけですから、「理研の各所の人が、自浄作用だと思うが、いろいろデータを出してきたので、それを第三者の目でどうかということをやった。」というのと同列に、検証材料として取り上げるべきでしょう。それらの点は、STAP細胞に関心のある関係者すべてが注目していた点ですから、なおさらです。
疑問2 胎盤の確認をなぜ残存資料(マウス+切片)からしなかったのか?
ES細胞かどうかの判断材料として、残存しているキメラマウスの胎盤の有無が注目されていました。だからこそ、質疑応答の一番冒頭の質問が、それだったわけです(日経BPの記者による)。
ところが、委員長の説明は、極めて曖昧でした。
*******************************
Q 胎盤がなぜあるのか?という疑問についてはどう考えるのか?
A これに関しては、我々は疑っている。あの光る胎盤は、血液とか胎盤以外ものだった可能性があるということは、専門家に見てもらったところ、そのような回答を得ている。これは切片を切ったらそうでなかったというのがあるが、それがどうだったかは最終的に検証できなかった。しかし、胎盤であるとの証明があるとは思っていない。胎盤でないというところまで突き詰めて証明することは難しかったが・・・、胎盤であったとの証明があったとは思っていない。
Q つまり、GFPで光っている胎盤が確認できていないのか?
A 我々の調査委では確認できなかった。
Q はぁ・・・、胎盤の形状を保持しているものは確認していないのか?
A 光っているものが、図によっては胎盤なのか別の組織なのか、専門家は、疑わしいと言っている人がいる。疑わしいという言い方だが・・・。
******************************
意味不明の回答だと感じます。この点が一般には最も注目されていて、残存資料を分析すればわかる話だということで、確認結果について、どういう説明がなされるのか大きな関心を持って皆が待っていたわけです。
ところが、桂委員長の答えは、疑問だらけです。
@残存している現物を実地に確認したのかどうか自体が曖昧。「調査委では 確認できなかった」というのはどういうことか? なぜ確認できなかった のか? 専門家ではないからか? 何か物理的制約があったのか? シー ケンサー?にかければすぐわかるというのが、もっぱらの指摘だったはず ではなかったか?
A専門家に見てもらったところ、「図によっては、疑わしいと言っている人がいる」というが、「図によっては」ということは現物を見せていないということか? 「〜人がいる」というのはどういう意味か? 数人に見せて、その一部が言っているだけなのか?
B「切片を切ったらそうでなかったというのがあるが、」とはどういう意味か? 丹羽氏は、切片によって、間違いなく胎盤だと確認したと4月の会見時に言っているが、それとはどういう関係になるのか? 切片は専門家にみせたのか?
C「胎盤であるとの証明があるとは思っていない」というが、何を以て証明があったと判断されるのか? 証明のための基準、方法が示されなければ、ある、ないといっても仕方がない。
この点の調査委の調査は明らかに杜撰です。丹羽氏の指摘は調査対象外と桂委員長は述べましたが、ご冗談でしょう。
丹羽氏は、4月の会見時に、次のように答えています。最も関心のある部分だとして、自分の目で慎重に確認したと答えています(11:25〜)
https://www.youtube.com/watch?v=83LKlS8h8vI
*******************************
Q 胎盤に分化していることを確認しているのか? 血管が光っているのではなく、細胞が光っていることを。
A 自分自身もその点は、実験に参画した上で最も強いモチベーションだったので、・・・GFPの自家蛍光の問題は、免疫染色等で確認すべきだとのご意見があったが、まさにそのような手段を用いて、かつ 胎盤実質細胞で発現するマーカーともキョーセンショクを以って、確かにSTAP細胞由来と思われるGFP陽性細胞が胎盤組織にインテグレートしていることを、切片を顕微鏡で自分の目で確認している。
*******************************
これだけ慎重に見極めをしているのですから、同じ切片を見せて、別の判断をする専門家がいるのであれば、なぜ判断に相違が生じるのかを、突き詰めて検討する必要があるはずです。図によって疑わしいと判断しているというのであれば、同じ図を丹羽氏にも見せて判断を求めることが順序からいって当然でしょう。
「疑わしいと言っているという人がいる」という言い方もひっかかりますが、そういっているのであれば、その理由をきちんと提示させることが、科学的調査であるはずです。
以上のような疑問を持って報告書で関連記述部分はないかと探したら、ありました。ありましたが、実にあっさりと、「専門家の意見によれば、胎盤ではなく卵黄嚢の可能性が高い」と書かれているのみです(p21)。この認定の書きぶりと上記の委員長の説明ぶりにはかなりのニュアンスの差があります。「疑わしいといった人もいる」という委員長の説明が、報告書では「可能性が高い」というところまで断言してしまっています。
4)Letter Extended DataFig.1a について
2N キメラの写真ではなく、Article Extended Data Fig.7d と同じ 4N キメラ胎児胚の写真の疑いがある点(論文撤回理由 2)(これについては、2014 年 5 月 10 日に著者から報告、5 月 21 日に報道されている)
この写真で胚の一部を胎盤と誤同定している可能性がある点
(調査結果)
4N キメラ胚であることは、マウス胚撮影に用いた PC に残存する写真(2011 年 11 月 28日撮影)と若山氏の実験ノートから確認できた。論文の図の説明には 2 つの矢印があって、胎盤と卵黄嚢とされているが、専門家の意見によれば 2 つとも卵黄嚢である可能性が高い。
(評価)
2N キメラか 4N キメラかは、論文の重要な論点とは考えられず、過失による可能性が高いと判断した。STAP 細胞の胎盤への寄与は、Letterの論点として重要であり、研究の価値を高めるために強引に胎盤と断定した可能性があるが、調査により得られた証拠に基づき認定する限り、研究不正とは認められない。(以下略)」
この報告書の記述で明らかになったことは、意見をもらった専門家には論文の図しか見せていないということです(!?)。そんな杜撰な調査など、あり得るのでしょうか?? ここに書かれている通り、「STAP 細胞の胎盤への寄与は、Letterの論点として重要」であり、当然、誰もがホルマリン漬けのキメラマウスで確認するに違いないと考えていたはずです。ところが、これでは、切片さえも見せていないということではないでしょうか? 丹羽氏は、切片によって慎重に確認したと言いました。しかし、科学者やマスコミその他は、「切片を作ったのは小保方氏だから」と言って、その捏造を強く疑っていました。ですから、当然、調査委とすれば、切片はもちろん、残存キメラまで含めて改めて検証しなければ、調査の体をなしません。ところが、報告書及び委員長の説明から、論文掲載の図を「専門家」に見せただけだということがわかりました。キメラの現物チェックもできない、切片の再検証さえもしない、というのであれば、その然るべき理由を説明する必要があります。報告書は、「研究の価値を高めるために強引に胎盤と断定した可能性がある」としていますが、論文の図を見せただけで「誤同定」だと断定してしまうとは、それこそ、「ES細胞混入説の邪魔にならないように、強引に卵黄嚢の誤同定だと断定した可能性がある」ということではないでしょうか?
(以下 http://blogs.yahoo.co.jp/teabreakt2/16134085.html)
疑問3 なぜ「若山氏が小保方氏に渡したマウス」が若山氏の説明通りという前提に立つのか?
マウスの系統の混乱の問題は、若山氏が6月に記者会見で発表した「若山研究室にあったマウスからは絶対にできない」と断言したことが間違っていて、7月に訂正を行ったことから、注目されていた重要な論点のひとつだったはずです。
「幹細胞の目印が・・・若山研究室で飼育されていた別のマウスと遺伝子の目印の特徴が似ていることが分かった」ということは、7月の訂正の時点では報じられていました。しかし若山氏は、小保方氏と渡したはずのマウスとは別系統のマウス(大阪大の岡部研究室から譲渡されたもの)が飼育されていたことは認めましたが、その系統のものを渡した可能性は否定していました。
http://blogs.yahoo.co.jp/teabreakt2/15695587.html
◎NHK
「・・・ただ、若山教授がSTAP細胞作製のために小保方リーダーに渡したマウスと、そのマウスから作ったSTAP細胞だとして小保方リーダーから渡された細胞が異なるものだという点は変わっていないということで、理化学研究所や若山教授の研究室でさらに詳しく調べています。」
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140723/k10013211391000.html
残存しているSTAP幹細胞やES細胞が、岡部研由来マウスのものであることは、今回の調査報告書で改めて明らかにされました。
「1)Acr-GFP/CAG-GFP 共挿入の位置、コピー数、周囲の塩基配列
表:STAP 幹細胞株一覧に挙げた 12 種類の幹細胞から STAP 幹細胞 FLS-T を除く 11 種類の幹細胞株、それらの幹細胞が作製された 129 系統、および C57BL/6 系統の NGS による全ゲノム解析を行なった。その結果、Acr-GFP/CAG-GFP の共挿入は、STAP 幹細胞 FLS3、FI 幹細胞 CTS1、そして ES 細胞 FES1 並びに FES2、ntES1 並びに ntES2, および 129/GFPES の 7 株の第 3 染色体の同一部位に共通に存在することが判明した。また、Acr-GFP が第 3 染色体の片方にのみ挿入されていること(FISH により確認)、Acr-プロモーターのコピー数がどれも約 20 コピーであること、GFP 挿入部位を挟んで第 3 染色体の約 20kbの重複があることと、GFP 挿入部位に隣接して第 4 染色体 20kb 断片の逆向きの挿入があることも共通していることが判明した。これらの特徴は、2003 年に CDB 若山研が大阪大学岡部研より導入した Acr-GFP/CAG-GFP マウスの特徴と完全に一致する。」(P4-5)
「3)次世代シークエンサー(NGS)による解析結果
表:STAP 関連細胞株一覧に挙げる 12 種類の幹細胞のうち、FLS-T を除く 11 種類、それらの幹細胞が作製された 129 系統、および C57BL/6 系統に関して、全ゲノム SNPs 分析を行なった。その結果、STAP幹細胞 FLS3、FI 幹細胞 CTS1 および「129/GFP ES」と呼ばれる小保方研のフリーザーから発見された ES 細胞は、2005 年に若山研で樹立された受精卵由来の ES 細胞 FES1 および FES2 と遺伝的背景の類似性が高いことが明らかになった。」
これによって、若山氏が小保方氏に渡したマウスも、やはり岡部研由来のマウスではなかったのか?という連想が湧くと思いますが、しかし、あくまで本来渡すべき系統のものを渡していたという可能性もないわけではありません。
しかし、その点は、桂委員長の説明によって、図らずも、岡部研由来マウスだったことが強く示唆されていると思いました。
理由の第一は、若山氏が一から作製に成功した際には、マウスからスタートして成功しているということが明言されていることです。そして、その若山氏が自ら一から作製したSTAP幹細胞(表:STAP 関連細胞株一覧の「FLS-T1、T2」)も含めて、その遺伝子構成が、ES細胞のもの(=岡部研由来のもの)と一致していることが明らかになったことによります。
委員長は次のように説明しています(55:14)。
Q 以前、若山氏が、ただ一度だけ小保方氏の指導で、一からSTAP細胞を作りSTAP幹細胞を作ったとのことですが、これは、マウスから作ったわけではなく、何らかの処理された細胞から作ったという理解でいいか。
A マウスから作った。最初から最後まで。山梨大に出る前に、若山さんでもできるかやってみようと思って、若山研の人たち田試したができなかったので、自分でやってみたいということで教えてもらってやったらできた。これは若山研に保存されていたので、それをいただいて調べた。
Q なぜ一回再現できたか不思議ですが・・・。
A 不思議です。STAP細胞ができたというのは、小保方氏以外で操作してできたというのは、我々の確認している限りでは、この若山氏の1回だけ。
Q 引きちぎって挿入するようにしたらできたとあるが、その時にES細胞が混入したということか。
A 前の状況が何も残っていないのでわからないが、小保方氏が理研に来てから半年ほどはできなかったが、2011年の11月くらいになってから急にキメラができるようになった。なぜできなかったはわからない。樹立日のFLS3とGLS1とが、2012年1月から2月の初めにかけて、この時にたくさんできたようだが、少なくともこれはESのコンタミだった。なぜ急にできるようになったのかを尋ねたら、答えは二つ。若いマウスと使うようにしたことと、細胞をバラバラではなく引きちぎって塊にして挿入するようにしたらできるようになったとのこと。そう信じていたようだ。しかし、我々としては、できるようになった時点で、もう一度塊をバラバラにしてできたら、これだけ(騒ぎは?)大きくはならなかったろうという思いはある。
(注)報告書のP30に同趣旨の記載あり。
質問した記者は、若山氏が作製に成功したのはマウスからでないと思い込んでいたようですし、若山氏の主張が正しいとの先入観に立てば、そういう発想になることでしょう。ところが、意外なことに、桂委員長の答えは、「マウスから一から作った」でした。となると、若山氏が作製で使ったマウスは、当然、自分が小保方氏に渡したはずの系統のものと同じものだったはずです。間違うはずがありません。しかし、そこから作製したSTAP細胞から作ったSTAP幹細胞として残存しているものが、岡部研由来のES細胞の特徴と完全一致したということであれば、若山氏が手交したマウスがそもそも間違いだったという論理的帰結になるのではないでしょうか?要するに、若山氏側のマウスの手交ミスということです。
もう一つ、若山氏側の手交ミスと推定される理由は、若山氏の説明と、論文、残存資料の相違についての、桂委員長の次の説明です(1:04:●〜)
Q 若山研の管理状況は、ES混入を排除できる実験環境は整っていたのか?
A わからない。そこにいたわけではないので。・・・(中略)
論文の投稿をしているときに、査読者からESの混入ではないのかとの指摘があった。それで最初にFLS・・・というのは非常にやっかいな細胞で、若山氏が小保方氏に渡したマウスは、129GFPのメスと、B6のCAGGFPのオスを掛け合わせてそれのF1のはず。ですからCAGGFPはホモで入っているはず。ところが、論文では、B6のほうにだけCAGGFPが入っているような記載になっていた。どうしてそうなったのかわからない。しかし、実際に調べてみたら、アクロシンGFPとCAGGFPとが入っているという第三のものだった。ですから、若山氏が渡したマウスと論文の記載と残存資料の3つが違っているというやっかいな細胞だ。
ここでも、若山氏の説明が、小保方氏の論文と残存資料の分析結果と異なっていることが示されています。これは、若山氏が手交したつもりのマウスが、実際には違っていたということが十分あり得ることを強く示唆するものでしょう。
マウスの飼育管理に関連しては、報告書では次のような言及があります。
「(2)ES 細胞の混入を行った者を特定できるか
これだけ何回も ES 細胞が混入したことは、培養器具の不注意な操作による混入の可13能性も考えられるが、研究者の常識としては、誰かが故意に混入した疑いを拭うことができない。そこで、本調査委員会では、誰に ES 細胞混入の機会があったかを調査した。小保方氏と若山氏の聞き取り調査から判明した各実験過程の担当者は、以下の通りである。
[STAP細胞作製のためのマウス] STAP 細胞作製に用いたマウスは、若山氏がマウスの交配を行い、小保方氏にマウスを手渡した。ただし、Oct4-GFPを持つ STAP 細胞作製のときは、CDB 若山研メンバーが管理していた GOF マウスのケージから、小保方氏が子マウスを取り出して使用した。」(p13〜14)
「3)STAP幹細胞FLSのGFP 挿入パターンがホモではなくヘテロであったことを著者が認識していながら、その実験の不整合の原因を確認しなかった疑いについて(なお、論文に書かれているB6GFP×129/Svや129/Sv×B6GFP等の表記は、実際にマウスの交配を行った若山氏によれば、間違いとのことである。)
(調査結果)
STAP幹細胞FLSから作製した4Nキメラを戻し交配して得た子にGFPを含まないマウスが含まれていた。このことは、STAPFLS幹細胞FLSを作成したマウスは129(CAG-GFPホモ)とB6(CAG-GFPホモ)を交配したF1であるとの、若山氏の認識と矛盾する結果だが、若山氏と小保方氏はこの矛盾について、それ以上の追求をしなかった。
本件について、若山氏は質問状に対する回答で「その当時、STAP現象は絶対に本当だと思っていたため、この疑問点は自分のマウスの交配のミスによるものだと判断しました」と回答している。そして、若山氏の結論として「誰かの実験を手伝ったとき、つじつまが合わない現象が起こった場合、真っ先に自分の担当した部分を疑うのは当然」とも回答した。
(評価)
上に述べた状況から、CDB若山研のマウスの飼育管理体制は若山氏が中心となり、それに数名のスタッフが携わっていたと、若山氏の説明からうかがうことができる。また、マウスの系統管理も、系統間のコンタミネーションに対しては、部屋、あるいはラックを変えるなどの防止策は採られていた。一方、小保方氏に関しては、マウスの飼育を若山氏に全面的に依存していたことから、この問題に関する責任は低いものと認められる。
以上から、その実験の不整合の原因を確認しなかったという点については「若山氏のミス」ということで片付けられ、問題であることは認めながらも、その原因を追求しないままにしておいたことは、科学者として避けるべきであった。しかし、調査により得られた証拠に基づき判断する限り、研究不正とは認められない。」(P29)
ここでは、マウスの系統管理はできていたとの認識に立っているようで、マウスのコンタミの可能性は排除しているように見えますし、若山氏が交配ミスと考えたのは間違いとの認識に立っているようです。しかし他方で、若山氏の認識と残存資料の分析結果とが相違していたことが判明し、若山氏自身がマウスから一から作ったSTAP幹細胞も、岡部研由来のES細胞の特徴と一致しているという結果だったことからすれば、やはり、若山氏の交配ミスだったというのが、実際に生じたことだったのではないでしょうか。
疑問4 ES細胞が混入すれば、大きさ、増殖速度の差異等で直ちに峻別できるのではないのか?
調査委員会は、「インキュベーターでシャーレで培養中に何者かがES細胞を混入した」との見立てに立ち、わざわざ、研究室の見取り図まで示して、アクセスできる者、時間、管理状況について説明しています。小保方氏とは断定はできないものの、ほとんど小保方氏であるといわんばかりのニュアンスを出しています。
しかし、ES細胞が混入したならば、大きさや形状が異なることから、すぐに見てわかることは、研究者の常識ではないのでしょうか? それに、ES細胞だったら増殖能が強いですから、数日の培養期間中にどんどん増えてしまうことでしょう。
桂委員長は、笹井氏や丹羽氏のES細胞混入の可能性を否定する指摘を、調査対象外だとして検討していません。委員長の説明からしても筋として調査対象外になるはずがないことは既に述べましたが、笹井氏、丹羽氏は次のように説明していたわけです。
http://blogs.yahoo.co.jp/teabreakt2/15597292.html
@ 笹井氏の記者会見での説明資料での否定
http://www3.riken.jp/stap/j/s3document1.pdf
笹井氏は、次のように資料に記載し、ES細胞や他の幹細胞の可能性は疑問視し、STAP現象が最有力の仮説としているわけです。
「
B) 特徴ある細胞の性質
・リンパ球やES細胞よりSTAP細胞はさらに小型サイズの特殊な細胞
・遺伝子発現パターンの詳細解析でも、STAP細胞は、ES細胞や他の幹細
胞とも一致せず
・ES細胞は、増殖能は高く、分散培養可能; 一方、STAP細胞は増殖能が
低く、分散培養不可
イメージ 1
C) 胚盤胞の細胞注入実験(キメラマウス実験)の結果
・ES細胞、TS細胞の混ざり物では細胞接着が上手く行かず1つの細胞塊に
ならない
・ES細胞と異なり、分散した細胞ではキメラを作らない
「一個人の人為的な操作」が困難である確度の高いデータのみを見ても
@Oct4‐GFPを発現しない脾臓の血球系細胞からOct4‐GFPを発現する「他の細胞では知られていない」形質を持った小型細胞の塊が生じること
A胚盤胞への注入された細胞の貢献は、ES細胞やTS細胞では説明できない特別な多能性の表現型を示し、また内部細胞塊や桑実胚の細胞とも考えにくい」
A 丹羽氏の記者会見での否定
丹羽氏は、4月の記者会見で、問われて次のように答えています。
http://sankei.jp.msn.com/science/news/140407/scn14040722100010-n2.htm
「 −−STAP細胞は、胚性幹細胞(ES細胞)の混入を見間違えたのではないかとの指摘がある
丹羽氏 「私が知る範囲の知見では、その仮説が真である確率は低い。専門家の判断からすると、それほど単純ではない」
「若山氏は、今でこそ信じる信じないと言っているが、小保方氏から渡された細胞集団は極めて均一な細胞集団で、これをマイクロナイフで刻んで注入したと聞いている。」
これは、笹井氏と同じ知見に立っての発言でしょう。
丹羽氏は、更に、12月19日の会見で、
「ES細胞を混ぜたら、形態変化することなく、4〜5回の継代後に全壊した」
「(検証実験では)プロトコルエクスチェンジの作成の際に、小保方氏の実験で見たときと同じ形状の細胞ができてきた(細胞死滅のときとは異なる多能性マーカーは発光したが、キメラにならなかったので多能性が確認できなかったので、結局それが何者なのかわからないが)」
要は、大きさ自体が全く違うということです。
桂委員長ら調査委員会は、この基本的な知見を持っていないのではないでしょうか。それは、次の報告書の記述と同趣旨の委員長の発言から伺われます。
「論文の共著者は論文原稿の最終版を全部読んで内容を承認する責任があるが、共著者全員がこの責任を果たしたのだろうか。STAP 幹細胞が急に効率良くできるようになった時に、若山氏は、それまで STAP 細胞塊をバラバラにしていたのを、引きちぎって注入するように変更したためと説明した。しかし、ここで再び細胞をバラバラにして注入する対照実験をしていれば、ES 細胞の混入を発見できた可能性がある。」(P30)
暗黙の前提として、ES細胞もSTAP細胞も同じような大きさ、形状のものだと理解しているのは明らかでしょう。バラバラにした一個のSTAP細胞の大きさは、半年にわたって失敗してさんざん見ているでしょうから、それとES細胞1個の形状とはまるで違うことはわかるでしょう。小保方氏が、ES細胞の塊を渡したと思い込んでいるようですが、そうしたら、巨大な塊になるはずでしょうから、一発で峻別できるはずです。
なお、若山氏のこの実験成功したときの状況は、若山氏への当時のインタビューにビビッドに書かれています。
http://blogs.yahoo.co.jp/teabreakt2/15780668.html
そして、コメント欄でJISAIさんからご教示のあった遠藤氏の、次の説明からしても、ES細胞が混入したらすぐわかるはずでしょう(遠藤氏は、シャーレの丸ごとすり替え論のようですが)。
「混入ではなくすり替えでシャーレごと交換している場合増殖の制御は不可能ではありません・・・しかしES細胞は通常シャーレに接着し浮遊細胞塊とはなりませんのでやはり見た目で区別がつきます。」
http://blog.livedoor.jp/pyridoxal_phosphate/archives/19550534.html#comments内
(以下 http://blogs.yahoo.co.jp/teabreakt2/16134115.html#16137040)
疑問5 小保方氏作製のキメラと、若山氏作製のキメラの比較分析はないのか?
よくわからないのですが、若山氏は、一からマウスからSTAP細胞→STAP幹細胞と作製に成功しているわけですが、そこからキメラマウスを作って保存していないのでしょうか?
先に紹介した桂委員長の下記発言で、「自分でやってみたいということで教えてもらってやったらできた。これは若山研に保存されていたので、それをいただいて調べた。」とあり、「最初から最後まで」とありますが、これは、幹細胞だけとは考えにくく、当然、キメラマウスまで作っていると考えるのが自然です。若山氏が追試した趣旨からすれば、幹細胞を保存しているのであれば、キメラマウスもホルマリン保存されていると思われます。一連の実験ノートもあるのではないのでしょうか? それらの検証はなされているのでしょうか?
Q 以前、若山氏が、ただ一度だけ小保方氏の指導で、一からSTAP細胞を作りSTAP幹細胞を作ったとのことですが、これは、マウスから作ったわけではなく、何らかの処理された細胞から作ったという理解でいいか。
A マウスから作った。最初から最後まで。山梨大に出る前に、若山さんでもできるかやってみようと思って、若山研の人たちが試したができなかったので、自分でやってみたいということで教えてもらってやったらできた。これは若山研に保存されていたので、それをいただいて調べた。
若山氏が自らSTAP細胞作製に使ったマウスは、自らが正しい系統のものと認識していたものを当然選択しているはずです。マウスから切り出した細胞には、もちろん、ES細胞の混入もすり替えもありません。そこからスタートして、一連の追試実験を成功させたというわけですから、その結果できたキメラと、小保方氏が論文で作製したキメラとを比較すれば、真実の把握に大きく近づくと思います。
もし、小保方氏のものと同様の結果であれば、実験使用マウスについての若山氏の認識と実際が違っていたということですので、若山研のマウス汚染が原因だということがはっきりすることでしょう。もし異なる結果であれば、若山氏は何を作ったのか? ということになりますが・・・(コンタミなき本来のSTAPキメラマウス?)。
ついでですが、桂委員長の説明の中で、「若山研の人たちが試したができなかったので」という点は、若山氏の2月のCell誌インタビューでの発言と異なります。他の院生もできたと言っています。この点をなぜ確認しないのでしょうか?
http://d.hatena.ne.jp/tomozouh/20140301/1393643308
http://tokyocicada.blog.fc2.com/blog-entry-63.html
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―以前成功したSTAP細胞はmESCsあるいはマウスのiPSのコンタミという可能性はありますか
Y:私はSTAP細胞からSTAP幹細胞の作成にも成功していますし考えにくいです。それに129B6GFPマウスからのSTAP幹細胞作成も出来ています。当時ES細胞は持っていませんでした。STAP幹細胞作成時Oct-4強陽性でした。その条件下ではES細胞より簡易に作成できました。さらにmRNA発現の仕方からSTAP幹細胞がES細胞のコンタミでは無いでしょう。
―あなたのラボでも再現性が低いそうですね
Y:ありうる事です。私自身ラボを移った際今まで出来ていたクローンマウスの作成に半年かかりました。自分の持つ技術でさえそうですから人の技術であれば再現が難しいのは納得できるものです。以前成功した時は小保方氏の指導の下、全て自分で行いました。同じようにPh.Dの生徒もSTAP幹細胞作成に成功していました。実験をはじめた当初はES細胞やiPS細胞は扱っていませんでした。後になってコントロールとしてES細胞を培養していました。
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疑問6 なぜ、より合理的な説明ができる「若山氏によるマウスの手交ミス」「手交マウスのコンタミ」の可能性を追求しないのか?
この疑問は、上記の「疑問3 なぜ「若山氏が小保方氏に渡したマウス」が若山氏の説明通りという前提に立つのか?」の延長なのですが、上記の一連の材料からすれば、「ES細胞混入」では説明が難しい材料が多々ある中で、同じ遺伝子分析結果が得られる他の可能性として、「若山氏によるマウスの手交ミス」「手交マウスのコンタミ」の可能性になぜ思い至らないのだろうか?ということです。
ES細胞を作製した親マウスの系統、種類のマウスを誤って使ってしまった可能性が多分にあるわけですが、親マウスの分析や、そういう仮説による検証はされていないように思えます。
報告書のP13以下に、「ES細胞混入の根拠」について総括的に述べられていますが、
そこでは、あくまで、STAP、FI幹細胞の作製時にES細胞が混入したと認定しています。
「(1)ES 細胞混入の根拠
(中略)
以上の論理を用いて、STAP 幹細胞や FI 幹細胞が ES 細胞に由来すると結論することができた。この場合、STAP 幹細胞や FI 幹細胞の作製時に ES 細胞が混入した可能性、ES 細胞作製時に STAP 幹細胞や FI 幹細胞が混入した可能性、の 2 つの可能性が考えられるが、今回の場合はいずれも ES 細胞の方が STAP 幹細胞や FI 幹細胞より早い時期に樹立されている。よって、STAP 幹細胞や FI 幹細胞の作製時に ES 細胞が混入したと認められる。」
会見では、若山氏の手交ミス、交配ミスの可能性を念頭に置いてかどうかわかりませんが、質問がなされています。しかし、委員長はじめ他の2人は、質問の意味さえ理解できず、大きな戸惑いをみせていました。頓珍漢な答えになってしまっていますが、これは、そういう「手交ミス」「マウスのコンタミ」の可能性は、頭から排除していた証左といえるでしょう。
以下、録画から起こしてみますが、戸惑いの雰囲気を実感するには、録画そのものをご覧いただいたほうがいいと思います(録画 1:11:00〜から5分間)。
Q ES細胞混入の可能性が高いという根拠で、遺伝子的特徴が極めて一致しているということだが、たとえば、FES1からキメラマウスと作って、そこからSTAP細胞を作ればここまで一致するということはないのか。
A(桂委員長) ええと・・・・ES細胞からキメラマウスを作り、そこからSTAP細胞を作れば、・・・かなり似たものができると思う。
Q そういう可能性は・・・そうすれば、ここまで極めて遺伝子特徴が一致するということはありえなくはないということか?
A (桂委員長)・・・(困惑して笑いつつ)米川先生どうですか? マウスの専門家として・・・。
A (米川委員)・・・・遺伝学の立場からすれば、そういった可能性はあまりないと思う。完全にないということはいえない。これは科学の世界では、何点何%という限られた事実でしか判定できないので、一般の方がいわれるように、たとえば99.9%、零コンマ零一%あるからそれは違うんじゃないかといわれても、そういったことは普通科学の常識としてありません。
Q 全く違う場合に極めて同じになることは確率的にありえないが、 今のようなやり方でやれば、極めて似てしまうことはありうるということでいいのか?
A(桂委員長)ES細胞とESを作ったと言われるマウスとが、かなり違った点がいっぱいあることがわかっている。
Q ということは、そういった方法で作れば似ているかもしれないが、そうした可能性はほぼあり得ないということでいいのか?
A(桂委員長)(戸惑いつつ)・・・伊藤先生、いかがですか?
A(伊藤教授)質問の趣旨がわかりかねているのだが、どういうことをお考えなのか、お聞かせ願えますか。
〜〜〜〜質問の繰り返し〜〜〜〜
A(伊藤教授)すみません、申し訳ないです。それは今のお話では・・・・
Q 〜〜〜〜質問の繰り返し〜〜〜〜
A(伊藤教授)それは、STAP細胞が存在しても話として成り立つのではないかということか? もし仮にそうだったとしても、論文の記載方法とは全く違うと思うが、そんな面倒くさいことをしなくても、そのままやれば個体を発生させることはできるわけだが、それはできないことではないが、論文記載の方法とは全く違うということは言えると思う。
A(桂委員長) 伊藤先生は慎重に答えたとおもうが、今回の我々の例でみてみると、マウスからES細胞を作ったときにかなり変位が入るようだ。もしそうしても、全部がそうなのかは百%の自信はないが、かなり変位が入っている可能性が高い。
Q 一度キメラマウスを通していたら、ここまで一致しないと考えていうことでいいか。
A キメラからESを作るときに、新たな変位が入る例が多い。全く入らないかといえばわからないが、その程度の変位は次世代シーケンサーを使えば全部検出できる。
質問した記者は、ES細胞から作ったキメラマウスから、STAP細胞が作られた可能性はないのか?と質問しているわけですが、ES細胞を作った親マウスが誤って使われたようなコンタミの可能性もあるでしょう。
報告書では、
「これだけ何回も ES 細胞が混入したことは、培養器具の不注意な操作による混入の可能性も考えられるが、研究者の常識としては、誰かが故意に混入した疑いを拭うことができない。」(p13-14)
と述べていますが、そんな何回も都合よく、ES細胞を混入できると考えるほうが不自然ではないでしょうか。2011年11月に初めてできて、「2012年1〜2月に特にたくさんできた」と桂委員長は述べていますが、その「たくさん出来た」たびごとに、小保方氏がESをせっせと混入していたというのでしょうか? そういう推定のほうが現実的でないように思えます。むしろ、多くの局面でES細胞の特徴がでているということは、もともとのSTAAP細胞作製に使ったマウス自体が、ESを作ったマウスと同系統、同種のものだったのではないか、と考える方が自然ではないでしょうか。
この点は、若山氏作製のキメラとの比較分析などによって、判断材料が揃ってくると思いますが、そういう可能性について想定も検証もしなかったというのは、科学的真実を追求するはずの科学的調査としては不十分すぎるのではないでしょうか?
●とりあえず、考えたことは以上です。
まとめると、
@論文調査だけでなく、科学的調査と称しながら、笹井氏や丹羽氏の指摘によるES細胞ではあり得ない材料を、論文解釈に関わるものであるにも拘わらず、完全無視しているのは明らかにおかしい。
A肝心の胎盤かどうかを論文の図だけで見て、残存のマウスはおろか切片さえもチェックせずに判断しているのは理解できない。
BES細胞混入であれば、一見すれば、大きさ、形態、増殖速度、シャーレでの状況(付着⇔浮遊)等から直ちに峻別できるはずである。若山氏にしても気が付かないはずがない。
C若山氏自身が、正しい系統であるはずのマウスから、一から作製に成功した際にできたSTAP幹細胞も、大阪大岡部研から導入したマウス由来というのであれば、若山氏の小保方氏への手交マウスも間違っていたと考えるのが普通の解釈ではないのか?
実際、若山氏のマウスの認識と残存資料の分析結果は違っているものが
あった。
D同じ遺伝子構成の一致がみられるだろうと各委員が述べた、ESキメラからのSTAP細胞作製の可能性や、ESを作った親マウスの系統マウスの手交可能性を想像もしないというのは、科学的調査としておかしくないか。若山氏の認識を正しいと所与のものとし、若山研側による「マウスの手交ミス」「マウスのコンタミ」をまったく想定もせず検証もしないのはおかしい。
なにぶん門外漢なので、基本的勘違いもあるかもしれませんが、門外漢だからこそ、平気で感じたことを披歴できるという面もあります。科学者では軽々なことはいえないでしょう。しかし、ES細胞混入では説明がつかない初歩的材料を完全無視しているというのは、誰でもおかしいと考えると思うのですが、まことに不思議なことに、この点に触れる識者、マスコミはほとんど皆無だというのは、驚くべきことです。そういう様子をみると、「王様は裸だ!」と叫んでいる子供のような気分になってきます(笑)。
最初ニコニコ動画で生中継をみていましたが、視聴者のコメントが流れますが、若山氏が一度、一から作製に成功していることを知らない人々が多いということに驚きました。マスコミも自分たちで2月に若山氏に成功の経緯をインタビューしているわけですから、その時の話との矛盾をなぜ問わないのか不思議でなりません。
今回の桂調査委員会での質問も、追求が緩すぎました。ES細胞の大きさ一つ取り上げて、「すぐに気が付くのではないか?」という単純な問いを投げかけるだけでも違ったでしょう。あるいは、すぐ数日前の丹羽氏会見時の「ES細胞を混ぜたら、形状変化なく全壊した」という実験結果との関係を問う質問もあってしかるべきだったでしょう。最初の日経BPの記者や他の記者が、「笹井、丹羽両氏の指摘は、調査対象外です」と回答されて、あっさり引き下がるセンスがまったく理解できません。それが核心だったはずです。
ES細胞混入では説明できないということが明らかになれば、マウスの手交ミス、交配ミスの可能性が浮上してきて、そうなると、一連の事件の構図は文字通り一変します。小保方氏及び若山氏の立場はまるで変わってきます。
最も不思議なのは、識者やマスコミは、小保方氏のことをあれだけ、ミスが多い、研究者としての常識が欠けるといった批判をしていながら、捏造だということになると、まるで小保方氏が手品師のように緻密な捏造工作を行ったかのような言いぶりになることです。それはダブルスタンダードでしょう。あの一連の「たくさんできた」というSTAP細胞が、すべてES細胞混入によるものだとすれば、増殖力が強い細胞をタイミング良くもっともらしく偽装するために相当精緻な制御をしなければならず、ほとんどインキュベーターに張り付かなければならなかったのではないでしょうか(それでも、ES細胞とSTAP細胞は大きさがまるで違いますから、偽装しようがないでしょう)。
心理学の世界では、「認知的不協和」という理論があります。社会心理学の教科書に出てきます。自分の考えや信念と相容れない事実に遭遇すると、不快感を感じたり、なんとか矛盾がなくなるように心理的操作を行うことを言います。
このSTAP騒動も同じではないでしょうか。「STAP細胞はなかった」という考えと相容れない材料は、無視したり、ES細胞混入説や遠藤氏のES/TS細胞混合説、あるいは「若山研から渡したマウスからできるはずがない」との調査結果を聞き、そのたびに「やはりSTAP細胞はなかったんだ」と確認できて心理的平穏を得ていたように感じられます。「世界三大不正」という決めつけに拍手喝さいの趣きです。
そういうと、「お前こそ、STAP細胞があるという期待が先行し、それが裏切られるような話は受け付けようとしないではないか」と言われそうですが、もちろん期待はありますが、別に、ないならないで仕方がないとおもっています。言いたいことは、「科学の世界のことであり、科学者であれば、科学的論点について科学的に冷静に詰めてほしい」ということです。科学者が率先してバッシングのみをしているようでは情けない限りです。
笹井氏は亡くなってしまいましたし、丹羽氏は重要な材料を「ちょっと気になって」といって実験をやってみて提供しているものの、声高に自らそれを主張して他人の矛盾を突くというタイプではなく、問われたことに最小限で答えるという雰囲気です。それに乗じて、彼らの指摘を無視するというのは科学者としてあるべき態度ではないでしょう。
小保方氏はガリレオなのか? STAP細胞は第二のドリーなのか?
世間は忘却の彼方かもしれませんが、科学的決着が最終的に着くまで、時間は相当かかりるでしょうが、まだまだ紆余曲折はあるように思います。
とりあえず、小保方氏への懲戒相当の判断がどうなるのか? それに対して小保方氏側がどう反応するのか? が直近の局面になりますが、その後、特許出願の扱いがどうなるのか?の件が来るでしょう。ハーバード大とかはどうするのかわかりませんが、もともと職務発明であることを考えれば、小保方氏らの特許として放棄には至らず、維持される可能性もあるでしょう。小保方氏に対して実験環境、資金を提供をするところが出てくるのかどうか、が気になるところです。
引き続き要注目です。
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