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「STAP細胞は、ほぼ確実になかった」
理化学研究所のSTAP論文の不正に関する外部調査委員会による会見で、桂勲調査委員長(情報システム研究機構理事、国立遺伝学研究所長)は、一般市民にもわかりやすい言葉で断言した。
捏造と改ざんの2つの点で不正が認められ、7月にSTAP論文は取り下げられている。科学の側面からはすでにSTAPはないもの、となっていた。だが、科学者の正確を期す発言のしかたに慣れない一般市民にはわかりづらく、あるのかないのかもやもやした感じがつきまとっていたといえる。今回、ようやく一般社会にとってもはっきりした結論が出たといっていいだろう。
誰がES細胞を混入したかわからない
理研のユニットリーダーだった小保方晴子氏らが作成したとしていたSTAP細胞は、特殊な培地で培養すると、胎児になるSTAP幹細胞と胎盤の栄養膜になるFI幹細胞になる。だが、この外部調査委員会で、論文公開とともに公表されていたSTAP細胞の遺伝子データを解析した結果、実はいずれもES細胞由来であり、STAP細胞の多能性を証明するはずだった「緑に光るキメラマウスの胎児」も、ES細胞由来である可能性が高いとされた。ここに至って、STAP細胞は架空の存在だったことが白日の下にさらされた。
「誰がES細胞を混入したかわからない」と桂調査委員長は言う。ES細胞とは、受精卵が少し成長した段階の胚盤胞の胚の一部を培養してできる多能性幹細胞のこと。iPSなどとともに再生医療には欠かせない。
STAP論文が公表された後、かなり早い段階から科学者の間ではES細胞のコンタミ(異物混入)についての疑念がささやかれており、10月に開かれた理研統合生命医科学研究センターの遠藤高帆上級研究員の会見で、STAP細胞とされたものは、ES細胞であることがほぼ証明されていた。
図表の間違いも非常に多く、アーティクルと呼ばれる主論文だけでも、捏造と認定されたものが2点、数値の調整が6カ所、取り違えが2カ所、写真の重ね合わせなども含めると合計11カ所。レター論文といわれる第2論文にも、知識不足による明らかな誤り、誤認や樹立したはずの細胞が確認できないなどの問題点が10カ所も指摘されている。
しかも、ほとんどのケースで、小保方氏からの元データの提出はない。そのために、論文データとの照合ができず、不正の有無が認定されなかった。
しかし、「実験データが提出されないほうが不正認定されない、ということは理不尽」。外部調査委員会の報告を受けて開かれた理研側の会見の中で、川合眞紀理事もそう言及した。不正が認定されなかったこと、イコール疑義が晴れた、というわけではない。ES細胞を混入したのは誰なのかということも含めて、不正を認定するための決定的証拠がないだけだ。むしろ科学者にとっては元データを開示しないことこそが、疑念を深める行為といっていい。
14年4月に、京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長の14年前の論文に疑念が出された折、山中教授は段ボール5箱分の実験ノートを提出して疑念を晴らした。しかし、小保方氏は、「ES細胞の混入はしていない」というのみで、ついに自らにかけられた疑惑を晴らすことをしなかった。
理研に与えたダメージと費やされた公金
それにしても、世界を巻き込む騒動となっただけに、STAP問題が、日本の科学界に残した傷は大きい。理研にも多大な与えたダメージを与えた。STAP論文の責任著者のひとりであり、小保方氏の指導的立場にあった笹井芳樹氏が自死したことは最大の痛手だ。CDBは解体・再生ということになり、組織再編にも時間とコストがかかる。
不正疑惑の調査のために実際に費やした金額も大きい。内部調査のため費やした研究者という人的資源のコスト。さらには検証実験にかかった1500万円、全ゲノム解析など、今回の外部調査にかかった費用は1400万円。会見の会場費もバカにならない。都心の300人収容規模の会議室は1日で200〜300万円程度はかかる。不正疑惑発覚後、都内の大きな記者会見は9回(うち1回は文部科学省内)。
さらに、不正と認定された小保方晴子氏の人件費と研究費用が年間2000万円。研究費については、14年3月ごろから騒ぎが大きくなったため、実質的には13年3月から1年程度しか支払われていないとみられるが、表面化している数字だけでざっと6000万〜7000万円はかかっている勘定だ。加えて、内部、外部にかかわらずトップクラスの科学者たちの時間と労力が、この検証のためにどれほど投じられていることか。しかも理研の収入は85%(2013年度実績)が補助金などの公金で賄われている。
小保方氏自身は、STAPができないことを証明した検証実験報告が終わった12月21日付けで理研を退職している。退職した場合、懲戒処分は不可能となる。ただ、不正行為防止に関する規定では、内容の公表と、研究費の返還請求などの措置が講じられる。
理研の会見でも「研究費の返還請求については検討しなければいけない」とコンプライアンス担当の有信睦弘理事は述べている。文部科学省の「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」でも、「競争的資金の返還を求める」とある。
理研が小保方氏に支払った研究費は1年分程度と見られるが、小保方氏は博士課程在籍時の08年度から3年間、日本学術振興会から少なくとも月20万の生活費と特別研究員奨励費年60万円を受けている。小保方氏は早稲田大学に提出した博士論文も取り消しの執行猶予中だ。不正発覚時点からどこまで遡って責任を問えるのかという問題はあるが、不正にはそれ相応の対応が求められる。これが再発への歯止めにもなる。
http://toyokeizai.net/articles/-/56886
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