05. 2014年11月12日 07:18:04
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地球温暖化対策:足並みは永遠に揃わない? 過去最高を記録したCO2排出量、削減目標は現実的なのか 2014年11月12日(Wed) 川口マーン 惠美 9月21日に、地球温暖化の国際研究チームGCP(グローバル・カーボン・プロジェクト)が発表したところによると、2013年、世界のCO2排出量が、過去最高の360億トンに達したそうだ(濃度は396ppm)。 2005年には270億トンだったので、これはすごい伸びだが、しかし、CO2をトン単位で言われても、なかなか想像ができない。とてつもなく凄い量なのだろうと、空恐ろしくなるだけだ。 急増するCO2排出量、本来の目的を見失ったCOP 気温上昇2度未満、目標達成に迅速対応を要請 IPCC報告書 独ロンマースキルヒェンにある石炭火力発電所 ©AFP/PATRIK STOLLARZ〔AFPBB News〕 先進国では、CO2の排出量は2000年以来横ばい、あるいは、減っているが、中国、インド、ASEANなど途上国での増加が著しい。特に中国は1国で、世界全体のCO2排出増加量の約55%を占めているという。 CO2に温室効果があることは、科学者の間では19世紀から知られていた。CO2などの温室効果ガスが大気圏に漂っていると、太陽の熱は通すが、反対に地表から放射される熱を逃がさなくなる。だから、地表が冷えない。 地球の温暖化に人々の関心が集まり始めたのは、1980年代の終わりだ。世界各地の異常気象が問題になり、CO2と温暖化の関係が取り沙汰された。その結果、92年、国連が地球サミットを開催し、気候変動枠組条約が締結された。 この時、155カ国が条約に署名、発効は94年。その翌年より、年に一度、締約国が集まって会議を開くことになり、それが今も続いている。COP(気候変動枠組条約締約国会議)だ。実際に温室効果ガス削減の数値目標が定められたのは、97年、第3回目の京都会議(COP3)でのことだった。 それ以来、多くのことが決められ、多くのことが守られなかった。京都議定書を、最大のCO2排出国であるアメリカは批准せず、2001年には離脱した。排出量を減らせないカナダも、一昨年、離脱している。世界第2の排出国中国は、発展途上国扱いなので、削減の義務はない。 昨今のCOP会議は、環境を案じて対策を考える場ではなく、お金の取り合いの場になってしまっている。発展途上国は、削減の義務を逃れる画策、あるいは、削減のために先進国からお金を引き出す算段に熱心だ。 「現在の状態は、先進国が、自分たちが豊かになるため、野放図に産業を発達させた結果、引き起こした」という彼らの言い分は正しいが、しかし、こうなった以上、これからは先進国も発展途上国も一致協力して事に当たらなければ、手遅れになる。 EUが実現しそうもない目標を掲げる理由 今年も、12月1日から12日、ペルーのリマでCOP20が開催される。それに先立って、10月24日、EUは首脳会議で、2030年までに温室効果ガスの排出量を1990年比で40%削減する目標で合意した。これを聞いて「?」と思うのは、私だけではないはずだ。 現実を見るなら、2013年のCO2の排出量は急増しており、過去最高の水準だ。しかも、14年はさらに増加すると見込まれている。世界気象機関の発表では、そのCO2を吸収する海も、前例のない酸性化が進んでいるのだそうだ。なぜ、彼らは守れそうにもない遠大な目標を掲げるのか? 実は、EUの指導者たちは、この合意内容を来年末のパリでのCOP21で掲げ、京都議定書以後の2020年からの枠組み合意に生かすつもりらしい。会議の前にオランド大統領は述べている。「EUが削減目標で合意できなければ世界の国々を説得することはできない」と。 下記の表を見ればわかるが、世界のエネルギー起源のCO2の排出量は、EUがいくら努力しても、それほど減らないことがわかっている。なぜなら、削減の義務を逃れているアメリカ、中国、インド3国だけで、世界の排出量の48パーセントを占めているし、BRICSの合計排出量もすでにG8を超えているからだ。 出典:環境省ホームページ つまり、EUは自らの野心的な目標を示すことにより、他の、協力的でない国々にプレッシャーをかけようとしているのだ。 私たちも頑張るから、皆も協力してくださいということ。産業の発展と環境保護の相性の悪さは今に始まったことではないが、各国が近視眼的な思考を改めない限り、気温はさらに上がっていくというEUの警告は正しい。 しかし、現実はというと、EU内でも足並みが揃っているわけではない。EUの国々は、とにかく経済格差が激しい。これまでは、東欧の国々は、老朽化した施設の合理化によって大々的なCO2の排出量の削減を可能にしたが、これからもそれを続けることは難しい。 そもそも、東欧の多くの国々は、安価な石炭や褐炭を使っている。たとえば、ポーランドでは、国産の石炭と褐炭があるため、発電の90%はこの2つの燃料に頼っている。石炭と褐炭に依存している事情は、ルーマニアもブルガリアも、そしてバルト3国なども変わらない。 これらEUの中の途上国の喫緊の課題は、国内産業の発展だ。つまり、再生可能エネルギーへのテコ入れは、その後の話というのが正直なところだ。それでも再エネ開発となるならば、おそらくそのときは、資金も技術も、すべてEUの補助金で丸抱えということになるのだろう。 果たして地球温暖化は食い止められるのか 前述の国際研究チームGCPによると、世界の「炭酸ガス排出の割当量」は急速に使い尽くされているという。「割当量」とは許容量のことで、1750年の産業革命開始時から2度気温が上昇する前に排出可能とされている温室効果ガスの最大量だ。 現状の排出ペースが続くと、地球温暖化を2度で抑えるための割当量は、あと30年ほどで使い果たされると報告書は言う。 CO2の増加は事実で、平均気温が上昇しているということも事実だ。ただ、それがどのように関連し、地球の気候メカニズムにいかなる影響を及ぼしているのかということは、まだちゃんと証明されていない。研究時間が短すぎるのだ。だから、これらにはあまり関係がないと主張する研究者もいる。 しかし、原因が何であれ、温暖化は進んでいる。温暖化が進むと、台風やハリケーンの発生回数には変化がなくても、その勢力が強くなり、豪雨、暴風の頻度が増すのだそうだ。さらに、海面が上昇するから、高潮、洪水の被害も増加する。CO2との関係の証明を待っていると、手遅れになる危険は大だ。 11月2日には、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告が発表された。それによれば、気温上昇を2度未満に抑えるという国際目標を達成するためには、今後の累積CO2排出量を1兆トン以下に抑える必要がある。 もし、それができず、今のままの排出が続けば、今世紀末には20世紀末と比べて平均気温が最大4.8度、海面水位が最大82センチ上昇する恐れがあるのだそうだ。 日本の都市は、海岸線に沿って発達している。国土交通省によると、川の水面の高さより低い土地が、国土面積の10%を占め、ここに日本の全人口の51%、日本の持つ資産(財産)の75%が集中しているのだそうだ。 それどころか、海抜より低いところが577平方キロもあって、そこに404万人の人間が住んでいる。温暖化が進めば、我々はまもなく、地震や津波より、水没を心配しなければならなくなる。 ただ、IPCCは一つだけ希望を残してくれている。今すぐに、世界の国々が本気で取り組めば、CO2の排出を1兆トン以下に抑えることは可能だと彼らは言っている。そのためには、温室効果ガスの排出量を2050年までに10年比で40〜70%削減し、今世紀末にゼロにすればよいのだそうだ。 何となく信じがたい話だが、来月のCOP20では、皆がその望みにしがみついて、また遠大な目標を語り合うことになるのだろうか。毎年、COPの会議の内容はフォローしているが、今回は、始まる前から空しい気分になった。皆で、地球を破壊しているという罪悪感を、どうにも抑えられない。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42154
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