http://www.asyura2.com/13/nature5/msg/615.html
Tweet |
[真相深層]釣り漁師に規制の大波
クロマグロ未成魚、漁獲枠を半減 駆け込み登録急増、不安増幅
クロマグロの減少に歯止めをかけるため、水産庁は2015年から未成熟な小型魚(未成魚、30キログラム未満)の漁獲枠を半減する。大手資本の力が強いまき網漁や養殖に続き、今度の規制では沿岸の釣り漁師らも漁獲量削減の対象に加わる事になった。マグロ漁師の不安と混乱は増幅している。
未成魚の漁獲枠は基準値(02〜04年実績)の50%、4007トンに減る。水産庁は1日から4日まで福岡市で開いている中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の委員会で、加盟国・地域にも同調を促し合意を目指す。
この規制は、日本周辺のクロマグロを対象としたものでは前例がないほど厳しいものだ。過去20年間、漁獲量が4007トンを下回ったのは12年だけだからだ。
WCPFCが太平洋のクロマグロ漁獲量抑制に動いたのは09年から。乱獲で大西洋、特に大半を日本向けに出荷していた地中海のクロマグロ資源が激減。このため日本の商社などは新たな投資先として規制がほとんどない太平洋に目を向けた。
WCPFCは14年の未成魚の漁獲量を基準値から15%減らす規制の導入を決めた。しかし、この程度では資源量の回復は見込めず、踏み込んだ規制実施を促したのが、3月に公表された北太平洋まぐろ類国際科学委員会(ISC)の報告だ。
ISCは12年の太平洋クロマグロの親魚資源量は過去最低水準に近付いていると報告。ISCの7通りの試算のうち、10年以内に親魚の資源量を回復させるのは、未成魚の漁獲量を半減するという選択肢だけだった。
減収への不安
「定置網に入ったマグロをリリース(放流)する方法はあるのか」
「日本海で産卵期の親マグロをとるまき網漁を規制すべきではないか」
水産庁が8月26日に都内で開いた説明会では、今回から実質的な規制対象になる沿岸漁業者から質問や意見が相次いだ。資源悪化を肌で知るプロばかりなので漁獲削減に反対する意見は皆無。ほとんどが実施方法や減収への不安を訴える声だ。
水産庁が漁獲可能量4007トンの配分として示したのは、まき網業界に2000トン、その他(沿岸漁業)に2007トン。釣り・ひき縄、定置網など「その他」の漁業は、2007トンの枠を全国6ブロックで再配分する。
水産庁は「(基準値比)まき網は56%削減、沿岸は42%削減。まき網には我慢してもらっている」(神谷崇参事官)と説明する。だが、資源悪化の元凶は過去に大量漁獲を繰り返したまき網漁とみる沿岸漁業者から不満の声が上がる。ブロックごとの配分量にも見直しを求める意見が多い。
「こんなことなら過去の実績に基づいて、個別に漁獲量を割り当ててもらったほうがいい」
長崎県壱岐市の一本釣り漁師、中村稔さん(壱岐市マグロ資源を考える会会長)の目には、水産庁が沿岸漁業者同士の争いをけしかけているようにさえ映る。沿岸漁業をひとまとめにして、少なくなった枠に閉じ込めるため、マグロの取り合いになりかねないからだ。
漁船数8割増
規制強化の波をかぶる沿岸漁師たちの不安を象徴するのが、マグロ漁船の急増だ。規制強化の一環で水産庁は今春、クロマグロを取る沿岸漁船を届け出制から承認制に切り替え、事実上の隻数制限を導入した。すると、駆け込み登録が急増。漁船数は8割増え2万4千隻を超えた。これまでの実働は3千〜4千隻とみられ、どれだけ増えるのか予想もできない。
クロマグロが釣れなくなった壱岐や山口県見島の一本釣り漁師は、産卵期の休漁や個別漁獲割り当てなど本格的な資源管理を実施するよう5年も前から水産庁に働きかけてきた。「規制にスピード感が欠けている。仲間がどんどん漁師をやめてしまう」(中村さん)
日本の半減要求に対し、韓国やメキシコなど他の漁獲国が協力するかどうかは不透明。メキシコはWCPFCでの先行実施をみて判断する姿勢をみせ、日本の漁業者は反発している。
大胆な規制案を打ち出した水産庁だが、裏を返せば過去の規制が甘すぎ、国内外からそのツケを払えと圧力をかけられているのが実情である。
(編集委員 樫原弘志)
[日経新聞9月2日朝刊P.2]
▲上へ ★阿修羅♪ > 環境・エネルギー・天文板5掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。