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「元気ではないけど、生きています」自殺直前、行方不明になっていた笹井氏のメール〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140814-00000005-sasahi-sctch
週刊朝日 2014年8月22日号に加筆
STAP細胞論文の主要著者の一人で、衝撃的な自殺を遂げた理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)の笹井芳樹副センター長の遺族が8月12日、弁護士を通じ、「あまりに突然の出来事を受け入れることができないでおります。この半年があまりに長く、私どもも疲れ切っております。今は絶望しか見えません」とのコメントを発表した。
会見した弁護士によると、妻と兄宛ての遺書2通が残されており、「今までありがとう」などの感謝の言葉が書かれていたほか、「マスコミなどからの不当なバッシング、理研やラボへの責任から疲れ切ってしまった」など自殺の理由が記されていたという。
本誌の取材で謎に包まれた笹井氏の自殺前の行動がわかってきた。死の数日前に行方不明になり、家族が捜し回っていたというのだ。大阪府内に住む笹井氏の母親の知人女性が明かす。
「芳樹君が亡くなる3日前、お母様と電話でお話ししました。その時、『芳樹がどこにいるか、居場所がわからなくなっていて、家族で捜し回っていた』と困惑されていました。大丈夫ですか、と尋ねると、お母様は『(医師の)兄さんが"無事か"と出したメールに芳樹から"元気ではないけど、生きています"という返事がとりあえず来たので安心した』と。私があまりクヨクヨしたらあかんよ、と言うと、『STAP細胞の問題に早くケリをつけて、やり直してほしい』とおっしゃっていた。その矢先に、報道で自殺を知り、本当に驚きました」
この知人によれば、笹井氏は母親に、STAP騒動についての本音をこう吐露していたという。
「あの子は、週刊誌などに書かれた小保方晴子(30)さんとの仲などについて、『あんなことは絶対ないから信じてほしい』と言っていた。理研について、『クビにするならしてくれればいいのに。アメリカで研究したいのに、なかなか切ってくれない』と愚痴をこぼしていた。お父さんも何でも人の責任をみんな負う人だったから。芳樹はああ見えて要領が悪いから、お父さんに似なければいいけど……」
5年前、息子に「ノーベル賞を期待する」と誇らしげに語っていた母が感じた不安は、不幸にも的中してしまった。
自殺現場に置かれたカバンからは、STAP細胞の検証実験に参加中の小保方氏、CDBの竹市雅俊センター長(70)ら幹部、研究室メンバーなどに宛てた3通の遺書が、研究室の秘書の机の上からも、総務課長と人事課長に宛てた遺書のようなものが発見された。小保方氏への遺書の内容について、理研関係者はこう語る。
「『小保方さん』と手書きされた封筒入りで、パソコンで作成された文書でした。『1人闘っている小保方さんを置いて、先立つのは、私の弱さと甘さのせいです。あなたのせいではありません。自分のことを責めないでください。絶対、STAP細胞を再現してください。それが済んだら新しい人生を一歩ずつ歩みなおしてください』などと、彼女を気遣うような内容でした」
笹井氏は最期まで、STAP細胞の存在を信じていたのだ。この日、小保方氏はSTAP細胞の再現実験のため、CDBに出勤していた。訃報に接した小保方氏は絶句して涙をこぼし、何も話すことができない様子だったという。
竹市センター長によると、笹井氏は10日ほど前から見た目にも体調が悪い様子だったという。
「研究室のスタッフから、会話がほとんどできない状態でケアする必要があると聞いていました。思い悩んで自殺してもおかしくない、そういう状態でした。すぐご家族と連絡を取り、治療するようにすすめていました。それでも責任感が強く研究室に通っておられ、(自殺の)前日の4日、(医師の)お兄様から、治療を受けていると連絡がありました」
騒動発覚後の3月に体調を崩して、心療内科を受診し、約1カ月間、入院していた笹井氏。その時点で副センター長を辞任したいと申し出ていたという。だが、「懲戒委員会が続いているし、STAP問題がクリアになるまで、もう少し我慢してほしいと思い、辞表を受け取るに至らなかった」(竹市センター長)。
遺族のコメントでは、理研に対して「皆様の動揺を思うと胸がつぶれるほどつらいです」などの心情もつづられていた。
(本誌・上田耕司、今西憲之、牧野めぐみ、小泉耕平、横山健、福田雄一)
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