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記者会見する理化学研究所調査委員会の渡部委員長(左)ら(8日午後、東京都墨田区)
STAP問題 理研が再調査をしない本当の理由
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGG0802O_Y4A500C1000000/?dg=1
2014/5/8 23:41日本経済新聞
理化学研究所は8日、STAP細胞の研究論文問題を再調査しないと決め、小保方晴子研究ユニットリーダーに対する不正認定が確定した。しかし、再調査すれば不正に至った経緯がさらに明確になった可能性もある。同時に、調査が不十分だという批判もかわせたはずだ。結論を急いだ理由は何か。
理研の調査委員会(委員長、渡部惇弁護士)は3月末に調査報告書を出したが、小保方氏の不服申し立てを受け、再調査をすべきか検討。結果を覆すようなデータはないなどとして、再調査する必要はないと判断した。これを受け、理研の理事会が再調査しないと決めた。「理事の間で異議はなかった」(川合真紀理事)という。
再調査すべきかどうかの審査過程で、新事実が明らかになった。小保方氏は問題となっているSTAP論文の前に、英科学誌ネイチャーに2012年4月に論文を投稿し拒否されたが、7月には似た内容で米科学誌サイエンスにも投稿していた。
サイエンスへの投稿論文には、今回の論文で切り貼りの問題が明らかになったのと似た遺伝子解析の画像を掲載。サイエンスの査読者から、切り貼りした部分を見分けられるよう、線を入れるべきだと指摘されていた。にもかかわらず、問題点を放置したまま再び今年1月のネイチャーに同様の画像を載せた。調査委がうっかりでは済まされない不正行為と判断したのも無理はない。
小保方氏の代理人は実験ノートの一部も公開した。そこには極めて大ざっぱな実験項目しか記載されておらず、実験条件や詳細な生データは見あたらない。理研では通常、実験ノートのすべてのページに第三者が署名する仕組みになっている。カーボン紙と二重にして、書いた内容のコピーがすべて残るようにしている研究グループもある。これらに比べると、小保方氏の記述はメモ書き程度にしか見えない。
不服申し立てが出されてから約1カ月間に明らかになった内容のほとんどは、小保方氏にとって不利だ。不正認定を覆すどころか、補強する材料といえる。ネット上などでは、小保方氏の論文を巡ってSTAP細胞がそもそも別の万能細胞であるES細胞(胚性幹細胞)ではないか、などの指摘もある。
再調査で、これまでに調べた6項目以外の疑義も徹底的に調べれば、不正の実態はより明らかになったかもしれない。調査委の役割としては、1つでも不正行為を見つければよいのだから、余計な調査は不要と言われればそれまでだ。しかし、可能な限り不正を明らかにすることは今後の防止策を考えるうえでも意味があったはずだ。
多くの研究者が、問題が残されたままだと感じている事柄もある。論文の共著者で小保方氏の上司でもある理研の笹井芳樹・発生・再生科学総合研究センター副センター長が、不正論文にどうかかわったのか、という点だ。調査委はこの疑問に正面から向き合うのを避けているようにも見える。
調査委の渡部委員長は8日の記者会見で、笹井氏に関する質問に対し一般常識からは首をかしげたくなるような回答をした。STAP論文に掲載された細胞の画像が、博士論文で使った別の実験のものとみられると判断されたことに関する部分だ。小保方氏と笹井氏は細胞画像の「取り違え」に気づき調査委に自ら報告したものの、実験条件が異なることは伏せた。
渡部委員長は「研究不正があったかどうかは、(小保方氏が論文作成を)行った時点で判断する。後になって、それ(画像)がおかしいとなった時点でどんな説明をしたとしても、過去にやったこと(不正)に直結しない」と話した。「実験条件が違うことに言及しなかったのは説明不十分あるいは意図的に隠した、などいろいろな見方があると思うが、それによって笹井氏が研究不正に関与していたとはならない」という。
つまり、STAP論文の細胞画像が別の実験のものを流用したものだと知っていながら、それを笹井氏が隠した可能性がある。にもかかわらず、笹井氏は論文にその画像を入れる作業そのものにはかかわっていなかったので「共犯」ではなく、不正はなかったとの見立てだ。上司が部下の不正調査に対し、不正の実態を一部隠すような行為をしていても問題はないと説明するようなものだ。
理研のある研究者は「笹井さんは殺人現場(不正現場)を通りかかって死体を遺棄した(証拠を隠そうとした)ようなもの」と形容する。弁護士として理研の規定や調査委の役割と照らし合わせて解釈すれば、笹井氏は不正に直接手を染めていないという結論になるのだろうが、なかなか納得しづらいのは確かだ。
調査委が3月末に報告書を出したとき、「小保方氏だけトカゲのしっぽ切りをするのはかわいそう」と同情する声が多く聞かれた。何人もの新聞読者から、「小保方氏いじめ」に加担するなという趣旨の「苦情」も届いた。最終的に小保方氏に不正があったとの判断が覆らないにせよ、じっくり再調査した方が説得力が増し、理研は世論も味方につけられたのではないか。
もし、再調査が実施された場合、結論は50日以内と定められている。その程度、結論が遅れてもそれほど不都合はないだろう。急ぐ理由があるとすれば、政府が検討しているものの、STAP問題のために延び延びになっている特定国立研究開発法人への指定問題だろうか。8日の記者会見で川合理事は否定したが、この問題と調査を急ぐこととの関係はかねて指摘されてきた。
同法人に指定されると、優れた研究者を高給で優遇できる。野依良治理事長が実現を強く求めてきた。政府は今国会で関連法案の成立をめざしているが、それにはSTAP論文の不正認定と小保方氏の処分という「けじめ」をつける必要があるとの見方が出ていた。
もうひとつ、理由として考えられるのは笹井氏を守ろうとするなんらかの力が働いているのかもしれないということだ。笹井氏は理研のエースであり、誰もが「彼ほど頭の切れる人はいない」と認める優秀な研究者だ。世界的な知名度もある。笹井氏あっての発生・再生科学総合研究センターであり、同氏がつまずけばセンターの先行きに対する不安も高まる。
再調査で、これまで取り上げてこなかったような疑義も調べれば、笹井氏に不利な事柄も出てくるかもしれない。同センターはiPS細胞を使って目の病気を治療する世界初の臨床研究を進めており、国の再生医療プロジェクトの重要拠点でもある。何とか打撃を最小限にしたい、と考える人たちがいてもおかしくはない。
理研はSTAP論文が作成された過程についてさらに詳しく調べ、不正防止策に役立てることを検討している。ただ、どこまで徹底して調査するか、記者会見での説明は曖昧だった。今回の不正調査「打ち止め」を巡ってささやかれていることが「邪推」に終わり、数年後に振り返ってみて「理研はあれから本当によくなった」「日本の科学研究への信頼を回復できた」といわれることを期待したい。
(編集委員 安藤淳)
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